文 通

作者 namelessさん
『 清水玲香様
 突然、この様な手紙を送らせて頂くご無礼をお許し下さい。大学を卒業して、もう八年になるのですね。私ももう、三十歳になりました。玲香様は、如何お過ごしのことでしょうか。
 私は勤めている証券会社の営業部で、主任として多忙でストレスフルな日々を過ごしております。私生活では、一年前に結婚したのですが、まだ子宝には恵まれておりません。
 久しぶりに戸棚の整理をしていたら、大学の卒業アルバムと同窓会名簿が出て来ました。懐かしい気持ちでページを捲ると、真っ先に玲香様の御真影と御住所が、目に飛び込んで来ました。そして、大学時代に玲香様が私を奴隷調教して下さった日々が、走馬灯の様に脳裏へ鮮やかに浮かび上がってきたのです。
 玲香様はのろまな私を厳しく叱責なされて、力強い平手打ちを両頬に何度も与えて下さり、口中に聖なる唾と痰を恵んで下さいました。私が粗相してしまった時は、体中を革ベルトで打って下さり、腫れ上がった傷痕に熱いロウソクを垂らして下さいました。キャンプに誘われ、人影の無い山奥で全裸にされ、手足が動かなくなるまで人間馬に使って頂きました。
私が何より嬉しかったのは、舌が擦り切れる程に私をバター犬として酷使なさった後、御褒美として聖水を拝受させて頂いたことです。私の口を便器にお使い下さり、勢いよく放尿して下さった玲香様の神々しさは、今でも目に焼き付いております。
他の者にされたら、一秒でも耐えられない苦痛と屈辱の虐待も、玲香様の御手でなされると、何物にも替え難い甘美な快感になりました。これも、玲香様が私を奴隷調教なされて、マゾヒストへと導いて下さったおかげです。学生時代の短い間でしたが、この奴隷体験は忘れることが出来ず、私にとっては人生最高の黄金時代と言っても過言ではありません。
卒業を機に、玲香様からはっきりと別れを告げられました時は、目の前が真っ暗になる程の絶望感に打ちのめされました。それでも私は、玲香様に今でも感謝しております。
不躾に自分の思いの丈を、だらだらと一方的に書き綴ってしまい、真に申し訳ございません。ただ、もし玲香様の御心の片隅にでも、私へのひとかけらのお情けがおありでしたら、どうかこの哀れな貴女の男奴隷に、連絡先を教えて下さいませ。何とぞ、お願い申し上げます。
                                  松浦和久 』
 
和久は書き上げた便箋を丁寧に畳むと、封筒に入れて糊付けし、切手を貼った。封筒の表には、同窓会名簿に載っていた清水玲香の住所が書かれ、裏には和久の姓名と住所が書かれていた。和久は、明日出勤途中に郵便ポストに入れるつもりで、その封筒を通勤バッグに放り込んだ。
その時ノックの音がして、妻の靖子がコーヒーを持って、部屋に入って来た。靖子は、パソコンや資料が雑然としている和久の机にコーヒーを置き、心配そうに声を掛けた。
「あなた、もう11時半よ。明日も早いんでしょう?そろそろ、お休みにならないと…」
「分かっているよ…もう少しで資料の整理が一段落するから、先に寝ていてくれ」
 和久は資料に手を伸ばし、靖子は小さくため息をつくと、部屋を出て階段を下り、一階の寝室へ向かった。同い年の靖子とは社内恋愛で、三年前の懇親会で悪酔いした彼女を和久が介抱したのが、交際のきっかけだった。靖子は女としては可もなく不可もなくといった平凡な女性で、そのままだらだらと惰性でつき合っていたのだが、一年前に三十路目前となった靖子に詰め寄られて結婚し、彼女は寿退社したのだった。和久と靖子の実家は結構裕福だったので、結婚祝いにと両家が頭金を出し合い、郊外にマイホームを建てて暮らしていた。
 和久は靖子に対し、特に不満がある訳では無かったが、長くつき合っていて新鮮味に欠けるのと、仕事が多忙で疲れがなかなかとれないせいもあって、もう半年以上もセックスレスだった。靖子は欲求不満を覚えていたが、かつて同じ証券会社で働いて、仕事のハードさは十二分に理解していたので、和久に面と向かって文句を言えなかった。
 和久は、靖子の足音が遠ざかるのを聞いて資料を置き、大学の卒業アルバムを開いて、清水玲香の写真を眺め、ぼんやりと大学時代を回想した。
 
