人 格

作者 namelessさん



宮本裕之は行きつけの静かなバーで、普段は内気で控え目で恥ずかしがり屋の糸永香織から、大胆な事を言われ、信じられないという表情で、彼女を見つめた。香織は、ほろ酔い加減の少し赤くなった顔で、

「…今夜は、帰りたくない」

と裕之に囁き、彼の肩に頭を傾けたのだった。

 27歳の裕之は、大手医療機器メーカーの営業部に所属しているサラリーマンで、三ヶ月前に営業で訪ねたデイケア施設の受付をしている25歳の香織に、一目惚れしてしまった。

 香織は目鼻立ちのはっきりした、芯の強さを窺わせる今風な美人であるが、内気で控え目で恥ずかしがり屋な性格の、どこか古風な一面を感じさせる魅力に、裕之の心は鷲掴みにされてしまった。

彼は営業で鍛えた粘り腰で、内気で恥ずかしがり屋の香織に、積極的なアプローチを繰り返し、ようやく一ヶ月前からデートする事が出来た。

 しかし、内気で控え目な香織との関係はなかなか進展せず、このままでは、良いお友達で終わってしまうのではないかと、裕之は内心焦りを感じていた。

 ところが今日のデートは、香織は普段と全く違って、何かと積極的で、妖艶な雰囲気を漂わせ、夕食の後、珍しく香織の方から酒に誘ったので、裕之は彼女を行きつけのバーに連れて来た。二人はバーのカウンターに並んで座り、裕之はハイボールを、香織はカクテルを注文して、取り留めのない話をしながらゆっくり飲んでいると、彼女は不意に大胆な発言をして、自分の頭を裕之の肩にもたれさせ、彼を驚かせたのだった。

 予想外の香織の行動に、一瞬驚いた裕之だったが、直ぐに心の中でガッツポーズを取った。

(やった!ようやく香織さんが、その気になってくれた…これでやっと、本当の男女の関係になれる!)

 裕之はバーテンダーにカードを渡して、支払いを済ますと、香織の肩に手を廻してバーを出て、そのまま近くのラブホテルに向かった。

 ラブホテルの部屋に入ると、香織は、

「先に、シャワーを一緒に浴びましょう」

と言って、ハンドバッグをベッドに放り、さっさと服とパンティストッキングを脱ぎ、ピンク色のブラジャーとパンティだけの、下着姿になった。

 普段とは全く違う、香織の大胆な行動に、裕之は目を丸くしたが、彼も慌てて服を全て脱ぎ、全裸となった。香織は全裸の裕之に近づくと、両腕を彼の体に廻し、

「ねえ…下着は、裕之さんが脱がせて…」

と甘く囁いた。普段の内気で恥ずかしがり屋の香織からは、全く想像出来ない積極性に、裕之は些か戸惑った。それでも、彼女の豊満な胸を押し付けられて興奮し、股間のものが下腹を叩く程、猛々しくいきり立ち、ブラジャーのホックを外そうと、両手を彼女の背中に廻した。

 その瞬間、香織の鋭く力強い膝蹴りが、裕之の股間に炸裂し、彼に絶叫を上げさせた。

「グエェーッ」

 下半身に拡がる激痛に、裕之は両手を股間にやり、床に倒れて、芋虫みたいに体を丸め、もがき苦しんだ。

 香織は、ベッドに放ったハンドバッグから手錠を取り出すと、苦しんでいる裕之の両手を素早く背中に廻して、拘束した。それからベッドに腰掛け、ハンドバッグから取り出した煙草をくわえて、ライターでカチリと火を点け、煙をフーッと派手に吹き出した。

 股間の激痛が幾分か治まった裕之は、痛みを堪えながら、後ろ手錠された不自由な体をよじり、ベッドに腰掛けて紫煙をくゆらしながら、自分を見下している香織の足元に、何とか膝を揃えて座った。清純で内気で控え目な香織が、煙草を吸うのを初めて見て、裕之は唖然とした。

「か、香織さん、何をするんだ!?何の真似なんだ!?早く手錠を外してくれ!」

 裕之は、まだじんじんと強く痛む股間の疼痛に耐えながら、香織に大声を上げた。しかし、返事は彼女の素足による蹴りだった。

「ヒィッ」

  力強い香織の足裏の蹴りを、もろに頬へ受けた裕之は、短く情けない悲鳴を洩らし、再び床に倒れた。ベッドから立ち上がった香織は、煙草をふかしながら、横倒しになった裕之の顔を踏みにじり、怒鳴りつけた。

「生意気言うんじゃないよ、このスケベ男が!お前みたいな最低のスケベに、この私の高貴な肌を許す筈無いでしょう…それと、私を馴れ馴れしく“香織さん”と呼ぶんじゃないわよ。私の事は“麗羅様”とお呼び!」

 香織に素足で顔を踏みにじられ、口惜しさで、はらわたが煮えくり返る思いの裕之には、彼女が一体何を言っているのか、全く理解出来なかった。香織が足を裕之の顔から外すと、彼は再度大声を上げた。

「何、訳の分からない事を言っているんだ、君は!?気でも狂ったのか!?とにかく、背中の手錠をさっさと外せ!」

 すると香織は、横倒しになっている裕之の鳩尾を、思い切り爪先蹴りした。 

「グボオゥッ!」

 股間の強い痛みが残っている上に、急所である鳩尾を強く蹴られた裕之は、ヒキガエルが踏み潰されたような悲鳴を上げ、横倒しの体を曲げ伸ばしして、悶え苦しんだ。

 香織は、吸っていた煙草の火を裕之の体に押し付けて消し、更に悲鳴を上げさせると、彼が脱いだスラックスから、革ベルトを引き抜いた。彼女は革ベルトを手にすると、床で涙を流して悶え苦しんでいる裕之を仁王立ちで見下し、傲慢な口調で言い放った。

「お前はまだ、自分の立場と身分が分かってないようね…この麗羅様に、二度と失礼な口が利けないよう、体に礼儀作法を教え込んであげるわよ!」

 邪悪な笑みを浮かべた香織は、革ベルトを振り上げると、情け容赦無しに、裕之の体に叩きつけた。

「ギャアァーッ」

 生皮を剥ぎ取られる様な激痛に、裕之は絶叫を上げて、体を仰け反らした。身悶えする裕之に構わず、香織は二度三度と革ベルトを振るって、更に彼を苦しめ、悲鳴を上げさせた。

 香織は、一旦革ベルトをベッドに放ると、ブラジャーを外し、パンティを脱いで、全裸となった。彼女は、脱いだパンティを裕之の口に無理やり押し込み、床に脱ぎ捨てていたパンティストッキングを口元に回して縛り、猿ぐつわにした。

「男の悲鳴は嫌いじゃないけど、ちょっとうるさ過ぎるからね…これでよし、と…」

 香織の興奮した淫液が染み込んだパンティは、饐えたような強い臭気を、裕之の口中から鼻の奥まで貫かせ、彼の目を白黒させた。あまりの屈辱と全身の痛みに、裕之の目から涙が溢れた。

「さてと…お前に自分の立場と身分を、思い知らせてやらないといけないわね」

 香織は再び革ベルトを手にすると、興奮して目を吊り上げ、髪を振り乱し、豊かな乳房を揺らして、裕之の体をめった打ちにした。パンティをくわえさせられた裕之の口から、くぐもった呻き声が漏れ、彼は床を転げ回って苦しんだ。

 ようやく、香織が革ベルトを振るうのを止めた時、裕之の全身は赤い筋で覆われ、息も絶え絶えで、もがく事すら出来なくなっていた。

 香織は革ベルトを放ると、床に倒れている裕之の傍にしゃがみ、彼の口元を縛っているパンティストッキングを解き、口に押し込んでいたパンティを引っ張り出した。彼女は、ゲホッゲホッと咳き込む裕之の髪を掴み、自分の顔を近づけ、彼に問うた。

「さあ、これで少しは、私に対する口の利き方を覚えたかしら…どうなの!」

 あまりに度を超えた全身の苦痛に、反抗する気力を全て失った裕之は、半泣きの声で、途切れ途切れに答えた。

「はい…申し訳ありません…でした…言葉に気をつけます…ですから…もう、赦して下さい…香織さん…」

 すると香織は、目から火花が散るような強烈な往復ビンタを、裕之の両頬に張った。

「ヒィ、ヒイィッ、赦して、赦して下さい…」

 情けない哀願をした裕之に、香織は怒鳴りつけた。

「全然、分かってないわね!私は“香織”じゃなくて、“麗羅”なのよ…ちゃんと、麗羅様とお呼び!」

「ヒッ、ヒィッ、申し訳ございません…どうか、お赦しを…御慈悲を、麗羅様…」

 なぜ香織は、自分を麗羅と呼ばせるのか、裕之には全く理解出来なかった。しかし、これ以上痛い目に遭わないためには、彼女に逆らえなかった。

「ふんっ、まだまだ躾が足りないようね…まあ、徐々に仕込んであげるわよ。そこに、正座おし!」

香織は裕之の髪を放すと、ベッドに腰掛け、自分の足元を顎で示して、彼に屈辱的な命令を下した。裕之は、まだ残っている股間の痛みと、全身を覆っている赤い条痕の引きつりに耐え、後ろ手錠の不自由な体を何とか動かして、香織の足元に正座した。彼女は右足を伸ばし、足裏で裕之の頬を挑発するようにピシャピシャと軽く叩き、嘲笑うように言った。

「ウフフ、スケベな下心で、この麗羅様をラブホテルに連れ込むから、こんな目に遭うのよ…お前はただセックスしたいだけで、私の誘いに乗ったけど、私の奴隷狩りにまんまと引っ掛かったのよ…お前を調教して、そのスケベな性根を矯正してあげるから、ありがたく思うのね…先ずは私の奴隷になりますと、お誓い!」

 今まで恋人のつもりで付き合っていた香織から、足裏で頬を挑発的に叩かれ、奴隷になれと言われた裕之は、あまりの屈辱に顔が紅潮して、身震いした。彼は下唇を噛み、口惜しさを堪えたが、香織から受けた度を超えた苦痛は、反抗する気力を喪失させ、卑屈さだけを残していた。

「は、はい、麗羅様の奴隷になります…いえ、是非とも、奴隷にさせて下さいませ…」

 香織は勝ち誇った笑みを浮かべ、足裏を裕之の口元に突き出した。

「少しは、口の利き方を覚えたようね…いいわ、私の奴隷にして上げる。男奴隷、御主人様の足の裏をお舐め!」

 香織の屈辱的な命令に、裕之は口惜しさで目が眩む思いだったが、惨めさを押し殺して舌を伸ばし、彼女の足裏を舐め始めた。足裏に付着していた埃のざらついた感触が、裕之の屈辱感を倍増させ、彼の目に涙が浮かんだ。

「男奴隷、こっちの足も、お舐め!」
   力強い香織の足裏の蹴りを、もろに頬へ受けた裕之は、短く情けない悲鳴を洩らし、再び床に倒れた。ベッドから立ち上がった香織は、煙草をふかしながら、横倒しになった裕之の顔を踏みにじり、怒鳴りつけた。

「生意気言うんじゃないよ、このスケベ男が!お前みたいな最低のスケベに、この私の高貴な肌を許す筈無いでしょう…それと、私を馴れ馴れしく“香織さん”と呼ぶんじゃないわよ。私の事は“麗羅様”とお呼び!」

 香織に素足で顔を踏みにじられ、口惜しさで、はらわたが煮えくり返る思いの裕之には、彼女が一体何を言っているのか、全く理解出来なかった。香織が足を裕之の顔から外すと、彼は再度大声を上げた。

「何、訳の分からない事を言っているんだ、君は!?気でも狂ったのか!?とにかく、背中の手錠をさっさと外せ!」

 すると香織は、横倒しになっている裕之の鳩尾を、思い切り爪先蹴りした。

裕之にたっぷりと足裏を舐めさせた香織は、右足を引っ込め、左足の足裏を彼の口元に突き出した。裕之は、自分に惨めさを感じさせまいと、心を無にしようとして、ひたすら香織の足裏を舐め続けた。しかし、心を無にしたつもりでも、男の自分が女の足裏を舐める屈辱感は、彼の心を深く抉って傷つけた。

