魔性のメイクアップ その2

作者 yujiさん

・第二章




     ーーヒュンッ、パシンッ!!パァンッ!!ーー


 コンクリート壁に反響する甲高い打撃音。
 ブンッ、ヒュンッ!といった空気を裂くような空切り音が鳴り、床面に打ち付け
 る美淑女のロングウィップの炸裂音が断続して鳴り響いていた。

 

「そう、いい感じね♪次は連続して打ってみましょうか。打った反動を利用して
  5回ぐらい連続ね。左手は腰に当てて・・そう、前屈みにならないように」

 「は、はい、こんな感じでしょうか?」


 「ええ、そんな感じよ♪あっねえ恵子さん、後でフォーム確認するのに見直す
  から何枚か撮るけれど気になさらないでね♪」

 「はい、宜しくお願いします」




 雑居ビルの地下一階。
 入口にアラビア文字と英語で「スタジオ・レディ」と刻印された簡易プレート。
 元々、真性ミストレス養成として使用していた場所をSMショーなどのイベント
 経営者の合同出資で多目的施設として使われている。

 そして同じビルの1フロアに「フェム・イシュタル」というベリーダンスを主と
 したダンス教室を開いた沙羅も、この多目的施設に出資する一人である。


 
 「どうかしら?普段の日常じゃ経験出来ない事って新鮮だと思わない?」

 「はい。鞭・・なんて考えた事も想像した事もありませんでしたから・・」


 「そうよね・・確かにこういう鞭ってSMとかすぐ連想するけど、この前ビデ
  オとか雑誌とか見て貰ったようにダンスパフォーマンとかエクササイズにも
  使われてるの。」

 「そうですね、結構全身使いますし、最初は打った音が怖かったですけど・・」


 「フフ・・今はどうかしら?スカっとした快感みたいな気分にならない?」

 「えっええ、打った時の上手く打ち抜いた音とか感覚が伝わるので・・」


 「そうね。それも重要だと思うわね・・あっねえ恵子さん。話は変わるけれど、
  旦那さんとは最近どう?月初めに着た頃、数日帰りが極端に遅くなる日が
  あるって話してたでしょう?何となくだったけれど、私のアドバイス・・
  役に立ってるかな?と思ってね」

 「はい、最初は恥ずかしかったですけど・・下着を変えたりして・・」

 
 「そう。フフ・・ねえ、もし匂いを嗅がれる事に抵抗なかったらだけど・・・
  他の事もいろいろ試してみない?例えば〜・・」

 短くカットし、まるで映画などに登場するクレオパトラのようなヘアスタイル
 に変え、トライバルアイメイクを施した恵子は、セクシーなトレーニング衣装
 を身に着け、スパイク鋲がグリップに打たれた懲罰と拷問を思わせる太い一本
 鞭を沙羅の指導よって徐々に打撃力を増しながら、ハードな体罰趣向のマゾ男
 を虜にするような色気のあるウィッピングを熟すようになっていた。

 週二回の数名の会員と共に練習するベリーダンスの他、沙羅の熱心な勧めと提案
 されて、鞭打ちパフォーマンスを主としたフュージョンダンスの指導を受ける
 事になってしまったのだった。
 
 フランクで話し易い沙羅の人柄や、女性として色っぽくなりたい気持ちなど、
 この先も夫である哲郎と恋人のような生活をしていきたい心もあって、女性か
 ら見ても五十路まじかとは思えないプロポーションとスタイル抜群な沙羅に
 アドバイスを受けてみようと思った恵子であった。


 「ねえ恵子さん。再来週に私、とあるクラブでフュージョンイベントに参加する
  んだけど、ゲストであなたも出演してみない?」

 「えっ?そんな、私なんて恥ずかしくて無理ですよ・・」


 「大丈夫♪一人だけじゃない訳だし。勿論、私も付いてるわ♪それに、踊りの
  内容より衣装で着飾ったり、鞭打ちが主体のイベントだから、自分なりで
  大丈夫なの。お客も高いクレジット支払ってくる人だけだから紳士な人だけ
  よ♪」