 東京の有名私立大学に進学した和久が清水玲香と知り合ったのは、三年生になった時に彼女と同じゼミになり、新歓コンパで隣同士になったからだった。
 人目を引くナイスバディの美人である玲香が、平均的なルックスで内気な和久をなぜ気に入ったのかは、よく分からないが、彼女は積極的に彼に話し掛け、酒をどんどん勧めた。一次会が済み、二次会、三次会と店のハシゴをしていて、気がつくと和久は玲香と二人きりになっていた。
「松浦君、もう終電が無くなっちゃったわ…私のアパートはこの近くなの。仕方ないから、ウチに泊まっていく?」
 思いがけず玲香に誘われた和久は、驚きで目を見開き、一瞬酔いが醒め、胸の鼓動が早まった。
「えっ、本当にいいの?男の僕が、清水さんの部屋に泊まったりして?」
「遠慮しないで…春とはいえ、夜は寒いから、夜通し外にいたら風邪を引いて、肺炎になっちゃうわよ」
 玲香は和久の手を取り、自分のアパートに引っ張っていった。資産家である玲香の親がセキュリティを心配したのか、高級マンション並に立派なアパートだった。
 玲香は自分の広い部屋に和久を連れ込むと、酔い醒ましにとコップ一杯の水を和久に差し出した。酒を飲み過ぎて喉が渇いていた和久は、水を一気に飲み干した。
「ああっ、うまい!清水さん、ありがとう…それで僕はどこで寝ればいいの?」
 和久が玲香にコップを返しながら訊ねると、彼女はベッドを指差した。
「松浦君はお客さんだから、遠慮せずにベッドを使って」
「えっ?いくら何でも…」
「いいから、遠慮しないで」
 玲香は和久から上着を預かると、彼の手を引いて、ベッドに誘導した。和久がベッドに腰掛けると、玲香は彼の隣に座った。彼は今から起こることの期待に、胸を高鳴らせた。しかし、玲香は意外なことを口にした。
「…でもね、松浦君。一つ条件があるの」
「条件って?」
 きょとんとした顔で聞き返す和久に、玲香は悪戯っぽい微笑を浮かべて答えた。
「松浦君も一応男だから、思わず私に力ずくで嫌らしいことをするかもしれないじゃない?だからその予防に、松浦君の両手をこれで固定させて欲しいの」
 玲香はいつの間に用意したのか、手にしたビニール紐を和久に見せた。
「ぼ、僕はそんなことなんか、絶対にしないよ!」
「分かっているけど、私も女だから…念のためよ、念のため」
 釈然とはしなかったが、和久は渋々両手を揃えて、玲香に突き出した。しかし、彼女は首を振り、
「違うわよ。手は前じゃなくて、背中に回して頂戴」
と言った。和久は仕方なく、玲香に背を向けて、両手を背中に回した。玲香は実に手際よく、和久の両手首をビニール紐で厳重に縛り上げた。それから和久がベッドに仰向けになると、両腕が圧迫されて、背中に痛みを感じた。
「清水さん、これじゃあ痛くて、眠れないよ…」
 愚痴る和久に、玲香は悪魔の様な邪悪な笑みを浮かべて、遂に本性をさらけ出した。
「馬鹿ねぇ…今晩眠れるとでも思っているの?」
 玲香は仰向けの和久に跨り、彼のベルトに手を掛けた。
「な、何をするんだ!?」
「いちいち、うるさいわね!」
 玲香はもがく和久に構わず、ベルトを緩めてジーンズのボタンを外すと、下着のブリーフごとジーンズを一気に膝下まで引き下ろした。
「や、止めろーっ!」
 下半身丸出しにされた和久は、怒りと恥ずかしさで顔を赤くし、大声を出した。彼は立ち上がろうとしたが、後ろ手に縛られているので、不様にもがくだけだった。
 玲香は右手を伸ばし、和久の陰嚢を掴んで、じわりと力を込めた。下半身に響く痛みに、和久の口から短い悲鳴が漏れた。
「ひいっ!」
「いくらこのアパートが防音仕様でも、調子に乗って大声出すんじゃないわよ!私の言うことが聞けないのなら、このまま睾丸を握り潰してやるからね!」
 玲香に脅かされて睨まれた和久は、蛇に睨まれた蛙の様に大人しくなった。彼女はなまじ綺麗な顔立ちをしているだけに、怒気を含んだ表情で睨まれると、壮絶な凄みがあった。
 怯えた和久が大人しくしている間に、玲香は彼の目の前で何の恥ずかしげもなく、服を全て脱ぎ捨てて全裸になった。美しい顔の下では、豊満で形のいい乳房が揺れ動き、細く締まったウェストの下は腰が張り、豊かで重量感のある尻が張り出て、前方の濃い繁みはきれいな逆三角形を作っている。和久は一瞬、自分の惨めな姿を忘れ、肌の白い玲香の見事な肢体に目を奪われた。
 玲香は肩までの髪をヘアゴムでアップにまとめると、床に脱ぎ捨てたパンティを手にして、和久に命じた。
「松浦君…いえ、お前!口を大きく開けなさい!」
 いきなりお前呼ばわりされた和久は憮然としたが、玲香の迫力には抗えず、素直に口を開けた。玲香は、一番汚れたクロッチ部分がよく味わえるように、パンティを裏返しにして、和久の口に突っ込んだ。更に脱ぎ捨てたストッキングを彼の口元に巻き付けて、猿ぐつわにした。
「ムゴガァッ」
 和久のくぐもった呻き声を聞いた玲香は、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
「これでもう、大声を出せないでしょう…ついでに、私の匂いもじっくり味わえるしね」
 そして、玲香は再度、和久の股間のものに右手を伸ばした。彼の股間のものは、不覚にも硬く屹立していた。玲香の素晴らしい身体を拝ませてもらった上に、汚れたパンティを口に突っ込まれて、饐えたような強烈な女の臭いが、若い和久の脳髄を痺れさせたためであった。
 玲香は、鋼鉄の様に硬く屹立したものを軽く握ると、手をゆっくり上下させて、しごき始めた。
「ムグウゥッ」
 とろけるような快感に、和久は呻き声を漏らせて、身悶えした。
「アハハハッ、男のくせに女の手で悶えさせられるなんて、恥ずかしくないの?」
 玲香に嘲笑われて侮蔑された和久は、あまりの屈辱で身震いしたが、股間のとろけるような快感には勝てなかった。
 次に玲香は、和久のものを口に含んだ。歯を立てないように、柔らかい唇でくるむように硬く屹立したものをくわえ、頭を上下に動かしながら舌を這わせたり、強く吸いながら舌を動かしたりした。
「ムガアァッ」
 自分のものが、玲香の口中で溶けて吸い込まれそうな快感に、和久は身震いし、頭を振って呻き声を漏らした。和久の反応を横目で見た玲香は、一旦口を離すと、今度は豊満な乳房で彼のものを挟み、乳房を揺らせて刺激を与えた。和久はあまりの快感に、呻き声を漏らしながら、体を仰け反らせた。
 和久の頭は混乱していた。玲香の奸計に嵌められて、後ろ手に縛られ、男として耐え難い辱めを受けながら、今まで経験したことのない極上の快感に喘いでいる…彼はもう、自分がどうすればいいのか分からなかった。
 和久が果てそうになるのを感じ取った玲香は、次に彼の屹立したものの敏感な箇所に、触れるか触れないか位の感覚で、爪を立てて引っ掻いたり、指の腹でゆっくり擦ったり、時折舌を這わせたりして、彼が果ててしまわないよう注意しながら、射精寸前の快楽を延々と感じさせ続けた。
 射精寸前の快感が延々と続き、射精させてもらえないのは、男にとって正に拷問だった。和久は苦しげに顔を歪めて、もがき苦しんだ。
 ここで玲香はパンストの猿ぐつわを解き、和久の口からパンティを引っ張り出した。
「どう?気持ちいいでしょう?それとも、何か言いたいことがあるの?」
 悪戯っぽい笑顔で訊ねる玲香に、和久は情けない声で懇願した。
「清水さん、お願いです…いかせて下さい」
「ウフフ、私の言うことを聞いたらね…まず、私のことは“玲香様”とお呼び!」
「…はい、玲香様」
 玲香は和久の顔へ後ろ向きに跨ると、陰部を彼の口に押しつけた。和久をいたぶって興奮したのか、ぬめった玲香の陰唇は充血してめくれ、強い臭いを発して、彼の嗅覚を狂わせた。玲香は和久の体へ覆い被さるようにうつ伏せ、彼の限界まで硬く屹立したものに、じらし責めを再開した。
「お前、自分だけが気持ちよくなるんじゃなくて、私も気持ちよくさせるのよ。お前の口で、私のあそこを感じさせなさい。感じさせなかったら、いかせてあげないからね」
 きつい臭いのする女性器を口に押しつけられて、舐め奉仕を強要されるなんて、男として耐え難い屈辱だった。しかし、一刻も早く射精したい和久は、口元を玲香の濃い陰毛で擦られながらも、舌を伸ばし、彼女のぬめった陰唇を舐め始めた。
「舐めるだけじゃなく、唇も使って、クリトリスを吸ったりするのよ」
 玲香に指示された和久は、強い臭いで咽せそうになりながらも、舌と唇を最大限に使って、彼女を喜ばそうと努めた。玲香は和久の硬いものにじらし責めの刺激を与えながらも、腰をくねらせて、彼の舐め奉仕を楽しんだ。
 間もなく玲香は呻き声を漏らし、体を反らして絶頂を迎えた。玲香は和久の体の上でじっと伏せて、余韻を楽しんでいたが、その間にも彼女の淫液が和久の口中に滴り、その強い臭いで咽せ返りそうだった。
 次に玲香は、上半身を起こして腰をずらし、今度は褐色の肛門を和久の口に当てがった。
「前の方はもういいから、後ろの穴をお舐め!」
 女の肛門を舐めさせられるなんて、男にとっては屈辱の極みだが、股間のものが狂ったようにいきり立っている和久は、とにかく射精したい一心で、玲香の肛門に舌を這わせた。
「表面を舐めるだけじゃなくて、舌先を尖らせて、穴の奥まで舐めるのよ!」
 和久はあまりの屈辱に泣きたくなったが、それでも射精を許してもらうために、玲香の言いなりになった。肛門へ僅かに付着している残り滓の刺激的な味が、舌と口中に広がって、強烈な臭いが鼻の奥まで入り込み、和久は度を超えた惨めさに、目に涙が込み上げてきた。
 たっぷりと肛門を舐めさせた玲香は、不意に身体の向きを変えて、前向きに和久の顔面に跨った。彼女は陰唇を和久の口に当てがい、残酷な命令を下した。
「口を開けなさい…今から私のおしっこを飲むのよ。もし、吐き出したり、こぼしたりしたりして、ベッドを汚しでもしたら、いかせてやるどころか、睾丸を握り潰してやるからね!」
 おしっこを飲ませるなんて、あまりにもひど過ぎる…和久は絶望的な気分になったが、既に玲香には逆らえなくなっていた。和久がおずおずと口を開くと、玲香は更に陰唇を密着させ、彼がこぼさないように排尿をコントロールして、チョロチョロとゆっくり尿を彼の口に流し込んだ。
 強いアンモニア臭を発し、刺激的な味がする玲香の尿は、和久の喉につっかえたが、彼女のお仕置きを恐れて、無我夢中で飲み込んだ。玲香の尿は、和久の口中と鼻孔に強いアンモニア臭を染みつかせ、喉を焼き、胃に熱く溜まっていった。
 僕は女のおしっこを飲まされているんだ…和久は玲香に、体の内側から叩きのめされた様に感じ、知らず目から涙がこぼれた。
 その時、和久の体に劇的な変化が起こった。生まれて初めて体験する強烈な刺激を次々に加えられたためか、極限まで硬く屹立していたものが暴発し、多量の白濁液を噴出させてしまったのだ。和彦は下半身の力が全て抜けてしまい、目から滾々と涙を流し続けた。
 排尿を終えた玲香は、少し腰を浮かせて、和久に命じた。
「お前の舌を、トイレットペーパーに使ってあげるわ…舐めてきれいにおし!」
 逆らう気力をすっかり喪失してしまった和久は、舌を伸ばし、尿で濡れた玲香の陰部を舐め始めた。舌に刺激的な尿の味が改めて広がり、更に惨めな気分に陥った。
「ウフフ、お前は人間ウォッシュレットにも、人間ビデにもなれそうね…いずれ大を済ませた後の、後ろの穴も舐めさせてあげるわ」
 玲香の侮蔑の声が和久の頭に虚ろに響き、彼の胸をズタズタに切り裂いた。
「さてと…おしっこをこぼさず飲んだご褒美に、そろそろいかせてあげるわ」
 玲香は和久の顔面上で体の向きを変え、彼の股間に視線をやり、驚きの声を上げた。
「あらまあ、お前、とっくにいっちゃってるじゃないの!まさか、私のおしっこを飲んで、いっちゃったの?女のおしっこを飲んで、興奮して射精するなんて、信じられないわ…最低の変態だよ、お前は!」
 玲香に酷く罵られた和久は、涙をこぼして、顔を苦しげに歪めた。
「ああもう、汚いわね!ベッドをこんなに汚して…」 
 玲香は文句を言いながら、布団や和久の体に飛び散った精液を、ウェットティッシュで丹念に拭った。拭い終わると玲香は、和久の足元に絡まっているジーンズとブリーフを取り去り、彼を不意にベッドから蹴り落とした。
「アヒィッ」
 床に体を打ちつけられた和久の口から、思わず悲鳴が漏れた。
「そこに、正座しなさい!」
 凛とした玲香の声で命令された和久は、後ろ手に縛られた不自由な体を何とか起こして、フローリングの床に正座した。玲香は全裸のまま、正座した和久の前で仁王立ちになった。
「許しもなく勝手にいった上に、この私に後始末までさせるなんて、ふざけるのもいい加減におし!」
 玲香は和久を怒鳴りつけると、豊かな乳房を揺らせて、彼に目が眩む程の力強い往復ビンタを張った。
「ヒイィッ、許して、許して下さい…」
 情けない声で許しを請う和久の顔を、玲香は足裏で押すように蹴った。
「アヒィッ」
 和久はたまらずに床に倒れ、短い悲鳴を漏らした。玲香は、横倒しになった和久の顔を踏みにじりながら、叱りつけた。
「誰が横になっていいと言ったの!さっさと、正座おし!」
 理不尽な叱責であったが、和久は一言も言い返せずに、泣き顔で何とかその場に正座し直した。上半身はシャツを着ているが、下半身は丸出しで、後ろ手に縛られて正座している和久の滑稽な姿は、惨めと言う以外に表現出来なかった。
 玲香は、正座している和久の前のベッドに腰掛けた。
「お前を特別に、私の奴隷にしてあげるわ。身に余る光栄でしょう?お前のことは、これから男奴隷と呼ぶからね…男奴隷、忠誠を誓う奴隷のキスをおし!」
 玲香は和久の顔面に、足裏を突き出した。和久が思わず顔を横に背けると、玲香は彼の頬を足裏で蹴りつけた。
「ウグゥッ」
 和彦は短い呻き声を上げ、再度床に倒れた。玲香は和久のジーンズから革ベルトを抜き取り、横倒しになっている彼の傍で仁王立ちになった。
「何よ、その態度は!お前はまだ、自分の立場と身分が分かっていないようね…だったら、体に教えてやるわよ!」
 玲香は革ベルトを振り上げ、和久の裸の下半身に思い切り打ち下ろした。
「ギャアァッ」
 真っ赤に焼けた鉄棒を太腿に押しつけられた様な痛みに、和久は悲鳴を上げて、床を転がった。うつ伏せになった和久は、首筋を玲香に踏まれ、ピンで刺された昆虫のように体を固定された。
 玲香は剥き出しになっている和久の尻を、革ベルトで乱打した。
「ヒィッ、ヒイィッ、アヒィッ」
 尻が見る見る腫れ上がり、和久は悲鳴を上げ、涙を流して足をばたつかせて、苦しみ悶えた。しばらく和久の尻を打っていた玲香は、首筋を踏んでいた足を外すと、彼を蹴り転がして、仰向けにした。
 玲香は和久の胸を踏んで固定すると、彼の股間を中心に革ベルトの乱打を浴びせた。
「アヒィッ、イヤッ、痛い、止めて、許してぇっ」
 下半身を切り刻まれる様な強い痛みに、和久は足を曲げ伸ばしして、泣き喚きながら許しを請うた。しかし、興奮して昂ぶった玲香は、和久の哀願に構わずに顔を上気させ、豊満な乳房を揺らせながら、革ベルトで彼の下半身を打ち続けた。
 そして、鋭く力強い一撃が、和久の股間のものを的確に打ち据えた。
「ウガァワァーッ」
 股間のものがちぎり取られた様な激痛に、和久は獣じみた絶叫を上げ、白目を剥き、背を仰け反らせて悶絶した。
 ようやく玲香は革ベルトを振るう手を止め、再びベッドに腰掛けた。彼女は床に横たわって喘いでいる和久のすぐ傍を革ベルトで叩き、派手な音を立てた。
「ヒィッ」
 床の鞭音に怯えて短い悲鳴を漏らした和久を、玲香は怒鳴りつけた。
「いつまで横着に寝ころんでいるのよ!さっさと、正座おし!」
 和久はすすり泣きながら、赤い条痕が縦横無尽に刻まれて引きつる下半身を無理に動かし、身をよじらせて、何とか正座した。玲香は再度、和久の顔面に足裏を突き出した。
「男奴隷、忠誠を…いえ、絶対服従を誓う奴隷のキスをするのよ!それとも、まだ体に奴隷の身分と立場を思い知らせて欲しい?」
 和久は震え上がり、慌てて何度も玲香の足裏に唇をつけた。玲香は脚を替え、もう片方の足裏を突き出した。
「こっちの足にも、奴隷のキスをおし!」
 和久は屈辱で身震いしたが、口惜しさを堪え、同じ様に何度も彼女の足裏にキスした。玲香は又も脚を替えて、足裏を突き出し、酷い命令をした。
「キスはもういいから、足を舐めてきれいにおし!」
 和久は自分の惨めさに涙が止まらなかったが、玲香のお仕置きを恐れ、舌を伸ばして彼女の足裏を舐め始めた。足裏に付着した埃のざらついた感触が、彼の惨めさを倍増させた。
 玲香は和久に足裏を舐めさせながら、彼を嘲笑した。
「アハハッ、くすぐったい…お前は男のくせに、女の足の裏を舐めさせられているのよ。どんな気分?嬉しい?楽しい?アハハハ…」
 玲香の嘲笑は和久の耳に反響し、彼の心を深く傷つけ、顔を苦しげに歪めて身震いさせた。玲香は足を引っ込め、和久の目を真っ直ぐに見つめて、教え諭すように言った。
「お前はまだ、心の底から私の奴隷になりきっていないようね。足の裏を舐めさせられた位で、無念に思うなんて…でも、ちょっと考えてご覧。お前は女の足の裏どころか、女の一番恥ずかしい所を舐め回したのよ。それに、女の体で一番汚いお尻の穴も舐めた上に、その汚い穴に舌まで挿れたのよ。その上、私のおしっこまで飲んで、興奮して射精したくせに…普通の正常な男なら、とても出来ない最低の恥ずかしいことを、お前はいくつもしたのよ。もうお前は、顔を上げて外を歩けず、女とまともに目も合わせられない、恥ずかしい最低の男奴隷に落ちぶれてしまったのよ…自分のしたことをよく考えて、男奴隷の自覚を持ちなさい!」
 玲香の一言一言が和久の胸に深く突き刺さり、彼はがっくりとうなだれ、床に涙をこぼした。
(僕は負けたんだ…玲香様に負けたんだ…もう、玲香様の奴隷として生きるしかないんだ…)
 和久は、肉体だけではなく、精神まで玲香に組み伏せられて制圧され、完全に支配されたことを思い知らされた。もう彼が玲香に逆らうのは、不可能だった。自分がもう普通の男ではなく、玲香の奴隷に転落してしまったのを、和久は心の底から自覚して、嗚咽を漏らした。
 
