奸 計

作者 namelessさん
 
西岡孝治は、下宿でラジオから流れる英語を熱心に聞き取り、テキストに色々と書き込みをしていた。大学に入学した彼は、同級生の若月真智子に一目惚れしてしまった。色白で、小顔で、目が大きく、鼻梁がすっと通っている美人で、グラマーで上背もある真智子は、たちまち学内のアイドル的存在になった。背が低く、小太りで、ハンサムとは言い難い孝治にとって、真智子は満足に話も出来ない、正に高嶺の花だった。
 真智子が英会話サークルに入ったと聞いた孝治は、彼女の後を追うように、直ぐ同じ英会話サークルに入った。それは、真智子と合法的に堂々と会話をするためだった。勉強があまり好きではない孝治が、必死に英語の勉強をしていたのは、真智子の気を少しでも引きたいからだった。
 孝治の英語の実力は見る見る上がっていったが、真智子が彼を一人の男と意識する事は、遂に無かった。孝治はため息をついて、ミスキャンパスにも選ばれた真智子を遠くから見つめるだけだった。
 四年間の大学生活が無駄に過ぎて、卒業間近になり、初めて孝治は勇気を振り絞って、真智子に告白した。しかし、返って来た答えは、
「…ごめんね。私、西岡君の事は、友達としか思えないの」
と、拒絶の定型に沿ったものだった。孝治は大学の華やかな卒業式を、一人だけ虚無的な思いで出席する羽目となった。

 大学を卒業した後の孝治は、結構波瀾万丈な人生を送る事となった。大手証券会社に就職出来たのだが、数年後には全国ニュースになる程の倒産劇に巻き込まれてしまい、無職となった。ツテを辿って、何とか中小の証券会社に再就職したが、きついノルマがなかなか達成出来なかったのと、リーマンショックの煽りを受けて、あっさりとリストラされてしまった。どん底の不況で再就職先が見つからなかった孝治は、仕方なくデイトレーダーになり、個人で株を扱った。大きな利益を上げた事もあったが、同じくらい大きな損失を被る事もあり、生活はカツカツで苦しかった。徒に人生を過ごした孝治は、既に50歳になっていた。

 そんな孝治に、転機が訪れた。英語の出来る彼が、外国の金融関連のネットサーフィンをしていた時、“ブロックチェーン”つまり“仮想通貨”に関する記事が目に留まったのだ。証券の世界を渡り歩いて来た孝治のカンが響き、直ちに手持ちの資金の殆どを、仮想通貨に注ぎ込んだ。初期段階で仮想通貨にかなりの大金を投資した孝治は、莫大な利益を手にし、彼の資産は十数億円にもなった。
 急に金持ちになった孝治は、自分の不遇だった人生を取り戻すかのように、夜の街を遊び歩いた。女にモテた事がなく、今でも独身の孝治は、ソープやヘルス等の風俗より、自分をチヤホヤしてくれるキャバクラを好んだ。札びらを切る孝治に、各店のキャバクラ嬢達は競ってサービスした。

 そんなキャバクラ店の梯子をしていた孝治に、あるキャバクラ嬢が目に留まった。色白で、小顔で、目が大きく、鼻梁がすっと通った美人で、グラマーなナイスバディ…彼女は、孝治が学生時代に恋い焦がれていた真智子にそっくりだった。孝治は一目でそのキャバクラ嬢を気に入り、毎晩のように店に通って、彼女を指名した。彼女は本名をそのまま源氏名に使い、“優美”と名乗っていた。
 若い優美にとって、下心丸出しのいやらしい目つきで体を触ろうとする、脂ぎった中年男の相手は苦痛だったろうが、接客を生業としている限りは、金持ちの客を無下には出来なかった。
 それでも、毎晩のように通って自分を指名してくれ、高価なシャンパンのボトルを躊躇わずに何本も開けてくれ、ノルマの同伴出勤も喜んで承諾してくれる孝治に、24歳の優美は段々と自分の身の上を話すようになった。
 優美の実家は、アパレル関係の会社を経営していた。一人娘の彼女が中学生の時までは景気が良く、お嬢様として蝶よ花よと育てられたのだが、高校生の頃になると、世間の衣料の消費動向が変わってしまい、大手衣料チェーン店の台頭もあり、会社が徐々に傾き始めた。生活が苦しくなり、大学進学は奨学金を利用しなければならなくなっていた。大学を卒業すると、昼は実家の会社で事務員として働き、夜は生活費の足しと奨学金の返済のために、キャバクラで働いているという事だった。
「しかし…娘が水商売で働くのを、両親は何も言わないのかい?」
 孝治の質問に、優美は寂しげに笑って答えた。
「父は、会社の苦しい経営と資金繰りに疲れ果て、二年前に心不全で亡くなったの…残された母が仕方なく会社経営を引き継いだけど、会社を続ければ続ける程赤字が増えて、もう会社を畳みたいと毎日愚痴をこぼしてるわ。だから、私がキャバクラで働くのを、とやかく言う余裕すら無いのよ」
 孝治は、続けて優美に訊ねた。
「そんなに経営が苦しいのなら、どうして会社を畳まないんだい?」
 優美は苦笑いして、首を横に振り、その質問に答えた。
「私も同じ事を母に言ったの…でも今、会社を畳むと、銀行からの融資、色々な債権者への返済、あちこちの取引先からの掛け金、従業員達の給料と退職金等が一度に大きな負債となって、のし掛かってくるんだって…だから、会社を畳むに畳めず、赤字が増えるのが分かっていても、ずるずると泥沼の経営を続けているのよ…いずれ破綻して、倒産するのが分かっていてもね。世間じゃ、同じ様な経営状態の会社が、結構多いらしいわ」
 孝治は水割りを一口飲んで、ため息をついた。
「そうか…今はどこも不況で、大変なんだなあ…ところで、優美さんのお母さんは、会社を引き継ぐ前は、何をしてたの?」
「母はね…」
 優美は自分の母親について、色々と話し出した。彼女の話をふんふんと聞いていた孝治は、途中で驚愕のあまり、手にしていたグラスを落としそうになった。優美の母親は、自分が昔憧れていた真智子本人だったのだ。道理で、優美が真智子そっくりな訳だ。ここで孝治の心に、ある奸計が浮かんだ。
「これは奇遇だなあ…優美さんのお母さんと僕とは、大学で同級だったんだよ。同級生が困っているのは、見過ごせないな。僕ならお母さんの力になれるから、連絡するように伝えてくれ」
 孝治は、ポカンとしている優美に名刺を渡すと、その日は早めに店を引き上げた。

 二日後、孝治は真智子が経営している会社の社長室にいた。
「本当に久しぶりね、西岡さん。大学を卒業して以来だから、二十八年振りになるわね…それで優美から話を聞いたけど、力になれるって、どういう意味かしら?」
 ソファに座って茶を啜っていた孝治は、対面に座っているスーツ姿の真智子を、まざまざと見つめた。自分と同じ50歳の筈だが、昔の美貌は衰えておらず、若干ふっくらとした顔と体つきが、熟女の色気を強調していた。
「ああ、いや、何その、優美さんから、若月さん…いや、今は長澤さんか…会社を畳みたくて悩んでいると聞いてね。僕なら、手助け出来ると思ったんだよ」
 真智子の大きな目でじっと見つめられた孝治は、些かどぎまぎしながら、慌てて答えた。事務員の制服姿で孝治にお茶を出した優美も同席し、真智子に話し掛けた。
「お母さん、西岡さんはね、同級生が困っているのを、見過ごせないと言ってくれたのよ…話を聞いて頂戴」
 真智子は軽いため息をついて、孝治に再度訊ねた。
「分かったわ…それで西岡さん、どう手助けしてくれるのかしら?」
 落ち着きを取り戻した孝治は、キャバクラ店で優美から聞いた話を繰り返した。
「…だから長澤さんは、会社を畳んで楽になりたいんだろう?僕なら、会社を畳んで清算する資金を出して上げられるよ」
 真智子は鼻で笑って、首を横に振った。
「西岡さん、あなた、何言ってるの?私、昨日も計算してみたけど、会社を清算するには、ざっと二億八千万円は掛かるのよ!そんな大金、西岡さんに用意出来るの?」
 二億八千万円…予想より遥かに大きな金額だったが、今の孝治なら出せない額ではなかった。
「ああ、用意出来るよ…投資で少し成功してね、今の資産は十数億円位ある。会社を清算した後は、長澤さん…いや、真智子さんと優美さんの生活も、僕が面倒見ようじゃないか」
 真智子は驚いた表情を見せたが、直ぐ真顔になって質問した。
「会社の清算費用を出してもらえるなら、これ程ありがたい話は無いわね…それで、その見返りに、私は何をすればいいのかしら?」
 ここで孝治は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「何、簡単な事だよ…僕と結婚してもらいたい」
「私と西岡さんが、結婚するの!?」
 真智子は驚いた声を出したが、孝治は彼女を更に驚かす発言をした。
「真智子さんとじゃないよ…優美さんと結婚させてもらいたいのさ」
「ええっ!」
 真智子と優美は、同時に驚愕の声を上げた。孝治は二人の驚きに構わず、話を続けた。
「真智子さんも嫌いでは無いが、もう50歳だ。僕と結婚したとしても、とても子供は産めないだろう。僕だって自分の子供が欲しいから、24歳の若い優美さんと結婚させてもらいたいんだよ…このままでは、会社は莫大な負債を抱えて倒産し、真智子さんと優美さんが路頭に迷うのは、目に見えている。他に選択肢は、無い筈だが?」
 真智子と優美は、引きつった顔でしばらく黙っていたが、優美が口火を切った。
「分かりました。私、西岡さんと結婚します…でも、条件があるの。入籍は、会社の清算が完了してからにして下さい」
 孝治は、満面の笑みで答えた。
「それは構わないよ…それじゃあ、早速会社を畳む資金を用意しよう」
 満足そうな笑顔でソファから立ち上がった孝治とは対照的に、真智子と優美は青ざめた顔色をしていた。

 孝治は真智子に個人的な貸し付けとして、正式な借用書を作成し、二億八千万円の資金を融通した。真智子は孝治が用意した資金を手に、銀行からの融資と各債権者達への返済、各取引先への通達と掛け金の精算、会社名義の動産・不動産と在庫品の処分、従業員達との話し合いと給料・退職金の支払い等、手間の掛かる事を、不眠不休で奔走して処理した。彼女が会社を清算して、法務局に廃業届を出すまで、丸々二ヶ月は掛かった。

 全てが落ち着いたところで、孝治は真智子の家で、二人とテーブルを挟んで向かい合った。孝治はテーブルに婚姻届を拡げて、優美に差し出した。彼は真智子の家を見回しながら、優美に話し掛けた。
「優美さん、約束だ。婚姻届に署名してくれ…この家の抵当も僕が外したし、結婚したら僕はここに住まわせてもらうよ。真智子さんと優美さんも、住み慣れたこの家から出たくないだろうしね」
 孝治は、もし優美が約束を反故にするなら、債権者として真智子を徹底的に追い込むつもりだった。勝ち誇った声で話す孝治に、優美は些か引きつった口調で答えた。
「分かりました。署名して、西岡さんと結婚します…それで、一つだけお願いがあるの…」
「うん?何だい?遠慮せずに言ってごらん」
 上機嫌で答えた孝治に、優美は媚びるように頼み事をした。
「お母さんは、一度豪華客船に乗って、世界を回る船旅をしてみたいと、前から言っていたの…だから私達の新婚旅行は、お母さんと一緒に豪華客船の世界ツアーにして、結婚式は船で挙げたいのよ。かなり費用が掛かるけど、お母さんの夢を叶えてあげたいの…駄目かしら?」
 孝治は鷹揚に頷いて、承諾した。
「何だ、そんな事か…全く構わないよ。真智子さんと一緒に船旅が出来て、豪華客船で挙式するなんて、最高だ。費用は心配しなくていいから、是非そうしよう」
「わあっ、ありがとう、西岡さん…本当はもう、予約を入れてるの。凄く嬉しい!」
 喜んだ様子で婚姻届に署名する優美を見て、彼女と法律的に正式な夫婦になれた孝治は、満足そうな笑みを浮かべた。ここで、真智子がようやく口を開いた。
「西岡さん、私の夢を叶えてくれて、ありがとう…それで、けじめとして、優美との初夜は、船上の挙式の後にしてね。私にも、母親としての立場があるから…」
「ああ、勿論だとも。僕も古い世代だから、けじめはつけるよ」
実は孝治は、真智子の家に三人で住んでから、まずは若い優美の体を楽しみ、その後で憧れていた真智子の、熟女となった体を堪能するといった、邪悪な奸計を立てていた。
 真智子が新婚旅行の船旅に一緒に来てくれるのなら、文字通り渡りに船だ。母娘どんぶりの味は、どんなものだろう…テーブルの下で孝治の股間のものは、スラックスを突き破る程に猛っていた。

 一週間後、港で豪華客船を見上げた孝治は、思わず口笛を吹いた。大きなビルを横に倒して船にしたような豪華客船の巨大さは、孝治を圧倒した。《FS》と船体に書かれている客船に乗り込んだ孝治・真智子・優美の三人は、スイートルームに案内された。テーブルに着いた孝治ら三人が、出航してた船が港から離れる様子を窓から眺めていると、CAの様な制服を着た長身でショートカットの綺麗な女性が、シャンパンのボトルを手にしてスイートルームに入って来た。
「西岡様、いらっしゃいませ。私はチーフパーサーの新谷佳奈と申します。本日は《Flyway Ship》に御乗船頂き、《ファンタジークルーズ》、通称《FC》を御利用頂き、真にありがとうございます。これから一ヶ月の船旅を、存分にお楽しみ下さい。西岡様御一行は、新婚旅行とお伺いしました。挙式のスペシャルプランも承っております。これは、ウエルカムドリンクのシャンパンです。どうぞ、御賞味下さいませ」
 チーフパーサーの佳奈は、三人のグラスにシャンパンを注いだ。
「ありがとう…それでは、今からの船旅と僕達の結婚に乾杯だ!」
 孝治ら三人はグラスを上げると、一気に飲み干した。真智子と優美の体を楽しみにしている孝治にとっては人生至福の時で、シャンパンの味は最高だった。彼は内心、今までの不遇だった人生を振り返り、改めて金の力を思い知った。
(この世は、金だ、金が全てだ!金さえあれば、何でも手に入る。ハナも引っかけてもらえなかった真智子も、娘の優美も手に入る。金があれば、今まで女に相手にされず、鬱屈していた人生をやり直せるんだ!)
「それでは、本日の御予定を案内させて頂きます。まず…」
 孝治が佳奈の説明を聞いていると、不意に目の前の空間が歪んで見えた。
(うん?何だ、急に?)
 何か言おうとしても、舌がもつれて、声が出せなかった。
(ど、どうしたんだ!?)
 孝治の意識が不意に途切れ、彼は椅子ごと床に倒れた。

