失 踪

作者 namelessさん
寺岡芳夫は、家の中を一通り案内されて、満足そうに頷いた。外観は古民家風だが、内部は明るく綺麗にリフォームされ、ネット回線とwi-fiも備えられていた。
「如何ですか…ここなら、寺岡先生も落ち着いて、小説を執筆出来ますよ」
この家のオーナーである春日恵美が案内しながら、芳夫に話し掛けた。彼女は八十歳を越えた老齢であるが、受け答えはハキハキしており、背筋も真っ直ぐで、実年齢より二十歳は若く見えた。恵美の居住地は東京都内であるが、彼女は北関東にある生家をリフォームし、貸別荘にしていた。
「いいですね…この辺りは田園が広がって静かだし、割と近くにお店も揃っているし、都内へのアクセスもそれ程悪くないし…決めました。一ヶ月間、お借りします」
 芳夫は即決し、恵美は満足そうに微笑んだ。その時、芳夫はリビングの壁に、大判の古い白黒写真が額に入れられ、飾られているのに気がついた。その写真は、乗馬服姿で長身の美女が、乗馬鞭を持って正面を見据え、中央で仁王立ちとなり、彼女の左右に十名位の男達が上半身裸で、膝を地面に着けて、顔を正面に向けている、奇妙な構図だった。

「あの…この写真の女性は、どなたですか?」
 芳夫が恵美に訊ねると、彼女は些か顔を翳らせて、答えた。
「ああ、真ん中の女性は、私の姉なんです…名前は、春日留美といって、私より十二歳も年上でした。姉は亡くなった両親の代わりに、私を育ててくれて…」
 恵美は芳夫に、春日家の歴史をかいつまんで、説明した。春日家は代々の庄屋で、この辺り一帯の広大な田園を所有する大地主だった。戦前までは大勢の小作人を使って、優雅な生活を送っていたのだが、戦後は農地改革で田園を全て取り上げられ、小作人達に分配された。春日家は財産を殆ど失い、生活は窮迫して、両親は心労のため相次いで急逝し、留美と恵美の姉妹二人だけが残されてしまった。

 幸いにも、所有していた山林は、農地改革の対象外だったので、長女の留美が苦労して山を切り開き、果樹園を始めて、何とか生活を立て直した。留美は春日家の復興を目指して、がむしゃらに働いたが、三十代半ばで肺病のために亡くなってしまった。
 姉を亡くして、一人ぼっちになった二十歳そこそこの恵美は途方に暮れたが、運よく果樹園の山に高速道路が通ることになり、山がかなりの高値で売れた。その費用で、恵美は東京都内に移り住み、普通の会社員と知り合って結婚し、平凡ながらも穏やかな生活を送り、最近は曾孫にも恵まれたという事だった。
「…春日家の財物と不動産は殆ど処分しましたが、姉との思い出が詰まったこの生家だけは、手放せなくて…それで今は、貸別荘にしているんですよ」
恵美の説明を聞き、三十六歳の俊夫は、まだ自分の生まれる遥か前の、戦後の混乱期を生き抜いた女性のバイタリティに感服した。
恵美は、額に入れられた白黒写真について、説明した。
「うまく説明出来ないんですが、姉には男性達を引き寄せる、独特で強烈なカリスマ性があって…一緒に並んでいる男性達は、姉を崇拝し、殆ど無報酬で果樹園の運営を手伝ってくれた方々です…これは果樹園が開かれた記念の、集合写真なんですよ」
「はあ…そうなんですか」
 芳夫は改めて白黒写真を見つめ、きりっとした目つきで、鼻梁の通った細面の美しい留美に、男達が彼女に引き寄せられる理由が、何となく分かるような気がした。
「寺岡先生、ここには家財道具と家電は一通り揃っていますから、着替えだけでいつでも滞在出来ますよ」
「分かりました。早速明日から、滞在させて頂きます」


 翌日、芳夫はかなり高額の賃貸料を全額前金で恵美の口座に振り込むと、着替えとノートパソコンを持って貸別荘を訪れ、近くのミニスーパーで食料品と缶ビールを買い込んだ。
リビングの机でパソコンを開いた瞬間、芳夫のスマホが大きく鳴った。液晶画面に表示された名前が、出版社の編集者なのを見た彼は、舌打ちしながら通話した。
「…はい、はい、分かってますって。ちゃんと締め切りまでには仕上げて、メールで送りますから、心配御無用ですよ…それじゃ」
 芳夫はスマホを切って机に置き、ため息をついた。

  
 芳夫は学生時代から小説家を目指し、大学を卒業しても就職せず、実家に寄生して、アルバイトをしながらミステリー小説を書き続け、色々な出版社に原稿を持ち込んだり、懸賞に応募したりしていた。まったく芽の出なかった芳夫が三十歳になり、親から「いい年して真面目に働かなければ、勘当して、家から出ていってもらう」と本気で怒られ、自分でも小説家になる夢を諦めかけた時、応募していた彼の小説が、一流出版社のミステリー大賞に選ばれた。マスコミにも取り上げられ、芳夫は一躍時の人となり、各出版社からの執筆依頼が殺到した。親からも小説家としての自分を認められ、ようやく小説一本で食っていける目処が立った芳夫は、色々と掛け持ちしていたアルバイトを全て辞め、集中して小説を書き続けた。しかし、三十六歳になった今、息切れがして、アイディアが全く思いつかず、スランプに陥っていた。


 締め切りが刻々と迫る中、芳夫はふと、小説家仲間の吉村信彦を思いだした。彼は時代小説専門で、芳夫とはジャンルが異なっていたが、出版社での打ち合わせの際に、よく顔を合わせて、話をするようになった。同い年で、下積みの苦しい時期が長かった芳夫は、自分とよく似た境遇の信彦とウマが合い、よく居酒屋に誘われて、小説談義に花を咲かせた。