 次の日、大学のゼミで、玲香は和久との交際宣言をして、皆を驚かせた。これは、玲香が和久を恋人の名目で、常に自分の傍にはべらせておくためだった。周囲の目がある時は、仲睦まじい振りをするのだが、二人きりになると、玲香はいきなり和久にビンタを張ったり、口を開けさせて、唾や痰を吐き入れたりした。また、大学の個室トイレに彼を連れ込んで、尿を飲ませたりした。
 玲香は毎日のように、和久を自分のアパートに連れ込み、掃除や洗濯等の家事にこき使った。和久は部屋の中では着衣が許されず、常に全裸であった。玲香は女性用の細い革ベルトを鞭代わりに手にして、和久が家事をこなすのを監視し、少しでももたついたり、粗相があったりすると、情け容赦なく打ち据えた。玲香に革ベルトで素肌を打たれるのは、本当にこたえた。和久は、玲香が革ベルトを手にするだけで、怯えるようになってしまった。
 玲香は、和久に洗濯をさせる際には、いつも汚れたパンティを彼にしゃぶらせて、汚れを薄くしてから手洗いさせた。パンティの汚れ部分をしゃぶらされる和久は、玲香の生臭く饐えたような強烈な臭いに身震いして、いつも涙目になった。
 玲香はシャワーを浴びる前、和久をバター犬として舌の付け根が痛む程使い、満足した後はご褒美として尿を飲ませ、さっぱりしてから浴室に向かうのが常であった。
 夏休みに入ると、アウトドアの好きな玲香は、和久を連れてよくキャンプに出掛けた。彼女はキャンプ場から、人影の無い山奥の開けた場所に和久を連れて行くと、全裸にさせて首輪を着け、リードを引いて、草原を犬の様に這い回らせた。雄犬の様に片足を上げて排尿するように玲香から命じられた和久は、いつ他の人が現れるかとビクビクしながら、惨めな格好で犬みたいに排尿した。
 それから玲香は、四つん這いになっている和久の背に跨り、彼を馬として扱った。和久は大汗をかいて必死に這い回ったが、グラマーで体格のよい玲香は結構体重があり、程なくして潰れてしまった。その後は勿論、玲香から革ベルトで全身を打たれるお仕置きを受け、悲鳴を上げて草原でのたうち回った。
 玲香は、普段は久和に射精を許さず、オナニーも厳禁とした。もし和久が隠れてオナニーした痕が露見すれば、ひと思いに殺して下さいと哀願する程の、酷い折檻を受けた。玲香が和久に射精を許すのは、二十歳前後の若い彼が耐えきれずに情緒不安定になる兆候を、彼女が見極めてからのことだった。
玲香は、戯れに和久を革ベルトで打った後や、イチジク浣腸を何個もして、排便を限界まで許さずに苦しめた後等、散々痛く苦しい目に遭わせてから、彼を床に仰向けにさせて顔に跨り、肛門を口元に当てがって舐めさせて、彼女の臭いと味を堪能させつつ、酷く罵倒しながら、柔らかい手で硬く屹立した和久のものをしごいて、精液を搾り取った。久しぶりに射精を許された和久は、下半身が溶けてどこかに吸い込まれるような、極上の快感を玲香に味わされて、ますます彼女に心酔していった。
既に和久は、普通のセックスでは満足出来ず、玲香に厳しく射精管理され、酷く虐められないと物足りない体にされていた。こうして和久は、学生時代に玲香の奴隷調教で、本物のマゾヒストに仕込まれてしまったのだった。
 