 ベッドに腰掛けている香織は、不意に足を引っ込めると、両足を開き、正座している裕之の髪を掴んで引き寄せ、彼の顔面を自分の陰部に近づけた。

「男奴隷、足を舐めるのにも、飽きたでしょう…次は、ここを舐めさせて上げるわ。しっかりと、舌をお使い!」

 香織は、裕之の口元を自分の陰部に押し付け、酷い命令を下した。彼女の陰部は、裕之を虐めて興奮したのか、濃い陰毛の繁みに縁取られた陰唇は、赤く充血してめくれ上がり、強い臭いを放つ淫液で濡れそぼっていた。

 とろとろに濡れた陰部に、鼻と口を押し付けられた裕之は、魚介類が発酵したような強烈な女の臭いに、咽せ返りそうになった。しかし、香織の怒りに触れるのを恐れた裕之は、必死に舌を伸ばし、懸命に彼女の陰部を舐め始めた。

「クックックッ…いい舌使いよ。一生懸命なのがいいわ…お前は、立派なバター犬になれるわよ」

 香織に蔑んだ口調に、裕之の体は恥辱で震えた。それでも、彼女からの虐待を恐れて、舌の動きを止める事無く、咽せそうになるのを堪え、必死に舐め続けた。

 裕之は、香織の陰部を舐めながらも、内気で恥ずかしがり屋の彼女が、自分を情け容赦無く痛めつけ、こんなに大胆な恥ずかしい真似をさせるのが、未だに信じられなかった。

 裕之を思い切り虐待し、気が昂って、既に興奮していたためか、香織は割と早く絶頂に達して、背を仰け反らし、大きな喘ぎ声を上げた。彼女は上体をベッドに倒し、裕之の顔面を股に挟んで、しばらく余韻を楽しんでいたが、急に体を起こすと、彼の顔面を自分の股間から離し、足裏で押しやった。

「ひぃっ」

 香織はベッドの縁から立ち上がり、短い悲鳴を漏らして床に倒れた裕之を見下し、嘲るように言い放った。

「私を感じさせてくれたご褒美に、お前も気持ちよくさせて上げるわ…さっさとお立ち!」

「は、はい…」

 後ろ手錠の不自由な裕之が、何とかよろめきながら立ち上がると、

「バスルームに行くわよ…ぼやぼやしてないで、この麗羅様についておいで!」

と香織は言って、彼の股間に手を伸ばし、陰茎と陰嚢の根元をギュッと強く掴み、バスルームに向かって、力強く引っ張って行った。

「ああっ、痛いっ、待って、待って下さい、香織…いえ、麗羅様…」

 裕之は情けない声で香織に哀願しながら、股間のものが引きちぎられそうな痛みに、腰を突き出した惨めな姿で、よたよたと彼女の後をついて行った。度を超えた恥辱に、彼の胸はズタズタに切り裂かれる思いだった。女に恥ずかしい箇所を掴まれて、惨めに引き立てられる屈辱は、裕之の男としての最低限の自尊心を踏みにじり、彼の目から涙をこぼれさせた。

 バスルームに入ると香織は、裕之の股間の物を下に強く引っ張り、

「男奴隷、さっさと跪きなさい!」

と命じた。

 裕之は、股間のものが引きちぎられそうな強い痛みに、短い悲鳴を上げながら、慌ててバスルームの床に跪き、香織の足元に正座した。 

「額を床に着けて、膝をもう少し開いて立てて、お尻を高くお上げ!」

 香織に酷い命令された、後ろ手錠姿の裕之は、ぎこちない動きで、言いつけられた通り、上体を倒して、額で体を支え、尻を高く上げて肛門を晒す、惨めな姿を取った。

 香織は、シャワーを手にすると、シャワーヘッドをクルクル回して外し、シャワーホースの先に、ボディソープを塗り付けた。彼女は、そのホースの先端を裕之の肛門に当てがい、挿入しようとした。

「アヒィッ」

 肛門に異様な感触を受けた裕之は、思わず声を上げ、キュッと力を込めて肛門を窄めた。香織は、左手で裕之の陰嚢を掴み、じわりと握り締めた。

「グウゥーッ」

 睾丸を圧迫される痛みに、裕之の口から呻き声が漏れた。

「男奴隷、お尻の力をお抜き!逆らったりしたら、このまま睾丸を握り潰してやるからね!」

 香織に脅された裕之は、止む得ずに力を抜き、肛門を緩めた。すかさず香織は、右手で力強くシャワーホースの先端を、裕之の肛門に10センチ程一気に押し込んだ。

「ヒイィッ」

 異様な感覚が、裕之に悲鳴を上げさせた。香織はコックを捻り、裕之の直腸にゆっくりと、ぬるま湯を注入した。裕之の下腹は見る見る膨れ、直腸の圧迫感に彼は苦しんだ。

 香織が裕之の肛門からシャワーホースを引き抜くと、彼の肛門からは、軟便の混じった茶色い汚水が噴き出た。

「まあ、汚い!男のくせに、よく女の前で大便を漏らせるわね、このうじ虫!」

 香織は裕之を酷く罵ると、汚物をシャワーホースから出るお湯で溶かして、排水口に流した。裕之は、あまりの恥ずかしさに、顔を真っ赤にして、体を震わせた。

 香織は再度、裕之の肛門にシャワーホースを挿入して、ぬるま湯を注入した。次に香織がシャワーホースを引き抜くと、裕之の肛門からは、透明なぬるま湯が噴出した。

「ようやく、お前のはらわたは、きれいになったようね…何しろ、腸に便が溜まっていたら、可愛がれないからね」

 香織は満足そうに笑うと、シャワーを元通りに片付け、恥辱で身震いしている裕之の背後にしゃがんだ。彼女は、自分の手にボディソープを付けて、泡立たせると、右手の中指を裕之の肛門へ、一気に突っ込んだ。

「アヒイィッ」

 裕之の口から悲鳴が漏れたが、先程のシャワーホースの温水注入で肛門が拡張されたためか、香織の中指は、すんなり挿入された。

「姿勢を崩すんじゃないよ!この麗羅様がわざわざ、男奴隷に新しい感覚を教えて上げてるんだからね…ありがたく、お思い!」

 裕之に厳しく注意した香織は、挿入した中指をくねらせ、彼の前立腺を巧みに刺激した。確かに、今まで体験した事の無い感覚に、裕之の下半身は痺れ、股間のものを硬く屹立させた。

 香織は左手を伸ばすと、裕之の硬くなったものを軽く握り、ゆっくりとしごき始めた。裕之は体を震わせ、切なそうにため息をついた。

「うふふ、お前は男のくせに、女の指で肛門を弄られて、感じているのよ…口惜しくない?恥ずかしくないの?」

 香織の陰険な蔑みの言葉が、裕之の胸を深く抉り、彼の目から涙を流させた。しかし、下半身が痺れて、溶けるような快感に、裕之の屹立したものは、更に硬度を増していた。

 香織は、裕之のものをしごくのを一旦止め、代わりに左手の爪を、触れるか触れないかの微妙なタッチで、彼の硬く屹立したものの、敏感な亀頭部分に何度も滑らした。そして、掌で陰嚢を包み込み、ゆっくりと揉みほぐす。それから、指の腹で亀頭部分を優しく撫で回した。その間にも、右手中指による、前立腺への刺激は続けられた。このような射精一歩手前の刺激を、香織は延々と裕之に与え、彼をじらし続けた。

 股間のものが、破裂しそうな位に、限界まで硬く怒張しているのに、果てさせてもらえない裕之は、遂に忍耐の限界が来て、香織に半泣きの声で哀願した。

「お、お願いです、香織様…いえ、麗羅様、いかせて、いかせて下さい。何でも言う事を聞きますから、どうか、いかせて下さい…」

 ようやく裕之の精神が陥落したのを実感した香織は、満足そうに微笑み、彼の体から手を離して立ち上がり、彼の横腹を足で押しやって、仰向けに倒した。そして、仰向いた裕之の顔を、仁王立ちに跨り、見下して言い放った。

「うふふ、そんなに、いきたいの?…それなら、先ず便器になって、私のおしっこをお飲み!こぼさずに、きちんと飲めたら、いかせて上げるわよ」

 とんでもない条件を突きつけられた裕之は、驚きで目を丸くして、自分を見下している、香織の悪魔的な笑顔を見つめた。

「そ、そんな、便器になれだなんて…おしっこなんて、とても飲めません…」

 やっとの思いで返答した裕之を、香織は意地悪く言った。

「そうよね、普通の男は、女のおしっこなんて、飲める筈無いわよね…それじゃ、いかないで、ずーっと我慢してしてなさいよ!」

 裕之の顔が、苦しげに歪んだ。理性では、香織の尿を飲むなんて、人間として出来る筈が無いと、分かってはいるのだが、下半身の火照りは、限界をとっくに超えていた。それは、理性を吹き飛ばすには、十分過ぎた。

「ああっ、飲みます…香織様の、いえ、麗羅様のおしっこを飲みます…飲みますから、いかせて下さい」

 裕之の叫ぶような哀願を聞いた香織は、腹を抱えて嘲笑した。

「アハハハッ、おっかしい!射精が我慢出来なくて、女のおしっこを飲ませて下さいと哀願するなんて、お前はそれでも男なの?女のおしっこを飲むのを選んだからには、お前はもう、男どころか人間じゃなくなったわね。自分から、最低の汚らしい便器に落ちぶれたんだよ、この豚!」

 バスルームに香織の残酷な罵倒が響き、裕之が維持していた最低限の人間としての矜持は、完全に崩壊してしまった。

「そんなに私のおしっこが飲みたいのなら、遠慮無く飲ませて上げるわよ…口を大きくお開け!」

 香織は裕之に口を開かせると、彼の顔にしゃがみ込んだ。濃い陰毛に縁取られた、赤くぬめった陰唇が、自分の顔に近づくのを目の当たりにした裕之は、大きなヒルの凶悪な怪物が、自分の血を吸い尽くそうと接近するように錯覚して、身の毛もよだつ恐怖を感じた。しかし、股間の猛りは、どういう訳か全く衰えなかった。

 香織は、裕之の口に陰部を当てがうと、

「出るわよ、男奴隷…一滴もこぼすんじゃないわよ!」

と言って、直ぐに彼の口中へ情け容赦無く、尿を注ぎ込んだ。

 裕之は、目を白黒させながらも、必死に香織の尿を飲み下した。アンモニア臭が強く、普通なら喉につっかえて飲めない尿も、一種異常な精神状態に陥っている裕之は、次から次に噴出する香織の尿を、無我夢中で飲み続けた。

 裕之が、香織の尿の強烈なアンモニア臭と、舌と喉を焼く刺激的な味を感じたのは、彼女がようやく排尿を終えて、腰を浮かせた時だった。

「男奴隷、おしっこを飲み終えたら、いちいち言われなくても、お前の舌で後始末するのよ…ぼやぼやしてないで、さっさとお舐め!」

 香織に命じられた裕之は、おずおずと舌を伸ばし、尿で濡れた彼女の陰部を舐め始めた。改めて舌に、尿の刺激的な味が拡がり、裕之を落ち込ませた。

 いい加減、裕之に陰部を舐めさせた香織は、不意に立ち上がり、体の向きを変え、今度は後ろ向きになって、裕之の顔にしゃがみ込んだ。彼女は両手で自分の尻を拡げ、肛門を裕之の口に当てがった。

「前の方ばかりじゃなく、後ろの方も舐めさせて上げるわ…女の一番恥ずかしくて、一番汚い肛門を舐めさせてもらえるなんて、便器にまで落ちぶれた男奴隷のお前には、本当に相応しいわよね」

 香織の酷い蔑みが、裕之の頭に虚ろに響いた。しかし、彼女に精神を完全に制圧された裕之は、抗うことが出来ず、舌を伸ばして、褐色に汚れている肛門を舐め出した。舌に拡がる、何とも表現出来ない臭みとえぐみが、裕之にお前はもう人間じゃない、豚だ、便器だと言い聞かせているように思えて、彼の心を二度と這い上がれない奈落の底に突き落とした。

 香織は肛門を舐めさせながら、まだ硬く屹立している裕之のものを右手で掴み、ゆっくりとしごき始めた。すると彼のものは、更に硬くなった。自分に散々凌辱を加えた香織の手で、興奮して感じてしまっている裕之は、既に自分の精神が彼女に組み敷かれ、完全に支配されてしまったのを実感した。

 香織は、裕之のものをきつく握り、早く強くしごき出した。

「さあ、男奴隷、もういってもいいわよ…さっさと、おいき!」

 我慢に我慢を重ねてきた裕之は、香織の豊満な尻の下で、くぐもった呻き声を漏らし、彼女の上下に動く右手の中で、限界まで硬直している屹立したものから、夥しい白濁液を噴出した。