 気がつくと、孝治は別の船室で、全裸の姿で檻の中に閉じ込められていた。ズキズキと痛む頭に手をやり、体を起こした孝治は、シャンパンに何か薬物を混入されていたのに、ようやく気がついた。
(ここはどこだ?真智子と優美はどうなったんだ?)
 その時、船室のドアが開き、コツコツと靴音を響かせて、チーフパーサーの佳奈が檻に近づいて来た。先程のCAみたいな制服姿とは違い、黒色革ジャケットに白色乗馬用ズボン、黒色乗馬用ブーツを履き、黒色革製キャップ帽を被っていた。孝治は檻の鉄柵を掴み、大声を上げた。
「何なんだ、これは!僕をこんな所に閉じ込めて、どういうつもりだ?真智子と優美は、どうしたんだ!?」
 佳奈は鼻で笑って、孝治をあしらった。
「そんなに大声を出さなくても、聞こえるわよ…それより、そんな見苦しいものをぶらぶらさせて、恥ずかしくないの?」
 佳奈に股間を指差された孝治は、自分が全裸なのに改めて気づき、恥ずかしさで顔を赤くして、慌てて両手で股間のものを隠した。
「お二人の事なら、心配しなくていいわよ。お前のシャンパングラスにだけ、薬を塗っていたんだから…真智子様、優美様、どうぞお入り下さい」
 佳奈は、孝治に対するぞんざいな物言いとは打って変わって、丁寧な口調でドア方向に声を掛けた。すると、華やかなドレス姿の真智子と優美が船室に入って来た。
「真智子さん、優美さん…一体、どういう事なんだ!?」
 華やかな姿の二人とは対照的に、檻の中で、全裸で股間を両手で覆っている惨めな姿の孝治は、訳が分からず、二人に問い掛けた。優美が笑みを浮かべて、説明し始めた。
「この豪華客船はね、表向きは《Flyway Ship》、通称《FS》だけど、本当は《Femdom Ship》という名前なの。この船の乗客は色々な国籍だけど、全てS女性とM男のカップルよ。中には、S女性一人で何人ものM男達を引き連れているグループもあるけどね…この船では、女性の許しがあれば、男は普通の紳士として振る舞えるけど、女性の気分次第で直ぐ奴隷に落とされて、お仕置きされるの。先程、《ファンタジークルーズ》、通称《FC》と説明されたけど、本当の意味は《フェンダムクルーズ》なのよ」
 孝治は優美の説明を聞いて、頭が混乱し、更に訳が分からなくなっていた。
「優美さんは、一体何を言っているんだ…?」
 優美は、説明を続けた。

   「この《フェンダムクルーズ》のスペシャルオプションはね、反抗的な男を徹底的に調教してもらって、女性に絶対服従する男奴隷に仕込んでくれるサービスなの…西岡さん、いえ、お前がどんな男奴隷に変貌するのか、楽しみでわくわくするわ」
 優美にお前呼ばわりされ、奴隷にされると聞かされた孝治は、怒り狂った。
「ふ、ふざけるな!こんな事が、許されると思っているのか!?早く、ここから出せ!大体、僕が奴隷になんかなる訳無いだろう!」
 すると、真智子が口を開いた。
「西岡さん…いえ、お前は本当に分かってないようね。この《Femdom Ship》では、世間の法律は通用しないわ。女性は男を支配し、男は女性に服従する掟があるだけなの。いくらお前が嫌がって反抗しても、ここの女性パーサー達に調教されて、身も心も奴隷にされるのよ」
 孝治は鉄柵を掴み、目を剥いて、真智子を罵った。
「冗談もいい加減にしろ!これが、困っている君達母娘に、二億八千万円もの大金を用立てて、助けてやった僕に対する仕打ちか!?この、恩知らずめ!」

 ここで真智子は柳眉を逆立て、厳しい声を放った。
「恩知らずですって!?お前がお金を出したのは、私の可愛い優美を手に入れて、弄ぶためでしょう!それと、学生時代の英会話サークルで、お前がいつも私を見つめていたのに、気づかないとでも思っていたの?気持ち悪くて、仕方が無かったわ。大学卒業間近に私に袖にされても、まだ諦めがつかず、私によく似た優美を自分のものにしようとしてたんでしょう…それに執念深いお前の事だから、優美を手に入れてから、私の体も弄ぶつもりだったんじゃないの!?」
 真智子に図星を指された孝治は動揺し、黙り込んだ。急に真智子の口調が、穏やかなものに変わった。
「ふんっ、まあ、お前のお金で会社が清算出来て、私達母娘が助かったのは事実ね…お前と優美は婚姻届を出して、法律的にも正式な夫婦になった事だし、船上での挙式は予定通り行うつもりよ。だからそれまでに、私達に絶対服従する男奴隷になって頂戴ね」
 自分を奴隷にして、優美と正式な夫婦として挙式を行う…孝治は、真智子の言っている意味が、全く理解出来なかった。真智子は、話を続けた。
「この《Femdom Ship》の乗客になるのと、お前の調教を依頼するのに、高級外車が二台は買える位の費用が掛かっているのよ…本当にこの世は、お金が全てね。お金さえあれば、苦しい生活から逃れられるし、虫酸の走る気持ち悪い嫌な男を奴隷に出来るわ。まあ、全てお前のお金なんだけどね。オホホホ…」
 孝治の耳に真智子の嘲笑が響き、彼は下唇を噛んで、全身を震わせた。
「真智子様、優美様、そろそろダンスパーティーのお時間ですわ。会場にお急ぎ下さい。後の事は、私どもにお任せ下さいませ」
チーフパーサーの佳奈に促された真智子と優美は、ドレスの裾を翻し、さっさと船室を出て行った。
「待て、待てよ!戻って来い!」
 孝治は鉄柵の間から右腕を伸ばして、大声を上げたが、その腕を佳奈に乗馬鞭で思い切り打たれてしまった。
「ギャアッ」
 孝治は、右腕を切断されたような激痛に悲鳴を上げ、慌てて腕を引っ込めて、檻の中でうずくまった。真智子と優美の入れ違いに、四人の女性が船室に入って来た。彼女達の服装は佳奈と同じに、黒色革ジャケットに白色乗馬用ズボン、黒色乗馬用ブーツに黒色革製キャップ帽であったが、人種は白人・黒人・東洋系・東南アジア系と、ばらばらだった。佳奈は檻の扉を開け、孝治に話し掛けた。
「お前を調教してくれる、女性パーサー達を紹介するわ…白系ロシア人のナターシャ、アフリカ系アメリカ人のナオミ、中国人の雷華、フィリピン人のマリアよ。這いつくばって、彼女達のブーツに挨拶のキスをしなさい」
 檻の低い位置にある開口部から、全裸の惨めな姿で這い出た孝治は、憤怒の形相で立ち上がり、佳奈に掴み掛かった。
「ふざけるなぁ!」
 その途端、孝治のみぞおちに、佳奈の速く重いボディブローが叩き込まれた。
「ゲボォッ」
 孝治は空嘔吐し、みぞおちを中心に全身へ広がる痛みで、体をくの字にして苦しんだ。佳奈は、前屈みになった孝治の顎先に、切れ味のいいフックを入れた。
「グワッ」
 脳震盪を起こした孝治は、その場に崩れ落ちた。頭がグラグラ揺れて、ガンガン痛み、とても動けそうになかった。しかし、女性達には、一片の情けも無かった。
「何を寝ころんでいるのよ!さっさと起きなさい!」
「男のくせに、女にノックアウトされて、情けなくないのかい?早く立ちなさいよ!」
「立たないで、横着に寝てたら、蹴り殺すよ!」
「早く立ち上がって、もう一度勝負しなさい!」
 佳奈以外の女性パーサー達は、倒れた孝治を英語で口々に罵りながら、乗馬用ブーツでドカドカと蹴りつけ、彼に早く立ち上がるよう責め立てた。
「ヒィッ、ヒィッ、止めてくれ…」
 英語が理解出来る孝治は、女性達から本気で蹴り殺されそうな恐怖に怯え、ふらつきながらも何とか立ち上がった。
「ちゃんと立てるじゃないの…それじゃ、次はナターシャにお願いするわ」
 佳奈は笑顔で一歩下がり、英語で話した。どうやら《Femdom Ship》では、共通言語を英語にしているらしい。孝治の前に立ちはだかった白系ロシア人女性は、彼に嘲る口調の英語で挑発した。
「お前、女に負けて、恥ずかしくないの?少しは男らしいところを、見せて御覧よ。股でぶらぶらさせてる見苦しいものは、ただのお飾りなのかい?」
「畜生ぉーっ!」
 頭に血が上った孝治は、大振りのパンチをロシア人女性に放った。しかし、彼女は易々と孝治の手首を掴み、そのまま床に引き倒すと、素早く脚を絡ませて、関節技を決めた。
「ギャアァッ」
 肩と肘と手首の関節が同時に破壊されそうな激痛に、孝治は絶叫を上げた。ロシア人女性は、少し孝治の苦悶を楽しんでから、彼の腕を一旦放し、次は素早く彼の脚を取って、アキレス腱固めを決めた。
「ウギャアッ、止めて、止めてくれぇーっ」
 足首を引きちぎられそうな激痛に、孝治は泣き叫んだ。
「ナターシャ、それ位にして!まだ他の人が待っているから、壊さないで!」
 佳奈が急いで注意すると、ロシア人女性は、もう少し楽しみたかったという風情で、渋々技を解いた。
「ナターシャのコマンドサンボは、相変わらず凄みがあるわね…ちょっと、お前はまた寝転がっているの!?さっさと立ちなさい!」
 佳奈は、床にのびている孝治を、乗馬用ブーツで蹴りつけた。他の女性達も佳奈に倣い、孝治をドカドカと蹴りつけた。
「蹴り殺されたいのかい、お前は!早く起きな!」
「立てと言ってるでしょう!まだ、懲りないのかい!?」
「男のくせして、女に負けっぱなしじゃ、恥ずかしいでしょう。とっとと、お立ち!」
「次の人が待ってるのよ。男奴隷のくせに、女性を待たすんじゃないわ!」
 孝治は泣き顔で、動けない体を無理に動かし、よろよろと立ち上がった。
「次は、ナオミね…壊さないように、少し手加減してあげて」
 佳奈に言われて、次は黒人女性が孝治の前に立った。孝治は怯えながらも、ぎこちなくボクシングの構えを取った。すると、黒人女性は彼の前で、急に逆立ちをした。
(えっ、何だ?)
 孝治が一瞬疑問に思ったその瞬間、鋭く威力のある蹴りが、斜め下から彼の顔面を襲った。
「グバァッ」
 孝治の口から潰れたような呻き声が出て、彼は床にふっ飛ばされた。孝治が床に倒れた時、黒人女性は、逆立ちから普通の姿勢に戻っていた。佳奈は、横倒しになっている孝治を蹴りつけ、早く立ち上がるように叱りつけた。また、女性達から集団で蹴りつけられる恐怖で、孝治は慌てて、もがくように立ち上がった。
 孝治が立ち上がった途端、黒人女性は又も逆立ちし、その瞬間、思い掛けない方向から孝治の顔面に蹴りが炸裂し、彼は再び床に倒された。
「ナオミのカポエラも大したもんだわ…ナオミ、もう少し見学したいけど、次の雷華に譲ってあげて」
 佳奈が声を掛けると、黒人女性も些か物足りなさそうに、後ろに下がった。脳震盪を起こして床にのびている孝治が、女性達から罵声を浴びて、ドカドカと蹴りつけられ、ふらつきながらも何とか立ち上がると、彼の前に中国人女性が立ちはだかった。
「それじゃ雷華、お得意の中国拳法を披露してあげて」
 立っているのがやっとの孝治に、中国人女性の鋭く威力のある突き蹴りが、雨あられに浴びせられた。

 最後にフィリピン人女性から、二本の短い棒を使う“カリ”という武術で全身を滅多打ちにされた孝治は、床に倒れたまま、女性達から蹴りつけられても、最早動けなかった。彼は白目を剥き、口から泡を吹いて、失神していた。
 佳奈は、四人の女性パーサー達に、苦言を呈した。
「あなた達、ちょっとやり過ぎね…お客様へ引き渡す前に、男奴隷を壊したりしたら、クレームになるわ。《フェンダムクルーズ》担当の、私が責任を問われるのよ…」
 女性達は、口々に反論した。
「でもチーフが、私達の格闘技のテストも兼ねているって言うから、全力でやったんですよ」
「そうですよ。下賤な男に畏怖の念を与えられないと、《Femdom Ship》のパーサーは勤まらないって…」
「中途半端に痛めつけるのは、逆に反抗心を植え付けるだけと教えたのは、チーフじゃないですか」
「間違って殺しても責任は問わないと、最初に言ったのも、チーフですよ」
 女性パーサー達から口々に不満を言われた佳奈は、顔の前で両手を振って、前言を撤回した。
「分かった、分かったわよ。私はただ、《Femdom Ship》の信用を気にしただけよ…格闘技のテストは、全員がAAA、文句無しに合格とします」
 女性パーサー達から、嬌声が上がった。
「ところでチーフ、この男奴隷はどうしますか?」
 ロシア人女性が、失神している孝治をブーツで小突きながら、佳奈に質問した。佳奈は肩をすくめて、答えた。
「そうね…檻に放り込むのも面倒だから、このまま床に寝かせておきましょう。二、三時間もすれば、目が覚めるでしょうし…」
 佳奈と四人の女性パーサー達は、船室を出て、鉄の扉を閉めた。ガチャンと鍵を掛ける音が、船室に響いた。