 信彦の時代小説は結構売れていたのだが、去年の今頃、不意に姿を消し、行方はようとして知れなかった。周囲は、スランプでプレッシャーに耐えられなかったとか、作家としての限界を感じていたとか色々と噂したが、姿を消す前にきちんと原稿を完成させて、出版社に郵送しており、彼が失踪した本当の理由は、誰にも分からなかった。
 芳夫が信彦を思い出したのは、彼が失踪する前にツイッターで春日恵美の貸別荘を絶賛していたのが、何か心に引っ掛かっていたからであった。それで彼女の貸別荘を訪ねてみて、一目で気に入り、この環境なら気分転換出来て、小説が書けると思い、一ヶ月間借りたのであった。


芳夫はパソコンを起動させると、頭を振って気持ちを切り替えようとした。彼は、原稿用紙にペンで書き込むのではなく、パソコンのキーボードを叩いて文章を構成し、関係資料はスマホで検索するスタイルで小説を書いていた。芳夫は、パソコン画面に十数行の文章を打ち込み、読み返しては消去するといった虚しい作業を、何度も繰り返した。
ようやく小説一本で飯が食えるようになったのに…いい年をして不安定なフリーターをしながら、実の親にも罵られて、将来への不安を抱え、出版社からボツにされる小説を書き続ける…あの惨めな境遇にだけは戻りたくなかった。
しかし、芳夫が焦れば焦る程、文章の表現が荒れていった。結局その日は小説が殆ど進まず、芳夫は執筆を諦めて寝室に行き、ため息をついて布団に潜り込んだ。


目が覚めた芳夫は、ぼうっとする頭に手をやり、上半身を起こした。気がつくと彼は、全裸で山の中に横たわっていた。
(えっ、ええっ!?ここは、どこだ?俺は、何で裸なんだ!?)
 周囲を見渡すと、十名位の男達が、全裸で靴を履き、手に軍手をはめた奇妙な格好で、草取りをしたり、果樹の剪定をしたりして、忙しそうに農作業をしていた。
(何だ、この男達は!?何で皆、裸で働いているんだ?)
芳夫が呆然と眺めていると、背後から風を切る音がして、ビシッという音と共に、肩口から背中に掛けて、焼け火箸を当てられたような激痛が走った。
「ぎゃあぁっ」
芳夫は思わず悲鳴を上げ、背中を仰け反らせた。痛みで引きつる体を何とか動かし、後ろを振り返ると、長身のポニーテールで乗馬服を着た美しい女性が、乗馬鞭を持って仁王立ちになり、芳夫を睨みつけていた。
「他の者は皆、一生懸命働いているのに、お前は何をサボっているんだい!男奴隷の分際で、横着な!」
いきなり女性に怒鳴られた芳夫は、全く訳が分からなかったが、女性の前で全裸なのに気づき、恥ずかしさで顔を赤らめ、慌てて股間を両手で隠した。
それでも、いきなり鞭打たれた怒りで、女性に怒鳴り返そうとしたのだが、彼女のきつい目つきで睨まれて、なぜだか萎縮してしまい、
「…ぼ、僕は奴隷じゃない」
と声のトーンを落として、小さな声で精一杯言い返した。
しかし、芳夫が言い返すのを聞いた、美しい女性は柳眉を逆立てて、
「何ですって!?まだ、自分の立場が分かってないんだね!それなら体に、奴隷の身分を思い知らせてやるわよ!」
と言って、乗馬鞭を地面に放り、代わりに輪に丸めて腰に装着していた一本鞭を解いて、手にした。
「男奴隷、覚悟おし!」
彼女は黒光りする一本鞭を振り上げると、全裸で呆然と立っている芳夫の体に、思い切り叩きつけた。
「ギャアワァーッ」
乗馬鞭の打撃とは比べものにならない、強烈な激痛と衝撃を裸の体に受け、芳夫は獣じみた絶叫を上げた。たったの一撃で、芳夫は頭を抱え、その場にうずくまってしまった。しかし、女性の一本鞭は止まらなかった。凶悪な呻りを上げ、雨あられと鞭を浴びせられ、芳夫は全身の生肉が、真っ赤に焼けた刃物で切り取られていくように錯覚した。まるで凶暴な黒い龍が、何匹も芳夫の体に群がって、硬く鋭い鱗で彼の生肉を引き裂いているようだった。
女性がようやく鞭を振るうのを止めた時、芳夫の全身には、赤い条痕が縦横無尽に刻み込まれ、彼は息も絶え絶えに、地面にうつ伏していた。
女性はうつ伏している芳夫の頭を、乗馬用ブーツで踏みにじり、
「これで、男奴隷の身分が分かったでしょう…それとも、まだ鞭が足りないかしら?」
と嘲るように、問い掛けた。
芳夫は、乗馬用ブーツの下で喘ぎながら、
「…はい、分かりました…男奴隷の身分が、身に染みて分かりました…ですから、どうか鞭だけは、お許しを…」
と震え声で、何とか答えた。初対面の女性に奴隷呼ばわりされ、鞭で半死半生になるまで打たれるなんて、男として耐え難い屈辱であったが、鞭の激痛と恐怖には勝てなかった。今の芳夫には、自分を鞭打って痛めつけた女性に、卑屈におもねる事しか出来なかった。
芳夫の返答を聞いた女性は、満足そうに微笑むと、彼の頭を乗馬用ブーツで小突いて、命令した。