 「でも・・・夫にも相談しなくちゃ・・」

 
 「内緒でいいのよ、その事は♪」





 土曜日の午後9時過ぎ。
 今日は恵子が沙羅のダンス教室に通う夜の部の日である。
 恵子が帰宅するまであと約2時間あまり・・そして、いよいよ「フェム・イシュタ
 ル」の会員サイトである「ドミナス」というページの更新日である。

 哲郎は、事前に沙羅から特別に教えられたIDとパスワードを震える手でキー
 ボードを叩き、大画面のPCモニターに映像が切り替わるのを固唾を飲んで
 待ちわびていた。


 
    −−ヒュンッ、パァン!!−−


 スピーカーから聞こえてきた甲高い鞭打ちの打撃音に一瞬、ビクッとしてしまう
 哲郎であったが、すぐにNew・spanker「Keiko」というボタンをクリックした。
 

 
 (け・・恵子様・・)


   

 自分の妻の名前を「様」とつけて呼ぶ事で惨めで浅ましい興奮感が猛烈に込み
 あげてくる・・我慢出来ないペニスの先からは汁が滲み垂れ、画面に写し出され
 た恵子のミストレス姿に哲郎は、歓喜の溜息を吐きながらヌチャリ・ヌチャリと
 と情けなくペニスを扱くのである。

 サイトにアップされた恵子の姿・・ラテックス衣装を身に着け、ドミナメイクを
 施し、蛇の様に長く編み込んだ一本鞭を持ちながら、厳しく見下すような視線
 を向けているのだ。
 
 今まで沙羅から見せて貰った恵子のメイクアップ写真とは異なるものだった。
 そして、プロフィールの項には沙羅からサディスティン養成メンタル調教を受け
 た痕を醸し出す内容が記載されている。



  ・「初めまして。KEIKOと申します。
    
    この度、Whipping・Danceに参加する事になりました。

    鞭は基本、一本鞭や乗馬鞭、ケインを使用します。

    ダンス衣装については、ラバー、ラテックス等のボンテージ系や
    パンツルックにロングブーツの組み合わせがあります。


    普段の私と異なる私・・・あなたはどんな「私」を想像すのかしら?



 「はぁはぁ、恵子さま!ムチを・・鞭打ちして下さいぃ!!」



 右手で一心不乱にペニスを扱き、左手に持っていた恵子のピンヒールミュール
 の足汗で変色したインソールに鼻を押し当て、美しいミストレスの香ばしい足蒸
 れ臭を嗅ぎながら射精してしまったのだった。

 
 ・・・・・・・・・・



 「あなたも一本どう?アロマシガー♪練習の後に吸うとリラックス出来るわよ」

 「いえ・・私は煙草、吸わないので・・」


 「フフ、煙草とはちょっと違うわ♪アロマ香を自分で炊いて香る感じのものよ♪
  恵子さんは喫煙経験ある?」

 「え、ええ・・昔、OL時代に同僚の勧めで少しだけ・・」


 「そう♪正直ちょっと意外と思ったけど、それならコレ、試してみない?」

 「でも・・」


 
 結局、恵子は沙羅に推し勧められるまま、金色の巻紙がいかにも高価そうなスリ
 ム煙草を口に運び、沙羅のつけたライターの火で煙草に火をつけると、最初はそ
 の独特な香りと副流煙に咽てしまうが、4服あたりから慣れ始め、パープル
 レッドのルージュで彩られた唇のから濃く白い煙が吐き出されたのだ。


 「フフフ、どうかしら?」

 「フゥ〜・・え、ええ・・凄い煙が出ますね・・」


 「そうね〜でも、香りはいいでしょう?フフ・・ねえ恵子さん、先日あなたの
  衣装合わせにに来られたボンテージショップの社長さんの事だけど・・」



 沙羅は未だ夫の哲郎を一筋に想う恵子に、気遣いと優しさといった恵子の性格を
 利用し、哲郎以外の男の性器を愛撫し射精させてみたいと考えていた。
 そして哲郎に最も屈辱的な事をさせてみたいと、サディスティックな感情に打ち
 震えてるのであった。