しかし、大学の卒業式の日に、和久は玲香から一方的に別れを告げられた。和久は東京都内の証券会社へ、玲香は大阪の不動産開発会社に就職が決まっていた。和久は泣いて玲香に取りすがったが、彼女は、
「私、入社したら直ぐに、沖縄の大型リゾート施設開発のプロジェクトに参加することになっているの。お互いに忙しくなるし、距離的にも会うのは無理ね…お前は、新しい女王様を探しなさい」
とドライに言い放ち、彼の元から立ち去ったのだった。
 
 和久は卒業アルバムを閉じて、壁の時計を見上げた。時計の針は、午前0時を過ぎていた。彼はため息をつき、自分の部屋を出て、一階の寝室に向かった。
 
 朝六時に起きて、洗面と朝食を慌ただしく済ませた和久は、七時前には自宅を出ていた。駅に向かう途中、通勤バッグから封筒を取り出し、自宅近所のポストに投函した。
 しかし和久は、玲香から返事が来るのを、全く期待していなかった。彼が手紙を書いたのは、久しぶりに卒業アルバムの玲香の写真を見て、彼女から受けた強烈な奴隷調教が脳裏へ鮮やかに蘇り、彼女への想いと未練、それに湧き上がる抑えきれないマゾの情欲を昇華させるためだった。
 和久は頭を振って気持ちを切り替え、戦場のような職場に出勤するため、急ぎ足で駅に向かった。
 
 一週間後、仕事でくたくたに疲れた和久が遅くに帰宅すると、玄関で妻の靖子が出迎えた。
「お帰りなさい、あなた。今日もお疲れね。遅くまでご苦労様…ところで、あなた宛に手紙が来ていたわよ」
 靖子はそう言って、和久に封筒を差し出した。彼が手に取って見ると、封筒の表には“松浦和久様”と宛名がプリンターで印字されていたが、裏面に差出人の記載は無かった。
 和久はある予感を覚え、急いで二階にある自分の部屋に行き、ドアを閉めて、焦る手で封筒を開け、中の便箋を取り出した。便箋の文字も手書きではなく、プリンターで印字されていた。
『 松浦和久様
 突然、あなたから手紙が送られて来て、大変驚きました。今でも私のことを想ってくれるのは嬉しいのですが、大学を卒業して何年も経ち、お互いに別々の人生があります…正直に言って、迷惑です。ましてや、あなたは結婚して、奥さんがいるのでしょう。私のことは忘れて、家庭のことを第一に考え、奥さんを大事にしてあげて下さい。
清水玲香 』
 内容としては手厳しい拒絶の手紙であったが、玲香から返事が来たことに、和久の胸は高鳴った。ここで彼は、生き馬の目を抜く証券の世界で培われた、営業マンのねばり腰を見せた。
(無視や黙殺されずに、返事が来たのは、脈があるということだ…名字も清水のままというのは、まだ独身ということだ…これは、いける!)
 和久は便箋と封筒を取り出し、ペンを手にした。彼は頭をひねり、玲香の気を引くような文面を考えながら、便箋にペンを走らせた。
『 清水玲香様
 私の手紙が玲香様を困惑させ、不快な思いをなされたことについては、深くお詫び申し上げます。しかし、玲香様から丁重な御返事を頂きまして、感謝感激の念に耐えません。真にありがとうございます。私にとっては玲香様の、ほんのひとかけらの思いに触れられるだけでも、身に余る光栄なのです。私は玲香様と離ればなれになっても、ずっとお慕い申し上げております。
 私は今の妻を愛していない訳ではなく、家庭も大事にしたいとは思っているのですが、私の心はいつも玲香様へ向いているのです。自分自身の心に、嘘はつけません。
正直に申しまして、妻と夫婦の営みを行う際には、玲香様が施して下さった奴隷調教を思い浮かべながら、何とかお務めを果たしているのです。私は身も心も全て、玲香様に捧げたのです。玲香様のことだけしか考えられない、この哀れな男奴隷の私に、何とぞ玲香様の御連絡先を教えて下さいませ。どうか宜しくお願い申し上げます。
                           松浦和久 』
 これで次にも返事が来れば、後二、三回手紙のやり取りをしてから、電話番号かメールアドレスを教えてもらえて、会うことが出来るだろう…和久は楽観的な予想をしながら、便箋を封筒に入れた。
 
 一週間後、帰宅した和久に、靖子が封筒を手渡した。
「またあなたに、同じ様な手紙が来てたわよ…誰からなの?」
「ああ…これはある会社の会長から、個人的な資産運用を依頼された、相談の手紙と資料だよ…税金の関係で、あまり公にしたくないと言うので、会社じゃなく、僕個人の住所に送ってもらっているんだ」
「ふーん、そうなの…」
 和久は慌てて誤魔化し、靖子は何か腑に落ちないという表情をした。彼は急いで階段を上り、自分の部屋に入ると、プリンターで自分宛に印字された封筒を、震える手で開けた。中には、又もプリンターで印字された便箋が入っていた。
『 松浦和久様
 あなたは、本当に身勝手な人ですね。私を慕ってくれるのは嬉しいのですが、私が迷惑しているのに、また手紙を送ってくるなんて…それに、奥さんとの営みに、私のことを思い浮かべて何とかお務めを果たしているなんて、呆れてしまいます。それは、奥さんに対する最大の侮辱行為でしょう…私のことはきっぱり忘れて、奥さんをもっと大事にしてあげて下さい。
                          清水玲香 』
 前回よりも厳しい拒絶の内容であったが、和久は逆に喜んでいた。
(無視されずに、また返事が来た…これは、手応えがある!)
 和久は封筒と便箋を取り出し、ペンを手にした。彼は玲香が関心を持つような文面を色々と考えたが、ここまでくれば自分の思いの丈を全てさらけ出した方がいいと判断した。
『 清水玲香様
 玲香様が御迷惑なさっているのに、まだ手紙を送るご無礼をお許し下さいませ。しかし、私は玲香様への想いが、どうにも抑えられないのです。私は玲香様のパンティにも、生理用ナプキンにもなって、玲香様のお傍にいたいのです。玲香様の靴の中敷きにもなって、常に踏みつけられていたいのです。玲香様宅のトイレに埋め込まれて、便器にお使い頂きたいとも思っているのです。
 玲香様にお目通りが許されないよりは、玲香様に全身を鞭打たれて、悶絶死する方が、私にとっては遥かに幸せなのです。私は学生時代に玲香様から施された奴隷調教を、一生忘れられません。哀れな男奴隷の、最初で最後のお願いとお思いになって、何とぞ御連絡先を教えて下さいませ。宜しくお願い致します。
                         松浦和久 』
 
 一週間後、夕方帰宅すると、自宅に和久宛の手紙が届いていた。和久は靖子から封筒を受け取ると、直ぐ自分の部屋に行き、焦る手で急いで封筒を開け、中の便箋を取り出した。
『 松浦和久様
 あなたの手紙を読んで、胸が悪くなりました…あなたは、最低の変態ですね。前にも伝えましたが、私もあなたも別々の道を歩み、別々の人生を送っているのです。いい加減に私のことは忘れて、普通の男に戻り、自分の奥さんを大切にしてあげて下さい。
                         清水玲香 』
 前より取り付く島の無い、手厳しい拒絶の返事だったが、和久はこう考えていた。
(返事が来る内は、まだ脈がある…問題は玲香様の気をどう引くかだ)
 和久はあれこれ考えたが、いい文面が思い浮かばず、結局自分の情欲をありのままに書き連ねた。
『 清水玲香様
 玲香様の御気分を害するような手紙を送ってしまいまして、真に申し訳ございません。どうか、お許し下さいませ。しかし私は、玲香様の汚れたパンティをしゃぶらされた時の味わいと興奮…玲香様のアヌスを舐めさせられた時の味わいと昂ぶり…玲香様から飲まされた聖水の味わいと衝撃…玲香様が四つん這いの私の背中に跨って下さり、人間馬として延々と這い回され、乗り潰されてしまった時の充実感と喜悦…玲香様からお仕置きで全身を革ベルトで打たれたり、浣腸で腸がねじ切れる様な壮絶な苦痛の後に、玲香様の柔らかな御手で搾り取られた射精の、天にも昇る様な快楽…まるで昨日のように思い出されます。玲香様から忘れるように命じられても、私の心と体に刻み込まれた奴隷調教体験を忘れるのは、不可能なのです。妻には申し訳ないと思っていますが、私の心と体は既に玲香様のものなのです。玲香様に人生全てを捧げ、玲香様を忘れられない哀れな男奴隷の、たった一つだけのお願いとお思いになって、是非とも玲香様の御連絡先を教えて下さいませ。
                         松浦和久 』
 