「男奴隷の自覚が出来たのなら、何時までも寝そべってないで、正座おし!」
芳夫は全身を鞭打たれて、引きつる体を無理に動かし、何とか地面に正座した。女性は、正座している芳夫の前で、乗馬用ブーツをドンッと踏み鳴らした。
「ぼうっとしてないで、女御主人様のブーツに、奴隷のキスをおし!」
あまりの屈辱に、芳夫は目の奥が熱くなり、涙が浮かんで来たが、鞭を恐れて、土下座する格好で乗馬用ブーツの爪先に唇を何度もつけた。
女のブーツにキスするなんて…男のプライドをズタズタに切り裂かれた芳夫は、涙を乗馬用ブーツにこぼしてしまった。彼は女性のお仕置きを恐れ、慌てて自分の涙を唇で吸い取った。
「ウフフ…反抗的な男がコロッと従順になる、この瞬間が堪らないのよねえ…」
頭上から降り注ぐ女性の嘲笑と蔑みが、芳夫の心を深く抉った。女性は不意に乗馬用ブーツを引き、芳夫に頭を上げるよう命じた。
彼女はカチャカチャと音を立ててベルトを緩め、何の恥ずかしげも無く、乗馬ズボンを膝まで下ろして、白い薄手のズロースに包まれた股間を、芳夫に見せつけた。
「男奴隷、犬が主人の臭いを覚えるように、お前にもこの留美様の臭いを覚えさせてあげるわ!」
女性は、正座して目を丸くしている芳夫の髪を、両手で掴むと、彼の顔面を自分の股間に引き寄せて、強く押し付けた。
「ムッ、ムグゥッ…」
白色の薄いズロースで覆われた柔らかい女性の丘で、自分の鼻と口を塞がれた芳夫は、呻き声を漏らして、目を白黒させた。ズロースの薄い布の隙間から、何とか空気を吸えたのだが、同時に女性の饐えたようなきつい臭いも吸い込むようになり、芳夫は咽せそうになった。
女性は、苦しむ芳夫を頭上から楽しそうに眺め、腰を揺らせて、面白そうに彼の顔面を蹂躙した。顔面を強く女性の股間に擦り付けられ、芳夫は頭がクラクラした。
男の顔を、女の股で辱められるなんて…女性の強烈な臭いも加わり、芳夫の精神は屈辱でボロボロに崩壊しそうになっていた。
不意に、女性は芳夫の顔を解放し、彼の股間を指差して、大声で嘲笑った。
「アハハ、お前、興奮しているのね。本当にいやらしい男奴隷だこと」

女性に指摘され、芳夫は初めて自分が勃起しているのに気がついた。女性の臭いを嗅がされ、不覚にも欲情してしまったようだ。
女性は乗馬ズボンをずり上げて、ベルトを締め直すと、酷い命令を下した。
「私にも慈悲はあるから、お前を気持ちよくさせてあげるわ…自分でしごいて、すっきりしなさい!」
芳夫が耳を疑っていると、女性は手を叩いて、作業中の男達を呼び寄せた。女性は、正座して股間のものを屹立させている芳夫を指差し、
「今から、この男奴隷がオナニーするから、皆で見ていなさい」
と、男達に命じた。
 芳夫が愕然としていると、女性は一本鞭を手にして、
「何をぼやぼやしてるの!さっさと、オナニーおし!」
と命令した。普通なら、そんな恥辱的な命令に従う筈も無いのだが、鞭を目にした芳夫は、急いで硬く屹立している股間のものを掴み、しごき始めた。女性から一本鞭で、死の一歩手前まで打ち据えられた彼は、鞭打ちから逃れられるのなら、どんなに惨めで屈辱的な事でも出来るようになっていた。
せめて、鞭の恐怖と大勢に見られている惨めさで、股間のものが萎えてくれれば…と願ったが、特異な状況で、異常な興奮をしてしまったせいか、萎える気配は無く、逆にますます硬度を増していた。
芳夫のオナニーを見せつけられている男達は、全員やるせなさそうな表情だった。その男達の中に、小説家仲間である吉村信彦の顔があるのに気づき、芳夫は手を烈しく動かしてしごきながらも、唖然とした。
「ウフフ、皆に見られているのに、オナニー出来るなんて、お前はもう人間じゃないね。猿以下だわ…お前は動物以下の、最低の男奴隷に成り下がったんだよ、このうじ虫!」
女性に酷く罵られた芳夫は、頭の中で何かが音を立てて弾け、硬く屹立したものから、夥しい白濁液を噴出させた。その瞬間、芳夫はまるで自分の脊髄が引き抜かれたように感じ、全身の力が抜け、がっくりとうなだれた。女性は、芳夫を嘲った。
「よく射精出来たものね。本当に恥知らずの、ケダモノだわ…昔のアメリカ南部では、従順じゃない黒人奴隷を大勢の前で、親子や兄弟姉妹で無理やりまぐわせたり、オナニーさせたりしたの。そうすると、反抗する気力を全て失い、主人の命令に唯々諾々と従うようになったそうよ…お前もこれで、私に従順な男奴隷になれたわよね。オホホホ…」
 芳夫の頭に、女性の勝ち誇った笑い声が虚ろに響き、不意に目の前が暗くなり、気が遠くなってしまった。


芳夫は、急に目を覚ました。全身に、嫌な寝汗をびっしょりかいていた。壁の時計は、午前二時を示していた。
(何で、あんな夢を見たんだろう…?)
 体を起こそうとしたが、妙に体が痛みで引きつり、うまく動けなかった。その時、股間がべとついているのに気づき、自分が夢精してしまったのが分かった。
(いい歳して…しかも、あんな悪夢で夢精したのか?)
 芳夫は、自分が信じられないという風に頭を振ったが、先ずシャワーを浴びて、パジャマを着替えることにした。
浴室でパジャマを脱ぎ、鏡をみた芳夫は、愕然とした。体中に、赤い条痕が走っていたのだ。道理で、痛くて体が引きつる訳だ。
(あれは、夢じゃなかったのか…?いや、それなら自分がここにいる筈が無い…じゃあ、なぜ体に鞭痕が残っているんだ?悪夢で受けた傷が、体にそのまま残るなんて、昔のホラー映画みたいだ…)