 射精を終えた裕之は、下半身が溶けてしまったように感じ、全身の力が抜けて、最早動けなくなっていた。



 香織は、ぐったりと横たわっている裕之に、シャワーを浴びせて汚れを洗い流し、自分もシャワーを浴びた。ぐったりしている裕之の頭を蹴り、叱りつけて立たせた香織は、バスタオルで簡単に拭うと、彼の股間のものを掴んで、ベッドの部屋に引っ張って来た。後ろ手錠を外してもらえない裕之はもう、恥ずかしがり口惜しがる気力すら喪失したみたいで、うなだれて腰を突き出し、僅かにすすり泣きの声をもらしながら、とぼとぼと香織について来た。

 香織はベッドに着くと、裕之の背中を突き飛ばし、彼をベッドの上へうつ伏せに倒した。そして、ハンドバッグから、先が細めのバイブとワセリンの缶を取り出すと、バイブの先端にワセリンを塗りたくった。

「男奴隷、さっきバスルームで、お前のアナル感覚を開発して上げたけど、まだ足りないわ…これから、仕上げをして上げるわよ!」

 香織は裕之の尻を拡げ、彼の肛門にバイブの先端を当てがうと、一気に押し込んだ。バスルームで彼女の指に直腸を散々嬲られて、肛門が幾分か弛緩していたためか、バイブはすんなり挿入された。

「ウワアァーッ」

 裕之は悲鳴を上げて、体をはね上げ、膝でベッドの上を二、三歩いざり進み、直ぐに又うつ伏せに倒れた。邪悪な笑みを浮かべた香織は、裕之の背中に後ろ向きで跨った。

「ウフフ、やっぱりアナルが感じるみたいね…もっと感じさせて上げるわ」

 香織は手を伸ばし、バイブのスイッチを入れた。ビィーンと音が響き、バイブは裕之の直腸内で激しく震動した。

「グオアァーッ」

 裕之は堪らず、獣じみた絶叫を上げ、体をはね上げそうになったが、香織が背中に跨っているので、身動き出来なかった。香織は掌で、裕之の肛門から突き出ているバイブの端を、押さえるようにこねくり回して、彼を蔑んだ。

「男のくせして、女から肛門を可愛がられて悶えるなんて、恥ずかしくないの?まあ、女のおしっこを飲んで射精する、最低の男奴隷に恥も外聞も無いわよねぇ…」

 香織の侮蔑が、裕之の胸を深く抉ったが、今の彼には口惜しがる余裕すら無く、涙をこぼして悶え苦しむだけだった。

 不意に香織は、裕之の背中から立ち上がり、もがいていた彼は、急に軽くなったため、仰向けに転がった。苦悶しているにも関わらず、裕之のものは硬く屹立していた。バイブの震動が、裕之の前立腺を刺激し続けているためだった。

 香織はベッドから降りると、床に放っておいた革ベルトを手にして、裕之へ理不尽に言い放った。

「誰がそこを硬くしていいと、言ったの!女主人である麗羅様の許しも得ないで、勝手に硬くするなんて、赦せないわ。お仕置きよ!」

 革ベルトを振り上げた香織は、猛々しく屹立している裕之のものを、情け容赦無く打ち据えた。

「ウギャアァーッ」

 敏感な箇所を、革ベルトで打たれた裕之は、絶叫を上げて、ベッドの上で転がって、苦しんだ。ベッドに上がった香織は、悶え苦しんでいる裕之の腹を、踏みつけて固定し、更に彼の硬く屹立しているものに、革ベルトを鋭く振り下ろした。香織の足元で大きな悲鳴が上がったが、彼女は構わずに、裕之の股間に続けて革ベルトを振り下ろした。

 香織の振るう革ベルトが、勃起している陰茎と同時に、陰嚢も強かに打ち据えた瞬間、裕之は獣じみた絶叫を上げ、なぜだか射精してしまい、白目を剥いて失神した。



 裕之が意識を取り戻した時、全裸の彼はベッドの中で、同じく全裸の香織と並んで、横になっていた。彼は起きようとしたが、全身を縦横無尽に走る赤い条痕が引きつる上に、後ろ手錠を掛けられたままだったので、体をうまく動かせなかった。肛門のバイブは、既に抜かれていた。

 ふと壁の時計を見ると、もう朝の6時過ぎになっていた。この時、香織が目を覚ました。彼女は寝惚けまなこで、不思議そうに裕之へ問い掛けた。

「あれ、裕之さん、ここはどこ?…きゃあっ、何で私達、裸なの!?それに裕之さんの、その酷い傷は何?一体どうしたの?」

 裕之は、香織の言動が全く理解出来なかったが、彼女から受けた昨夜の虐待を思い、これ以上痛い目に遭わされないようにと、下手に出た。

「あの…全て麗羅様のなさった事ですけど…」

 裕之の言葉を聞いた香織は、両手で顔を覆い、激しく首を振った。

「ああっ、麗羅が出たんだわ!麗羅が裕之さんを…いいえ、私が裕之さんに酷い事をしたのね。ごめんなさい、本当にごめんなさい!」

 香織は裕之に抱きつくと、彼の胸で泣きじゃくり、何度も謝った。裕之には、香織の言動の意味が、全く分からなかった。

「あの、麗羅様…いや、香織さん、とりあえず、背中の手錠を外してくれないか…」

 香織は、初めて裕之が後ろ手に拘束されているのに気づき、慌てて傍らのハンドバッグを手にすると、ひっくり返し、中身を全てベッドにぶちまけた。その中から、小さな鍵を見つけ、それで裕之の手錠を解いた。それから、香織は再度裕之に抱きつき、泣きながら謝った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、裕之さんをこんな酷い目に遭わせて…どうか、赦して…裕之さんの気が治まらなかったら、私をいくら撲ってもいいから、どうか、赦して…」

 裕之の頭は混乱しっぱなしだったが、とりあえず香織を抱きしめて、理由を尋ねる事にした。

「香織さん…昨日と今日じゃ、香織さんは全くの別人みたいだけど、一体どういう事?」

 香織は、泣き声で答えた。

「私は、解離性同一性障害…つまり、多重人格なの…」

「た、多重人格…?」

 驚く裕之に、香織は説明を続けた。

「私、小学生の頃から、その病気なの…色々な人格が、私を乗っ取っているのよ。その別人格が出ている時の記憶が、私には無いの…だから、昨夜私が裕之さんに、どんな酷い事をしたか、全く思い出せないのよ…」

 裕之は首を傾げながら、香織に質問した。

「それじゃ、香織さんは昨夜、“麗羅”と名乗っていたけど、それは香織さんの別人格だったのか…香織さんは、“麗羅”のした事は記憶に無いと言ったけど、“麗羅”も香織さんの行動は、思い出せないのかい?」

 香織は悲しそうな表情で、首を横に振った。

「それが、“麗羅”は、私のした事をよく覚えているの。彼女は、不意に私の心に現れると、私のした事をあれこれ批判するわ…それから、消える事もあるし、そのまま私の心を乗っ取る事もあるのよ…」

 裕之には、香織の説明が完全には理解出来なかったが、質問を続けた。

「昨日はいつ頃、“麗羅”に心を乗っ取られたんだい?」

「おそらく、私が裕之さんとのデートに出掛ける直前の、家の中だと思うの…“麗羅”は不意に私の心に出てきて、『香織だけが幸せになるなんて、絶対に許さない!』と私を非難して…その後の記憶が無いの…」

 それで裕之は、納得出来たように、首を小さく縦に振った。思えば、昨日のデートでの食事の時から、香織は普段の雰囲気と全く違っていた。普段の内気で控え目な態度ではなく、店員に積極的に話し掛け、あれこれ質問してから注文したり、妖艶な表情で裕之を見つめて、彼をぞくりとさせ、自分から酒に誘ったりしたのだ。香織は、話を続けた。

「私、高校生になってから、解離性同一性障害を患っている事がはっきり分かって、精神科の医師である伯母の治療を、ずっと受けているの。私が勤めているデイケア施設も、伯母が経営しているのよ…明日、伯母のクリニックに行く予定だから、裕之さんも一緒に言って、伯母の説明を聞いてもらえないかしら?」

 裕之は一瞬戸惑ったが、直ぐに承諾した。

「わかった、一緒に行って、香織の伯母さんの話を聞こう」

「ありがとう、裕之さん」

 香織は嬉しそうに礼を言って、裕之に抱きついた。



 次の日、裕之は有休を取り、香織に付き添って、午前中にクリニックを訪れた。二人を診察室に迎えた女医の糸永聡子は、香織みたいに目鼻立ちのはっきりした美人で、50代後半であるが、まだ30過ぎ位にしか見えない、いわゆる美魔女タイプだった。

「あなたが宮本裕之さんね、香織の恋人の…香織は裕之さんの事を、いつも私に話していて、『私、裕之さんと結婚出来なかったら、死ぬ!』とまで言っているのよ」

 些か豊満な体型の聡子女医は、裕之に愛想良く話し掛け、香織は恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしてうつむいた。香織の恥じらう姿を見た裕之は、ますます彼女を好きになってしまった。聡子女医は、裕之に説明し始めた。

「香織の母親は、彼女が小学生の時、病気で亡くなってね…それからは、父親に…私の弟なんだけど…男手一つで育てられたの。その父親も、香織が高校に入学した時、交通事故で亡くなってしまい、それ以来、独身を通している私が、香織の後見人になったの…」

 香織の内気で控え目な性格は、両親を早くに亡くし、伯母に引き取られたためかもしれない…裕之は、ふと思った。

「香織の後見人になった私に、高校から香織の言動がおかしいと、連絡が来たの…それで、私は伯母ではなく、精神科医として、香織を色々な角度から徹底して診察したところ、彼女が解離性同一性障害を罹患している事が判明したのよ…香織の治療を始めて、もう9年になるわね」

「9年も治療されているんですか!?」

 裕之が思わず驚いた声を上げると、聡子女医は、些か困惑したような表情になった。

「解離性同一性障害の治癒は、非情に難しく、時間が掛かるのよ…9年前の香織には、全部で7つの別人格があったの」

「7つの人格!?」

 裕之は、又も驚きの声を上げた。

「高校生だった香織は、常に別人格の誰かに、心を乗っ取られている状態だったの…泣き虫のリエコ、喧嘩早いサトミ、嘘つきのサヤカ、保育園児のマリエ、アスリートのミユキ、教師のユウコ…だから、香織は慢性的な記憶障害で、学業にも支障があったわ。元々は頭が良くて、勉強が出来る子だったのに…」

 香織は、別人格の時の言動は、全く記憶に無いと言っていたから、確かに授業内容が頭に入らず、まともに勉強出来なかっただろう。

「それでも、長い時間を掛けて、別人格を一つずつ、香織の人格に統合させたわ。これには、“麗羅”の助けが大きくてね…彼女が他の別人格に、統合するよう説得してくれたの」

「別人格同士で、話が出来るんですか!?」

 裕之には、驚きの連続だった。

「私にも、うまく説明出来ないんだけど、香織の心の中で、別人格同士が共存して、会話しているみたいなの…それで“麗羅”の協力もあって、6つの別人格が香織の人格に統合されたんだけど、肝心の“麗羅”だけが、統合するのを頑強に拒絶していてね…」

 裕之にはもう、何と言っていいのか、分からなかった。聡子女医は、椅子から立った。

「そろそろ、治療を始めましょう…香織、シートの背もたれを倒して、目を閉じて」

 聡子女医は、リクライニングシートに座っている香織に、体を横たわらせて、目を閉じさせた。

「力を抜いて、気を楽にして…あなたは段々と、深い眠りに落ちていくわ…」

 フラットにしたリクライニングシートに横たわって、目を閉じている香織に、聡子女医は落ち着いた口調で話し掛けた。裕之には、聡子女医が香織に、催眠術を掛けているのが分かった。

 やがて、目を閉じた香織の体から、力が抜けた。

「麗羅、出て来なさい」

 聡子女医が語り掛けると、香織が目を開いた。裕之は、彼女の表情を見て、驚いた。目の前に横たわっているのは、内気で控え目で清楚な香織ではなく、攻撃的で自信溢れた、妖艶な雰囲気を纏う、一昨日裕之を散々虐待した、残酷な麗羅だった。