 翌朝、和久は出勤途中、近所のポストに封筒を投函した。その時、彼はふと思った。
(メールやラインやリモートの今の時代に、手紙で悠長にやり取りして、文通するなんて…まるで、半世紀前の中学生じゃないか…)
 和久は口元を歪めて自嘲すると、足早に駅へ向かった。
 
 一週間後、自宅に和久宛の手紙が届いていた。靖子から手紙を受け取り、自分の部屋で読んだ和久は、驚きで目を見張った。便箋には、次のように印字されていた。
『 松浦和久様
 あなたは私が迷惑して、気分を害しているのを分かっていて、相変わらず胸が悪くなるような手紙を送りつけてくるのですね…私はもう、あなたを許しません!あなたを処罰することに決めました。○月○日午後6時に、新宿区の○○ホテルに来なさい。フロントで私が予約した部屋を確認して、遅れずに来るのです。あなたに死ぬ一歩手前の地獄の苦しみを与えて、二度と私を想わないようにしてあげます。これは奴隷調教ではなく、制裁です。処刑と同じですから、覚悟しておきなさい!
                         清水玲香 』
 和久は興奮で身震いしながら、何度も手紙を読み返した。彼は玲香から何とか電話番号かメールアドレスを聞き出し、何度かコンタクトを取って、会える段取りを整えるつもりだった。それが、一足飛びに会えるようになって、和久は舞い上がった。ふと、彼はカレンダーを見て、玲香に指定された日が、明後日なのに気がついた。
(これは、明日忙しくなるな…)
 彼は手紙を引き出しに入れ、一階のリビングに向かい、遅い夕食を摂った。
 
 翌日、和久は出勤すると、真っ直ぐ上司の机に向かい、親戚の不幸事の名目で二日間の有給休暇を申請した。休みを取るために多忙な業務をこなし、夕方遅くに帰宅した彼は、妻の靖子に明日から急な出張が入ったと告げた。
「随分急ね…その出張は、あなた宛に来ていた手紙と何か関係があるの?」
 和久は、女の鋭いカンに些か動揺しながらも、平静を装って答えた。
「ああ…個人的な資産運用を相談していた会長が、直接会って話を詰めたいと言ってきてね…話がまとまれば結構大口の取り引きになるので、会社から大阪に二日の予定で出張を命じられたんだよ」
「…そうなの。あなたも大変ね」
 靖子は納得したようで、和久は内心ホッとした。
 