芳夫は頭が混乱し、訳が分からなかったが、とりあえずシャワーを浴びて、全身の汗と股間のべとつく汚れを洗い流した。
バスタオルで体を拭い、新しいパジャマに着替えた芳夫は、真っ直ぐリビングに行って灯りを点け、壁に掛かっている白黒写真を見つめた。
(間違いない…夢で自分を虐待した女性は確かに、この中心に写っている春日留美だ。夢の中でも『この留美様の…』とか言っていた…)
芳夫はふと、全裸で農作業していた男達の中に、小説家仲間の吉村信彦がいたのを思い出した。彼が改めて白黒写真を見直すと、春日留美の左右で膝をついている男達の、一番左端が吉村信彦の顔だった。
(なぜ、吉村が写っているんだ!?彼は自分と同い年だから、生まれる遥か前の、こんな古い写真に写っている筈が無い…まあ、他人の空似かもしれないが…)
もう、全く訳が分からなくなった芳夫は、考えるのを諦めて寝室に戻り、再び布団に潜り込んだ。


朝になり、布団から這い出た芳夫は、顔を洗うと、トーストと目玉焼きとトマトジュースだけの簡単な朝食を摂り、パソコンを置いている机に向かった。あの後はよく眠れず、寝不足だったが、締め切りを考えれば、休む事もままならなかった。
パソコンを起動させた芳夫は、寝不足の自分に期待せずに、嫌々ながらキーボードを叩き始めた。しかし、意外にも文章が次々と滑らかに、頭に浮かんできた。また、あれこれ悩んでいたストーリーと人物描写とトリックが、潜在意識から浮上して結びついたかのように頭に浮かび、芳夫は昼食を摂るのも忘れ、キーボードを叩き続けた。
気がつけば、外はすっかり暗くなっていた。かなり小説を書き進めた芳夫は、今日はこの辺で止めて、晩飯を摂ることにした。レトルト食品を缶ビールで流し込みながら、芳夫は色々と考えた。
この調子で行けば、締め切りよりずっと前に、小説を書き上げられるだろう…あの悪夢が、脳を刺激して、活性化させてくれたのかもしれない…缶ビールを些か空け過ぎて、酔いが廻った芳夫は、歯を磨いて、布団に潜り込んだ。

目が覚めた芳夫は、またも全裸で山の中に横たわっていた。気がつくと、全裸の男達が横一列に並んで直立し、留美の目視点検を受けていた。芳夫は前回の仕打ちを思い出し、慌てて列の端につき、直立不動の姿勢を取った。
乗馬服姿の留美は、ピシピシと乗馬鞭で自分の掌を叩きながら、端から男達の体と顔つきをチェックしていたが、最後の芳夫の前で足を止めた。
「お前、どうして点呼に遅れたの?」
留美に詰問された芳夫は、しどろもどろになった。
「ええ、あの、その…つまり、その…」
不意に留美の強力な往復ビンタが芳夫の両頬に炸裂し、目から火花が散りそうになった。
「ひいぃっ」
情けない悲鳴を漏らした芳夫を、留美は怒鳴りつけた。
「男奴隷の分際で遅れるなんて、どういうつもりよ!お仕置きだよ…両手を頭にやって、足を開き、腰を突き出しなさい!」
男の顔を女に平手打ちされ、恥ずかしいポーズを強要されるなんて…芳夫の精神は屈辱感で押し潰されそうになったが、前回受けた鞭の恐怖には勝てなかった。彼は泣きたくなる思いで、命じられた通りの屈辱的な姿勢を取った。
留美は、突き出された芳夫の股間のものに手を伸ばすと、柔らかく揉み始めた。
「ああっ…」
芳夫は異様な感覚と恥辱に、思わず声を漏らし、身悶えた。留美は目をキラッと光らせ、芳夫に厳しく注意した。
「動くんじゃないよ!勝手に動いたりしたら…どんな目に遭うか、分かっているだろうね!」
留美は柔らかい手で、大きく硬くなりつつある芳夫のものを、ゆっくりとしごいた。
「ううっ…」
急速に高まる快感に、芳夫は呻き声を漏らし、目を閉じた。
「目をつぶるんじゃないよ!しっかり、私の目を見なさい!」
 留美に叱られた芳夫は、恐々と目を開けた。彼女のきつく鋭い目で見つめられた芳夫は、蛇に睨まれた蛙同然だった。それでも、留美の柔らかな手でしごかれている芳夫のものは、極限まで快感が高まって硬くなり、射精寸前にまで追い込まれた。
留美は邪悪な笑みを浮かべ、芳夫の硬く屹立したものをしごきながら、
「言っておくけど、女御主人様の許しも無く、勝手に汚らしい白い汁を漏らしたりしたら…これをちぎれるまで鞭打って、睾丸を踏みにじり、擦り潰してやるからね!」
と残酷に釘を刺した。
しかし、留美の柔らかい手で、股間のものを巧みにしごかれ、たちまち芳夫は限界に追い込まれてしまった。
「ううっ、ああっ…お許しを、どうかお慈悲を…」
芳夫は脂汗を出し、恥も外聞も無く身悶えして、留美に懇願した。しかい、留美は薄笑いを浮かべながら、芳夫のものをしごき続け、情け容赦無く彼を追い詰めた。芳夫のものは、破裂するかと思われる程、硬く膨張した。
後一擦りで射精するところで、留美は芳夫のものから、ぱっと手を離した。芳夫は泣きそうに顔を歪め、ため息をついた。留美は、少し下がって間合いを取り、乗馬鞭を振り上げた。
「この私が、お前の醜いものを撫でてやったのは、お前を気持ちよくさせるためじゃないよ…大きくさせて、鞭で打ち易くするためさ!」
留美はそう言うと、些かの手加減はしたものの、芳夫の限界まで硬く屹立しているものを、乗馬鞭で鋭く打った。
「ぎゃあぁーっ」
敏感になっているものを鞭打たれた芳夫は、絶叫を上げて両手で股間を押さえ、その場に崩れ落ち、地面に転がって悶え苦しんだ。
そこで留美はようやく、他の男達に声を掛けた。
「お前達、ぼやっとしてないで、作業に取り掛かるんだよ!」
芳夫の周囲で見物していた裸の男達は、虚ろな表情で、それぞれ果樹園の作業に取り掛かった。留美は、地面で体を丸めて苦しんでいる芳夫の髪を掴み、力強く引き上げ、彼を無理やり正座させた。