 二時間後、孝治は失神から覚めたが、女性達に散々痛めつけられた全身打撲の体は、まともに動かせなかった。孝治は首だけ動かし、自分が閉じ込められている船室の様子を窺った。部屋の広さは十二畳位で、隅には自分が入れられていた檻があり、反対の隅には洋式便器が剥き出しで設置されていた。壁には、乗馬鞭・九尾鞭・一本鞭等の色々な種類の鞭や、手足を拘束する革製品等の、様々な責め道具が吊されていた。天井からは、フックの付いた鎖も垂れ下がっており、一言で表現すれば、拷問部屋だった。
(何とかして、逃げなければ…)
 手足を少し動かすだけで、軋むような強い痛みを感じたが、逃げ出したい一心で、何とか立ち上がった。船室の扉のレバーに手を掛けたが、鍵が掛かっているので、開く筈も無く、孝治は糸が切れたように、その場に座り込んだ。考えてみれば、仮に船室の扉が開いたとしても、大海原を航海中の客船では、逃げようが無い。孝治はがっくりと気落ちして、今までの事を振り返った。
 自分が思いついた奸計と金の力で、真智子と優美を手に入れて、彼女達の体を楽しめるとほくそ笑んでいたのだが、逆に真智子達の奸計に嵌められて、よりによって自分の金で、自分が酷い目に遭わされてしまった。調教して奴隷にすると言われたが、これからどうなるんだろう…落ち込んだ孝治は、凄く喉が渇いている事に気がついた。女性達から容赦無く、嵐の様な暴力を受け、全身打撲の体が発熱しているのかもしれなかった。
 孝治は船室を見渡し、水道の蛇口を見つけたが、それは取っ手が取り外されていた。他に水道らしきものは、見当たらない。孝治が喉の渇きに焦っていると、目の前の扉から不意にガチャンと鍵が解かれる音が響いた。扉が開き、佳奈と女性パーサー達の姿を見た孝治は、恐怖のあまり、悲鳴を漏らして、座ったまま後ずさりをした。船室に、佳奈と女性パーサー達、それと鞄を持ってハイヒールを履いた、白衣姿の女性が入って来た。佳奈は孝治に近づき、床をブーツでドンッと踏み鳴らし、口を開いた。
「さっきは、這いつくばってブーツに奴隷のキスをするのを、拒否したわね…もう一度、断ってみるかい?」
「ヒッ、ヒイッ、します、挨拶します」
 怯えた孝治は、慌てて佳奈の足元に這いつくばり、彼女のブーツの先に何度もキスを繰り返した。もう、痛い目に遭わされるのは、真っ平御免だった。しかし、男の自分が女のブーツにキスさせられる耐え難い屈辱が、孝治の顔を口惜しそうに歪ませた。
「ウフフ、この辛そうで口惜しそうな顔が、いいのよねぇ…M男どもにブーツのキスを命じても、嬉々として応じるだけで、張り合いが無いのよ。やっぱり、未調教の男を奴隷に仕込んでいく過程の、屈辱と恥辱にまみれた顔を見るのが、最高に楽しいわ」
 佳奈の楽しそうな声が孝治の耳に響き、目の奥が熱くなって、涙がこみ上げてきた。
「チーフ、お楽しみはそれ位にして、先に診察を済ませましょう」
 白衣姿の女性に声を掛けられた佳奈は、ブーツの先で孝治の顔を小突いて、命令した。
「男奴隷、いつまでもブーツにキスしていないで、正座おし!」
 孝治は打撲で軋む痛みを堪えて、その場に正座した。佳奈は白衣姿の女性を、孝治に紹介した。
「こちらは《Femdom Ship》の専属ドクター、北川文子先生よ。お前が勝手に失神しちゃったから、念のために診察に来て頂いたの。北川先生のヒールにキスして、ご挨拶しなさい」
「…先生、宜しくお願い致します」
 孝治は、はらわたの煮えくり返る思いだったが、言われた通りに土下座して、文子女医のヒールにキスして挨拶した。
文子女医は、彫りの深い美しい顔立ちをしていたが、険のある雰囲気を醸し出していた。彼女は鞄から聴診器を取り出すと、孝治の胸に押し当てて、心音を確認した。そして、脈を取ったり、口を開けさせて、舌と喉を確認したり、瞼をひっくり返して充血の具合を見たりと、簡単な検診をした。
文子女医は、佳奈に顔を向けると、検診結果を述べた。
「全身の打撲傷がちょっと何だけど、今後の調教には十分耐えられるから、遠慮は要らないわよ」
ドクターストップを内心期待していた孝治は、がっくりと肩を落とした。文子女医が立ち上がろうとしたので、孝治は慌てて声を掛けた。
「あの、先生…もの凄く喉が渇いているんです。水を飲ませて下さい…水分補給をお願いします」
 その途端、文子女医から、目が眩む程の強烈な往復ビンタを喰らい、孝治の口から情けない悲鳴が漏れた。
「ヒイィッ」
 

 
 
「お前は、何を言ってるの!昔も今も船では、水は貴重品なのよ。タンクの容量には、限りがあるからね。男奴隷の分際で、人間様と同じ貴重な水が飲める筈ないでしょう。つけ上がるのも、いい加減におし!」
 文子女医から厳しく叱責された孝治は、惨めな泣き声で訴えた。
「でも先生…喉が渇いて、本当に死にそうなんです。お願いです。ほんの一口だけでも、水を飲ませて下さい。お願いします…」
 孝治の哀願を聞いた文子女医は、悪魔的な笑みを浮かべた。
「まあ、そこまでお願いされたんじゃ、断れないわね…水は許さないけど、私のおしっこなら、特別に飲ませてあげるわ。丁度催していたし、塩分補給にもなるからね」
 孝治は顔色を変えて、断った。
「そ、そんな…おしっこなんて、とても飲めません」
 文子女医は立ち上がると、佳奈に話し掛けた。
「チーフ、聞いた?この男奴隷は、私のおしっこなんて、汚らわしくて、とても飲めないんだって」
 いつの間にか一本鞭を手にしていた佳奈が、孝治を怒鳴り付けた。
「男奴隷のくせに、北川先生のご厚意を足蹴にするなんて、許せない!鞭で打ち殺してやるわ!」
 佳奈は一本鞭を振り上げると、正座している孝治の背中に、容赦無く叩き込んだ。
「ギャアァーッ」
 凶悪な唸りを上げた一本鞭が孝治の体に絡みつき、刃物で肉を切り裂かれて、焼き鏝を当てられたような激痛に、孝治は絶叫を上げて悶え苦しんだ。四人の女性パーサー達も一本鞭を振るい、孝治を打ち据えた。生肉を切り刻まれような激痛と、内臓まで響く衝撃に、孝治は泣き叫んだ。
「ウギャアァッ、止めて、痛い、痛いです。許して、許して下さい」
 孝治は両手で頭を抱えて、床に転がった。佳奈と四人の女性パーサー達は、それぞれ一回しか鞭打たなかったが、孝治には十分過ぎた。佳奈は、横たわっている彼の傍の床を、鞭打った。
「ヒイィッ」
 孝治は鞭音に対して、怯え切った悲鳴を上げた。
「北川先生のご厚意を、ありがたく受けるの?それとも、まだ拒絶するつもり?さっさと答えなさい!」
「の、飲みます、先生のおしっこを飲みます。だから、もう打たないで…お願いです」
 四人の女性パーサー達は、どっと笑った。
「あらあら、ちょっと鞭打たれただけで、ころっと意思を変えるの?男のくせに、情けないわね」
「男の誇りがあれば、おしっこを飲むより、鞭を我慢する筈よ。こいつに男の誇りなんて、微塵も無いんだわ」
「普通の男なら、女のおしっこなんて飲めないわよね。こいつは男どころか、人間ですらないわよ」
「人間ですらない男奴隷は、人間便器になるのがお似合いだわ」
 女性パーサー達の嘲笑と罵倒は、孝治の心をズタズタに引き裂き、目に口惜し涙が浮かんだ。しかし、一本鞭による激痛の恐怖には勝てなかった。文子女医は含み笑いしながら、ヒールで孝治の頭を小突いて、命令した。
「男奴隷、正座して顔を上に向け、口を大きく開きなさい!」
 孝治は、全身打撲に加え、鞭痕の引きつりで体が思うように動かなかったが、これ以上鞭打たれるのを恐れ、必死にギクシャクと無理に体を動かして、文子女医に命じられた通りのポーズを取った。
 文子女医が白衣の前をはだけると、孝治は目を見張った。彼女は白衣の下に、黒色ブラジャーと黒色パンティしか、身に着けていなかったのだ。文子女医は黒色パンティを床に脱ぎ捨てると、正座している孝治の顔を跨るように立ち、彼の髪を両手で掴んで引き寄せ、陰部を彼が開いた口に密着させた。
「私のおしっこを一滴でもこぼしたり、吐いたりしたら、生まれてきたのを後悔する事になるからね…いくわよ!」
 文子女医の陰唇から尿が噴出し、孝治は目を白黒させ、喉を上下させて、ゴクゴクと飲み出した。普通なら、アンモニア臭の強い尿は喉につかえて、とても飲めたものではない。しかし、飲まなかった時の懲罰に怯えた孝治は、喉がひどく渇いていたせいもあって、文子女医の尿を必死に飲み下した。
 刺激的な味がするアンモニア臭い尿が、喉を焼き、胃に溜まっていくのを感じた孝治は、自分が最低の人間便器に落とされたのを実感して、涙を流し、恥辱で顔を苦しそうに歪めた。
「こいつ、本当に女のおしっこを飲んでるわ。最低ね!」
「豚でも、おしっこなんて飲まないわよ。こいつは豚以下のうじ虫だわ!」
「こいつはもう、人間を止めて、便器に落ちぶれたのね」
「人間じゃないのなら、手加減せずにもっと虐めてやりましょうよ」
 女性パーサー達の蔑みが孝治の耳に響き、彼の心は更に傷付いて、苦しみ悶えた。文子女医は排尿を終えると、孝治の苦悶に歪む顔を見下し、満足そうな笑みを浮かべた。
「チーフの言う通り、未調教の男を嬲って、苦悩する顔を見るのは楽しいわ。M男を人間便器にしても、私のおしっこを喜んで飲むだけだから、面白味に欠けるのよね」
 何を勝手な事を…孝治は内心歯噛みして、口惜しがった。文子女医は不意に孝治の髪を引いて、彼の顔を自分の陰部から一旦引き離すと、目から火花が散るような往復ビンタを浴びせた。
「ヒイィッ」
「何をぼんやりして、馬鹿づらを晒しているの!おしっこを飲み終わったら、言われなくてもお前の舌で後始末おし!」
 孝治を怒鳴り付けた文子女医は、再び自分の陰部に彼の顔を引き寄せた。孝治は止む得ず舌を伸ばし、尿で濡れた陰部を舐め始めた。
「舌だけじゃなく、唇も使って、残っているおしっこを吸い取るのよ!」
 文子女医の指示に泣く泣く従った孝治は、尿の刺激的な味が舌と口中に改めて広がり、屈辱に体を震わせた。いい加減陰部を舐めさせたところで、文子女医は孝治の顔面に膝蹴りを喰らわせて、彼を後ろに倒した。
「グワァッ」
「いつまで、いやらしく舐めているのよ、このスケベ!さっさと水道の蛇口の所まで、這って行きなさい!」
 文子女医は孝治を理不尽に叱ると、ヒールで彼の体を蹴りつけて、命令した。
「ヒィッ、は、はい、ただいま…」
 怯えた孝治は命じられた通りに、蛇口の所まで這って行った。文子女医は、女性パーサー達に声を掛けた。
「みんな、この男奴隷のはらわたを、きれいに掃除してあげて」
「はい、わかりました!」
 女性パーサー達は揃って返事をすると、手分けして作業を進めた。ロシア人女性と黒人女性は蛇口に取っ手とホースを取り付け、中国人女性は這っている孝治をブーツで蹴りつけて、尻を蛇口の方に向けるよう命じ、フィリピン人女性は壁に吊している様々な器具から、空気ポンプ付きのゴム製アナル栓を取って来た。
 中国人女性が四つん這いになっている孝治の背中に、後ろ向きに跨って、両手で彼の尻たぶを拡げた。黒人女性は孝治に、
「そのまま動かないで、お尻の力を抜くんだよ…もし逆らったら、鞭で睾丸を叩き潰してやるからね!」
と脅し、ホースの先端を彼の肛門に、無理やり捻じ込んだ。
「グエェッ」
 異様な感覚を伴った肛門の痛みに、孝治はヒキガエルの鳴き声みたいな悲鳴を上げた。ロシア人女性が蛇口の取っ手を捻り、孝治の肛門に水を注ぎ込んだ。
「アヒィッ」
 直腸に注がれた水が、孝治の下腹を内側から圧迫していく。その特殊な感覚と苦しさが、孝治に短い悲鳴を漏らさせた。
「男奴隷、そのまま動くんじゃないよ!」
 背中に跨った中国人女性は、太腿で孝治の胴を締め付けて、釘を刺した。女性に跨られて尻たぶを拡げられ、肛門を露出させられた恥辱も堪らなかったが、下腹が見る見る膨らんでいく苦しさとは、比較にならなかった。苦しむ孝治は、腸が破裂するのではないかと、本気で怯えた。孝治の下腹がいい加減膨れたところで、ロシア人女性が水道を止めた。
「男奴隷、肛門を強く締めて、けっして漏らすんじゃないよ。もし、お漏らししたら、全てお前の口で掃除させてやるからね!」
 黒人女性は孝治に厳しく注意すると、彼の肛門に捻じ込んだホースを、さっと引き抜いた。入れ替わりにフィリピン女性が、先端が尖っているゴム製アナル栓を、素早く孝治の肛門に突っ込んだ。
「グモオゥッ」
 孝治の口から、何とも形容し難い呻き声が発せられた。フィリピン女性は、アナル栓の後ろから伸びているゴム管に繋がっているポンプを使って、空気を送り込んだ。直腸に挿入されているゴム製アナル栓の前部がどんどん膨らみ、孝治の直腸を完全に塞いで、栓をしてしまった。
 孝治の背中に跨っていた中国人女性が立ち上がり、彼を蹴り転がした。
「男奴隷、そのまま、大人しく待っていなさい!」
 中国人女性に命令されたが、孝治の下腹はグルグル鳴り出し、強い痛みを生じていた。脂汗がにじみ出た孝治は、
「あ、あの…お願いです。トイレに行かせて下さい」
と懇願した。しかし、佳奈に一本鞭で打たれて、罵られただけだった。
「ウギャアッ」
 体を切り裂かれた様な激痛に、孝治は床を転がって苦しんだ。
「お腹に水を入れたばかりで、何をとぼけているの!お前は、我慢という言葉を知らないのかい!」
 文子女医は、仰向けに倒れている孝治の腹を、ヒールで踏みつけた。
「お前のはらわたをきれいにするために、貴重な水を使っているんだからね…腸のぜん動をもっと楽しみなさい!」
「アヒイィッ」
 孝治は、腸が捻じ切られそうな激痛に、悲鳴を上げて悶え苦しんだ。文子女医は彼の腹からヒールを外すと、鞄から何やらスプレー缶を取り出した。
「うっかり、男奴隷の傷を消毒するのを忘れてたわ。これは凄く染みるけど、効果抜群な消毒薬よ」
 文子女医は、全身傷だらけの孝治の体に、消毒薬のスプレーを万遍なく振り掛けた。
「ウギャアァーッ」
 孝治は、消毒薬が鞭痕の傷にひどく染み、まるで全身火傷を負った様な激痛を感じて、絶叫を上げた。腸が捻じ切れる様な地獄の苦しみと、全身の皮膚を地獄の業火で焼かれる様な激痛を、同時に受けた孝治は、船室の床でもがき苦しんだ。
「北川先生がお前のために、わざわざ傷の消毒をして下さったのに、お礼も言えないのかい!」
 佳奈が孝治を叱って、ブーツで蹴りつけたが、彼は既に蹴られた痛みすら感じられなくなっていた。頃合いだと判断した文子女医は、女性パーサー達に声を掛けた。
「あなた達、そろそろ男奴隷に、排泄させてあげて」
 ロシア人女性が、孝治の頭を蹴って命じた。
「男奴隷、便器の所まで、這ってお行き!」
 孝治の体は限界をとっくに超えていたが、それでも排便出来る希望だけで、動かない体を無理に動かし、船室の隅に剥き出しで設置してある洋式便器の所に、ふらつきながら這って行った。孝治は這い上がるように、よろよろと洋式便器に座ろうとしたが、体が思い通りに動いてくれなかった。
「ぼやぼやしてないで、さっさと便器に座りなさいよ!」
 途中でまどろっこしくなった黒人女性と中国人女性が、孝治の両腕を取って引き上げ、彼を便座に座らせた。フィリピン女性が、孝治の肛門に挿入しているゴム製アナル栓の空気ポンプ弁を捻り、空気を抜いた。その途端、爆発的な音がして、孝治の肛門から勢いよくアナル栓と、大量の軟便が噴き出した。
「わあっ、汚い!男のくせに、よく女性の前でお漏らし出来るわね!」
「本当に恥も外聞も無いんだね…最低の豚!」
「女のおしっこを飲むような、豚にも劣る男奴隷に、恥や外聞がある訳ないじゃないの」
 孝治の耳に女性パーサー達の罵声が響いたが、最早彼には恥辱を感じる気力も体力も失われていた。彼はようやく、腸が捻じ切れる様な、地獄の苦しみから解放された虚脱感で気が遠くなり、そのまま前のめりに床に倒れてしまった。
「…ったく、お気楽に寝ころんで!誰が汚いアナル栓を片付けると思ってるのよ!」
 フィリピン女性はブツクサ文句を言いながら、洋式便器に浮かんでいるゴム製アナル栓を、トングで挟んで固定し、便器の水を流した。彼女は水洗で排泄物が流れ落ちたアナル栓を、そのままトングで掴んで、壁の元あった位置に吊り下げた。
 文子女医は、床にうつ伏せてのびている孝治の頭をヒールで小突きながら、女性パーサー達に声を掛けた。
「みんな、この男奴隷を仰向けにして、手足を押さえてて…肝心の手術をするのを、忘れてたわ」
 四人の女性パーサー達は、孝治をひっくり返すと、それぞれが手足に跨って座り、彼が動けないようにした。孝治の胸に跨って座った文子女医は、鞄から注射器を出して、孝治に告げた。
「本当は麻酔無しで手術するんだけど、今のお前の体力では、痛みでショック症状を起こす可能性があるからね…仕方無いから、特別に麻酔注射を打ってあげるわ」
 文子女医は、孝治の鼻中隔に麻酔注射したが、それが飛び上がる程に痛かった。
「ウガァガッ」
 麻酔注射の痛みで、目に涙を浮かべ、呻き声を上げて苦しむ孝治を、文子女医は楽しそうに見下し、鞄から色々な手術器具を取りだした。文子女医は、その器具で孝治の鼻中隔に孔を穿ち、孔の径を拡げた。麻酔のおかげで痛みは感じなかったが、鼻中隔にゴリゴリと孔を開けられる感覚は、おぞましいものだった。文子女医は、孝治の鼻に止血の脱脂綿を詰めると、彼の手足を押さえていた女性パーサー達に、声を掛けた。
「みんな、もう押さえなくていいわよ」
 女性パーサー達は立ち上がり、文子女医も孝治の胸から立ち上がった。文子女医は、孝治の頭をヒールで小突いて、命令した。
「男奴隷、お前に鼻輪を着けるための孔開け手術は終わったから、這って檻のお戻り!」
 もう何も考えられなくなった孝治は、軋む体を何とか動かして、四つん這いで檻の中に戻った。文子女医は、檻の扉を閉めて施錠し、
「今は麻酔が効いているけど、切れたら凄く痛むから、安静にしておきなさいね…顧客の要望があれば、耳でも、手足の甲でも、陰茎でも、好きな所に孔を開けてあげるから、楽しみにしてなさい。オホホホ…」
と嘲笑して、船室を出て行った。佳奈と女性パーサー達も後に続き、船室の扉が大きな音を立てて閉められた。一人檻の中に取り残された孝治は、体を横たえ、荒い息をした。これから、どんな目に遭わされるのか…孝治の胸は不安で押し潰されそうになり、知らず目から涙が流れた。
 いつの間にか、睡魔が彼を襲い、唯一の救いである眠りについた。