 翌日の朝、和久はスーツケースを持って、家を出た。彼は真っ直ぐ新宿区に向かったが、約束の時間は午後6時なので、図書館やネットカフェに行って、時間を潰した。
 そろそろ約束の時間が迫り、和久は玲香に指定された有名な一流ホテルに向かった。フロントで玲香が予約した部屋を訊ねると、フロント係はインターホンで和久の名前を誰かに告げて確認した後、玲香の部屋番号は1012号室だと彼に教えた。
 和久はスーツケースを引っ張り、エレベーターに乗って、10階に昇った。午後6時丁度に、1012号室の前に立つと、深呼吸して少しでも胸の高鳴りを鎮めようとした。それからドアをノックして、自分の名前を名乗った。ドアが開き、女性の声が聞こえた。
「入って」
 和久が入ると、部屋は足元の間接照明だけで暗く、女性の姿は何とか確認出来たのだが、彼は驚きの表情を浮かべた。女性は、目と鼻と口元だけが空いている黒革製の全頭マスクを被り、バスローブを纏っていた。バスローブの裾からは、黒色の革ブーツが覗いている。
「ぼやぼやしてないで、裸になって、跪きなさい!」
 女性の声が室内に響き、和久は慌てて服を全て脱ぎ捨て全裸になり、彼女の足元に正座した。彼は土下座して、奴隷の挨拶を述べた。
「玲香様、お久しぶりです。再会を許して頂きまして、身に余る光栄でございます。本日は、男奴隷の分際で無礼な振る舞いをしてしまい、玲香様に大変不快な思いをさせてしまった大罪人の私を、御存分にお仕置きなさって下さいませ」
「両手を背中に回しなさい!」
 女性は、奴隷の挨拶を述べる和久に、冷たい口調で言い放った。和久が額を床につけたまま、両腕を背中に回すと、女性は手際よく彼の両手首を革手錠で拘束した。
「顔をお上げ!」
 女性に命じられた和久は、上半身を起こし、正座の姿勢になった。女性の声は、和久の記憶にある玲香の声とは全く違っていたが、彼はそれを全頭マスクのせいだと思っていた。覆面プロレスラーがマスクを被ると、顔の筋肉全体が引っ張られたり、圧迫されたりして声が変わり、家族が声を聞いても全く分からないというのを、何かの雑誌で読んだ記憶があった。しかし和久には、なぜ玲香が全頭マスクを被っているのか、その理由が分からなかった。
 女性は照明を全て点けて、部屋を明るくし、全頭マスクを脱ぎ捨てた。女性の顔を見た和久は目を丸くして、驚愕のあまり絶句した。
 女性は玲香ではなく、妻の靖子だった。靖子は今までに見たことのない、濃いきつめのメイクをしており、それが平凡な顔立ちの靖子に映えて、サディスティックな雰囲気を醸し出していた。靖子は正座している和久の前で仁王立ちになり、凄い怒りの目つきで彼を睨みつけた。
「や、靖子、なぜここに…?」
 ようやくうわずった声が出せた和久が、靖子に問い掛けた。
「これよ!」
 靖子は、和久が玲香宛に出した四通の封筒を、彼に見せつけた。封筒にはそれぞれ、“宛先人不明につき…”の赤いスタンプが押されていた。
「あなたが出した手紙が、宛先人不明で返って来たのよ…宛名が女の名前だったから気になって、悪いとは思ったんだけど、中を確認してみたの…そうしたら、あなたがマゾの変態だと分かって、愕然としたわ!」
 正座している和久は、恥ずかしさで顔を真っ赤にして、うなだれた。
「それでも私は、あなたにまともになってもらおうと、玲香という女の代わりに返事を書いて、あなたを諫めようとしたのよ…」
 それで、筆跡を隠すために、プリンターで印字したのか…和久はうなだれたまま、考えをめぐらせた。思えば、玲香が手紙を書いたにしては、不自然な箇所が多々あった。玲香であれば“お前”とする所を、“あなた”と表記したり、“奥さんを大事にするように…”と毎回記述されていた。
 自分は玲香とではなく、妻の靖子と文通していたのだ…なぜ、気付かなかったのか…和久は、マゾの情欲に囚われて、冷静な判断力を失っていた自分を呪った。靖子は話を続けた。
「でもあなたは、私との営みの時には、玲香という女の奴隷調教を思い浮かべて、何とか務めていると手紙に書いて、私を激怒させたわ。その上、その女のパンティや生理ナプキンになりたい、靴の中敷きになって踏みつけられたい、人間馬になって酷使されたい、便器になっておしっこを飲みたいとか書いて、私の胸を悪くさせ、吐き気を催させたのよ…何より許せなかったのは、玲香という女を忘れられずに、身も心も捧げて、ずっと慕っていると書いていたことよ!妻である私のことを、何だと思っているの!絶対に許さないからね!」
 靖子は、左手でうなだれている和久の髪を掴んで引き上げ、右手で彼の両頬が真っ赤に腫れ上がる程の往復ビンタを、何度も浴びせた。
「ヒイッ、ヒイィッ」
 目から火花が散る程の衝撃と痛みを受けた和久は、情けない悲鳴を上げた。靖子は和久の髪を放すと、纏っていたバスローブに手を掛けて、一気に脱ぎ捨てた。
和久は靖子の姿を見て、目を見張った。彼女は赤色の革製コルセットを着け、黒色網タイツをそのコルセットから吊り、太腿まである黒色革製ロングブーツを履いている以外には、ブラジャーもパンティも身に着けておらず、乳房と陰部を露出していた。平凡な顔立ちと体型の主婦だった靖子は、今や完璧なドミナスタイルに変貌しており、和久を驚愕させた。
靖子は部屋の隅に置いていたキャリーケースを引っ張って来て、和久の前で開けて見せつけた。中には、色々な種類の鞭、革紐やロープ、浣腸器等の他に、何に使うのかよく分からない責め道具が入っていた。
「あなたが、それ程その女に虐められたいと知って、ネット通販で色々と道具を買い揃えたのよ。結構値が張って、家計に響いたんだからね…少しはありがたく思いなさい!」
 靖子はキャリーケースの中から、黒光りする革製の一本鞭を取り出し、床に正座している和久に見せつけた。
「これは、アメリカの牧場で実際に使用されている、牛を追い立てるための牛追い鞭よ。皮のぶ厚い牛ですら逃げ回るんだから、人間に使ったら凄い威力でしょうね…少々物音を立てても大丈夫なように、完全防音のホテルを選んで部屋を取ったから、遠慮せずあなたに鞭が振るえるわ」
 和久は、玲香から革ベルトで打たれたことは山程あったが、本格的な鞭で打たれた経験は無く、靖子の説明を聞かされ、恐怖に怯えた。
「や、靖子、許してくれ…頼むから、そんな物騒なものを使うのは、止めてくれ…」
 和久は震え声で懸命に靖子へ頼んだが、彼女は一本鞭を頭上まで振り上げ、怒りで目を吊り上げて彼の懇願を一蹴した。
「散々私を裏切っておいて、寝言を言うんじゃないわよ!それに、マゾの変態なら、痛いのが好きなんでしょう…ほらっ!」
 靖子は、正座して震えている和久の体に、一本鞭を情け容赦なく思い切り袈裟懸けに振り下ろした。空気を切り裂く凶暴な唸りと共に、和久の裸体に絡みついた一本鞭は、真っ赤に焼けた重いワイヤーロープを叩きつけた様な凄まじい激痛と、内臓まで響く衝撃を彼に与えた。
「ギョエェーッ」
 和久は獣じみた絶叫を上げ、体を仰け反らせて、床に横倒しになった。
「うるさいわねぇ…いくら完全防音のホテルだからといって、耳障りな大声を出すんじゃないわよ!」
 靖子は一旦鞭を床に放ると、キャリーケースの中から、一枚のパンティを取り出した。彼女は、床に倒れて苦しんでいる和久に、パンティを裏返して見せつけた。そのパンティのクロッチ部分は、驚く程汚れていた。
「あなたは、汚れたパンティをしゃぶるのが好きなんでしょう…あなたのために、気持ち悪いのを我慢して、五日間も履き続けたのよ。遠慮せずにしゃぶって、たっぷり味わいなさい!」
 靖子は、汚れたパンティを和久の口に無理やり突っ込むと、キャリーケースから革ベルトのボールギャグを取り出し、しっかりと猿ぐつわした。
「ムグウゥッ」
 酸っぱいような、饐えたような強烈な臭いが口中に拡がり、鼻孔の奥まで到達して脳髄を痺れさせ、和久は思わずくぐもった呻き声を漏らした。靖子は再度一本鞭を手にすると、横倒しになって苦悩している和久を見下ろし、嘲笑した。
「アハハハ、私の汚れたパンティの味は、玲香という女のと比べて、如何かしら?どっちが美味しい?」
 和久は、妻である靖子に嘲笑われる屈辱に体を震わせて、知らずに涙がこぼれた。靖子は又も一本鞭を振り上げると、和久に怒気を含んだ声で言い放った。
「この鞭で、玲香という女への想いを、断ち切ってあげるわよ…これでも、お喰らい!」
 靖子は一本鞭を力まかせに、横になっている和久に叩きつけた。
「グムオォーッ」
 汚れたパンティを口に詰め込まれ、ボールギャグで猿ぐつわされている和久は、くぐもった悲鳴を漏らし、身悶えした。
靖子は怒りで目を吊り上げ、髪を振り乱し、乳房を揺らしながら、立て続けに鞭を振るった。風を切る嵐の様な鞭が和久の全身を襲い、彼は真っ赤に焼けた刃物で切り刻まれ、生肉を削ぎ取られて、内臓が叩き潰される様な激痛と衝撃を味わされた。和久の視界は真っ赤に染まり、彼は地獄の業火で全身を焼かれて、体をバラバラに切り裂かれている様に錯覚した。
ようやく靖子の鞭が止んだ時には、和久の全身に赤い条痕が縦横無尽に刻み込まれ、彼は体を痙攣させて悶え苦しんでいた。一本鞭を床に放った靖子は、和久の猿ぐつわを外し、彼の口からパンティを引っ張り出した。横になって喘いでいる和久の傍にしゃがんだ靖子は、彼の髪を掴んで引っ張り上げ、彼の顔を自分に向かせて、問い掛けた。
「あなた、どう?これで玲香という女のことは、忘れられた?それとも、まだその女のことを想っているの?」
「…いえ、忘れました…きれいさっぱりと、忘れました」
 和久は、涙ながらのか細い声で、何とか靖子に答えた。実際、彼女から怒りの鞭の嵐を受け、玲香を想う余裕は消え去っていた。靖子は和久の髪を放し、立ち上がった。
「そう…さてと、あなたは浣腸で苦しみたいと、手紙に書いていたわよね。望み通りにしてあげるわ」