 「勿論、旦那さんには絶対内緒。それにあの人、匂いフェチだし嗅がせて抜いて
  あげて欲しいのよ。あなたの事すごく気に入ってたから・・駄目かしら?」

 「・・・・わ、わかりました・・」


 「ありがとう♪ごめんなさいね、でも社長凄く喜ぶわよきっと。お歳だけど紳士
  な方だし。」

 「はい・・お世話になってる方なので、私に出来る事なら・・」


 
 「よろしくね♪じゃあ・・明後日のスケジュールだけど、パンツルックのダーク
  スーツで予定通りお願い。」

 
今はサービスのS・・
 沙羅は巧みな口調、口説き文句で心優しい恵子の心情をコントロールして、性癖
 として女性からの苦痛や屈辱を求め懇願するマゾ男の悲しい性の事、ミストレス
 バーに連れていき、舐男という人間家畜志願のマゾ男と会話させてフェムドム
 の世界を悲痛な想いで聞かされいったのだった。

 そして沙羅から、熱心に懇願する舐男の欲望をお芝居でも少しだけ叶えてあげた
 ら?という提案に恵子は、最初こそそんな酷い事は出来ないと断るだけであった
 が、口説きに口説かれ・・やがて鞭打ち以外ならと、承諾してしまったのだ。

 バーで沙羅はハード趣向の舐男に唾吐きやビンタ責めをして、ペニスを立たせな
 がら快感の表情を浮かべるマゾヒストの姿を恵子の前で披露し、そのあまりにも
 痛々しいプレイに恵子は涙目になってしまったが、悶え興奮しながら射精寸前の
 勃起ペニスを披露する舐男の姿に、この可哀想な男性の願いを少しだけでも叶え
 てあげたい・・という母性本能のような気持が芽生えてきたのだった。


 きつく厳しい言葉責め、ビンタ、顔面唾責め、靴舐め・・・ノーマルな恵子に
 とって沙羅のレクチャーは困難なものだった。



 ・・・・・・・・・・・・


 「ただいま・・ごめんなさい哲郎さん、遅くなってしまって・・」

 「お・・おかえり恵子。その、メイク・・すごいね」


 「あっ・・・やだ私・・慌ててきちゃったから落しきれてなかったのね・・」

 午後11時頃、半ば慌てた様子で帰宅してきた恵子は、白いスキニーパンツに
 メタルヒールのサンダル、黒のノースリーブシャツ、そして哲郎が驚いたのは
 、先程のサイトで見た恵子のミストレス像のドミナメイク程では無いがブラック
 シャドーのアイメイクで目尻を吊り上げ、パールチェリーブラウンの濃いルー
 ジュで妖しく輝く唇が異様な色気を放っていたのだ。


 (あぁ・・・凄くお美しいです恵子様・・)


 「ダンスメイクなの・・恥ずかしいわ・・」

 「いや・・凄く色っぽいよ・・」


 「本当?哲郎さんに言われると嬉しいわ♪」

 「ね、ねえ恵子、今夜・・いい?疲れてるのなら・・」


 「うん・・いいわ。今夜は・・どうする?」

 「この前と同じで、あの・・き、きつめに責める感じで・・」


 「・・・わかったわ。やってみるね」



 寝室に入ってから哲郎は、我慢出来ず硬く反らせたペニスを情けない表情を
 恵子に披露するのだった。
 
 
 「今日ね、ダンスで沢山・・汗かいて臭うけど、大丈夫?」

 「う、うん、はいぃ!」


 「そう。でも・・舐めるのは出来ないわよね?」

 「い、いえ!舐めれます!」


 「ふふ、変な人。急に畏まった言い方して・・そのほうが興奮するの?」

 「はい・・あの、も、もっと罵って・・」


 「・・・ホント、ド変態ね。あなた。」

 「あぁぁ・・」


 「嗅がせて下さいでしょう?ちゃんとおねだりしてごらん?」

 「は、はい!わ、腋の匂いを嗅がせて下さい!」


 「いいわ。ほら、しっかり嗅いでもっと勃起させな!」



 黒い蛇柄のランジェリー姿の恵子・・それだけで哲郎は興奮で気が狂いそうだ
 った。
 全て沙羅が勧めコーディネイトしたものなのだ・・そしてそれを受け入れ実践す
 る愛しの妻・・・。

 だが哲郎はこの先、沙羅から苦渋な屈辱を与えられ、徐々に最下層のマゾ男に
 成り下がっていくうちに、最も惨めなステージが用意されてるとは思いもしな
 かったのだった。
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