 孝治は、鼻のジンジンする強い痛みで、目が覚めた。文子女医の言った通り、麻酔が切れて鼻がひどく痛み、触る事すら出来なかった。彼が鼻の痛みに苦しんでいると、ガチャンと音を立てて船室の扉が開き、チーフパーサーの佳奈と四人の女性パーサー達が、ドカドカとブーツの音を立てて入って来た。佳奈は檻の扉を開けると、孝治に命じた。
「男奴隷、出ておいで!」
 孝治は四つん這いになり、檻の下側に設置されている開口部から、もそもそと這い出た。佳奈の足元に近づいたところで、ロシア人女性が孝治の背中を鞭打った。
「ウギャアァッ」
 背中に焼け火箸を当てられた様な激痛に、孝治は体を引きつらせて、悲鳴を上げた。
「男奴隷、檻から出してもらったら、言われなくてもブーツの爪先にキスして、挨拶するんだよ!鞭をもらいたくなかったら、さっさと挨拶おし!」
「は、はい…わかりました」
 ロシア人女性に叱責された孝治は、屈辱で身震いしながら、佳奈のブーツに唇を寄せた。
「うふふ…今後は何があっても、まず女性の靴にキスして挨拶するのよ。それが男奴隷としての、最低限の礼儀だからね」
 自分のブーツに身震いしながらキスする孝治を、佳奈は勝ち誇った目つきで見下して、指導した。黒人女性が孝治の側にしゃがみ、手を伸ばして、彼の鼻に詰められている止血用の脱脂綿を、強引にむしり取った。
「ギャワァーッ」
 触れない程に痛む鼻から、固まってこびり付いている脱脂綿を、無理やり剥ぎ取られた孝治は、絶叫を上げ、床に転がって苦しんだ。
「北川先生が、止血剤も投与しておいたから、もう出血は止まっている筈と言ってたけど、本当ね…孔もきれいに開いているし、さすがは凄腕の女性ドクターだわ」
 黒人女性は感心したようにつぶやくと、むしり取った脱脂綿を床に投げ捨てた。フィリピン女性が、壁に掛けていた革製用具を手にして、床に横になって鼻の痛みに苦しんでいる孝治の側に放り、床を鞭打って、派手な鞭音を響かせた。
「いつまでも寝てないで、ハミと膝パットを着けなさい!今日は念入りに、馬として調教する予定だからね」
「ヒッ、ヒィッ、ただいま…」
 鞭音に怯えた孝治は、一瞬鼻の痛みも忘れ、慌てて身を起こし、膝パットを装着した。しかし、手綱が付いてあるハミの着け方が分からなかった。中国人女性が、まごついている孝治を怒鳴り付けた。
「何をもたもたしてるのよ!お前、馬調教されるのが嫌で、わざとハミを着けないのかい!?それなら、鼻の孔にフックを引っ掛けて天井から吊し、体中を一本鞭で打ちのめして、ズタズタにしてやるからね!」
「ヒィッ、それだけは、ご勘弁を…」
 震え上がった孝治は焦ったが、それでもハミの着け方が分からなかった。
「まどろっこしいわね…仕方無いから、私が着けてあげるわよ。四つん這いになって、顔を上げて、口をお開け!」
 孝治が命じられた通りの姿勢を取ると、中国人女性は、彼の開いた口にハミの突起部を突っ込み、後頭部で革ベルトを締め、手際よく顔面に手綱付きのハミを装着した。孝治の人間馬の準備が整ったのを確認した佳奈は、四人の女性パーサー達に声を掛けた。
「馬奴隷の準備が出来たみたいね…あなた達も用意して」
 女性パーサー達は、カチャカチャと音を立てて、それぞれのブーツに拍車を取り付け、乗馬鞭を手にした。彼女達の姿を見た孝治は、今から自分にされる仕打ちを考え、恐怖で全身に鳥肌を立てた。
「おっと、いけない…肝心なものを装着するのを、忘れていたわ」
 佳奈は壁に掛けられている様々な責め道具の中から、革ベルトの付いた筒状のものを手にした。彼女は、四つん這いになっている孝治の股間のものに、筒状のものをすっぽり被せると、彼の腰回りで革ベルトを締めて固定した。
「いくら男奴隷でも、痛いばかりじゃ可哀想だから、少しは気持ちよくさせてあげるわよ」
 佳奈は、笑いを噛み殺したような声で孝治に告げると、手にしていたリモコンスイッチをONにした。すると、孝治の股間のものを包んでいる筒状のものがビィーンと音を立てて、激しく振動し始めた。
「ウグゥッ」
 ハミをかまされた孝治の口から、くぐもった呻き声が漏れた。彼の股間のものは、激しい振動の刺激を受け、堪らずにたちまち硬く屹立した。
「ウフフ、どう?気持ちいいでしょう?その特製バイブは、どんな鈍い男奴隷でも、二分もあれば射精しちゃうのよ」
 孝治のものを包んでいる筒状のバイブは、先端・中間・根元部分と箇所ごとに振動数が違い、根元部分から先端部分に向けて、波打つように振動するので、佳奈の言う通りにどんな男でも、あっという間に精を搾り取られそうであった。
「グフイィッ」
 たちまち絶頂に追い込まれ、鼻の痛みも忘れて、精を漏らしそうになった孝治の口から、喘ぐような情けないくぐもった呻き声が出て、女性パーサー達の失笑を買った。
「ウフッ、凄く喜んでいるわ。浅ましいわね」
「男のくせに、女の前で悶えるなんて、恥ずかしくないのかしら」
「この男奴隷は、盛りのついた発情期の牡犬と同じよ」
「こんな恥知らずの牡犬は、もっと厳しく躾る必要があるわね」
 女性パーサー達の蔑みが孝治の胸を深く傷付けたが、彼の股間のものは、気も狂わんばかりに猛っていた。孝治が射精してしまう寸前に、佳奈はリモコンスイッチをOFFにした。
「グフウゥ…」
 後一歩で射精してしまうところで、バイブの振動が無くなった孝治は、切なそうなため息をついた。佳奈は嘲笑いながら、孝治と女性パーサー達に声を掛けた。
「うふふ、気持ちよくなって、元気が出たでしょう…さあ、あなた達、この男奴隷を、顧客が満足する馬になるよう、念入りに仕込んであげて!」
「はい、わかりました!」
 女性パーサー達は揃って返事をして、まずロシア人女性が孝治の背中に跨った。彼女は手綱を手にすると、孝治の尻にピシリと乗馬鞭の一撃を加えた。
「さあ、男奴隷、とっとと走って、この部屋を一廻りおし!」
 尻の生皮を剥ぎ取られたような痛みを感じた孝治は、手足を懸命に動かして、船室をよたよたと這い進んだ。
「もたもたしてないで、もっと速くお走り!」
 ロシア人女性は、拍車を孝治の脇腹に食い込ませ、切り付ける様な痛みを与えて、叱咤した。しかし、大柄なロシア人女性はかなり体重があり、背骨が折れるかと思う程に軋んで、普段から運動不足で中年の孝治には、潰れないでよたよたと這い進むだけで精一杯だった。
 孝治が何とか船室を一周すると、ロシア人女性は孝治の背中から立ち上がって、彼から離れた。その途端、佳奈がリモコンスイッチを入れ、孝治の股間に装着しているバイブを振動させた。
「グモオゥッ」
 ハミをかまされている孝治の口から、くぐもった呻き声が漏れた。
「ウフフ、これは部屋を一周出来たご褒美よ…次はナオミね」
 孝治の股間のものが屹立したところで、佳奈はスイッチを切り、黒人女性が彼の背中に跨った。
「ハイッ、ドウ、ドウ!」
   
 黒人女性は力強く乗馬鞭を振るい、拍車で脇腹を蹴りつけ、孝治に走るよう促した。彼はくぐもった悲鳴を漏らして、這い進み始めた。体格のいい黒人女性は、ロシア人女性と同じ位に体重があり、一歩一歩這い進むだけでも、孝治にとっては難行苦行だった。それでも、途中で潰れた時のお仕置きを恐れた孝治は、必死に這い進み、何とか船室を一周した。黒人女性が孝治の背中から立ち上がった時は、まるで自分の体が一瞬浮いた様に感じ、ほっと安堵した。
 その時、佳奈が又も、バイブのリモコンスイッチを入れた。
「ムグゥッ」
 呻き声を漏らした孝治に、佳奈は嘲るような口調で声を掛けた。
「よしよし、よく一周出来たわね。ご褒美よ…次は雷華ね」
 孝治のものが硬くなり、佳奈がスイッチを切ったところで、中国人女性が彼の背中に跨った。
「ホラッ、馬奴隷、とっととお走り!」
 中国人女性は、ロシア人女性や黒人女性に比べれば、体重は軽かった。しかし、彼女は乗馬鞭と拍車を激しく使って、孝治を苦しめた。尻に鞭痕、脇腹に切り傷を増やしながら、何とか船室を一周すると、中国人女性は彼の背中から立ち上がった。すると佳奈はリモコンスイッチを入れて、バイブを振動させた。
「男奴隷、ご褒美よ…次はマリアね」

 孝治が勃起して、佳奈がスイッチを切ると、小柄なフィリピン女性が彼の背中に跨った。
「お前は馬になったんだから、誰よりも速く走るんだよ…ハイッ!」
 フィリピン女性は、中国人女性に負けず劣らず乗馬鞭と拍車を激しく使い、孝治を追い込んだ。彼は涙を流しながら、死にもの狂いで這い進み、何とか船室を一周した。フィリピン女性が孝治の背中から立ち上がり、佳奈がリモコンスイッチを入れ、彼は股間の疼きに悶えた。
「ムグウゥッ」
 孝治の股間のものが硬くなると、佳奈はスイッチを切り、ロシア人女性に声を掛けた。
「それじゃ、二巡目ね…ナターシャ、もう一度乗って」
 大柄なロシア人女性は、孝治の背中にどっかり跨ると、乗馬鞭を振り上げた。