 靖子はバスルームに行くと、お湯を入れた洗面器を持って戻って来た。彼女は、何か薬品の入った瓶をキャリーケースから取り出し、洗面器のお湯に全て注ぎ入れた。次に、ガラス製の大きく太い注射器の形をした浣腸器を取り出し、それで薬品が入った洗面器のお湯をかき混ぜながら、和久に説明した。
「今から濃いグリセリン溶液を、あなたに浣腸してあげるからね…市販のイチジク浣腸とは、比べものにならない効き目の筈だから、楽しみにしなさい」
 和久は靖子の説明を聞き、全身に鳥肌が立った。
「さあ、額を床につけ、両膝を開いて立てて、お尻を上げなさい!」
 靖子に命じられた和久は、鞭打たれて引きつって軋む体を無理に動かし、革手錠で後ろ手に拘束された不自由な体で、何とか彼女に言われた通りの惨めなポーズを取った。洗面器と浣腸器を手にした靖子は、和久の後ろに回り、鼻で笑った。
「フフン、男のくせにお尻の穴を晒け出し、股の見苦しいものをぶらつかせる醜い姿を女に見せて、恥ずかしくないの?あなたは本当に、最低の変態マゾだわ!」
 靖子の侮蔑の言葉が、和久の胸を深く抉り、彼は目の奥が熱くなって、涙がこぼれそうになった。靖子は、浣腸器を洗面器に入れてシリンダーを引き、濃いグリセリン溶液を浣腸器一杯に吸い込んだ。それから何のためらいもなく、浣腸器の先端を和久の肛門に挿し込んだ。
「ヒィッ」
 異様な感覚に、和久の口から短い悲鳴が漏れた。靖子は力強く浣腸器のシリンダーを押し込み、和久の直腸にグリセリン溶液を注ぎ入れた。靖子は和久の肛門から浣腸器を引き抜くと、洗面器に入れてグリセリン溶液を吸い上げては、彼の肛門に浣腸器を挿して、グリセリン溶液を注ぎ込むといった動作を、何度か繰り返した。洗面器が殆ど空になった頃には、和久の下腹はカエルの様に膨れていた。
 靖子はキャリーケースから、チューブでポンプに繋がっていて、先端が丸くなっている棒状のゴム製品を取り出すと、左手で和久の尻たぶを押し広げ、右手でその棒状のゴム製品を彼の肛門に力強く押し込んだ。
「ぐうぅっ」
 和久の呻き声に構わず、靖子はゴム製品にチューブで繋がっているボール状のポンプを何度も握り締めて、空気を送り込んだ。ゴム製品は限界まで膨れ上がり、和久の直腸を完全に栓をした。
「うふふ、これは元々出産時に産道を拡げるための医療用具なんだけど、アナル栓用にアダルトグッズとしても販売されているのよ…面白いでしょう」
 靖子は笑いながら和久に説明したが、彼はそれどころではなかった。濃いグリセリン溶液が彼の腸をぜん動させ、強い便意を催させていたのだ。靖子は立ち上がると、和久を黒革ブーツで蹴り転がし、彼を仰向けにさせた。
「靖子…様、お願いです。トイレに行かせて下さい…」
 強烈な便意に苛まれた和久は、自分の妻の名前に“様”を付けて哀願した。しかし、靖子は彼の哀願をせせら笑った。
「フフン、直ぐに出したら、浣腸の意味が無いでしょう…もっと我慢して、あなたのはらわたの汚物を、腐った性根と一緒に全て排泄してもらわないといけないからね」
 しかし、凄まじい便意による下腹部の痛みは、加速度的に非道くなって行く。和久は額に脂汗を浮き上がらせ、苦しそうに顔を歪めた。
「お願いです、トイレに行かせて下さい…苦しくて、もう我慢出来ないんです」
 和久は泣きそうな声で靖子に哀願したが、返事は彼女の黒革ロングブーツだった。靖子は和久の膨れた下腹をブーツで踏みにじり、罵った。
「何よ、男のくせにこの程度が我慢出来ないなんて、情けないにも程があるわよ!それに、苦しいと言っても、あなたに裏切られ続けた私の苦しみに比べたら、何てことないでしょう!」
「グウァーッ、許して、許して下さい」
 腸がねじ切られそうな激痛に、和久は泣き喚いた。大便を漏らして楽になりたくても、空気で膨らませたゴム製のアナル栓が、それを許さない。和久は、真っ赤に焼けた火掻き棒を下腹に突き刺され、掻き回される様な激痛に、涙を流して悶え苦しんだ。
 しばらくして、靖子は和久に声を掛けた。
「随分とこたえたようね…あなた、そろそろトイレに行ってもいいわよ」
「あ、ありがとうございます…」
 しかし、和久は下腹の激痛が強過ぎて、なかなか立ち上がれなかった。
「仕方ないわね…手伝ってあげるから、早く立ちなさい!」
 靖子は横倒しになって苦しんでいる和久の髪を掴み、力強く引っ張り上げた。
「アイィッ」
 頭髪を引き抜かれそうな痛みに、和久は悲鳴を上げたが、それでも後ろ手に拘束された体にバランスが取れて、何とか立つことが出来た。
「グズグズしてないで、早くトイレに行くのよ!」
 靖子は和久の髪から手を離したが、代わりに彼の股間のものを掴み、トイレに向かって引っ張って行った。
「ああっ、待って、待って下さい…」
 和久は、股間のものが引きちぎられそうな痛みと屈辱、それに下腹の激痛で泣き声を出して、靖子に哀願した。しかし、靖子は構わずに和久のものを強く引っ張り続けた。和久はすすり泣きながら、よろめいた足取りで、何とか彼女について行った。
 トイレに着くと、靖子は和久を洋式便器に座らせ、アナル栓とチューブで繋がっているポンプの弁を開けた。シューッと空気が抜ける大きな音がして、ゴム製のアナル栓が萎んだ瞬間、トイレに破裂した様な音が響き、和久の肛門からアナル栓と多量の大便が一気に噴出した。靖子は水洗を流しながら、和久を蔑んだ。
「臭いわねぇ…男のくせに、女の前で大便を漏らして、恥ずかしくないの?まあ、あなたはマゾの変態だから、女に見られた方が嬉しいんでしょうけど…さあ、お腹の汚いものを、残らず出しておくのよ!」
 靖子は便座に座っている和久の下腹を、ブーツの底で踏む様に体重を掛けて押した。腸まで溶けて流れ出た様な感覚で排便を続けている和久は、あまりの恥辱と下腹の痛みに、身震いして涙をとめどなく流した。
 和久の排便が済むと、靖子は彼を隣のバスルームに移動させた。彼女は、
「ああっ、汚い!大便で体をこんなに汚して、臭くて堪らないわ。あなたは大の男のくせに、赤ちゃんと同じじゃないの!本当に恥知らずの、最低マゾヒストだわ!」
と罵りながら、和久の汚れた下半身とゴム製アナル栓をシャワーで洗い流した。そして靖子は、あまりの恥辱に身震いして、すすり泣いている和久の濡れた下半身をバスタオルで拭いてやり、バスルームから連れ出した。
「ふらふらしてないで、ちゃんと立ちなさい!」
 下半身に力が入らず、ふらついている和久を叱った靖子はキャリーケースから、緩やかなL字型をしている強化プラスチック製のコックケージを取り出した。靖子は直立している和久にコックケージを見せつけて、
「これを、あなたに嵌めてあげるわ。言っておくけど、イヤらしいことを考えて、勃起したりすると痛くなるから、興奮しないように気をつけなさいよ」
と説明し、苦痛で縮こまっている和久のものに嵌めて、ロックした。
 それから靖子は、キャリーケースからペニスバンドを取り出し、自分の腰に装着した。その様子を見た和久は、今から自分が何をされるのかを瞬時に悟り、顔色を変えた。靖子はペニスバンドのディルドゥ部分にグリースを塗りながら、和久へ楽しそうに話し掛けた。
「せっかく、あなたのはらわたが綺麗になったから、お尻の穴を可愛がってあげるわ。私、セックスの時に、いつも女が男に犯されるのは不公平だと思っていたの。男もたまには女に犯されて、女の痛みと喜びを感じるべきだわ…そう思わない?」
 蒼白になって身震いしている和久に、答える余裕は無かった。
「さてと…あなた、さっきの浣腸と時と同じポーズを取って」
 しかし、靖子に促されても、和久の体は固まったままだった。靖子は柳眉を逆立てて、怒鳴りつけた。
「あなた、何をぼうっとしているの!私の言うことが聞けないの?ちょっと優しく話し掛けたら、頭に乗って…それとも、まだ鞭が欲しいの!」
「ヒッ、ヒィッ、ただいま…」
 鞭と聞いた瞬間に、和久は慌ててしゃがみ、額を床に着け、両膝を開いて立て、尻を上に突き出す屈辱的な格好になった。どれ程の屈辱を受けようとも、命の危険さえ感じるあの強烈な一本鞭だけは受けたくなかった。
「ウフフ、外国では“鞭を惜しめば、子供を損なう”と言われるらしいけど、あなたの場合は“鞭を惜しめば、男奴隷を損なう”よね。鞭の威力は、本当に大したものだわ」
 靖子の嘲りが和久の耳に響き、心が傷ついた彼は泣きそうに顔を歪めた。靖子は和久の後ろに廻ってしゃがむと、ペニスバンドの先端を彼の肛門に当てがった。
「あなた、いくわよ!」
 靖子は和久に一声掛けて、腰を力強く押し出し、彼の口から短い悲鳴が上がった。
「アヒィッ」
 和久は肛門をすぼめて抵抗しようとしたが、アナル栓による拡張で括約筋が弛緩してしまい、力が思うように入らず、ディルドゥ部分にグリースが塗られていることもあって、するりと滑らかに挿入を許してしまった。靖子は腰を前後に動かしながら、和久に話し掛けた。
「あなたのために、初心者用の細めのペニスバンドを選んであげたんだから、ありがたく思うのよ…犯される女の気持ちを、たっぷり感じ取りなさい!」
 確かに、肛門が裂けるような痛みは感じなかったが、直腸内をディルドゥ部分でピストン運動される異様な感覚に、和久は身悶えした。しかし、その感覚は苦痛ではなく、和久の前立腺を刺激し、彼の股間のものを硬く屹立させようとしていた。
「アイイィッ」
 その時、股間に鋭い痛みが走り、和久は悲鳴を上げた。強化プラスチック製のコックケージが、彼の勃起を妨げ、痛みを生じさせたのだ。そのコックケージは、股間のものが小さく萎えている状態で、ピッタリと納まるサイズであり、内側にギザギザの突起が多数付けられていた。そのため、股間のものが少しでも大きく硬くなろうとすると、強い痛みを生じるようになっていた。
 靖子は腰を動かしながら、和久を蔑んだ。
「あなたはお尻の穴を犯されて、感じているの?ひょっとして、オカマだったの?ホモの経験でもあったの?本当に最低の変態マゾだわ…それにさっき、興奮して勃起すると痛くなるって、注意したばかりでしょう。それでも勃起するなんて、本物の変態よね!」