「聡子先生、何の用?せっかく、気持ちよく寝てたのに…」

 さっきまで香織だった麗羅は、はすっぱな口調で、聡子女医に言った。

「麗羅、一昨日にこちらの、香織の恋人の裕之さんを、酷い目に遭わせたらしいけど、本当?」

 聡子女医の問い掛けに、麗羅はフンッと鼻で笑い、裕之を見据えて答えた。

「このスケベな男が、私をラブホに連れ込んで、いやらしい事をしようとしたから、ちょっとお仕置きしてやっただけよ…それにしても、あんた、あんな恥ずかしい姿を晒しておいて、よく私の前に顔が出せるわね、この恥知らずの豚!」

 麗羅に罵声を浴びせられた裕之は、一昨日の自分の醜態を思い出し、恥辱で顔を紅潮させ、うつむいた。

「いい加減にしなさい、麗羅!どうして、裕之さんに酷い事をしたの?」

 聡子女医が、少し強い口調で詰問すると、麗羅は彼女の方に顔を向けて、ふてくされたように答えた。

「香織に恋人が出来て、幸せになるのが、許せなかったからよ…香織は、嫌な事から逃げるのに、私を作り出して、私に全部押し付けたのよ…私は青春も謳歌してないし、恋人も出来ないのに、自分だけが幸せになるなんて、虫がよすぎるわ!」

 聡子女医は、ため息をついた。

「麗羅の気持ちは、分からないでもないけど…それなら、香織と統合して、一体になればいいじゃない。そうすれば、香織の幸せは、あなたの幸せになるでしょう?他の別人格の統合には協力してくれたのに、なぜ自分の統合は嫌がるの?」

 聡子女医の説得に、麗羅は首を強く横に振った。

「嫌よ!まだ、香織と統合して、消えたりしないわ。他の別人格がいたら、私の出番がなかなか回って来ないから、統合を説得して、消えてもらっただけよ…私は香織だけじゃなく、私に嫌な事をさせた男というものを、全て憎んでいるのよ。もっと男を痛い目に遭わせて、私の気が済んだら、香織と統合して上げてもいいけどね」

 聡子女医は、再びため息をついた。すると、急に麗羅の体が揺れ、表情から攻撃性と妖艶さが消えて、穏やかな清楚なものに変わった。麗羅が消えて、香織が戻って来たのだ。

 香織はリクライニングシートから上体を起こし、頭に手をやって、聡子女医に話し掛けた。

「伯母さん、麗羅は、『香織の思い通りには、させないからね!』と言って、消えて行きました…」

 香織の言葉に、聡子女医はうなずいた。

「香織、今日の治療は終わったわ…もうお昼だから、昼食を済ませてから、デイケアの仕事に戻りなさい」

 香織はリクライニングシートから立ち上がると、裕之に軽く頭を下げ、診察室から出て行った。聡子女医は、残された裕之の方を向いた。

「香織は一人で帰れるから、心配要らないわ…私も今日の午後は休診だから、一緒に食事しながら、香織についてお話しましょう。実はもう、レストランを予約してあるの」

 裕之に、断る理由は無かった。



 聡子女医は、裕之を近くのフレンチレストランに連れて行き、予約していた個室に入ると、コース料理を注文した。昼から豪勢な料理を振る舞われた裕之は、些か面食らったが、若い彼は遠慮せずに頂くことにした。

 料理をパクついている裕之に、聡子女医はワインをどんどん勧めた。

「裕之さんは今日、有給休暇を取っているから、アルコールは大丈夫よね…何しろ、私も素面じゃ話し難いから…」

 聡子女医も料理を口にしながら、ワインをよく飲んだ。

「実は…香織が解離性同一性障害を患ったのは、私の弟である父親から、性的虐待を受けたからなの」

 聡子女医は、急に裕之に、香織の病状の説明を始めた。

「私と5歳年の離れた弟は、市役所勤めの公務員で、同居の両親と奥さんが存命の時は、真面目で優しい家庭人だったのだけど、香織が小学3年生の時に、両親と奥さんを病気で立て続けに亡くすと、おかしくなってしまってね…香織に性的虐待をするようになってしまったの」

 裕之はワインを飲みながら、目を丸くして、聡子女医の話を聞いていた。

「親から酷い虐待を受けた子供達は、自分を守るために、別の人格を作り出し、虐待を受けているのは別人格で、自分じゃないと思い込むの…香織の場合、それで作り出されたのが、麗羅なのよ…また、虐待を受ける度に、新たな別人格を作り出すので、複数の別人格が出来てしまうの…虐待から逃げるため、それを記憶しないために、別人格を作り出した子供達は、別人格が出てきた時の言動の記憶が無いのよ」

 裕之はワインを飲みながら、聡子女医の話を聞いて、香織の異様な行動がようやく理解出来た。

「聡子先生…それで香織さんは、元の一つの人格に戻れるのでしょうか?」

 聡子女医は、裕之の質問に対して、少し困った表情を見せた。

「先程も説明したように、解離性同一性障害は治癒が難しく、時間が掛かるの…それでも、麗羅が協力してくれて、他の別人格に香織と統合するよう説得してくれたから、何とか治療がここまで進んだのよ…でも、肝心の麗羅一人が残ってしまって、今は手詰まりの状態ね」

 裕之は少し躊躇ったが、ワインの酔いも手伝って、聡子女医に思い切って質問した。

「あの、それで…香織さんは父親から、一体どんな性的虐待を受けたんですか?」

 少し考え込んだ聡子女医は、ワインを一口飲み、裕之に答えた。

「幼児虐待と言えば、普通は殴る蹴る、食事を与えない、体を傷つける、レイプする等なんだけど、香織の場合は、本当に特殊でね…私の弟は強度のマゾヒストで、実の娘である小学3年生の香織に、女王様になって、自分を虐めるように強要したのよ…」

 驚いた裕之は、ワイングラスを取り落とそうになった。

「弟は、まだ9歳の香織を、ショーツ一枚の裸にすると、革ベルトを持たせ、自分は全裸で彼女の足元に跪き、足の爪先にキスしながら、『さあ、お父さんの頭を踏みにじって、ベルトで背中を思い切り叩きなさい』と命じたの…香織が嫌がって拒否すると、弟は怒って、『どうして、お父さんの言う事が聞けないんだ!』と怒鳴り、彼女を何度もひどく撲ったのよ。それで幼い香織は、泣きながら仕方なく、弟の頭を踏んで、ベルトで何回も背中を叩いたの。弟は喜悦の悲鳴を上げて、嬉しがり、香織はおぞましさで気絶しそうになったらしいわ…」

 裕之は唖然として、聡子女医の話を聞いていた。

「それから弟は、仰向けになって、自分の体を踏みつけるよう、香織に命じたの。断ると、弟にひどく撲たれるから、香織は泣きながら、弟の体中を踏んだわ。顔・胸・腹と、上から踏んで、最後に股間の勃起した陰茎を踏むと、弟は獣のような唸り声を上げて、射精したの。それが香織の限界で、おぞましさのあまり、気を失ったわ…」

 想像を超えた話を聞かされた裕之は、言葉を失った。聡子女医の話は、まだまだ続いた。

「それでも、弟は香織に自分を虐めるよう、強要するのは止めなかった。弟は、子供サイズで出来るだけセクシーな下着や、ヒールの高いブーツを買って来て、自分を虐めさせる時は、香織に身に着けさせたわ。SM女王様のアダルトDVDを何枚も購入して、嫌がる香織に無理やり見せて、男の責め方を勉強させたり、鞭・手錠・足枷・浣腸器等の責め道具を買い揃え、香織に使い方を詳しく教え、自分の体に使用させたの。風呂にも一緒に入り、浴室で弟の顔に跨り、放尿するのも義務づけたばかりか、香織が家でトイレに行くのも、いちいち弟に断り、自分の舌をトイレットペーパーとして使うようにと、命じたわ…」

 聡子女医の凄まじい話を聞いている裕之は、料理をつつくのも忘れ、ただひたすらワインを飲むばかりだった。

「香織が宿題したり、TVゲームしたり、テレビを見たりする間でも、弟は自分の顔をクッションとして、パンティ一枚の香織の尻に敷くように強要したり、自分の口を痰壺に使うようにも命じたわ。日常生活は全て弟を虐めるように強要されて、精神的に追い詰められた香織は、人格解離を起こし、自分の代わりに弟を虐める“麗羅”という別人格を作り出してしまったのよ…この異常な生活は、香織が高校に入学して、弟が交通事故死するまで続いたの…私は、天涯孤独となった姪の香織の後見人になり、それまで住んでいたマンションを引き払って、実家に戻り、香織と二人暮らしを始めたわ。その頃に、高校から香織の問題行動を連絡され、私が診察した結果、解離性同一性障害なのが判明したの…今までの話は、香織のカウンセリングと催眠療法で分かった事なのよ」

 ワインがかなり進んだ裕之は、ただ呆然として、聡子女医の話を聞いていた。

「記憶障害と人格の急変で、学業にかなり支障があり、高校の進級はかなり難儀したけど、何とか卒業だけは出来たわ。だけど、大学進学はとても無理で、高校卒業後は社会復帰のリハビリも兼ねて、私が経営するデイケア施設で、受付と簡単な事務作業をさせているのよ」

 聡子女医もワインをかなり空け、結構酔いが回ったようだった。

「…それで裕之さんに、一つお願いがあるの。香織だけじゃなく、別人格の麗羅とも付き合ってもらえないかしら?」

「えっ…どういう意味ですか?」

 聡子女医から、突然意外な願い事をされた裕之は、驚いて聞き返した。

「麗羅はね、自分に嫌な事を押し付けた香織だけじゃなく、自分に嫌な事を強要した男を全て憎んでいるの…もし、裕之さんが麗羅の言いなりになって、男への憎悪を全部受け止めてくれて、彼女の恨みが晴れたら、香織の人格との統合を了承してくれる可能性が高いのよ…裕之さんが本当に香織が好きで、結婚したいと考えてくれているのなら、是非治療に協力してもらえないかしら?」

 さすがに裕之は、即答出来なかった。一昨日みたいに、麗羅の相手をして、男の、いや人間としての最低限の矜持まで蹂躙された裕之は、それこそ自分が人格解離しそうになる程、精神的にも肉体的にも追い詰められたのだ。その上、麗羅から受けた傷が、まだ疼いている。

 しかし、聡子女医の頼みを断ったら、自分が心底惚れていて、結婚したいと思っている香織と、分かれる事になるだろう…悩み抜いた末に、裕之は返答した。

「分かりました。香織さんの解離性同一性障害が治ってくれるのでしたら、麗羅さんのお相手を致します」

「ありがとう、裕之さん…裕之さんが協力してくれたら、香織はきっと治るわ」

 聡子女医は満面の笑みで、裕之のグラスにワインを注いだ。彼女もワインをぐいぐい空け、かなり酔ったようだった。

「私は何としても、可愛い姪の香織を治して上げたいの…香織が解離性同一性障害になってしまったのは、私にも責任があるのよ…実は香織の父親、つまり私の弟をマゾヒストにしてしまったのは、この私なの」

「ええっ!?」

 聡子女医の突然の告白に、裕之は驚愕で目を見開いた。

「私が20歳の女子医大生だった頃、まだ中学3年生の弟が脱衣所で裸になり、洗濯籠から私の汚れたパンティを取り出して、鼻に当ててオナニーしているのを見つけてね…激怒した私は、弟を思い切り平手打ちして、土下座して詫びる弟の頭を踏みにじってやったの…」

 裕之は驚いた表情のまま、聡子女医の告白を聞いていた。

「私は弟に、『そんなに私の臭いが嗅ぎたいなら、直接嗅がせて上げるわよ!』と言って、弟を蹴り転がし、仰向けにして、スカートを捲って、弟の顔に跨って座り、腰を振って股間を擦り付け、パンティ越しに陰部の臭いを、散々嗅がせてやったわ。それから、後ろ向きに座り直して、お尻で顔を押し潰してやったの…でも、弟の勃起は全く治まる気配が無かったので、『まだ、発情してるの!?全然、反省してないのね、このケダモノ!』と罵り、硬く勃起した陰茎を握って、上下に激しくしごいてやったの。すると、あっと言う間に射精してしまってね…」

 かなりワインを空けた裕之であったが、彼は更にワインを飲んだ。先程、聡子女医が、素面じゃ話しづらいと言っていたが、確かに凄まじい内容で、聞く方も素面では聞き辛かった。