 孝治にはもう、自分が船室を何周廻ったのか、分からなくなっていた。女性パーサー達を背にして這い回る重労働、続けざまに襲ってくる乗馬鞭と拍車の激しい痛み、そしてご褒美と称する男性器へのバイブの甘美な振動…それらが孝治の思考回路を破壊し、何も考えられなくなっていた。今の孝治は、手術後の鼻の痛みすら忘れていた。彼は何も考えられず、女性パーサー達を背にして、ひたすら這い回っていた。
 しかし、それでも遂に限界が来た。小柄なフィリピン女性を背にしている時、不意に目の前が真っ白になり、腕の力が抜けて肘関節が折れ曲がり、前のめりに倒れて失神してしまったのだ。フィリピン女性は立ち上がると、
「急に何するのよ!転げ落ちそうになったじゃないの!馬奴隷にさせてもらって、勝手に休むなんて、どういうつもりよ!」
と孝治を罵り、彼の背中に乗馬鞭を何度か振り下ろした。背中に赤い筋が見る見る浮き上がってきたが、それでも孝治は失神から覚めなかった。
「マリア、もう勘弁してあげなさいよ。この男奴隷は完全にグロッキーになっているわ」
「マリアが思いから、この男奴隷が潰れたんじゃないの?」
「私達の中で、やっぱりマリアが一番重たかったのね」
 他の女性パーサー達から、からかわれたフィリピン女性は怒り、
「何で私が、ナターシャやナオミより重いのよ!失礼ね…お前のせいよ、全く!」
と言って、失神して横たわっている孝治の頭を、乗馬用ブーツで足蹴にした。
 苦笑した佳奈は、孝治の体から手綱付きのハミと膝パットを取り外すと、彼の両手首に金具付きの革製リストバンドを装着した。そして、ウインチのリモコンを操作して、天井から吊り下がっているフックを下ろすと、孝治の両手首に巻かれているリストバンドの金具に引っ掛けた。佳奈はリモコンを操作し、ウインチを引き上げ、孝治を天井に吊り上げた。孝治は、ぎりぎり足先が床に着く高さまで、両手を吊り上げられたが、まだ失神から覚めなかった。
「まだ、目が覚めないの?仕方無いわねぇ…」
 佳奈は、バイブのリモコンスイッチをONにした。孝治の股間からバイブの振動音が響き、彼の瞼がピクピクと動き出した。やがて、孝治は目を見開き、
「アアァーッ」
と声を上げて、身悶えし始めた。女性パーサー達は、孝治の股間を指差して、どっと笑った。
「アハハ、見てよ、こいつ!鞭打たれても目覚めなかったのに、あそこを刺激されたら、直ぐ目を覚ましたわ」
「本当にいやらしいのね…こいつは、頭じゃなくてペニスでものを考える最低の男奴隷なのよ」
「男って、どいつもこいつも下半身が言う事を聞かない獣だけど、その中でもこいつは別格だわ!」
「女をいやらしい目で見させないように、精を全て搾り尽くしてやった方がいいみたいね」
 女性パーサー達の侮蔑が孝治の胸を酷く傷付け、目に涙が浮かんできたが、股間の猛りは制御出来なくなったいた。後、二、三秒で射精するというところで、佳奈はリモコンスイッチをOFFにして、孝治に深いため息をつかせた。
 佳奈は孝治の腰から革ベルトを解き、彼のものからバイブを取り外した。孝治の股間のものは、射精寸前の隆々たる硬度を保ち、雄々しくそびえ立っていた。佳奈は軽蔑し切った声で、話し掛けた。
「ふんっ、よく女の前で、そんな醜いものをそそり立たせるわね…マリア、あなたを乗せている時に、勝手に横になったんでしょう。あなたが、この恥知らずに硬く立たせているものに、罰を与えてやって」
「はい、わかりました!」
 フィリピン女性が乗馬鞭を振り上げ、孝治は思わず目をつぶった。しかし、意外にも佳奈がフィリピン女性を制した。
「マリア、ちょっと待って!それは、威力があり過ぎるわ…こっちを使ってね」
 佳奈はフィリピン女性から乗馬鞭を取り上げ、代わりに九尾鞭を手渡した。フィリピン女性は、改めて九尾鞭を振り上げた。
「いくわよ!」
 フィリピン女性は、孝治のそそり立っているものに、情け容赦無く九尾鞭を力強く振り下ろした。
「ギャアァーッ」
 硬く勃起して敏感になっているものに九尾鞭が絡みつき、ちぎり取られる様な激痛を受けた孝治は、身をよじらせて絶叫を上げた。孝治の悶え苦しむ姿を見たフィリピン女性は昂ったのか、彼の陰部へ立て続けに鞭を振るった。孝治は、喉が涸れる程に悲鳴を上げ続けた。
「まだよ、まだよ!」
 フィリピン女性は鞭の手を緩めず、更に打ち続けて、孝治を泣き喚かせた。彼女は孝治のそそり立っているものを散々打ちのめしてから、最後に、
「止めだ!」
と言って、九尾鞭を下から掬い上げるように振るい、彼の陰嚢を強かに打ち据えた。
「グエェーッ」
 孝治は獣じみた雄叫びを上げて、体を仰け反らせると、頭をがっくりと垂れた。しかし、なぜか彼のものは萎えることなく、硬度を保って屹立していた。
「あらあら、こんなに痛い目に遭っても、まだ興奮しているのね…本当に獣だわ」
 佳奈は呆れた声を出すと、孝治のものに筒状のバイブを嵌め直し、革ベルトで固定した。
「みんな、この男奴隷の罰は、まだ終わってないわ…こいつを、一本鞭で思い知らせてやって」
「はい、わかりました!」
 四人の女性パーサー達は、弾んだ声で揃って返事をすると、それぞれが一本鞭を手にして、吊り下げられている孝治を取り囲んだ。
「鞭打ちの痛みでショック死されると困るから、半分位の力で軽く打ってやってね」
 女性パーサー達は少しつまらなそうな表情をしたが、一斉に孝治を鞭打ち始めた。
「ギャアァーッ」
 佳奈に指示されて、女性パーサー達は普段より軽く打っているのだが、孝治にとっては体中に火傷を負わされているようだった。鞭打ちが開始すると同時に、佳奈はバイブのリモコンスイッチを入れた。孝治の股間からバイブの振動音が響き、彼の口から喚き声が上がった。
「ウワァーッ、止めて、許して」
 体中に一本鞭で焼けつくような痛みを受け、股間のものに精を搾り取られるようなバイブの甘美な振動を受けた孝治は、体がバラバラに分解されるような気分になった。
「グワアァーッ」
 鞭打たれている孝治は、遂に絶叫を上げて派手に射精してしまった。
「みんな、鞭打ちは、もういいわよ」
 バイブのリモコンスイッチを切った佳奈が、女性パーサー達に声を掛け、彼女達は鞭打ちを停止した。孝治はうなだれて、ヒックヒックと嗚咽を漏らし、涙をボロボロ流していた。
「この男奴隷は、鞭打たれて射精したの?」
「呆れた変態ね、最低!」
「こいつは、もうマゾの変態になったのかしら?」
「もう少し、調教を楽しみたかったのに、つまらないわ」
 女性パーサー達の蔑みが孝治の頭に虚ろに響き、彼はこの世から消え去りたくなった。佳奈は苦笑いして、
「みんな、この男奴隷の調教は、これからが本番よ。気を引き締めて、調教を続けてね」
と声を掛け、ウインチのリモコンを操作し、孝治を床に下ろした。孝治は全身の力が抜けたみたいに、ぐったりと床にへたり込んだ。
 佳奈は床でへたっている孝治の両手首からフックを外し、リモコン操作してウインチを巻き上げた。彼女は孝治の髪を掴んで顔を引き上げ、やけに優しげな口調で問い掛けた。
「ねえ、皆の馬にされて大汗をかいた上に、あんなに叫び続けて、喉がカラカラじゃない?」
 全く、その通りだった。孝治は死にそうな程に喉が渇いて、堪らなかった。しかし、ここで水分補給をねだれば、何を飲まされるか簡単に予想がつき、答えるのをためらった。
 孝治が口ごもっていると、佳奈は目が眩む程の強烈な往復ビンタを浴びせた。
「ヒイィッ」
「私が優しく聞いてあげているのの、無視して答えないとは、何事よ!男奴隷の身分が、全く分かっていないんだね!まだまだ、鞭が足りないわ!」
 震え上がった孝治は、慌てて佳奈の足元に土下座し、詫びを入れた。
「ヒッ、ヒイッ、申し訳ございません。鞭だけは、お赦しを…」
 佳奈は、土下座している孝治の頭をブーツで踏みにじり、問い詰めた。
「ふんっ、都合のいい事ばかり言って…私は、喉が渇いてないかと聞いているのよ!どうなの!」
 孝治は、佳奈のブーツの下で、些かくぐもった声で返事をした。
「…はい、喉が凄く渇いています」
「ふーん、そうなの…それで、何が飲みたいの?」
 佳奈の問いに、孝治は少しためらったが、思い切って答えた。
「…み、水が飲みたいです」
 佳奈は、一旦孝治の頭からブーツを外すと、彼の脇腹を力強く蹴って、床に転がした。
「グエェッ」
 佳奈は一本鞭を手にすると、ヒキガエルが鳴いたみたいな呻き声を上げて苦しむ孝治を、思い切り打ち据えた。
「ウギャアァーッ」
 先程の、女性パーサー達が手加減した鞭とは比べものにならない、体を切り裂かれる様な激痛と、内臓まで響く強い衝撃が孝治を襲い、仰け反った彼の口から絶叫が湧いた。
「さっき北川先生から、男奴隷が飲めるものは何か、教わったばかりでしょう。もう忘れたのかい、この低脳!思い出すまで、鞭で打ちのめしてあげようか!」
 佳奈が一本鞭を振り上げたのを見た孝治は、慌てふためいて返事をした。
「ヒイィッ、おしっこです。私が飲めるのは、女性のおしっこだけなんです。是非、おしっこを飲ませて下さい」
 孝治が答えた途端、女性パーサー達は、どっと笑った。
「アハハ、自分から女のおしっこが飲みたいって言ったわ。最低の変態よね」
「男の誇りも、人間の尊厳も、全て捨てたのよ、この豚は!」
「こいつは自分で、奴隷から便器に転落したんだわ」
「どちらにしても、こいつを人間扱いする必要は無いわね」
 女性パーサー達の蔑みが、孝治の心をズタズタに切り裂き、彼を屈辱で身震いさせ、涙をこぼさせた。
「男奴隷、おしっこを飲ませてもらいたかったら、床に仰向けにおなり!」
 佳奈に命じられた孝治は、身を焦がすような屈辱感を押し殺し、言われた通り床に横たわった。
「ナターシャから、この男奴隷におしっこを恵んであげて」
「はい、わかりました!」
 佳奈に声を掛けられたロシア人女性は、弾んだ声で返事をして、孝治の顔を跨いで立ち、カチャカチャと音を立ててベルトを外した。彼女は乗馬用ズボンとパンティを一度に膝まで下げると、孝治の顔にしゃがみ込んだ。些かくすんだ金色の陰毛に縁取られ、赤くぬめった陰唇が目前に迫って来た孝治は、絶望的な気分になった。
 「ウフフ、調教前にトイレを済ませたのは、失敗だったわね…それでも、少しは出るから、安心おし。大きく口をお開け…出るわよ!」
 ロシア人女性の陰唇が僅かに震えると、濃い尿が噴き出した。孝治の開いた口に尿が注ぎ込まれ、その強烈なアンモニア臭と刺激の強い味に、彼は吐きそうになった。しかし、吐き出した時のお仕置きを恐れた孝治は、凄く喉が渇いて体が水分を欲していた事もあり、喉を上下させてゴクゴクとナターシャの尿を飲み下した。
「フフフ、嬉しそうに飲んでいるわね…ちゃんと人間便器になれたみたいで、顧客に満足してもらえそうだわ」
 佳奈の楽しそうな声が孝治の耳に反響して、彼の精神をどん底まで落とし込んだ。事前にトイレを済ませていたナターシャの尿は、量はさほど多くは無かったが、濃くて強烈な臭いと刺激的な味がして、孝治をとことん惨めな気分にさせた。
「男奴隷、おしっこを飲み終わったら、言われなくても舌で後始末おしって、北川先生から言われていたでしょう…さっさとお舐め!」
 ナターシャに命じられた孝治は、おずおずと舌を伸ばし、尿で濡れた陰唇を舐め始めた。改めて舌に尿の刺すような味が拡がり、孝治の惨めさを倍増させた。

 続けて、黒人女性、中国人女性、フィリピン女性と尿を飲まされたが、彼女達はナターシャと同じく、事前にトイレを済ませていたようで、各自の排尿量はそれ程でもなかった。それで、孝治は何とか全員の尿を飲み終える事が出来た
 