「今のお前に農作業させても、足手まといになりそうだから、馬に使ってあげるわ…口をお開け!」
正座させられた芳夫が、恐々と口を開けると、留美はいつの間に用意したのか、手綱付きのハミを手際よく彼の口に嵌めて、しっかりと装着した。留美は正座している芳夫に、肩車するように跨ると、手綱を握り、乗馬鞭を鳴らして命令した。
「男奴隷、キリキリお立ち!」
グラマーで長身の留美は結構体重があり、芳夫は全身の力を込めて、ふらつきながらも何とか立ち上がった。
「ボヤボヤしてないで、とっととお進み!」
芳夫の肩に跨っている留美は、両足の拍車を彼の脇腹に蹴り込んで、命じた。彼女は手綱と乗馬鞭と拍車を効果的に使い、芳夫に進む方向を示した。芳夫はよたよたと歩き回りながら、男の自分が女から馬にされる惨めさで、目に涙を浮かべた。
留美は芳夫に、果樹園の作業をしている男達の周囲を巡回させ、作業に少しでももたつきがあると、容赦無く乗馬鞭を浴びせた。
広い果樹園を何周も廻らせられた芳夫は、既に体力の限界に来ていた。元々、机にかじりついて小説を執筆している芳夫は、普段から運動不足で体力があるわけでもなく、肩に乗せている留美の体重が負担となり、足がふらついていた。それでも、彼女からのお仕置きを恐れ、汗を滝の様に流し、気力で足を進めていた。
水が湧き出ている水飲み場に来た時、留美は不意に手綱を引き、
「止まれ!」
と命令した。芳夫が足を止めて、ぜいぜい荒い息をしていると、彼女は拍車を彼の脇腹に蹴り込み、
「ぼうっと立ってないで、さっさとしゃがむんだよ!」
と叱りつけた。芳夫が留美を転げ落とさないよう、苦労してしゃがみ込むと、彼女はさっさと芳夫から降りて、水飲み場に置かれている柄杓を使い、冷たい湧き水を美味しそうに飲んだ。
喉がカラカラの芳夫は、自分にも水を飲ませてと訴えようとしたが、口に嵌められたハミのために、意味の分からない呻き声を漏らすだけだった。
しかし、ここで留美は、意外にも優しい行動を取った。ハミを芳夫の口から外して、湧き水を汲んだ柄杓を、彼に手渡したのだ。芳夫は何も考えられず、ゴクゴクと喉を鳴らして、柄杓の湧き水を飲み干した。
「うふふ、馬にも水くらい与えないとね」
いやに悪戯っぽい口調で話し掛けた留美に、水を飲んで一息ついた芳夫は、土下座して謝意を述べた。
「留美様、男奴隷に水を恵んで頂き、真にありがとうございます」
芳夫は、留美に礼を言っておかないと、どんなお仕置きをされるか分からないという恐怖に、囚われていた。彼女は乗馬用ブーツで、土下座している芳夫の頭を小突くと、凛とした声で命じた。
「男奴隷、顔をお上げ!」
上半身を起こした芳夫に、留美は酷い言いつけをした。
「そう、ありがたいと思っているのね…それなら、お礼にお前のオナニーを見せて」
「ええっ!?」
芳夫は驚きの声を上げたが、留美のきつい目は、しっかりと彼を見据えていた。彼女は乗馬鞭で、自分の手の平をピシピシと叩きながら、
「それとも、私のお願いは聞けないのかしら?本当は、ありがたいと思っていないの?」
と、からかうような口調で問い掛けた。留美のお仕置きを恐れた芳夫は、慌てて中腰になり、股間のぶら下がっているものに手をやって、
「い、いえ、やります。今から、オナニーをお見せします」
と答えた。しかし、留美から人間馬として酷使された芳夫は、体力を消耗しており、いくら両手でいじっても、股間のものは硬くなりそうもなかった。
芳夫が泣きそうな顔で焦るのを見た留美は、
「しょうがないわねぇ…手伝ってあげるわ」
と呟くように言って、乗馬鞭を芳夫の股間に伸ばした。
彼女は乗馬鞭の先で、芳夫の太腿の内側や、陰嚢や、陰茎を絶妙なタッチで撫でさすりした。革のざらついた感触と、異様な状況で興奮を覚えたのか、芳夫のものは徐々に硬くなり、頭をもたげてきた。芳夫は勃起しつつあるものを、萎えてしまわないようにと、懸命にしごき出した。
「うふふ、鞭で撫でられて興奮するなんて、本当に変態だね…男奴隷、私の言う事を復唱しながら、オナニーしなさい。『私は鞭で興奮する、最低の変態です』ってね」
留美は嘲るような口調で、芳夫に命じた。
「わ、私は…鞭で興奮する…最低の…変態です…」
芳夫はあまりの屈辱に、半ば泣き声で留美の言う事を復唱しながら、自分のものをしごき続けた。
「私は、鞭でオナニーする変態です」
「私は、鞭で打たれて、興奮する男奴隷です」
「私は、精液を全て鞭に捧げる変態です」
等と、留美に屈辱的な台詞を次々に復唱させられながら、オナニーし続ける芳夫は、殆ど泣き顔になっていた。しかし、彼のものは極限まで硬度を増し、射精寸前となってしまった。
 もう、射精してしまうと芳夫が思った瞬間、彼の硬く屹立しているものを、しごいている手ごと、留美は乗馬鞭で鋭く打ち据えた。
「うぎゃあぁーっ」
股間のものがちぎり取られるような激痛で、芳夫は獣のような絶叫を上げ、背をのけ反らせた。しかし、屹立したものから、多量の白濁液が迸った。射精して、気力と体力を根こそぎ奪われた芳夫は、全身の力が抜けて、地面にどうっと横倒しになった。
留美は悪魔的な笑顔で、横に倒れた芳夫の頭を、乗馬用ブーツで踏みにじった。
「これでお前は、鞭打たれて射精する、最低の変態男奴隷になったんだよ…これから、もっともっと虐めて、男に生まれた事を後悔させてやるから、楽しみにしといで!アハハハ…」
留美の勝ち誇った嘲笑が、芳夫の頭に大きく反響し、彼は目から屈辱の涙を溢れさせながら、意識が遠くなっていった。