「私は弟の顔から立ち上がり、スカートとパンティを脱いで、下半身裸になり、泣きじゃくっている弟に、『お仕置きは、まだ終わってないわよ!犬みたいに四つん這いで、風呂場にお行き!』と言って蹴りつけ、浴室に這って行かせて、又仰向けにさせたの。そして、弟の顔に跨り、『口を開けなさい!絶対に閉じるんじゃないわよ!』と命じて、弟の口に容赦無く排尿してやったのよ。弟は目を白黒させて、ゴホゴホ咽せていたわ。排尿が済むと、『ぼやぼやしてないで、舐めて後始末おし!』と命じて、弟に陰部を舐めさせたの…いい加減、舐めさせたところで、立ち上がると、弟が再び勃起しているのに気がついてね、『さっき射精したばかりなのに、もう欲情してるの!?この変態!』と罵って、素足で勃起した陰茎を踏みにじってやったの。すると、又も射精してしまってね…私は泣いている弟に、『踏まれて射精するなんて、どこまで変態なのよ!口をお開け、最低のうじ虫め!』と言って、もう一度口を開けさせ、その口にカーッ、ペッと痰を吐き入れてやったわ。それから、『今日はこれ位にしておいて上げるけど、明日から毎日お仕置きするから、覚悟おし!もし逆らったりしたら、私の汚れたパンティの臭いを嗅ぎながら、オナニーしていた事を、厳格なお父さんと、躾に厳しいお母さんに言いつけてやるわよ!』と言い捨て、浴室から出て、自分の部屋に戻ったの…」

 裕之は言葉を失ったまま、ただひたすらワインを飲んでいた。

「次の日から、予告通りに、両親の目を盗んで、弟にお仕置きし続けたの。私の汚れたパンティをしゃぶらせたり、私の陰部を舐めさせたりしながら、オナニーさせたわ…射精は許さずにね。許可無く射精してしまったら、罰として革ベルトで、陰茎と陰嚢を打ち据えて、悶絶させてやったわ。直腸触診の練習に、弟の肛門を弄りながら、勃起した陰茎をしごいたわ。浴室に連れ込んで、尿を飲ませた後に、舌が擦り切れる程に陰部を舐めさせたわ…その頃の私は、医大からの、押し潰されそうな量の勉強と課題のストレスを、全て弟にぶつけていたのよね。最初、弟は泣いて嫌がっていたけど、その内に段々と自分の方から、お仕置きをせがむようになったわ。私が弟を、マゾヒストに仕込んでしまったのね…この歪な関係は7年間続いて、弟が大学を卒業して市役所に就職し、当時27歳の私が独立して家を出た事で、ようやく終わったの…」

 呆然としながら聡子女医の話を聞いていた裕之は、かなりワインを飲んだ筈だが、全く酔えなかった。

「それから弟は、自分の性癖を必死に隠し通し、普通に見合い結婚して、実家で両親と同居し、一人娘の香織も生まれたわ…でも、香織が小学3年生の時に、両親が立て続けに亡くなり、奥さんも病気で亡くし、香織の顔立ちが私に似ているせいもあって、長い間抑圧し続けたマゾヒストの情欲が、一挙に弾け飛んでしまったみたいなの。それで、嫌がる香織に、変態的な行為を強要して、彼女は解離性同一性障害を患ってしまったの…つまり、香織の病気の大元は、私なのよ。可愛い姪の香織に対する罪悪感で、胸が張り裂けそうだわ…だから何としても、香織を完治させたいの。だから、お願い。裕之さんに麗羅の相手をしてもらって、迅速に治療を進めたいのよ」

 ここでようやく、裕之は口を開いた。

「分かりました。どれだけお役に立てるか分かりませんが、微力ながらお手伝いさせて頂きます」

「本当にありがとう、裕之さん」

 聡子女医と裕之は、それからも色々な話をして、レストランを出た時は、既に午後4時を過ぎていた。



 翌日の夕方遅く、会社を出た裕之のスマホに、聡子女医からラインが届いた。内容は、今から自宅に来て欲しいというもので、住所と家の画像が付けられていた。会社から割と近かったので、裕之はタクシーを拾って、聡子女医と香織の住む家に乗り付けた。昔、香織の家族と祖父母が同居していただけあって、結構大きな家だった。

 裕之がインターホンを押すと、香織が玄関ドアを開けて、出迎えてくれた。しかし、裕之は香織の表情を一目見て、彼女は香織ではなく、麗羅なのが分かった。

「ぼやぼやしてないで、早く上がりなさいよ!」

 麗羅にきつい口調で言われた裕之は、

「は、はい…失礼します」

と小さな声で答え、玄関で靴を脱ぐと、スタスタと先を歩く麗羅の後を、慌ててついて行った。彼女は部屋に入ると、ベッドに腰掛け、裕之に言い放った。

「ぼうっとつっ立ってないで、そこに正座しなさい!」

 麗羅は顎で、自分の足元の床を示した。裕之は、ラブホでの嫌な記憶がありありと蘇ったが、聡子女医の頼み事を思い出し、自分を抑えて言われた通りに、麗羅の足元に正座した。
「聡子先生から聞いたんだけどさ、あんた、あれだけ痛い目に遭わされても、まだこの私と付き合いたいの?」

 裕之は一瞬躊躇したが、覚悟を決め、きっぱりと答えた。

「はい、香織さ…いえ、麗羅様とお付き合いさせて下さい」

 麗羅の口から、明るい笑い声が飛び出した。

「アハハハッ、私との付き合いがどういうものだか、分かって言っているの?私と付き合ったら、前みたいに奴隷にされて、痛めつけられるのよ。あんたに我慢出来るの?」

「はい、出来ます、我慢してみせます。ですから僕と、是非お付き合いを…いえ、麗羅様の奴隷にして下さい」

 既に覚悟を決めた裕之は、迷い無く答え、麗羅の足元で土下座した。麗羅は土下座した裕之の頭を、スリッパを履いた足で踏みにじった。

「ふんっ、あんたが私の奴隷になるのは、愛しい香織と結婚したいからでしょう…まあ、いいわ。この麗羅様の奴隷にして、虐め抜いてやるわよ。音を上げて、香織との結婚を諦めるまでね!」

 麗羅は裕之の頭から足を外すと、凛とした声で命じた。 
 

「顔を上げなさい!」

 裕之が上体を起こすと、麗羅は不意に、目が眩む程の強烈な往復ビンタを、彼の両頬に張った。

「ヒッ、ヒイッ」

 思わず短い悲鳴を漏らした裕之に、麗羅は傲慢に言い放った。

「あんた、私の奴隷になったんでしょう。奴隷が服を着ていたら、おかしいじゃないの。さっさと服を脱いで、裸におなり!」

 裕之は、両頬の痛みと屈辱に身震いしたが、香織と一緒になるためと自分に言い聞かせ、スーツを脱いで、ブリーフ一枚の姿になった。

 すると、再び麗羅から強烈な往復ビンタが飛び、裕之の口から悲鳴が漏れた。

「私は、裸になれと言ったのよ!まだ、パンツが残っているじゃないの!」

「は、はい…申し訳ありません」

 両頬の痛みとあまりの屈辱で、裕之の目に涙が浮かんだが、彼は思い切ってブリーフを脱ぎ、全裸になった。

「四つん這いになって、ついておいで、男奴隷!」

 麗羅は自分の部屋を出ると、隣の部屋に入った。全裸で四つん這いになった裕之が、急いで麗羅の後をついて、這って隣の部屋に入り、驚きで目を丸くした。

 そこは板張りの広い部屋で、壁には色々な種類の鞭、ロープ、鎖、手枷足枷、その他何に使うのかよく分からない革製品が掛けられており、人間を吊すための滑車台や三角木馬まで置いてあり、正に拷問部屋であった。

「男奴隷、そこへ正座おし!」

 麗羅は部屋中央の床を顎で示し、裕之はふらふらと正座して、恐る恐る部屋を見回した。

「これをお着け!」

 壁に掛けられた黒革製の首輪を手にした麗羅は、それを全裸で正座している裕之に放り投げた。裕之は震える手で、首輪を自分の首に巻き付けた。

(これで、人間から奴隷に落とされてしまったんだ…)

 覚悟を決めた筈の裕之だったが、無念と屈辱の涙が目に浮かんできた。

「男奴隷、両手を背中にお回し!」

 麗羅は革手錠で手際よく、裕之を後ろ手に拘束した。

「あら、もう泣いているの?今から泣いていたら、体中の水分がいくらあっても、足りないわよ。ウフフ…」

 裕之の顔を覗き込んだ麗羅は、からかうような口調で嘲り、彼の顔を紅潮させた。

「男奴隷、私は着替えてくるから、そこで行儀よく待っていなさい」

 麗羅は、屈辱で顔を赤くして正座している裕之に言い放つと、一旦部屋を出て行った。残された裕之は、部屋を見回して、ぼんやりと考えた。

(おそらく、香織さんの父親が収集したのだろうが、これだけの拷問道具を揃えるなんて…マゾヒストの情欲は、一般人を遥かに超えている…)

 正座している裕之の足が痺れ出し、お仕置き覚悟で足を崩そうかと考えた時、ドアが開き、麗羅が戻って来た。麗羅は正座している裕之の前で、腰に手をやって仁王立ちとなり、彼の目を丸くさせた。

 麗羅は、きつい印象を与えるメイクをして、彼女の長い髪は、激しい動きをしても顔にかからないように、後ろで束ねたポニーテールにしており、黒色シースルーの薄いブラジャーとパンティを身に着けているので、乳首と下の濃い繁みが丸見えだった。ガーターベルトで吊された黒色網タイツに、膝上まである黒革ロングブーツを履き、全体的に黒一色でコーディネートされた姿は、SM雑誌のグラビアに掲載されるような、正に女王様そのものだった。

 麗羅は、いたずらっぽい口調で、裕之に訊ねた。

「どう、似合うかしら?」

「は、はい…よくお似合いです、麗羅様…」

 肉体は麗羅の、見違えた姿に圧倒された裕之は、胸の鼓動が高まり、うわずった声で答えた。麗羅は満足そうに微笑むと、壁に掛けられた一本鞭を手にした。彼女は一本鞭を空中で一振りし、バチンッと大きな音を立てた。その派手な鞭音が、裕之をビクッと怯えさせた。

「私は今から、お前を鞭で打つわ…これは、お前が無礼だとか、粗相をしたとか、そういう理由じゃないの。女主人と男奴隷の、身分と立場の違いを、お前の体に思い知らせるために、必要な儀式なのよ…鞭打たれた後のお前は、私が鞭を手にするだけで、震え上がり、床に平伏して慈悲を請い、私に絶対服従する従順な男奴隷になれるわ」

 麗羅は邪悪な笑みを浮かべ、黒光りする革製の一本鞭をしごきながら、裕之に身の毛もよだつような、恐ろしい事を言うと、一本鞭を頭上に振り上げた。

「待って、待って下さい、麗羅様」

 裕之の懸命な請願にも関わらず、麗羅は一本鞭を彼の体に、思い切り叩きつけた。空気を切り裂き、獰猛な唸り音を立てて、裕之の裸体に絡みついた一本鞭の威力は、革ベルトとは比較にならない程、凄まじかった。

「ウギャアァーッ」

 皮膚を真っ赤に焼けた刃物で切り裂かれるような激痛と、骨と内臓まで響く強烈な衝撃に、裕之は絶叫を上げて、体を仰け反らせた。裕之の苦しみに構わず、麗羅は鞭の第二撃を浴びせた。裕之は喉が裂けそうな絶叫を上げ、横倒しになった。

「誰が正座を崩していいと、言ったの!」

 裕之を叱りつけた麗羅は、横倒しになった彼に、情け容赦無く一本鞭を振り下ろした。又も絶叫が湧き、裕之は体を痙攣させた。

「この部屋は完全防音だから、いくら悲鳴を上げてもいいわよ。ホラホラ!」

 麗羅は、悶え苦しんでいる裕之に、一本鞭を振るい続けて、彼の悲鳴を楽しんだ。ようやく麗羅の鞭が止んだ時、床に横たわっている裕之の全身には、赤い条痕が縦横無尽に刻み込まれ、息も絶え絶えで、悲鳴を上げる余力さえ残っていないように見えた。

「いつまで呑気に寝てるの!さっさと跪きなさい!」

 麗羅は裕之を叱責し、横たわって喘いでいる彼の、すぐ傍の床を鞭で叩いた。

「ヒッ、ヒイッ、麗羅様、お赦しを、どうか御慈悲を…」

 鞭音に震え上がった裕之は、悲痛な声で麗羅に哀願し、鞭痕に引きつる体を無理やり動かして、何とか床に正座した。

「鞭打たれた後は、従順な男奴隷になれるって、さっき言ったけど、如何かしら?従順な男奴隷になれた?」

 麗羅のからかうような口調に、裕之は内心はらわたが煮えくりかえる思いだったが、これ以上彼女から鞭を貰わないために、後ろ手に拘束された不自由な上体を前に倒し、額を床に着け、卑屈に答えた。