 しかし、女性ごと、人種ごとに、尿の濃さ・臭い・味がそれぞれ違い、それが孝治に“自分は女の公衆便所にされたんだ”と思い知らせる結果となり、彼をひどく落ち込ませた。
 孝治が女性パーサー達全員の尿を全て飲んだのを見届けた佳奈は、嬉しそうな声を出した。
「よく、みんなのおしっこを、全部飲めたわね…これは、ご褒美よ」
 彼女はリモコンのスイッチを入れ、孝治の股間に装着されたままになっている筒状のバイブを振動させた。
「ウワアァッ」
 不意に、股間のものに甘美な振動を与えられた孝治は、声を上げて身悶えした。しばらく孝治を悶えさせた佳奈は、彼が射精する寸前を見極めて、リモコンのスイッチを切った。
「ふんっ、さっき精を放出したばかりなのに、まだ貪欲に硬く勃起させるなんて、本当に浅ましいわね…水分補給も済んだことだし、次の調教に移るわよ。さっさと、四つん這いにおなり!」
 佳奈に命じられた孝治は、仰向けに横たわった体勢から、よろよろと四つん這いになった。佳奈は女性パーサー達にも、声を掛けた。
「あなた達は、ペニスバンドを着けて頂戴」
 女性パーサー達は、それぞれ壁に掛けられているペニスバンドを取り、乗馬ズボンの上から装着した。彼女達の姿を見た孝治は、今から自分がどんな目に遭わされるのかを瞬時に悟り、全身に鳥肌を立てた。
 ロシア人女性が孝治の前にしゃがみ、彼の口元にペニスバンドの先端を突き付けた。
「男奴隷、フェラチオおし!お前も一応男だから、どこを舐めれば感じるか、分かるでしょう。心を込めて、丁寧にしゃぶるんだよ!」
 あまりの恥辱に、孝治は顔を赤くして身震いしたが、逆らえる筈も無く、突き出された疑似ペニスの先端をくわえて、舌を使った。
「うふふ、歯を立てないように、唇で前歯を包んで、しゃぶりなさいね」
 ロシア人女性は孝治を蔑むようなアドバイスをして、腰を突き出し、彼に空嘔吐させて苦しめた。他の女性パーサー達は、疑似ペニスにワセリンを塗りたくり、テカテカにぎらつかせていた。
 黒人女性が孝治の後ろでしゃがみ、彼の尻たぶを両手で拡げると、疑似ペニスの先端を肛門に当てがった。
「ウグゥッ」
 孝治が思わず短い悲鳴を漏らし、肛門を窄めると、黒人女性は平手で彼の尻を叩き、大声で叱りつけた。
「肛門に力を入れるんじゃないよ!下手に力を入れると、肛門が裂けて、大事になるわよ。力をお抜き!」
 孝治が恐る恐る肛門の力を抜くと、黒人女性は力強く腰を突き出し、疑似ペニスを一気に彼の直腸へ挿入した。
「ムゴオォッ」
 ロシア人女性から疑似ペニスをくわえさせられている孝治の口から、くぐもった呻き声が漏れた。
「力は抜いたままで、肛門を緩くしておくんだよ。その方が、痛みが少なくて済むからね」
 黒人女性は孝治に注意しながら、最初はゆっくり、そして徐々に速く腰を前後に動かした。
「ウグゥッ、ムガァッ」
 神経が集中している肛門を刺激され、直腸を掻き回されている孝治は、その異様な感覚に止めどなく涙を流し、苦しげな呻き声を上げた。
「ウフフ、この男奴隷は、肛門を犯されて感じているのね。ホモにオカマを掘られた事があるんじゃないの?やっぱり、変態だわ」
 佳奈の軽蔑し切った声が、孝治の耳に響いて胸を掻きむしった。
「男奴隷、もっと気持ちよくさせてあげるわよ…ホラッ!」
 佳奈はリモコンのスイッチを入れ、孝治の股間部分に装着している筒状バイブを、激しく振動させた。
「ムガァッ、ムゴォッ」
 ペニスバンドで前立腺を刺激されている上に、股間のものにバイブの振動を加えられて、孝治はたちまち果てそうになり、苦しげな呻き声を上げて、身悶えた。孝治の苦しむ姿を見て興奮したのか、ロシア人女性と黒人女性は、腰を更に激しく動かし、彼の口と肛門を責め立てた。
 男の自分が女に犯される耐え難い屈辱、前立腺を刺激される異様な感覚、その上に股間のものを責めるバイブの甘美な振動…これらが入り混じって、孝治の理性を削り取っていった。彼がひときわ大きい呻き声を上げて、精を放出するのに、それ程時間は掛からなかった。
 佳奈はリモコンのスイッチを切り、高らかに嘲笑した。
「アハハ、この男奴隷は、何度でも射精するのね。本当にいやらしい、最低の男だわ…ナターシャ、ナオミ、雷華とマリアに交代してあげて」
 ロシア人女性と黒人女性が、恥辱で涙をボロボロこぼしている孝治から離れると、彼の前側に中国人女性、後ろ側にフィリピン女性がしゃがみ、疑似ペニスを彼の体に突き挿した。

 又も口と肛門を激しく責められ、バイブで無理やり射精に追い込まれた孝治は、精も根も尽き果て、ぐったりと床に突っ伏した。佳奈は、乗馬用ブーツで孝治の頭を小突き、
「そろそろ夕食の時間だから、一旦戻るけど、後でお前の餌を持って来てあげるわ。楽しみに、待っといで」
と言い捨て、女性パーサー達と船室を出て行った。
 一人船室に取り残された孝治は、全身の鞭痕と打撲傷で体が引きつり、身動きが出来ず、もう何も考えられずに、瞼を閉じた。彼はしばらく荒い息をしていたが、疲労の極致にあったためか、間もなく眠ってしまった。

 孝治は、佳奈にブーツで頭を蹴られて、目を覚ました。彼の周りには、佳奈と四人の女性パーサー達が立っていた。
「男奴隷、わざわざお前の餌を持って来てあげたのに、待ちもしないで寝ているなんて、何事よ!奴隷のくせに、横着だね!」
 孝治は慌てて、引きつる体を無理に動かし、佳奈の足元に土下座して、謝意を述べた。
「申し訳ございません。どうか、お許し下さい。何とぞ、御慈悲を…」
「ふんっ、口だけは上達したようだね…もういいから、さっさとお食べ!」
 佳奈は金属製のボウルを、乱暴に孝治の顔の前に置いた。ボウルの中には、グチャグチャになった残飯があった。孝治が自分を押し殺して、ボウルに手を伸ばすと、中国人女性が鞭で床を叩いた。
「ヒィッ」
 鞭音に怯えた孝治が手を引っ込めると、中国人女性が彼を叱りつけた。
「男奴隷の分際で、人間様みたいに手を使うんじゃないわ!男奴隷は、犬みたいに顔を突っ込んで、餌を貪るものよ!」
「は、はい…わかりました」
 孝治が口惜しさに身震いしながらも、ボウルに顔を近づけようとすると、黒人女性から、待ったが掛かった。
「ちょっと、お待ち!味付けしてあげるのを、うっかり忘れてたわ」
 黒人女性は、カーッ、ペッと派手な音を立てて、残飯に痰を吐き掛けた。他の女性パーサー達も面白がり、黒人女性に倣って、残飯に唾や痰を吐き掛けた。
「さあ、遠慮せずに食べなさい!」
 黒人女性から、ブーツでボウルを自分に押しやられた孝治は、唾や痰で覆われた残飯を見て、泣きそうな顔になった。ただでさえ、グチャグチャで汚らしい残飯の上に、照明の光で鈍く光る唾と痰が掛かっているのだ。見ているだけで、吐き気を催しそうだった。それでも鞭で打たれるよりはと、思い切ってボウルに顔を近づけたが、なかなか口をつける踏ん切りがつかなかった。
 ロシア人女性が、孝治の後頭部にブーツを乗せた。
「まどろっこしいわね…さっさと食べなさい!」
 ロシア人女性に頭を踏まれ、孝治の顔面は残飯に埋められた。孝治は止むを得ず、残飯を口にした。ねっとりとした痰混じりの残飯は、心底おぞましかったが、孝治は自分の精神を麻痺させ、機械的に口を動かして咀嚼し、無理やり飲み込んだ。
 孝治が必死に残飯を食べているのを、笑って見ていた佳奈は、不意にリモコンのスイッチを入れた。
「ウワアァッ」
 不意に股間部分へバイブの甘美な振動を受けた孝治は、呻き声を上げて、背を仰け反らせた。
「なかなかいい食べっぷりね…これは、ご褒美よ」
 佳奈は、孝治が射精寸前になったのを見計らい、リモコンのスイッチを切った。
「さあさあ、感じていないで、とっとと餌をお食べ!」
 佳奈に嘲った口調で命じられた孝治は、屈辱に震えながらも、再度ボウルに顔を突っ込んだ。
「食べ終わったら、調教を再開するわよ…顧客が満足するように、お前を人間の形をした家畜に仕込んでやるからね。女に虐められ、侮蔑されたら、興奮して勃起する変態の男奴隷に仕上げてあげるから、楽しみにしてなさい。オホホホ…」
 吐き気を堪えて懸命に残飯を食べている孝治の頭に、佳奈の嘲笑が虚ろに響き、気が遠くなりそうになった。

 佳奈は四人の女性パーサー達を助手にして、孝治を連日徹底的に虐め抜いた。孝治にとって、鞭を手にした女性は絶対的な支配者となり、反抗するどころか、目も合わせられなくなってしまった。
 佳奈は孝治をただ痛めつけるだけではなく、タイミングよく筒状バイブを活用して、彼を射精寸前まで追い詰めた。そのため、佳奈が宣言した通り、パブロフの犬みたいに条件反射で、女性に虐められて蔑まれると、浅ましく勃起してしまう体にさせられてしまった。孝治は《Femdom Ship》を下船して上陸しても、正常な男として社会復帰出来るかどうか、自分に全く自信が持てなくなっていた。

 佳奈と女性パーサー達からの酷い調教が続き、半月が経った。朝、檻から引き出された孝治は、いつもならブーツで蹴りつけられ、鞭で打たれてから、一日の調教が始まるのだが、その日は勝手が違った。
 リード付きの首輪を着けられ、犬の様に四つん這いでついて来るよう、佳奈から命令され、初めて船室の外へ連れ出された。全裸に首輪だけの四つん這いで、犬の様に這い進む惨めな姿を、他の乗客達に晒すのは、さすがに孝治もためらった。しかし、佳奈の鞭の一振りで、そのためらいは払拭された。だが、孝治がためらう必要は、元々無かったのだ。
 豪華な船内を這い進んでいた孝治は、他の乗客達の様子を見て、目を見張った。乗客達の国籍や人種はバラバラだったが、共通しているのは、女性達は皆、それぞれドレスアップしており、男達は全裸か、裸同然の姿で、孝治の様に這い回ったり、馬にされて女性を背にしたり、女性を肩車して歩いていた。
 男性客室乗務員−キャビンボーイは、首に蝶ネクタイと、腰に陰部が辛うじて隠れる程の小さなエプロンを着けただけの裸同然の姿で、女性客からの注文や要望を受けていた。
 女性客室乗務員長−女性パーサーは、CAの様な制服を着て、女性客の接遇をしていたが、常に乗馬鞭を携帯してキャビンボーイ達を監督し、ほんの少しでも粗相があれば、叱責して鞭打ったりしていた。キャビンボーイ達は全員、体に何条もの鞭痕が刻み込まれていた。
 キャビンボーイも女性パーサーも、男性客からの注文・要望は全く受け付けない、と言うより、男性客には、何の権利も無いようだった。
 デッキでは、四つん這いの男を椅子にして、カクテルを口にする女性客や、長椅子で男の顔を股で挟み、潮風を受けながら、舌の動きを楽しんでいる女性客がいた。真智子が言っていた通り、《Femdom Ship》では、世間の常識と法律は全く機能せず、女性は男を支配し、男は女性に服従する掟だけがあるようだった。
 佳奈は、孝治を広いパーティー会場まで引っ張って来ると、彼の首輪に付けられているリードを、ひな壇に設置されているポールに繋いだ。
「今日は、優美様とお前の結婚式の日よ。おめでとう…今から結婚式の段取りを説明するから、よく覚えておきなさい。もし間違えて、調教役の私に恥をかかせたら…調教部屋に戻って、地獄を見る事になるからね!わかったかい!?」
(こんな恥ずかしい惨めな格好で、結婚式…?)
「は、はい、わかりました…」
 孝治には訳が分からなかったが、佳奈の剣幕に押され、震え声で返事をした。佳奈は、結婚式の段取りを説明し始めた。
「お前が、ここで四つん這いで待っていたら、真智子様に連れられて、花嫁の優美様が入場なさるから、お前は…」
 孝治は、佳奈の説明を一字一句聞き漏らすまいと、食い入るように聞いて、結婚式の段取りを頭に刻み込んだ。佳奈が説明した段取りは、かなり屈辱的なものであったが、今の孝治には、そんな事に構ってはおれなかった。この十五日間の調教で、佳奈の恐ろしさは身に染みていた。
 もし、結婚式でミスをすれば、彼女から死の一歩手前まで虐待される事は、火を見るより明らかだった。
「…これで、結婚式は終わりよ。後は、お客様方との歓談になるわ。優美様とお前の結婚を祝福するのに、《Femdom Ship》に乗り合わせた、初対面のお客様方が来て下さるんだからね。絶対に、ドジを踏むんじゃないよ!」
「は、はい、わかりました」
 佳奈はひな壇に孝治を残し、足早にパーティー会場を出て行った。孝治はポールに繋がれたまま、佳奈に言われた通り、四つん這いで待っていた。パーティー会場では、キャビンボーイ達が女性パーサー達に指揮監督されて、テーブルをセットしたり、飲物や料理を用意していた。
 孝治は、何度も逃げ出したいと思ったが、船上ではどこにも逃げ場が無い事は、十二分に分かっていた。女性パーサー達に叱られ、鞭打たれて悲鳴を上げていたキャビンボーイ達が、パーティー会場のセッティングを終えた頃、CAの様な制服に着替えた佳奈が戻って来た。
「結婚式の司会進行役は、私に任されているのよ…だから、粗相は絶対に赦さないからね!分かってるの!?」
「は、はい…心得ております」
 佳奈に一喝された孝治は、震え上がって返事をした。そうこうしている内に、パーティー会場に客が集まって来た。国籍も人種もそれぞれ違っていたが、共通しているのは、女性客は華やかにドレスアップしているのに、男性客は殆ど裸だった。女性客はテーブルに着いたが、男性客は椅子に座る事は許されず、床に正座させられた。中には、男性客が四つん這いになって、女性客の椅子にされているカップルもいた。
 佳奈が腕時計を見て、つぶやいた。
「…そろそろ、時間ね」
 パーティー会場の照明が暗くなり、会場のざわめきが止んだ。
「皆様、大変お待たせ致しました。これより、優美様と男奴隷の結婚式を行います…皆様、花嫁の入場を、拍手でお迎え下さいませ」
 パーティー会場の扉に、スポットライトが照らされた。扉が開き、真智子に手を引かれた優美が入って来た。会場から、盛大な拍手が湧いた。ひな壇でポールに繋がれている孝治は、優美の姿を見て、目を剥いた。
(何だ、あの格好は!?)
 優美の手を引いている真智子は、普通のパーティードレス姿なのだが、優美の姿は異様なものだった。頭には一応、花嫁らしい純白のベールを被っているが、首から下は、黒色ブラジャーに黒色パンティ、銀色の鋲が散りばめられている革製黒色コルセット、コルセットから吊されている黒色網タイツに、膝上まである黒色ロングブーツと、黒一色の典型的なドミナスタイルだった。
 呆然としている孝治を尻目に、優美の手を引いてエスコートしていた真智子は、彼女を壇上に上げると、さっさと降りて、直近のテーブルに着いた。
 司会進行役の、佳奈の声が会場に響いた。
「それでは、結婚の誓いを行います…優美様、あなたはこの男を、夫として、奴隷として、生涯所有し、支配する事を誓いますか?」
 優美は、凛とした声で答えた。
「はい、誓います。私だけではなく、世の中の全ての女性にひれ伏す奴隷になるよう、生涯厳しく調教する事を誓います」
 次に佳奈は、四つん這いの孝治を見下して、声を発した。
「男奴隷、お前は優美様を、妻として、女主人として、生涯忠誠を尽くし、服従する事を誓いますか?」
「…はい、誓います。優美様を女御主人様として、賤しい男奴隷である私めに君臨して下さる女神として、生涯絶対服従させて頂く事を誓います」
 孝治は、些か震えた声で、佳奈に教えられた誓いの言葉を、一言一句間違えないよう細心の注意を払って、申し述べた。
「それでは、指輪の交換を…」
 佳奈が発言すると、キャビンボーイがひな壇の下から、指輪を二つ乗せた小さな台を差し出した。その指輪は、船旅の前に優美にせがまれて、銀座の高級宝石店で購入した、有名ブランドの高価な結婚指輪だった。
 まず孝治が小さめな指輪を手にして、優美が伸ばした左手の薬指に、跪いた姿勢でうやうやしく嵌めた。次に優美が大きめな指輪を手にすると、孝治の前にしゃがみ、指輪をパカッと開いて、彼の鼻の孔に通し、カチリと閉じた。孝治が購入した結婚指輪は、それを材料にして、鼻輪に改造されていた。孝治の頭上から、佳奈の小声が降って来た。
「ウフッ、その鼻輪の金具は嵌め殺しになっているから、一生外れないわよ」
 孝治がショックを受けているのに構わず、佳奈は式を進行した。
「それでは、誓いのキスを…まずは、男奴隷から」
 佳奈に声を掛けられた孝治は、はらわたが煮えくり返る程の怒りと口惜しさを堪え、這いつくばって優美のブーツの爪先に、うやうやしく奴隷のキスをした。
「では、優美様、これで男奴隷に熱いキスをお与え下さい」
 佳奈は、優美に短い一本鞭を手渡した。優美は鞭を振り上げると、四つん這いになっている孝治の背中を、強かに打ち据えた。
「ウギャアァッ」
 