気がつくと、芳夫は布団の中で横になっていた。全身に寝汗をかいて、股間をべとつかせている彼は、真っ直ぐ浴室に向かい、パジャマを脱ぎ捨て、鏡で自分の体をチェックした。
今までの鞭痕に加え、脇腹には拍車を蹴り込まれた傷痕があり、股間のものは赤く腫れ上がっていた。
(やっぱり、夢じゃなかったのか…それなら、どうして俺はここにいるんだ?)
芳夫はふと、昔読んだ心理学の本に、強い催眠術に掛けられた者が、これは焼け火箸だと言われて、割り箸を手の甲に押し付けると、本当の火傷みたいに赤い火膨れの筋が出来たというエピソードが書かれていたのを、思い出した。
自分の体に起きたのも、その現象かと考えたが、いくら何でも傷の度合いがひど過ぎた。シャワーで体を洗い流しながら、あれこれ考えたが、納得出来る答えは見つかりそうもなかった。
芳夫は新しいパジャマに着替え、再び布団に潜り込む事しか出来なかった。


朝になり、布団から這い出て、顔を洗った芳夫は、食欲が無くて朝食を摂らず、コーヒーだけを口にした。悪夢と体の傷痕の関係を色々と考えたが、やはり結論は出なかった。
芳夫は頭を振って、ノートパソコンが置かれている机についた。寝不足で、頭がぼうっとしていたが、起動させたパソコンのキーボードを叩き始めると、昨日と同じ様に、次から次へ文章が浮かび、昼食も夕食も忘れ、気がつくと既に夜中になって、小説を完成させていた。
遅筆の芳夫は、締め切りのかなり前に小説を書き上げたのが、我ながら信じられなかったが、早速出版社の編集部宛に、完成させた小説をメールで送信した。
さすがに空腹を覚えた芳夫は、昨日と同じに、レトルト食品を缶ビールで流し込んだ。簡単に夜食を済ませた芳夫は、ナッツとチーズをつまみに、缶ビールを空け続け、自分の身に起きた事と、これからどうするべきかを考えた。
(この貸別荘は、おそらく呪われている…このまま寝たら、また恐ろしい悪夢を見て、体に傷を増やすだろう…ひょっとしたら、今度は生命までも失うかもしれない…やはり、今から荷物をまとめて、直ぐにここから出て行くべきだ…)
しかし、芳夫はまた冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プシュッと開けて、口にした。

(だが、あの美しい春日留美という女性に、散々酷い目に遭わされたが、何とも説明出来ない凄い魅力がある…女に虐待されるのは屈辱の極みだが、今まで経験した事のない強烈な射精の快感…あの快感は、とても忘れられない…)
芳夫はかなりの本数の缶ビールを空けていたが、頭が冴えて、全く酔えなかった。結局、彼は昨日と同じに、歯を磨いてから寝室に行き、布団に潜り込んだ。
(まあ、ここに滞在すれば、どういう訳か、小説がスラスラ書けるしな…)
芳夫は、言い訳のように自分に言い聞かせたが、本当は小説はどうでもよくなり、春日留美に会って、蹂躙されたい一心で、目を閉じて眠りについた。