「はい、なりました…麗羅様に絶対服従する、従順な男奴隷になれました…全て麗羅様のおかげです。本当に感謝しております。ですから、鞭だけはお許し下さいませ…」

 麗羅は、ブーツで裕之の頭を踏みにじり、鞭を空中で振って、再度大きな鞭音を立てた。鞭音を聞かされた裕之は、恐怖で震え上がった。

「フフン、少しは口の利き方を覚えたようね…まだ鞭打ち足りないけど、今日はまあ、これ位で勘弁して上げるわ」

 麗羅はブーツを裕之の頭から外し、一本鞭を壁の元の位置に掛けた。後ろ手で拘束された不自由な体で、土下座の姿勢を取っている裕之は、屈辱で胸が掻きむしられる思いだったが、とりあえず鞭打たれなかったので、心底ほっとした。

「男奴隷、顔をお上げ!」

 麗羅に命じられた裕之は、慌てて上体を起こした。裕之の前で仁王立ちになっていた麗羅は、彼の髪を両手で掴み、顔面を自分の股間に押し付けた。

「次は、お前の女主人である、この麗羅様の臭いを、よく覚えておくのよ…さあ、犬みたいに、私の臭いをお嗅ぎ!」 

 裕之を鞭打って昂ったためか、黒色シースルーの薄いパンティの股間部分は、じっとりと濡れていた。裕之の鼻孔に、女の陰部特有の強い臭気が進入して、彼は咽せそうになった。しかし、麗羅の鞭を恐れ、必死に臭いを嗅いだ。

 そんな裕之を楽しそうに見下していた麗羅は、からかうような口調で、彼に訊ねた。

「私の臭いは、どうかしら?いい臭いじゃなくて?」

「は、はい…まるで高級な香水みたいに、素晴らしい匂いです」

 裕之の、如何にも男奴隷らしく、女主人へ卑屈に迎合した返答に、麗羅は満足そうに微笑んだ。麗羅は、裕之に散々臭いを嗅がせてから、一旦彼の顔面を股間から離すと、パンティを床に脱ぎ捨て、陰部を露わにした。そして、再び裕之の髪を掴んで引き寄せ、彼の口元を濃い陰毛に縁取られた陰唇に押し付けた。興奮している麗羅の陰唇は、赤く充血してめくれ、淫液でとろとろに濡れそぼっていた。

「臭いを嗅がすだけじゃ、まどろっこしいからね…次は、たっぷり舐めさせてあげるわ。男奴隷の分際で、この麗羅様の大事な所を舐められるなんて、身に余る光栄でしょう…さあ、バター犬みたいに舌を使って、しっかりお舐め!」

 強い女の臭いの中で、咽せ返りそうになりながらも、裕之は舌を伸ばし、麗羅の濡れそぼった陰唇を舐め始めた。彼は舌だけではなく、唇も使って、麗羅の陰部に奉仕した。彼女を満足させる事が出来なければ、自分がどんな目に遭わされるのかを、裕之は本能的に悟っていた。

 しばらくして、麗羅は喘ぎ声を漏らし、裕之の髪を更に引いて、彼の顔面を自分の陰部に強く押し付け、背中を反らせて果てた。裕之の懸命な舌奉仕の甲斐があって、麗羅は割と早く絶頂に達したようだった。

 麗羅は、そのまま余韻を楽しんでいたが、裕之の顔面を自分の陰部から引き離し、覗き込んで、悪魔的な笑みを浮かべた。

「男奴隷、お前の舌使いは、悪くなかったわよ…ご褒美に、私のおしっこを飲ませて上げる。口を開けなさい」

 裕之は顔色を変え、さすがに躊躇った。

「えっ、いや、その…」

 途端に麗羅の顔が、不機嫌に歪んだ。

「ちょっと甘い顔をすると、お前は直ぐつけ上がるんだね!本当に従順な男奴隷なら、女主人のおしっこを、有難く頂くものよ。お前はこの麗羅様を、心から女主人だと思ってないのね。やっぱり、もっと鞭が必要だわ!」

「ヒイィッ、鞭だけは、お許し下さい。飲みます、麗羅様のおしっこを、飲みます…いえ、是非とも、麗羅様のおしっこを、恵んで下さいませ…」

 麗羅から、鞭と聞かされた裕之は、慌てて彼女に懇願した。他のどんな辛い目に遭わされようが、あの鞭だけは味わいたくなかった。


  「ふんっ、都合のいい男奴隷だね、お前は!…まあ、いいわ。私も催しているから、先におしっこを済ませたいしね…男奴隷、口をお開け!」

 麗羅に一喝された裕之は、慌てて口を大きく開けて、彼女の陰部に密着した。

「出るわよ!一滴もこぼすんじゃないよ。もし、ほんの少しでもこぼしたら、肉が裂けて、骨が剥き出しになるまで、鞭で打ってやるからね!」

 裕之は、麗羅の脅しに震え上がり、彼女の陰部からチョロチョロと流れ出る尿を、懸命に飲み下した。麗羅は、裕之が咽せて吐き出さないように、排尿の水量をコントロールしているようだった。

 それでも、強烈なアンモニア臭が口中に拡がり、鼻孔の奥まで到達して、脳を痺れさせた。麗羅の尿が、喉を焼き、胃に重く溜まっていく感触は、お前はもう人間じゃない、女の便器なんだと、裕之に言い聞かせているようで、彼を精神的に叩きのめした。

 麗羅は、長い排尿を終えると、舐めてきれいにするよう、裕之に命じた。彼が舌を伸ばして、尿で濡れている麗羅の陰唇を舐めると、改めて尿の刺すような味が舌に拡がり、惨めさを倍増させた。

「女主人がおしっこを済ませたら、男奴隷はいちいち言われなくても、舌を使って後始末するものよ。舌だけじゃなく、唇も使って、あそこに残っているおしっこも吸い取りなさい…大体、お前は私のおしっこを飲むのは、初めてじゃないでしょう。ラブホじゃ、私の肛門まで舐め回したくせに、この豚!」 

 懸命に舌を動かしている裕之の胸に、麗羅の罵倒が深く突き刺さり、彼は目の奥が熱くなって、目から涙がこぼれた。

 裕之が屈辱に身震いしながらも、何とか麗羅の排尿の後始末を終えると、彼女は、

「男奴隷、立って足を肩幅に開き、腰を突き出しなさい!」

と命じた。後ろ手錠姿の裕之は、よろめきながらも立ち上がり、麗羅に命じられた通りの、恥ずかしいポーズを取った。

 どういう訳か、裕之の股間のものは、硬く屹立していた。まだ若い裕之の肉体は、麗羅の女体に翻弄されて、不覚にも興奮してしまったのだろう。

 麗羅は邪悪な笑みを浮かべて、裕之の屹立したものに手を伸ばし、柔らかい掌で握って、ゆっくりしごき始めた。

「男奴隷、これは何?どうして、こんなに硬くしているの?お前は女主人である、この麗羅様に欲情している訳?私を犯したいとでも、思っているの?それにしても、女主人の許しも無く、勝手に興奮して硬くするなんて、失礼よね…そんなに鞭で、お仕置きして欲しいの?」

 麗羅は、硬く屹立した裕之のものを、柔らかい手でゆっくりしごきながら、ねちねちと彼を責め立てた。

「ああっ、そんな、どうかお許しを…どうか、御慈悲を…」

 麗羅の柔らかい手で、急速に快感を高められた裕之は、身悶えして許しを請うた。

「ふんっ、女主人の前で、恥知らずにも、こんなに硬くしておいて、お仕置きを免れるとでも思っているの?甘えるんじゃないよ、いやらしい豚め!」

 麗羅は、しごく手を止めずに、裕之を酷く罵った。しかし、仮に裕之のものが萎えていたとしたら、「私に、女としての魅力が無いという訳?男奴隷の分際で、女主人を侮辱するなんて、絶対に許さない!お仕置きだよ!」

と罵っていただろう。どちらにしても、裕之にお仕置きから逃れる術は無かった。

 麗羅は、しごく手を徐々に早め、裕之の快感を急に高めさせた。

「ああっ、麗羅様、いってしまいます…何とぞ、御慈悲を…」

「フフンッ、勝手に汚らわしい白い汁を漏らして、私の手と床を汚したら、どうなるか分かっているだろうね…この醜いものを、一本鞭でちぎれるまで打って、睾丸も叩き潰してやるわよ!」

 麗羅に睨まれて、脅された裕之は、恐怖で震え上がったが、それでも股間のものの快感は高まるばかりで、いつ爆ぜてしまうか分からなかった。裕之は喘ぎ声を漏らし、体を震わせて身悶えした。

 麗羅は、一旦裕之のものから手を離すと、床に脱ぎ捨てていた黒色の薄いパンティを拾い、それを彼の顔に被せた。淫液で汚れたクロッチ部分が、裕之の鼻に当たるよう調整する。麗羅の饐えたような強い臭いを、改めて嗅がされた裕之は、頭がクラクラした。その刺激で、屹立している彼のものは、更に硬度を増した。

 それから麗羅は、さすがに一本鞭では威力が有り過ぎると判断したのか、壁に掛けられていた九尾鞭を手にし、裕之に向かい合うと、厳しい口調で言い放った。

「女主人の許しも無く、勝手に硬くした、その醜悪なものに罰を与えるから、動くんじゃないよ!もし動いたら、一本鞭に取り替えて、それがちぎれるまで打ってやるわよ!」

 一本鞭と聞かされただけで、怯えきった裕之は、決して動くまいと、体を硬直させた。

「男奴隷、いくわよ!」

 麗羅は、裕之の硬くしたものを、九尾鞭で横殴りに打った。

「アアァーッ」

 敏感になっているものを鞭打たれた裕之は、絶叫を上げて、体を震わせた。しかし、先程の一本鞭よりは遥かにましと、自分に言い聞かせ、何とか姿勢を保持した。

「ホラホラ、気持ちいいでしょう」

 麗羅は嘲るように言い、まるで往復ビンタをするように、裕之の屹立したものを九尾鞭で何度も打ち、苦悶した彼に悲鳴を湧かせた。しかし、鞭打ちを含めて、異様な刺激を与えられ続けたためか、裕之の怒張したものは、ひるむ気配を見せなかった。

「お前のここも、しぶといわね…こんなもの、こうしてやる!」

 麗羅は、足を開いて立っている裕之の股間を、九尾鞭で下から掬い上げるように強打した。

「グウエェーッ」

 硬く屹立して敏感になっているものだけでなく、陰嚢と肛門も同時に強く鞭打たれた裕之は、堪らずに獣じみた絶叫を上げ、床に崩れ落ちた。芋虫のように体を丸めて、股間の痛みに悶え苦しんでいる裕之の顔を、麗羅のブーツが踏みにじった。

「男奴隷、動くなと言ったでしょう!勝手に床に横たわるなんて…この麗羅様の言う事が聞けないのなら、体に思い知らせてやるわ!」

 麗羅はいつの間にか、九尾鞭を一本鞭に持ち替えていた。彼女は黒光りする一本鞭を、容赦無く裕之の体に振り下ろした。

「ギャワアァーッ」

 焼けた刃物で体を切断されたような激痛に、裕之は喉から血が出るような絶叫を上げて、苦しんだ。麗羅は、裕之の苦悶に一切構わず、再度彼を一本鞭で彼を打ち据え、絶叫を湧かせた。

 裕之の頭からブーツを外した麗羅は、彼の頭のすぐ傍の床を、ドンッと踏み鳴らし、怒鳴りつけた。

「これで女主人に逆らったら、どんな目に遭うか、思い知ったかい!?返事をおし、男奴隷!」

「は、はい、身に染みて分かりました…二度と逆らいませんから、どうか御慈悲を…」

 麗羅の足元で、裕之は哀れな声で、慈悲を請うた。たった今、一本鞭で打たれたのは、二発だけだったが、その威力は、裕之を心の底から麗羅に畏怖させるには、十分過ぎる程だった。