 背中を焼けた刃物で切り裂かれた様な激痛に、孝治は体を仰け反らせて、絶叫を上げた。彼の背に、赤い条痕が見る見る浮かび上がってきた。孝治は目に涙を溜めて、鞭打ちの激痛を堪えていると、客席からざわめくような失笑が漏れた。この時、孝治は股間のものが猛々しく屹立しているのに気がつき、恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
 佳奈の調教の成果で、既に孝治は女性から虐められ、屈辱を与えられると、興奮して勃起するような体にされていたのだ。彼は、自分が本当に変態になってしまったと思い知らされ、頭を抱えて苦悩した。
「以上で結婚式は、終了致しました…御来賓の皆様、若く美しい花嫁と下賤な男奴隷に、祝福の拍手をお願い致します」
 佳奈に呼び掛けられた乗客達は、一斉に割れんばかりの盛大な拍手をした。
「それでは皆様、ご自由に御歓談頂き、お互いに奴隷交換して、お楽しみ下さいませ」
 女性客達は、豪勢な料理と高級な酒を楽しみ始めた。男性客達は、料理や酒を口にする事は許されず、女性客達が咀嚼したものを口に吐き出してもらうか、床に吐き捨てた食べ物を舐め取ったりしていた。
 
 佳奈は細い金色の鎖を孝治の鼻輪に取り付け、鎖の端を優美に手渡した。
「優美様、おめでとうございます。挙式も無事終了致しましたので、リラックスなさって、ゆっくりと御歓談下さいませ」
 優美は嬉しそうに微笑んで、返事をした。
「ありがとうございます。式の司会進行役、お疲れ様でした…男奴隷、行くわよ!」
 優美は鎖を引き、ひな壇を降りて、真智子が着いているテーブルに向かった。
「アヒィッ」
 ちょっと鎖を引かれただけで、鼻がちぎれそうな痛みを感じた孝治は、慌てて優美の後を這って、ついて行った。真智子は、先に飲食を始めていた。優美がテーブルに着き、孝治が彼女の足元で正座すると、真智子が話し掛けた。
「優美、結婚おめでとう…なかなか良い式だったわよ。優美のボンデージ姿もサマになっているし、男奴隷の惨めな姿と、浅ましい盛り具合も笑えたわ。オホホ…」
 真智子の嘲笑が孝治の胸を深く抉り、彼の顔を赤くさせ、恥辱で身震いさせた。だが、孝治の股間のものは、佳奈に仕込まれた条件反射により、真智子に蔑まれて、硬く屹立してしまった。
「あらっ、本当にはしたない男奴隷だわ…いつでも興奮して、ここを硬くするなんて、最低ね。お前は人間じゃなく、発情期の牡犬だわ!」
 孝治の勃起に気づいた優美は、ブーツの爪先で彼のものを小突いて、侮蔑した。孝治は恥ずかしさと口惜しさで、目に涙を浮かべたが、彼のものは更に硬度を増した。
「優美、浅ましい男奴隷は放っておいて、先に食事にしましょう…今日の料理も、凄く美味しいわよ。私、この船旅で、ちょっと太っちゃったわ」
「お母さん、ちょっとじゃないんじゃない?あれ程、フィットネスルームで運動した方がいいと、言ったでしょう」
「分かってはいるんだけどね…何か、面倒臭くて、フフフ」
 真智子と優美は、如何にも仲の良い母娘らしく歓談して、食事を優雅に楽しんでいた。それに比べ、全裸で床に正座して、おあずけを食わされている孝治は、惨めそのものだった。
 ひとしきり食事が進んだところで、優美が気づいた様に言った。
「おっと、いけない。男奴隷に餌を恵んであげるのを、忘れていたわ…男奴隷、顔を上に向けて、口をお開け!」
 優美は、孝治の鼻輪に繋がれた細い鎖を、上方にツンツンと引いて、屈辱的な命令をした。
「アヒィッ」
 少しの力で鎖を引かれただけで、鼻がちぎり取られそうな強い痛みを受けた孝治は、悲鳴を上げ、涙目になって、優美の命令通りにした。優美はステーキの肉片をクチャクチャと咀嚼し、孝治の口にペッと吐き出した。優美の唾まみれでグチャグチャの肉片に、思わず吐きそうになったが、お仕置きの鞭打ちを恐れた孝治は、身震いして我慢し、何とか噛んで飲み込んだ。
 孝治の我慢している様子を面白がった優美は、続けて料理を咀嚼しては、孝治の口に吐き出した。孝治は胸が掻きむしられるような屈辱に耐え、グチャグチャで唾液まみれの食べ物を必死に噛んでは飲み込み、胃に納めた。
「優美、私にも男奴隷に餌を与えさせて」
 真智子に声を掛けられた優美は、細い鎖の端を手渡した。真智子は鎖を手にすると、孝治を傍らに引き寄せた。
「アイッ」
 鼻がちぎれそうな痛みに、孝治は短い悲鳴を漏らし、慌てて真智子の足元に這い寄った。
「料理の味が濃いから、喉が渇いたでしょう…ワインでもお飲み」
 真智子は赤ワインを口に含むと、クチュクチュと音を立てて口をゆすぎ、孝治の口に吐き出した。孝治は泣きたくなったが、何とか唾液混じりのワインを飲み下した。
「どう?この船の料理とお酒は、絶品でしょう?」
 真智子はからかうような口調で、孝治に訊ねた。あまりの屈辱に、孝治は顔を真っ赤にしたが、
「は、はい…美味しいです。餌を恵んで頂き、真にありがとうございます」
としか、返事が出来なかった。
「さてと…知り合いのテーブルに、挨拶に行きましょう」
 真智子は立ち上がると、孝治の鼻に繋がれている鎖を引いて、他のテーブルに向かって歩いた。鼻がちぎれそうな痛みに、孝治は大急ぎで真智子の後を、這ってついて行った。まだ、首輪にリードを付けられて犬の様に引っ張られた方が、遥かにマシだった。
 真智子は、裸同然のキャビンボーイを三、四人はべらせているチャイナドレス姿の、美しい中年女性が着いているテーブルで足を止め、挨拶した。
「王夫人、お久しぶりです。お元気でしたか?」
 王夫人と呼ばれた女性は、キャビンボーイを四つん這いにさせ、椅子代わりに座っていた。
「真智子さん、本当に久しぶりね…真智子さんが事業を止めて、また取引先が一つ減り、寂しかったわ」
「ええ、今、被服関連の事業はどこも厳しくて、思い切って会社を整理したんですよ…男奴隷、紹介するわ。こちらは、王桂梅さん。以前取り引きしていた中国の会社の、社長夫人よ」
 真智子は、四つん這いになっている孝治を見下して、中国女性を紹介した。王桂梅は、孝治を値踏みするように、じろじろと見つめた。
「こちらが、娘婿になった男奴隷ね…娘さんの婿にしては、少し歳を取っているみたいだけど」
 真智子は少し苦笑して、返事をした。
「話すと長くなりますけど、ちょっと事情がありまして…ところで、ご主人は一緒じゃなかったんですか?」
 王桂梅は、ため息をついて答えた。
「中国も人件費が高騰して、国内で縫製していたらコスト高になり、採算が取れなくなってきたの…それでマゾの夫は今、ベトナムとカンボジアに出張して、工場建設のための視察をしているのよ。本人も《Femdom Ship》に乗りたがっていたんだけど、本当に残念だわ」
「ご主人も、事業にお忙しいようで、大変ですわね…ところで、王夫人にこの《Femdom Ship》の存在と乗船手続きを教えてもらって、大変助かりました。この通り、娘婿を奴隷に仕込めて、本当に感謝しています」
 孝治は二人の会話を聞いて、この中国女性が、自分を地獄に叩き落とす方法を真智子に教えた張本人だと分かり、はらわたが煮えくり返る思いだった。
「王夫人もご主人がいらっしゃらなくて、お寂しいでしょう…お慰みに、この男奴隷の舌使いを試してみます?」
 真智子は細い鎖を王桂梅に手渡し、彼女は目を輝かせた。
「あら、男奴隷を貸して下さるの?ありがとう、早速使わせてもらうわ」
 王桂梅は何の恥ずかしげも無く、チャイナドレスの裾をはね上げて脚を開き、鎖を引いて孝治の顔を、自分の股間に引き寄せた。彼女は下着をつけておらず、濃い陰毛に縁取られた赤い陰唇が、孝治の顔面に迫った。彼の鼻を、ムッとした強い女の臭いが突いた。王桂梅は鼻輪に繋がれた鎖をツンツン引いて、孝治の口元を自分の陰部に誘導した。孝治は鼻の痛みに耐えられず、彼女の思う通りに口を陰唇につけた。
「さあ、お舐め!手を抜いて、私を満足させられなかったら、鞭で体中に赤い筋を刻み込んでやるからね!」
 孝治は震え上がり、急いで舌を伸ばして、王桂梅の陰部を舐め始めた。チーフパーサーの佳奈に調教され、教えてもらった舌と唇の使い方を思い出しながら、必死に王桂梅に奉仕した。彼女は直ぐに反応し、陰唇が赤く充血してめくれて、とめどなく淫液が流れ出した。臭いのきつい大量の淫液が孝治の口と鼻に流れ込み、彼は溺れ死ぬんではないかと、本気で心配する程だった。それでも、お仕置きを恐れた孝治は、必死に舌と唇を使い、王桂梅を満足させる事に専念した。
 幸いにも、王桂梅は割と早く絶頂に達し、孝治の顔を太腿で強く締め上げ、背を仰け反らした。孝治は苦しくてもがいたが、彼女の脚の力は強く、身動き出来なかった。
少しの間余韻を楽しんだ彼女は、脚を緩めて孝治の顔を解放すると、鎖を真智子に返した。
「うふふ、舌使いは悪くないわね…これなら、真智子さんも娘さんも十分に楽しめるわよ」
「お褒め頂き、恐縮です。それでは、失礼しますね…ほら、ぼやぼやしてないで、自分の席に戻るわよ!」
 真智子は鎖を引いて、自分のテーブルに戻った。鼻のちぎれそうな痛みが、孝治を慌てて彼女について行かせた。
 真智子と優美が食後のコーヒーを味わっている間、孝治が付近のテーブルの様子を窺っていると、意外な光景を目の当たりにした。付近のテーブルにそれぞれ、白人のカップルと黒人のカップルが着いていたのだが、女性客は互いに男奴隷を交換して、虐めて楽しんでいた。
 孝治は二人の男奴隷を、テレビで見た記憶があった。白人男奴隷は、マスコミで常々白人至上主義を公言してはバッシングを受ける、有名な大富豪だった。その彼が、黒人女性の足元に跪き、
「何ていやらしいの、恥知らずの白豚め!」
と罵られて、強烈な平手打ちを何度も頬に受けていた。
 黒人男奴隷は、公民権運動に熱心で、人種差別絡みの訴訟では常に勝訴し、莫大な賠償金を勝ち取る有名弁護士であり、テレビで常に白人社会を批判していた。その彼は今、床に横たわり、白人女性に股間のものをハイヒールで踏みにじられ、
「お前は高貴な白人女性に絶対服従する、生まれながらの奴隷なんだよ!それを体に思い知らせてやるからね!」
と罵声を浴び、責められていた。
 両方の男奴隷に共通しているのは、喜悦の涙を流して興奮し、股間のものを猛々しくいきり立たせている事だった。マゾが深く進行した男達は、自分より上か同等の立場の女性に虐められるのでは物足りなくなり、自分が見下している対象の女性や、敵対視している対象の女性から蔑まれ、虐待される事で、被虐の快感を更に高めているのかもしれなかった。
 不意に、佳奈のアナウンスが会場に響いた。
「御来賓の皆様、そろそろパーティーの余興を始めたいと思います。本日は新婦の希望で、人間競馬を行います。参加を御希望される方は遠慮なさらず、ひな壇の前にお集まり下さい」
 乗客達は席を立ち、キャビンボーイ達が会場中央のテーブルを縁に片付け、競馬用のスペースを作った。まず、優美が孝治をひな壇の前に引っ張って行ったのを皮切りに、他の女性客達も自分の男奴隷を引き連れて、ひな壇の前に集まって来た。
 佳奈と女性パーサー達は、手際よく男奴隷達の顔に手綱付きのハミを装着し、女性客達に乗馬鞭を手渡した。また、希望する女性客の靴に、拍車を取り付けたりもした。佳奈は、孝治の鼻輪に繋がれていた細い鎖を一旦外すと、代わりに“bP”と記載された丸いナンバープレートを取り付けた。女性パーサー達も、他の男奴隷の鼻にそれぞれナンバープレートを取り付けていた。
 それを横目で窺っていた孝治は、男奴隷達の鼻には既に孔が開けられている事が分かり、慄然とした。
「只今、bPからbP2まで、人間馬が揃いました…それでは皆様、一口100ドルで、一位になる男奴隷をお選び下さい。騎手役のお客様がお賭けになっても、結構です。オッズは、それぞれ人間馬の掛け金で決まります」
 女性客達は大喜びで、キャビンボーイ達が廻って差し出している箱に、札びらを放り込んだ。キャビンボーイ達はミスが無いように、細心の注意を払って、女性客の予想と放り込まれた金額をメモした。賭け金の回収が一段落したところで、佳奈のアナウンスが会場に届いた。
「レースは、この会場を五往復して行います。レース中、他のお客様は人間馬に触れたり、鞭打ったりしないようにお願い致します」
 会場の端から端まで50mはあるので、一往復で100m、五往復で500mにもなる。この人間競馬は、スピードだけではなく、スタミナも要求される耐久レースであった。
 孝治の背中に跨っている優美が、ドスの利いた声で彼に告げた。
「今日のパーティーの主役は、私なんだからね。絶対に一等を取るのよ!もし、他の男奴隷に負けて、私に恥をかかせたりしたら…どんな目に遭うか、分かっているでしょうね!」
「ムグゥ」
 ハミをかまされている孝治は、呻き声みたいな返事しか出来なかったが、心底震え上がった。馬にされている他の男奴隷達は、体格のいい白人や、屈強そうな黒人に、バネのありそうな東南アジア系の若者等で、体格に恵まれておらず、体力に自信の無い五十歳の孝治には、とても勝ち目が無かった。
 自分が酷いお仕置きを受けるのは確実で、レースが始まる前から、絶望的な気分に襲われた。
「それでは、位置に着いて…用意、スタート!」
   佳奈はスタートの号令と同時に、手を大きく叩いた。女性客を背にした男奴隷達は、一斉に手足を動かして、這い進み始めた。乗馬鞭の音が会場に鳴り響き、見物している女性客達から嬌声が上がった。
 優美から乗馬鞭で尻を強く打たれ、脇腹に拍車を入れられた孝治は、がむしゃらに手足を動かして、必死に這い進んだ。しかし、大柄で屈強そうな男奴隷達からどんどん引き離され、会場を一往復した時点で、既に最下位になっていた。
「何してるのよ、一番遅くなってるじゃないの!もっと速くお走り!」
 優美は孝治を叱咤して、更に強く鞭を入れた。孝治は懸命に手足を動かしたが、他の男奴隷達との差は開くばかりだった。二往復、三往復もすると、さすがに息が切れ、手足に震えがきて、いつ潰れてもおかしくなかった。
 最下位のまま挽回出来ずに、スピードが落ちてふらつき出した孝治に、優美は脅すように叱りつけた。
「男奴隷、最下位どころか、途中で潰れでもしたら、お前を鼻から天井に吊して、一本鞭で全身を打ちのめしてから、尿道へ真っ赤に焼けた鉄串を突っ込んでやるからね!もっと気合いを入れて、お走り!」