目が覚めた芳夫は、今度は山の中ではなく、古民家の広い納戸の中にいた。彼は全裸で、両手を縄で縛られ、天井の梁から滑車で吊されていた。両足は開かれて、両足首を竹竿に縛られて固定されており、全く無防備な状態だった。
周りを見回した芳夫は、説明されなくても、リフォームされる前の、昔の春日家であるのが、なぜだか一瞬で理解出来た。
不意に納戸の扉が開き、髪をアップでまとめた、浴衣姿の留美が入って来た。今までの乗馬服姿も実に似合っていたが、浴衣で古風な雰囲気を醸し出している留美は、本当に美しかった。
芳夫が呆然と留美に見とれていると、彼女は納戸の壁に掛けられている竹鞭を手にし、吊り下げられている芳夫の前に、立ちはだかった。邪悪な笑みを浮かべた留美は、浴衣の袖を捲ると、竹鞭で芳夫の体を何度も打ち据えた。
「うあぁーっ」
 小太刀で体を斬りつけられる様な、鋭い痛みに、芳夫は悲鳴を上げて、苦しみもがいた。留美は急に、竹鞭を下から掬い上げるように振って、芳夫の股間を打った。
「ぐおぉうっ」
急所を強かに鞭打たれた芳夫は、くぐもった悲鳴を漏らし、体を震わせて悶え苦しんだ。留美は微笑みながら、下腹部に広がる痛みで涙をこぼしている芳夫の頬に手を添え、優しい口調で尋ねた。
「ねえ、あんなに痛い目に遭わされても、なぜここから逃げ出さなかったの?」
芳夫には、留美の質問の意図が分からず、逆に聞き返した。
「…あの、あなたは、一体どなたですか?それにここは
、どこなんですか?」
留美は、芳夫の無礼な質問に怒らず、笑顔で答えた。
「私は、春日留美…春日家の跡継ぎよ。ここは春日家の生家…とは言っても、あの世なんだけどね…お前は今、あの世と現世の境にいるの。だから、時間と空間を飛び越えて、昔の春日家にいるのよ」
芳夫には、留美の答えた内容が、全く理解出来なかった。不思議そうにしている芳夫に、留美は説明を続けた。
「戦後の農地改革で、春日家は没落してしまってね…世間は没落した地主の家族を嘲笑い、元の小作人達からも手の平返しでないがしろにされ、心労で両親が亡くなったの…残された私は、必ず春日家を復興させて、世間を見返してやると、心に堅く誓ったわ…昔でも、女性にかしずいて虐められたい男は、結構多くてね…そんな男達に協力してもらい、果樹園を開いて、懸命に働いたわ。しかし、三十半ばで、肺病を患って死んでしまったの…志半ばで、急逝してしまった私は、無念さで成仏出来ず、この春日家に泊まる男達を奴隷に取り込んで、少しでも無念を晴らしているのよ…」
芳夫は唖然として、留美の説明を聞いていた。
「私は死の間際に、歳の離れた妹の恵美へ、自分の無念さを訴えたの…恵美は私の意を汲んでくれて、この春日家の生家だけは残してくれたのよ…そこに、お前が来たの」
 芳夫は、恵美の貸別荘に逗留したため、留美に捕捉された事が分かった。留美は再度、芳夫に問い掛けた。
「もう一度、訊くわ…なぜ私から痛めつけられても、この家から逃げ出さなかったの?この家を出れば、痛い目に遭わなくてすむのに…ひょっとして、お前も女に虐められて喜ぶ、変態のマゾヒストなの?」
芳夫は顔を赤くさせて、口をつぐみ、留美から目を逸らした。彼は恥ずかしくて、とても自分の本心を口に出せなかった。
「あら、答えたくないの…それなら、答えやすくしてあげるわ」

留美は一旦、芳夫の体から離れると、納戸の棚から何やら手にして、彼に見せつけた。それは黒光りして、ペニスの様な形をしていた。
「これは春日家に伝わる、水牛の角から作った張形よ」
留美は芳夫に説明しながら、張形に椿油を塗りたくり、彼の背後に廻った。彼女はしゃがむと、芳夫の尻たぶを開き、張形の先端を彼の肛門に当てがった。
「ひいっ」
今から自分が何をされるか、瞬時に理解した芳夫は、短い悲鳴を漏らし、肛門をギュッと窄めた。留美は微笑みながら、片方の手で芳夫の陰嚢を掴み、じわじわと握り締めた。
「うわあぁーっ」
睾丸を握り潰されそうな強い痛みに、芳夫は悲鳴を上げた。
「お尻の力を抜きなさい…さもないと、このまま握り潰してやるわよ!」
 留美に一喝された芳夫は、止む得ず肛門の力を抜いた。その瞬間に留美は、芳夫の肛門に張形を力強く押し込んだ。
「あひいぃーっ」
 肛門を犯された痛みと、何とも表現出来ない異様な感覚に、芳夫はかん高い悲鳴を上げて、身悶えた。張形を芳夫の肛門に深く挿入した留美は、立ち上がって彼の前に廻った。
「うふふ、お前はお尻を犯されて、興奮しているじゃないの…ひょっとして、男同士でまぐわった事があるんじゃない?きっと、お前は陰間なんでしょう」
 留美から嘲るように言われた芳夫は、股間のものが硬く屹立しているのに気づいた。おそらく、前立腺が刺激されたために、勃起してしまったのだろうが、留美に浅ましい姿を見せてしまい、顔から火が噴き出そうに恥ずかしがった。
 留美は、硬くなってしまった芳夫のものに手を添え、やさしく撫で始めた。
「ああっ…」
 敏感になったものに、留美のしなやかな指が絡み付き、やさしく撫でさすりされる快感に、芳夫は吐息を漏らした。
 留美はますます硬くなっていく芳夫のものを、指の腹で軽く擦ったり、爪を触れるか触れないかの微妙なタッチで立てて、撫でる感じで引っ掻いたり、陰嚢と肛門の間の敏感な箇所に指を這わせたりして、射精寸前の快感を、延々と芳夫に与えた。
 最初は快感に酔って、留美の愛撫に身を委ねていた芳夫だったが、やがて身悶えして苦しみ出した。男にとって、射精寸前の強烈な快感が延々と続くのは、快楽ではなく、正に拷問だった。

「ああっ、留美様、お願いです…どうか、どうかイカせて下さい!」
 芳夫が半ば泣き声で哀願すると、留美は手と指の甘美な動きを続けながら、悪魔的な笑みを浮かべた。
「そんなに果てたいの?それなら、さっきの質問に答えなさい…お前は女に虐められたい、変態のマゾヒストなのね?」
 芳夫は恥も外聞も無く、泣き顔で答えた。
「は、はい…私は変態です…女性に虐められたい、マゾなんです…」
 留美は手を動かしながら、更に芳夫を追い詰めた。