「それなら、のんびり寝てないで、さっさとお立ち!」

 麗羅に叱りつけられた裕之は、引きつる体を無理やり動かし、よろよろと立ち上がった。

「ウフフ、発情しっぱなしの、いやらしい男奴隷でも、さすがに一本鞭は応えたようね…すっかり、縮こまっているじゃない」

 麗羅は萎縮した裕之の股間のものを指差し、嘲笑った。裕之は恥ずかしさと屈辱で、顔を真っ赤にして、うつむいた。

 次に麗羅は、先端が球状になっている金属製の鉤、いわゆるアナルフックを手にして、後ろ手錠でふらつきながらも、何とか立っている裕之の背後に廻った。麗羅は裕之の尻を手で拡げると、肛門にアナルフックの先端を当てがい、一気に挿入した。

「アヒイィッ」

 肛門に異物を押し込まれた異様な感覚が、裕之の口から悲鳴を漏らさせた。麗羅は、アナルフックを上に引っ張りながら、裕之に命じた。

「男奴隷、ぼやぼやしてないで、さっさとお歩き!」

 麗羅は、部屋の隅に置いてある滑車台まで、裕之を誘導して歩かせると、滑車台から垂れていたロープにアナルフックの端を結び付けた。それから滑車を使い、裕之がつま先立ちになる程度に、ロープを引き上げて、固定した。

「アウゥッ」

 裕之が思わず呻き声を漏らすと、麗羅は彼の顔に被せておいたパンティを剥ぎ取り、それを丸めて彼の口に押し込んだ。それから、身に着けている薄い黒色ブラジャーを外し、裕之の口元に巻き付けて、猿ぐつわの代わりにした。

「あらあら、お前、まだ硬くしているじゃないの…肛門から吊されて欲情するなんて、本当に最低の変態だね、この豚!」

 おそらく、アナルフックで前立腺を刺激されたために、勃起してしまったのだろうが、それを麗羅に指摘され、罵られた裕之は、いっそのこと死にたい気分になった。

「さてと、調教はこれからが本番だからね。男奴隷、覚悟しなさい!…でも、喉が渇いたから、ちょっと待っていなさい」

 麗羅はそう言うと、黒色網タイツと黒色ロングブーツを身に着けただけの裸で、部屋を出て行った。惨めな姿で滑車台に吊されたまま、一人残された裕之は、麗羅から調教はこれからが本番と言われ、気が遠くなりそうだった。



 しばらくして、部屋のドアが開くと、網タイツと黒革ロングブーツは変わらないが、身体にバスタオルを巻いている変わった姿の麗羅と、救急箱を手にした聡子女医が入って来た。

 麗羅はブーツの靴音を床に響かせ、小走りで裕之に近づき、

「ごめんなさい、ごめんなさい、裕之さん、どうか許して…」

と泣いて謝りながら、滑車のロープを下げて解き、股間に挿入されているアナルフックを抜き取り、後ろ手に拘束されている革手錠を外した。彼女は麗羅ではなく、香織に戻っていた。

 床に座り込んだ裕之は、自分の手で口元に巻かれた薄手のブラジャーを外し、口中に押し込まれたパンティを引っ張り出すと、ゴホゴホと咽せた。香織は裕之に抱きつき、泣きながら謝った。

「ごめんなさい、裕之さん、本当にごめんなさい…麗羅が…いえ、私が大好きな裕之さんに、こんな酷い事をするなんて…どうか許して…」

 麗羅から香織に戻ったのが分かった裕之も、彼女を抱きしめ、優しく慰めた。

「いいんだよ、香織さんじゃなくて、麗羅のした事なんだから…だから、気にしないで、泣かないでくれ…香織さんに泣かれると、僕まで悲しくなるから…」

 裕之の優しい言葉に、香織は抱きついた腕に力を込め、更に泣いた。二人の傍で立っていた聡子女医が、口を開いた。

「さっき帰ってきたら、香織が台所で、ブーツを履いただけの裸で、ビールを飲んでいてね…驚いて声を掛けると、香織じゃなくて麗羅だったの…でも、麗羅は私と少し話をすると、急にいなくなり、香織に戻ったのよ…裕之さん、手当てして上げるから、傷を見せて」

 聡子女医はしゃがんで、救急箱の蓋を開けた。



 裕之の体の傷を、応急手当した聡子女医は、二人が服を着るのをまって、彼を夕食に誘った。彼女は作り置きの食材を、冷蔵庫から取り出すと、レンジで温めたり、フライパンで炒めたりして、裕之に料理を振る舞った。香織と聡子女医と裕之の三人でテーブルを囲んだが、香織は恥ずかしそうに、申し訳なさそうに、ずっとうつむいていた。

 聡子女医は、裕之にビールを勧めながら、香織に声を掛けた。

「香織、顔を上げて、きちんと食事しなさい。体が保たないわよ。裕之さんも、香織を責めてないから…」

「そうだよ、香織さん…香織さんの治療に役立つために、こうなる事は、僕だって最初から分かっていたんだ。だから、僕の事は全然気にしないでくれ」

 裕之も香織に優しく声を掛け、聡子女医の料理に箸を付けた。彼女の料理は大人向けの味付けで、ビールが進んだ。二人に慰められた香織は、ようやく顔を上げて、料理を食べ始めた。聡子女医と香織はワインを飲み、裕之はビールをがぶ飲みした。彼は麗羅に責め抜かれたせいで、喉がカラカラに渇いていたのだ。

 三人の夕食とアルコールが結構進んだところで、聡子女医が裕之に切り出した。

「裕之さん、今日は遅くなったから、泊まっていってね…実は帰りに裕之さん用のパジャマと洗面用具と替えの下着を買って来たの…この家は裕之さんの会社に近いから、出勤には差し支えないでしょう?」

 裕之は聡子女医の準備のよさに驚いたが、断る理由も無く、素直に頷いた。



 夜遅く、用意された和室で、布団に入っていた裕之は、なかなか眠れなかった。麗羅から受けた傷が疼くせいもあったが、香織との今後を思うと、考えが堂々巡りしていたのだ。

(香織さんの人格解離は、治るんだろうか…大好きな香織さんと別れたくはないが、これだけの傷を負わされて、このまま付き合いが出来るのだろうか…)

 その時、不意に部屋の引き戸が開き、パジャマ姿の香織が入って来た。彼女は躊躇わずに、裕之の布団に潜り込み、彼に抱きついた。驚いている裕之に、内気で控え目で恥ずかしがり屋な香織にしては、大胆な告白をした。

「裕之さん、酷い目に遭わせて、本当にごめんなさい…お願い、私を嫌いにならないで…私、裕之さんに嫌われたら、死んじゃう。私には、裕之さんしかいないの…お願い、私を離さないで、ずっと一緒にいて…」

 香織の意外な行動に、驚いた裕之だったが、彼も香織を強く抱きしめて、優しく囁いた。

「馬鹿だなあ、僕が香織さんを嫌いになる訳無いじゃないか…誰よりも愛してるよ、香織さん…」

「本当?嬉しい!」

 裕之と香織は熱いキスを交わし、二人は自然とお互いのパジャマを脱がせた。若い裕之は興奮して、白く柔らかい肌の香織を抱き締め、この夜に二人は結ばれた。

 事が終わった後、裕之は今度こそ本当に驚いた。何と香織は、初めてだったのだ。彼女は裕之の胸に顔を埋めて、恥ずかしそうに呟いた。

「おかしいでしょう…二十五歳にもなって、バージンだなんて…」

 裕之は香織が益々愛おしくなって、彼女を強く抱き締めた。

「何を言っているんだい、素敵だよ…僕を初めての相手に選んでくれるなんて、凄く嬉しいよ。身に余る光栄だよ」

 裕之は、これから先にどんな艱難辛苦が待ち受けていようとも、香織を絶対に手放さないと、自分に堅く誓った。



   翌日、朝食の席で、聡子女医が裕之に提案した。

「裕之さんは、いずれ香織と結婚するつもりなんでしょう?だったら、この家に引っ越して、一緒に住んでもらえないかしら?」

 裕之は驚いたが、聡子女医は話を続けた。

「この家なら、裕之さんの会社に近いから、通勤に不便は無いし、女の二人暮らしより、男性が一緒に住んでくれた方が心強いし、香織の治療にも都合がいいのよ…何より、香織が裕之さんと、ずっと一緒にいたいみたいでね」

 香織は恥ずかしそうに、顔を赤くして、うつむいている。香織の恥じらう姿を見た裕之は、即答した。

「分かりました、聡子先生。僕をこの家に、住まわせて下さい…そして、香織さんの解離性同一性障害が完治したら、僕と香織さんとの結婚をお許し下さい」

 聡子女医は、満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう、裕之さん…了承してくれて、嬉しいわ。さっそく、裕之さんの部屋を用意しておくから、出来るだけ早く引っ越して来てね」

 その週の内に、裕之は住んでいたアパートを解約し、家財道具もかさばる物は処分して、週末には、聡子女医と香織の家に引っ越しを完了させた。
 

 聡子女医と香織の家に住み、香織と同棲を始めた裕之は、文字通り天国と地獄を味わう事になった。香織のままであれば、彼女はまるで新妻みたいに、かいがいしく裕之に尽くしてくれて、彼を新婚みたいな天国気分にさせてくれたが、麗羅が現れると、例の拷問部屋に連れ込まれ、地獄を見せられた。

 麗羅の気が済むようにさせてやるのが、香織の治療に必要と、聡子女医に説明されていたので、裕之は麗羅に逆らえず、彼女の好き勝手に虐待された。唯一の救いは、麗羅から心身共に虐待された後、戻って来た香織に優しく慰められる事だった。

 裕之は営業職なので、帰りはいつも遅く、帰宅する際に、玄関で出迎えてくれる香織の表情を、恐る恐る窺うのが習慣になってしまった。香織のままであれば、

「遅くまで、ご苦労様。お風呂とご飯と、どちらを先にする?」

と優しく聞いてくれて、夢のような新婚気分を味わえるのだが、麗羅が出ていると、

「私に虐められるのが嫌で、わざと遅く帰っているんでしょう!男奴隷のくせに、横着な!」

と罵られて、目から火花が散る程の、力強い往復ビンタを張られ、玄関土間で土下座させられた。それから服を全て脱がされ、全裸にされて、四つん這いで拷問部屋に連れて行かれるのだった。

又、帰宅を出迎えてくれたのが優しい香織でも、油断は出来なかった。ある日、香織に出迎えられた裕之が、風呂と晩飯を済ませ、香織の部屋のベッドで、裸になった二人が仲良く抱き合っている最中、不意に麗羅が現れ、彼女は裕之の陰嚢を、いきなり両手で思い切り握り締めて、彼を悶絶させた。

「下等で汚らわしい男奴隷の分際で、この麗羅様の高貴な肌に触れるなんて、思い上がりも甚だしいわ。本当に気持ち悪い、この豚め!最低の男奴隷の身分を、たっぷり思い知らせてやるわよ!」

麗羅は口汚く罵り、顔を歪めて悶え苦しんでいる裕之を這わせて、隣の拷問部屋に引っ立てていった。

 麗羅は、裕之に顔面に手綱付きのハミを装着し、膝当てのサポーターを着けさせ、四つん這いにさせた。全裸の麗羅はロングブーツを履き、それに拍車を取り付け、乗馬鞭を手にすると、裕之の背中に跨った。

「男奴隷、お前を麗羅様の人間馬に使って上げるわ…ホラッ、早くお走り!」

 麗羅は、裕之の尻に乗馬鞭を鋭く振り下ろして、命令した。尻に焼け火箸を押し付けられたような痛みを感じた裕之は、慌てて手足を動かし、部屋を這い回り始めた。裸で跨っている麗羅の陰部を、背中に密着された裕之は、その感触に妙な気分になった。

「ウフフ、お前が香織と一緒になるのを諦めて、この家から逃げ出せば、私に虐められずに済むのにね…ホラホラ、もっと速く走るんだよ!」

 からかうような口調で裕之に言った麗羅は、彼の尻を乗馬鞭で何度も打ち据え、拍車で脇腹を蹴りつけて、より速く這い進むように促した。裕之は全身に汗をかき、延々と部屋を這い回され、遂に疲労で手足が痙攣して、床にうずくまってしまった。