 
 優美に脅かされた孝治は、恐れおののいて、気力で手足を動かし、必死に這い進んだ。最後の一往復になると、優美は生皮が全て剥ける程に、孝治の尻を乗馬鞭で立て続けに強く叩き、脇腹の肉が抉れる位に、拍車を強く入れ続けた。
 もう孝治には、痛み以外には何も感じられず、周りも見えなくなり、頭が空っぽになって、ただひたすらゴール地点に向かって這い進んだ。
 ゴールに到達した孝治は、目の前が真っ白になり、糸の切れた操り人形の様に、その場に崩れ落ちた。潰れてしまった孝治の背中から立ち上がった優美は、憤怒の形相で、
「何を勝手に寝転んでいるのよ!私を転げ落とすつもりだったの!?ふざけるんじゃないわよ!」
と怒鳴り付け、孝治を乗馬鞭で強く打ち据えて、ブーツで蹴りつけた。しかし、精も根も尽き果てた孝治は、ゼイゼイと喘ぐばかりで、身動き一つ出来なかった。
 騎手役の女性客が小柄で体重が軽かったせいもあり、優勝は東南アジア系の若者が獲得した。
「皆様、優勝はbUの男奴隷で、オッズは…7.8倍です。bUに賭けた方は、一口につき780ドルの払い戻しになります」
 佳奈がアナウンスすると、会場から歓声が上がった。少し落ち着いた孝治が、周囲の様子を窺うと、他の男奴隷達も彼と同じ様に、床にのびて、荒い息をしていた。中には途中で潰れてしまったのか、会場中央で騎手役の女性客から、酷い折檻を受けている男奴隷も何人かいた。
 人間競馬が終わり、女性パーサー達は、男奴隷達の顔面から、手綱付きのハミとナンバープレートを外した。佳奈も、孝治の顔面からハミとプレートを外し、再び鼻輪に細い鎖を繋ぐと、優美に手渡した。
「優美様のリクエスト通りに、馬調教を念入りに行ったのですが、まだ調教が足りなかったみたいですね…最下位の結果になってしまい、真に申し訳ございません」
 佳奈が頭を下げて詫びると、優美は笑顔で手を振って答えた。
「いいえ、チーフに調教してもらったおかげで、こんな年を取った男奴隷でも、途中で潰れたりせずに完走出来ましたわ。手間を掛けて頂き、本当に感謝しています」
「そうおっしゃって頂けると、安心出来ますわ…ちょっと、失礼しますね」
 佳奈は優美に一礼すると、司会席に戻って、アナウンスした。
「皆様、人間競馬に出場した男奴隷達は、疲れ果て、喉が渇いております…男奴隷達の水分補給も兼ねて、催された方は、彼らの口を便器に使用して下さいませ」
 早速、何人もの女性客が席を立ち、床にへばっている男奴隷達に近寄った。孝治の前へ真っ先に来たのは、真智子だった。彼女は、疲れ果てて喘いでいる孝治の頭を、ヒールで足蹴にした。
「婿殿、よく頑張って、最後まで走れたわね…ご褒美をあげるから、仰向けになって、口をお開け!」
 荒い息をしながらも、真智子に言われた通りに、孝治は床に横たわり、口を開けた。真智子は、パーティードレスのスカートの裾から両手を入れ、もぞもぞとパンティを脱ぐと、スカートを捲り上げ、仰向けになっている孝治の顔に跨った。
 孝治の上空に位置する、濃い繁みの中の赤くぬめった陰唇が、彼を奈落の底に叩き落とす怪物に見えた。真智子がしゃがみ込み、その怪物が孝治の顔面に迫って来た。
「男奴隷、こぼして床を汚すんじゃないよ…出るわよ!」
 真智子が言った途端、赤くぬめった陰唇から黄色い尿が噴き出て、孝治の開いている口に注ぎ込まれた。数え切れない程、女性パーサー達から尿を飲まされた孝治であったが、奸計で自分を罠に嵌めて、生き地獄に落とした真智子から飲まされた尿は、彼に無念さを強く感じさせ、とことん惨めな気持ちにさせた。それでも折檻を恐れた孝治は、アンモニア臭が強く、喉につっかえる尿を、必死に飲み続けた。
 排尿を終え、孝治の舌で後始末をさせていた真智子は、優美に声を掛けられた。
「お母さん、この男奴隷は、お母さんのおしっこを飲んで、興奮しているわよ。ここを、こんなに硬くして…本当にいやらしいわ!」
 孝治の顔面から立ち上がって振り返り、彼の股間を見た真智子も、驚きの声を上げた。
「まあ、こんなに猛り狂って…女のおしっこを飲んで昂るなんて、最低の変態だね、お前は!」
 佳奈の調教で、女性に辱めを受けると、条件反射で勃起してしまう体にされてしまった孝治は、真智子と優美に蔑まれ、恥ずかしさでこの世から消えたくなった。
 真智子が孝治から離れると、次に大柄な白人女性が、彼の顔に跨った。

 航海が終わるまでの残り十五日間、孝治は真智子と優美に散々虐待され、地獄を味わされた。若い優美は、孝治を馬に使ったり、鞭で打ったり、ペニスバンドで犯したり、様々な拷問器具に掛けて、彼が苦しむ様子を楽しんだりと、ハード系の責めを好んだ。
 真智子は、孝治をもっぱらバター犬として使用し、自分の快楽を追求する事を好んだ。彼女は中年女性特有の貪欲さで、孝治の舌を酷使して性的絶頂を楽しんだ。それも、一回で終わりではなく、二回目、三回目の絶頂を要求し、真智子が満足して眠る頃には、孝治の舌は腫れ上がって、痛みを生じる程だった。真智子は、食事中でも孝治の顔をクッション代わりに尻に敷き、自分の臭いを彼の顔に擦り付けて楽しんだ。

《Femdom Ship》では、男奴隷の交換がよく行われ、孝治もよく他の女性客に貸し出された。女性客は、国籍や人種により、責め方に特色があった。
 ドイツ人女性は、ナチス将校のコスプレをして、鞭とブーツを効果的に使い、人種差別丸出しの態度で孝治を虐め抜いて苦しめ、最後には失神させた。
 イギリス人女性は、乗馬が本場のためか、上流階級の本格的な乗馬服を身に着け、孝治を人間馬にして乗馬鞭を振るい、彼を延々と這い回らせて、乗り潰した。
 アメリカの黒人女性は、孝治をレスリングの技で苦しめ、ダウンした彼の顔面を巨大なヒップで押し潰し、腰を揺らして蹂躙した。
 フランス人女性と中国人女性は、食文化の豊かなお国柄のためか、下の口の要求も貪欲で、真智子みたいに孝治の舌が擦り切れる程に酷使した後、濃くて臭いのきつい尿を、腹が膨らむ程たっぷりと飲ませた。
 韓国人女性は、激情型の民族性のためか、孝治の両頬が赤く腫れ上がるまで激しいビンタをして、自分を昂らせてから、彼が半死半生になるまで、体中を酷く鞭打った。
 アラブ人女性は、男尊女卑のイスラム社会で過ごしている反動なのか、男性器への責めを好み、孝治を身動き出来ないように拘束すると、股間のものを細紐で括って、強く引っ張ったり、尿道に細い金属棒を突っ込んだり、陰嚢を強く握り締めたりして、彼を悶絶させた。

 真智子と優美の二人だけではなく、各国の女性達に虐められる孝治は、発狂寸前まで肉体も精神も追い込まれていた。しかし、孝治が辛うじて正気を保てたのは、心の奥底に秘めている真智子と優美への復讐心のおかげだった。
(後、もう少しで航海も終わる…船を下りて上陸したら、全財産を使ってでも、真智子と優美に仕返ししてやる!)
 孝治は、この復讐心だけを頼りに、女性達からの虐待に耐え、何とか精神を正常に保っていた。

 半月後の昼、《Femdom Ship》が港に接岸し、乗客達はぞろぞろと下船した。しかし、どういう訳か、孝治は大型犬用の檻に閉じ込められたまま、クレーンで港に下ろされ、そのままトラックの荷台に乗せられた。
 他の男奴隷達は、下船の際はきちんと服を着て、普通の客の様に振る舞っているのに、なぜ自分だけが、こんな扱いなのか…?孝治は、凄く嫌な予感に襲われ、悪寒がして、全身に鳥肌が立った。
 そこに、チーフパーサーの佳奈が近づいて、笑顔で孝治に話し掛けた。
「今日で船旅が終わって、お前ともお別れだなんて、少し寂しいわね…お前は、中国のお客様で、王桂梅という方に売却されたわ。残念ながら、お前はもう二度と日本に帰れないわよ」
 孝治は、頭を棍棒で殴られた様なショックを受け、両手で檻の鉄格子を掴み、大声を出した。
「そ、そんな馬鹿な、僕が売られるなんて…真智子と優美は、どこにいるんですか!?」
 佳奈は、些かうんざりした顔をして、返事をした。
「そんなに大声を出さなくても、聞こえるわよ…あら、丁度お二人がいらっしゃったわ」
 今度は真智子と優美が、それぞれキャリーケースを引きながら、孝治の檻に近づいて来た。先に、真智子が口を開いた。
「男奴隷…いえ、西岡さん、あなたとは今日でお別れね。あなたは、結婚パーティー会場で紹介した、王夫人に売る事にしたのよ。今後は王夫人に忠誠を誓って、可愛がってもらいなさい」
 孝治は目を剥き、大声で抗議した。
「ふ、ふざけるな!そんなの、人身売買じゃないか!この日本で、そんな事が許されると思っているのか!?」
 真智子は、憐れむような目つきで孝治を見て、教えてあげた。
「まだ、分からないの?ここは日本じゃなくて、中国の上海港よ」
 はっとした孝治が周りを見回すと、確かに建物の看板や、行き交う車のボディに記載されている漢字は、日本のものとは違っていた。
 真智子は、大きな封筒から数枚の書類を出して、孝治に見せつけた。
「西岡さん、あなたは船の階段で足を踏み外して転落し、頭を強打して死亡した事になっているの…これはチーフパーサーに作成してもらった船内事故証明書、これは船医の北川先生に書いてもらった死亡診断書、これは某国の領海で水葬を済ませたという葬儀の届出書…つまり、西岡さんは死亡して、もうこの世にはいないのよ」
 あまりの事に、孝治は口をパクパクさせるばかりで、声が出なかった。真智子は、書類を封筒に納めながら、説明を続けた。
「西岡さんの要求が、私と結婚する事だったら、一生男奴隷として、自宅でこき使ってあげてもよかったんだけどね…可愛い一人娘の優美に手を出そうとしたのは、さすがに許せなかったわ。それに、婚姻届を提出しているから、西岡さんは法律的に優美の夫でしょう。優美が本当に愛している人と結婚して、幸せな家庭を築くためには、西岡さんに消えてもらう必要があるの…だから、あなたを王夫人に売却処分したのよ」
 孝治には最早、言うべき言葉が無かった。真智子は、説明を続けた。
「中国でもSMは結構流行っていて、“虐愛”とか、“虐恋”とか表現するそうなんだけど、上流階級の一部では、ありきたりのSMでは満足出来なくなった人が多いらしくてね…S女性の間では、手加減無しで虐め抜いて、責め過ぎて殺しても構わない、消耗品としての男奴隷の需要があるのよ。だから王夫人は、喜んで西岡さんを購入してくれたわ。王夫人は、西岡さんを他の女友達にも貸し出すと言っていたから、早く虐め殺されないように、進んで人間便器に使ってもらうとか、愛想よくした方がいいわよ」
 ここで、優美が口を開いた。
「西岡さんには言ってなかったけど、私には本気でおつき合いしている人がいるの…彼と話して、半年後には、結婚する事になっているのよ…西岡さんは以前、お母さんと私の生活の面倒を見ると、言ってくれたわよね。それについては、私は可哀想な未亡人として、西岡さんの全財産を相続して、旅行保険の死亡補償を受け取るから、安心して頂戴…それじゃ、私達は飛行機で日本に帰るから、元気でね。バイバイ」
 真智子と優美は、孝治に軽く手を振ると、背を向けて立ち去ろうとした。孝治は一ヶ月前の様に、慌てて鉄格子の隙間から腕を伸ばし、
「待て、待ってくれ!お願いだから、戻ってくれ!」
と懇願した。しかし同じ様に、伸ばした腕を佳奈に鞭で強かに打たれ、悲鳴を上げて引っ込めた。孝治の悲鳴を聞いた優美は、足を止めて振り返り、思い出したように言った。
「そうそう、うっかり忘れていたわ…これは、せめてもの餞別よ」
 優美は、左手の薬指から結婚指輪を抜き取ると、孝治の檻に投げ入れた。カランカランという指輪の音が、孝治の頭へ虚ろに響いた。
「それじゃ西岡さん、本当にさようなら」
 真智子と優美は、もう振り返らずに、キャリーケースを引いて足早に立ち去った。佳奈はトラックの荷台扉を、ガシャンと音を立てて閉め、厳重にロックした。
 トラックが発進し、孝治は暗闇の空間で揺られながら、これから残酷な中国人女性に酷い虐待を受け続ける日々を思い、絶望で気が遠くなってしまった。

                         終わり