「そう…それなら、心の底から、この留美様の奴隷になると誓いなさい。誓ったら、果てさせてあげるわ…但し、私の奴隷になると誓ったら、お前はもう二度と現世に戻れず、私のいるあの世に引き込まれ、永遠に私に虐められて、こき使われるのよ…もっとも、それが変態マゾヒストの望みなのかもしれないけど…さあ、どうするの?」
 芳夫は留美のじらし責めに悶え苦しみながら、自分を振り返った。あんなに長い間、苦労を重ねて、ようやく憧れの小説家になれたのに…しかし、留美の魅力と、彼女から与えられる凄まじい快感には勝てなかった。芳夫は、今まで築き上げてきたものを全て投げうって、留美の元へ行く決心をした。
「ああっ、なります、留美様の奴隷になります…留美様の奴隷になる事を、心の底から誓います」
 芳夫は殆ど泣き声で、留美へ奴隷の誓いを述べた。彼女は満足そうに微笑み、
「本当に男ったら、みんな愚か者だわ。一時の快楽で、全てを無くしてしまうんだから…ほら、果てておしまい!」
と言うと、芳夫のものに絡み付かせている手と指に、全く違う動きをさせ、強い刺激を与えた。
「あがあぁーっ」
 芳夫は獣じみた絶叫を上げ、全身を震わせて、限界まで硬く屹立させたものから、夥しい量の白濁液を、勢いよく噴出させた。射精した芳夫は全身の力が抜け、がっくりとうなだれて、納戸の床に涙をこぼした。
留美は、芳夫の肛門に挿入されている張形を抜き取り、両足首の縄を解き、滑車を緩めて、芳夫を床に下ろした。彼は力無く、床にへたりこんだ。留美は、芳夫の両手首の縄も解いて、体を自由にしてやったが、既に気力を喪失している彼は、へたりこんだまま、すすり泣くだけだった。
留美は芳夫の両頬に、目が眩む程の強烈な往復ビンタをお見舞いして、気合いを入れてやった。
「ひいっ」
 情けない悲鳴を漏らした芳夫に、留美は怒鳴りつけた。
「いつまで、メソメソ泣いているの!お前は、私の奴隷になったんでしょう。奴隷らしく、女御主人様の前で、正座おし!」
 芳夫は慌てて、留美の足元に正座した。留美は帯を解き、浴衣を脱ぎ捨てた。彼女は下着を着けておらず、芳夫の目の前で何の恥じらいも無く、美しい裸身を晒した。芳夫は目を丸くしたが、留美にとっては、奴隷の芳夫は犬や猫と同じで、裸を見られても全く平気だった。
 留美は、正座している芳夫の前で仁王立ちとなり、両手で彼の髪を掴んで、顔面を自分の陰部に引き寄せた。濃い繁みに縁取られた赤い花弁が迫り、芳夫は目を見開いた。彼の頭上から、留美の声が響いた。

「私に奴隷の誓いをしたお前は、もう現世には戻れないのよ…奴隷の契りと、現世への別れの水盃として、私のおしっこを飲ませてあげるわ…口を大きくお開き!」
芳夫は愕然としたが、留美の言いなりに、大きく口を開いた。
「女御主人様のおしっこを、一滴もこぼすんじゃないわよ…さあ、お飲み!」
留美が言うと同時に、赤い花弁が僅かに震え、黄色い奔流が迸り、芳夫の開いた口に注ぎ込まれた。芳夫は目を白黒させながらも、喉を上下させ、留美の尿を飲み続けた。普通なら、アンモニア臭のきつい尿など、喉につかえて、とても飲めたものではないが、美しい留美の体から出たものと思えば、芳夫にとっては神酒であり、全て飲む事が出来た。
留美は排尿を終えると、

「女御主人様のおしっこが済んだら、男奴隷はいちいち言われなくても、舌と唇できれいにするものよ!」
と芳夫に注意した。芳夫は舌を伸ばして、尿で濡れた赤い花弁を舐め回し、唇をつけて、中に残っている尿を吸い取った。この時、芳夫は初めて口中に強いアンモニア臭を感じ、自分が留美の便器にまで落とされたのを実感した。
 芳夫に自分の陰部を舐めさせながら、留美は高らかに宣言した。
「これで奴隷の契りも済んだし、お前はあの世で男奴隷として、永遠に私に虐められて、こき使われるわ…その内、自分の感情が無くなり、ただ私の命令通りに働く、操り人形みたいになるけどね。オホホホ…」
留美の陰部に舌を這わしている芳夫の頭に、留美の勝ち誇った笑い声が虚ろに響き、彼は気が遠くなってしまった。


芳夫が失踪して二週間経過した貸別荘で、出版社の編集者と、オーナーの春日恵美が話していた。編集者は、芳夫からメールで小説の原稿を受け取ったものの、それ以後、連絡がプツリと途絶えて、北関東の貸別荘まで足を伸ばしたのだった。
「…ですから、私どもの方にも、何の連絡も無くて、困っているんですの…そう言えば、去年も小説家の吉村先生が急に姿を消してしまって、困惑しましたわ…まあ、賃貸料については前金で頂いていますので、それはいいんですが、寺岡先生の荷物はそちらで引き取って、ご家族にお渡し願いませんか…」
恵美のもっともな申し出に、編集者は仕方なく頷き、芳夫の荷物をまとめて車に積み込んで、貸別荘を後にした。編集者は、締め切りよりずっと早く原稿を仕上げた芳夫が、なぜ失踪したのか全く理由が分からず、首をひねりながら、車で東京都内へ戻って行った。
一人貸別荘に残った恵美は、リビングの壁に飾られている、乗馬服姿で仁王立ちの留美を中心に、左右に上半身裸の男達が膝をついて並ぶ、白黒の集合写真を見て、嬉しそうに目を細めた。
(留美お姉様は、また一人奴隷を増やしたのね…お姉様があの世で楽しんで、少しでも無念を晴らせてもらえれば、私も嬉しいわ)
白黒の集合写真には、いつの間にか膝をついている男が一人増えており、その男は芳夫の顔をしていた。

終わり