 靖子の侮蔑が和久の胸を抉り、股間の強い痛みと相まって、彼は悶え苦しみ、すすり泣いた。ようやく、靖子がペニスバンドを引き抜き、立ち上がった時、和久の股間部分の痛みは、極限まで強くなっており、彼は悶絶する一歩手前だった。
 ペニスバンドを腰から外した靖子は、ブーツで和久を蹴り転がし、彼を仰向けにさせた。それから、和久の股間付近にしゃがみ、嵌めていたコックケージのロックを解除して、取り外した。その途端、和久のものは力強く獰猛にそそり立った。彼のものは、コックケージ内側に付いているギザギザの突起のため、全体に多数の赤い斑点が刻まれていた。
「呆れた…こんなに痛い目に遭っても、まだ勃起するなんて…あなたは本当にマゾの変態なのね」
 和久を蔑んだ靖子は、硬く屹立した彼のものを包み込むように握り、ゆっくりとしごき始めた。
「うぐぅっ」
 極限の痛みから一転し、靖子の柔らかい手でしごかれる快感を与えられた和久は、思わず呻いた。
「ウフフ、あなたは自分のお尻を犯して、痛い目に遭わせた、自分の妻の手で感じているのよ…口惜しくない?恥ずかしくないの?もう、男の誇りは完全に捨て去ったのね」
 靖子は和久のものをしごきながら、彼を嘲った。和久は無念さに目頭が熱くなったが、股間のとろけるような快感には抗えず、身悶えした。次に靖子は、逞しく硬くそそり立っている和久のものを口にくわえ、柔らかい唇で挟み、舌を動かした。
「ああぅっ」
 靖子の思い掛けない行動と、急速に高まる快感に、和久は驚きの声を上げた。
「うふっ、もう半年以上もセックスレスで、全然使っていなかったけど、あなたのここは錆びずに、凄く元気じゃないの」
 靖子は和久の体に跨ると、彼の極限まで硬く屹立しているものの先端を、興奮して赤くめくれ、とろとろに濡れそぼっている自分の陰唇に当てがった。
「あなた、いくわよ!」
 靖子は一気に腰を下ろし、「はうっ」と声を出して、和久のものを呑み込んだ。彼女は暴れ馬の様に激しく腰を動かし、貪欲に快楽を求めた。和久は靖子の熱い蜜壷に自分のものをぬるぬると擦られて翻弄され、直ぐにも果てそうになった。靖子は和久を虐めて気が昂ぶり、感度がよくなっていたのか、凄い乱れようだった。彼女は、更に激しく腰を動かし、
「ああっ、いって、あなたもいって!」
と叫ぶと、全身を痙攣させて絶頂を迎え、和久の体に覆い被さった。その瞬間、和久も下半身が溶けて、ブラックホールに吸い込まれるような快感を覚えて果てた。
 靖子は和久の体の上に伏せて、余韻を味わっていたが、しばらくすると顔を上げて和久の目を見つめ、ぽつぽつと語り出した。
「…私、あなたの手紙を読んで、最初は猛烈に腹を立てたわ。でも、何度も読み返している内に、玲香という女の代わりに、あなたを虐めてみたくなったの…女に虐められて悶え苦しむあなたの姿を想像すると、体が火照って子宮が疼いたわ…自分でも知らなかったけど、私はサディスティンだったのね。それに、玲香という女に負けたくなかった…だから、ネットでマゾ男の責め方を勉強したり、女王様ファッションを研究したり、SM用品を買い揃えたりしたのよ…あなたも、女に虐められて興奮して喜ぶマゾヒストだから、私との相性はピッタリよね…私達、これで本当の夫婦になれたんじゃない?」
 靖子は、男のくせに最低の変態であるマゾヒストの自分を見放さずに、まだ夫と見なしてくれていたのだ…そう言えば、自分のことを“お前”とは呼ばず、ずっと“あなた”と呼んでくれていた…和久は胸に熱いものが込み上げて来て、靖子を抱きしめたくなった。しかし、後ろ手に拘束されていたので、それは不可能だった。
 靖子は気だるそうに立ち上がり、和久の体から離れると、近くのベッドに腰掛けた。彼女は静かな口調で、和久に話し掛けた。
「あなた、そこに正座して…」
 和久は身をよじらせ、その場に正座した。靖子は、彼に優しく問い掛けた。
「あなた、これからは他の女に目移りしないで、忠実に私だけを見て、私に絶対服従する奴隷夫になれる?」
「は、はい、なれます…いえ、是非とも靖子様に忠誠を誓い、絶対服従する奴隷夫にさせて下さいませ!」
 正座していた和久は、上体を前に倒し、額を床に着けて、靖子に答えた。靖子は満足そうに微笑み、両脚を開いた。
「それなら、あなたの上の口で、私の下の口を綺麗にして頂戴」
「はい、靖子様」
 和久は膝で靖子へにじり寄り、彼女の股間に顔を埋め、陰部を舐め始めた。靖子の饐えたような強い臭いがする分泌液と、自分の生臭い精液の味が混じった体液を舌と口中に受けて、咽せ返りそうになった。それでも和久は靖子に喜んでもらおうと、懸命に舌を動かし、唇を密着させて体液を吸い取った。
 和久の必死の舌奉仕を見下ろしていた靖子は、彼が心の底から自分に隷属したのを確信し、身を屈めて、彼を後ろ手に拘束している革手錠を解いた。両手が自由になった和久は、思わず靖子の腰を抱きしめ、更に舌を激しく動かした。
 靖子はしばらく和久の懸命な舌奉仕を楽しんでいたが、両手で彼の頭を挟み、一旦自分の股間から押し離した。そして、和久の目を見据えて、真剣な顔で問い掛けた。
「ねえ、あなた…私のおしっこ、飲める?」
 和久は目を輝かせて、即答した。
「はい、飲めます。靖子様のおしっこを…いえ、聖水をお恵み下さいませ」
 靖子は微笑むと、和久の頭を引き寄せ、彼の口を再度自分の陰部に当てがった。
「あなた、床にこぼさないように、気をつけて飲むのよ」
 和久は自分の口を靖子の陰唇に密着させていたが、なぜだか尿が出て来なかった。
「駄目ね…なかなか出ないわ」
 靖子は、男に飲尿させる初めての体験に緊張しているのか、スムーズに排尿出来ないようだった。和久は、舌先で靖子の尿道口とその付近をつつき、尿意を促した。すると、突然「あぁっ」という喘ぎ声と共に、靖子の陰唇から尿が噴き出した。
 和久は一滴もこぼさないよう、次から次へ湧き出てくる靖子の尿を、必死に飲み続けた。強いアンモニア臭が口中から鼻の奥まで充満し、刺激的な味がする尿が、喉を焼いて、胃に溜まっていった。それは和久にとって耐え難い屈辱でもあり、妻である靖子の奴隷になれた喜びでもあった。
 靖子は排尿しながら、何とも言えない絶頂感を味わっていた。彼女は必死に自分の尿を飲み下している和久を見下して、感慨深げに言った。
「これが私達の、本当の三三九度になるのね…」
 靖子の排尿が終わると、和久は命じられてもないのに、自ら唇で尿道に残っている尿を吸い、尿で濡れた陰唇を舌で舐め回して、後始末に励んだ。靖子は、和久の口に排尿したエクスタシーと、彼の舌使いを十二分に堪能した。
「もういいわよ、あなた」
 しばらくして靖子は、和久の頭を押しやると、ベッドの端から立ち上がった。彼女は、正座の姿勢に戻った和久を見下ろし、きっぱりとした口調で告げた。
「私、男の人を馬にして、乗り回したかったの…あなたを今から人間馬にするわよ。いいわね!」
「はい、喜んで、靖子様」
 和久は馬になるため、直ちに四つん這いになった。靖子は、最初にキャリーケースからキラキラ光る拍車を取り出し、ブーツに取り付けた。次に手綱付きのハミを取り出し、四つん這いになっている和久の口にハミを突っ込んで、それに付いている革ベルトを彼の頭に巻き付け、顔面にしっかりと装着した。最後に乗馬鞭を取り出し、一振りして風を切る音を和久に聞かせ、彼の前で仁王立ちになった。和久は靖子を見上げ、彼女のドミナスタイルに改めて見惚れた。
 平凡な顔立ちに施した、サディスティックな雰囲気を印象づけている濃いきつめのメイク、下着は着けずに乳房と陰毛を剥き出しのまま、赤色革製コルセットで細く締めているウェスト、そのコルセットから吊っている黒色網タイツ、太腿まである革製の黒光りするロングブーツ、その踵に取り付けられた光る拍車、右手に保持して威厳を示している本格的な乗馬鞭…なぜ、これ程女王様としての素晴らしい資質を持った靖子と結婚し、一年間も一緒に暮らしていて、むざむざと気がつかなかったのか…和久は、自分の愚かさを悔いた。
「あなた、乗るわよ!」
 靖子は四つん這いになっている和久の背に跨り、手綱を手にした。和久は、靖子のぬめった陰唇が直接自分の背中に触れて、彼女の結構ある体重が背骨と手足に負荷を掛けたのを感じた。
「さあ、進んで!ハイドウ、ハイドウ!」
 靖子は乗馬鞭で和久の尻をピシッと打ち、拍車を彼の脇腹に突き立て、掛け声を掛けて彼を促した。和久は靖子を背にして、よたよたとホテルの室内を這い回り始めた。和久は靖子に奴隷…いや、それ以下の家畜の馬として使われる甘美な屈辱を感じて、先程放出したばかりにも関わらず、股間のものを硬く屹立させた。
「あなた、もっと速く進むのよ!ハイドウ、ハイドウ!」
 靖子は掛け声と共に、和久の尻を鋭く鞭打ち、脇腹へ更に力強く拍車を突き立て、彼を追い立てた。和久は尻と脇腹の強い痛みと、膝の擦り剥けそうな痛みに、ハミを咬まされた口からくぐもった悲鳴を上げた。それでも、靖子に支配されて虐められる喜びに打ち震え、手足を懸命に動かして這い進んだ。靖子は勝ち誇った口調で、和久に話し掛けた。
「あなた、お金が掛かるけど、自宅の一室をリフォームして、完全防音にしないといけないわね…そうしないと、私達の楽しみの音が響いて、ご近所に変な噂が広まってしまうわ」
靖子の言葉を聞いて、和久は凄い幸福を感じた。女王様と結婚していたなんて、マゾ男の夢じゃないか…和久は自分の幸せを噛み締めながら、妻の靖子に喜んでもらおうと、全力でホテルの部屋を懸命に這い回った。もう彼には既に、玲香への想いと未練は、完全に消え去っていた。
高級ホテルの一室での、和久と靖子の一風変わった夫婦の営みは、深夜遅くまで続いたのだった。
 
                          終わり