 裕之の背中から立ち上がった麗羅は、乗馬鞭を一本鞭に持ち替えて、うずくまっている彼の背中に、思い切り振り下ろした。

「ムグウゥーッ」

 ハミをかまされている裕之の口から、くぐもった悲鳴が上がり、彼は背を仰け反らせて、悶え苦しんだ。

「誰が休んでいいと、言ったの!横着な男奴隷め、お仕置きだよ!」

 麗羅は再度、裕之を一本鞭で打ち据え、彼に地獄の激痛を与え、全身を硬直させた。一本鞭の凄まじい威力で、裕之は床に横倒しになり、全身を痙攣させた。

 一本鞭を壁に掛けた麗羅は、裕之の傍にしゃがみ、彼の顔面から手綱付きのハミを、一旦取り外した。そして、裕之をブーツで蹴り転がし、彼を仰向けにした。

 麗羅は、全身に汗をかき、ゼイゼイ喘いでいる裕之の顔に跨って立ち、ニヤリと笑って彼を見下して、やけに優しい口調で言った。

「さすがに疲れて、喉が渇いたでしょう…水分補給して上げるわ」

 裕之の顔にしゃがみ込んだ麗羅は、喘いでいる彼の口に、容赦無く排尿した。床にこぼしたら、どんなお仕置きをされるかと、怯えた裕之は、咽せながらも、必死に麗羅の尿を飲んだ。麗羅の排尿が終わると、彼女に命じられなくても、裕之は直ぐに首をもたげ、舌を伸ばして、彼女の尿で濡れそぼった陰部を舐め、後始末した。それは、麗羅に奴隷調教された、男奴隷としての悲しい習性だった。

 麗羅は、再び裕之の顔面に手綱付きのハミを装着して、四つん這いにさせた。乗馬鞭を持った麗羅は、裕之の背中に跨り、手綱を手にして、彼に命令した。

「男奴隷、水分補給して、元気が出たでしょう…ぼやぼやしてないで、さっさとお走り!」

 乗馬鞭と拍車で、這い回るのを促された裕之は、今度こそ、鞭打たれても動けなくなるまでに、気力と体力の限界を超えて、乗り潰された。



 裕之が、聡子女医と香織の家に同居して、既に三ヶ月が経過した。その間、麗羅が現れる頻度が毎日のように多くなり、裕之は麗羅から、アナルフックを使われて、滑車台で爪先立ちになるまで吊り上げられてから、鞭打たれたり、両手を滑車台で吊り上げられてから、陰茎にコックケージを嵌められて、それに重りを何個もぶら下げられたり、三角木馬に跨がされて、ローソクで熱いロウを体中に滴らせてから、そのロウを鞭打ちで剥ぎ取ったり等と、酷い虐待、いや拷問を受け続けた。

 麗羅は、裕之を痛い目に遭わすだけではなく、拷問の合間に彼の局所を巧みに愛撫し、興奮させて、硬く勃起させると、柔らかい手でねっとりとしごき上げ、

「お前は、自分を虐めた女の手で、感じているのよ…最低よね、この恥知らずのケダモノ!」

と罵りながら、屈辱の射精を強いた。

 裕之の苦痛と屈辱は、普通の男にはとても耐えられないものであったが、香織の解離性同一性障害が完治して、結婚出来るのを唯一の望みとして、麗羅からの虐待に耐え抜いた。

 しかし問題は、麗羅の毎夜のように渡る虐待のために、裕之は一種の睡眠障害に陥り、仕事に集中出来ず、ミスを連発して、トップだった営業成績が最下位になってしまった事だった。上司から厳しく叱責され、最近では暗に転職を勧められてもいる。

 ただ、一縷の望みとして、聡子女医が、

「催眠療法で麗羅と話しているんだけど…当初彼女は、『あの男に香織を諦めさせて、この家から逃げ出すように、虐め抜いてやる!』と息巻いていたけど、最近は『あれだけ虐めても、音を上げて逃げ出さないなんて、本当に香織を愛しているのね』と言っているの…だから、麗羅が香織に人格統合するのを、了承する日が近いと思うのよ」

と言ってくれた事だった。



 ある日、会社で上司から遂に、君はリストラ要員になっていると、面と向かって言われ、落ち込んで帰って来た裕之に、出迎えた聡子女医が抱きついて、喜びの声を上げた。

「お帰りなさい、裕之さん。喜んで頂戴。香織の解離性同一性障害が、遂に治ったの、完治したのよ。麗羅が香織に人格統合したの。カウンセリングと催眠療法で診察した結果、香織以外の人格は、認められなかったわ」

 裕之は驚き、そして大喜びした。

「本当ですか!?それじゃ、もう麗羅さんは出て来ずに、ずっと香織さんのままなんですね」

 裕之に抱きついていた聡子女医は、彼から離れ、少し難しい顔をした。

「うーん、再発して、再び人格解離した症例もあるけど、私のカンでは、香織は大丈夫だと思うの…それと人格統合すると、解離していた別人格の記憶も、統合するのよ…つまり、麗羅の記憶は、香織のものになるの。性格も香織に吸収されるわ。それで、香織は今、少し混乱しているんだけど…とにかく、香織と話してみて」

 裕之は聡子女医の後をついて、リビングに入った。リビングのソファに、香織が座っていた。聡子女医は香織の隣に、裕之は香織の向かいのソファに座った。香織は、白色ブラウスと黒系統のスカートの清楚な姿で、背筋を真っ直ぐに伸ばして座っており、対面のソファに座った裕之を、じっと見つめた。

 今までの、内気で控え目で恥ずかしがり屋の香織ではなく、自信に溢れ、堂々とした雰囲気の香織が、そこにいた。裕之は一瞬、ひょっとして香織が麗羅に人格統合されてしまったのではないかと、不安になった。

「…裕之さん、伯母さんの診断で、私の解離性同一性障害が完治したと、分かったの…全て、裕之さんのおかげよ。本当に、ありがとう」

 香織は裕之に礼を述べ、深々と頭を下げた。彼女の言動から、裕之は間違いなく香織の人格だと確信を持ち、安堵した。裕之は、思い切って香織に申し込んだ。

「おめでとう。完治して、本当によかった。僕はこの日を、待っていたんだ…香織さん、僕は自分がずっと思っていた事を言わせてもらうよ…僕と結婚して下さい!」

 裕之のプロポーズを傍で聞いていた聡子女医は、嬉しそうに微笑んだ。香織も嬉しそうに笑みを浮かべ、

「ありがとう、嬉しいわ、裕之さん…その事で、二人だけで話したいの。伯母さん、いいかしら?」

「勿論よ…おめでとう、香織」

 満面の笑みを浮かべた聡子女医が頷くと、香織は立ち上がって、自分の部屋に向かった。裕之も急いで立ち、彼女の後を追った。香織は自分の部屋に入ると、ベッドに腰掛け、自分の隣をポンポンと叩き、

「ここに座って頂戴」

と裕之に言った。内気で控え目で恥ずかしがり屋な香織らしくない態度に、裕之は少し違和感を感じたが、とりあえず彼女の隣に座った。先程、聡子女医から、麗羅の性格も香織に吸収されると説明されたので、その影響があるのかもしれないと、裕之は思った。

「香織さん…」

 裕之は香織にキスしようと、目を閉じ、彼女の唇に自分の唇を近づけた。しかし、香織は手の平で、裕之の口元を押さえた。

「キスは待って…ちょっと、話があるの」

 裕之は怪訝な表情で、香織の顔から離れ、

「香織さん、一体どうしたんだい?話って、何?」

と訊ねた。香織は真っ直ぐに裕之の目を見つめて、話し始めた。

「今までは、解離人格の麗羅の行為については、記憶が全く無かったの。でも、麗羅の人格が私に統合されると、彼女の記憶は私の記憶になったの…うまく表現出来ないんだけど、今まで私が麗羅のキャラクターを演じていて、その時の行為の記憶があると言えばいいのかしら…」

 裕之は、香織が何を言いたいのか、よく分からなかったが、黙って彼女の話を聞いた。

「だから、裕之さん…麗羅の…いえ、私のおしっこを飲んだり、肛門をペロペロと舐め回した汚らわしい口に、キス出来ると思う?」

 裕之は、頭を棍棒で殴られたようなショックを受けた。

「で、でも、香織さん…それは、香織さんの治療のために…」

 しどろもどろに弁解する裕之に、香織は更にきつい言葉を投げ掛けた。

「心の中で、麗羅がいつも言ってたの…『あの男は、香織とセックスするよりも、私に虐められている方が、興奮して感じているのよ』ってね。私は裕之さんを信じて、麗羅の言うことは一切相手にしなかった…でも、麗羅の記憶が、私の記憶となった今、それは本当だったと実感出来るの」

 麗羅の前で晒した、自分の数々の痴態を思い浮かべた裕之は、恥ずかしさで顔を紅潮させた。麗羅から受けた酷い虐待の中で、屈辱の射精を強いられた異常な快感…確かにそれは、普通のセックスとは、比べ物にならなかった。まるで、麻薬中毒にさせられたようなものだった。

 麗羅に虐待されるのは、香織と結婚するためと、自分に言い聞かせてきた裕之だったが、段々と麗羅の責めを待ち焦がれるようになっていった。裕之は麗羅の手で、いつの間にかマゾヒストにさせられてしまったのだった。香織の人格だけなら誤魔化せただろうが、歪んだ快感で射精する裕之の痴態を目の当たりにしている、麗羅の記憶があっては、裕之に誤魔化しようがなかった。

「麗羅の…いえ、私の鞭を恐れて、正常な男性なら、とても出来ない恥ずかしい事をしたわよね…便器になって、おしっこを飲んだり、痰壺になって、唾や痰を飲んだり、肛門を弄られて興奮したり、馬にされて、延々と這いずり回ったり、犬にされてチンチンしたり…私、トップ営業マンで、積極的な男らしい裕之さんを、尊敬していたの…でも今は、とても尊敬出来ないわ。正直に言うと、軽蔑しているの…」

 恥ずかしさで、顔から火が噴き出る思いで、香織の話を聞いていた裕之は、気落ちして、がっくりとうなだれた。誰よりも愛しい香織に、愛想尽かしされてしまった。自分は今まで、何のために麗羅の虐待を受けてきたのか…そのために、仕事もうまくいかなくなり、今やリストラ寸前だ。裕之は、絶望で目の前が暗くなり、頭を抱えた。

 しかし、香織は話を続け、それが絶望している裕之に、一筋の光明を差した。

「でも、裕之さんがあんな恥ずかしい事をしてくれたのは、全て私の治療のためなんでしょう…そのおかげで、麗羅は私に人格統合するのを了承してくれて、伯母さんが治療に9年も掛かっていた、私の解離性同一性障害が完治したのよ。これで私は、ようやく社会復帰出来るわ。裕之さんは、私の一生の恩人よ…」

 うなだれていた裕之は、顔を上げて、意外そうに香織を見つめた。そして、香織は裕之に、彼の人生において重大な言葉を投げつけた。

「それに…私が裕之さんが好きなのは、変わらないわ…私、裕之さんが好きなの、愛しているの。だから、私達…結婚しましょう!」

 裕之は喜びで、顔を輝かせた。

「ほ、本当に僕と、結婚してくれるのかい!?ありがとう、香織さん」

 裕之は香織に抱きつこうとすると、彼女はベッドからすっと立ち上がり、さっさと服を脱いで、白色のブラジャーとパンティだけの、下着姿になった。

 香織は、まだベッドに座っていて、目を丸くしている裕之を見下して、言い放った。

「裕之さん、その前に確かめたい事があるの…裕之さんも服を脱いで、裸になって」

 裕之には、訳が分からなかったが、とりあえず香織の言われた通りに、彼もベッドから立ち上がり、スーツを脱いで、ブリーフ一枚の姿になった。

「パンツも脱いで頂戴」

「えっ?」

 内気で恥ずかしがり屋の香織から、大胆な事を言われて、面食らった裕之だったが、若干の恥ずかしさを抑え、思い切ってブリーフを脱ぎ、全裸になった。

 香織は麗羅の性格を吸収してしまったので、彼女はもう、内気で控え目で恥ずかしがり屋ではなくなったのかもしれないと、裕之は推測した。

 香織は、クローゼットから黒革のロングブーツを取り出して、裕之に見せつけるように履いた。そのロングブーツは、麗羅が裕之を虐待する際に、いつも履いているものだった。白色のブラジャーとパンティの下着姿で、黒革ロングブーツを履いた香織を見て、裕之は背中がぞくっとして、胸の鼓動が高鳴った。股間のものが徐々に頭をもたげてきて、裕之は慌てて、両手で股間部分を隠した。

「…隣の部屋に、行きましょう」

 香織は、裕之の少し狼狽した様子をちらりと見て、さっさと自分の部屋を出た。裕之は両手で股間を押さえながら、急いで香織の後をついて行った。香織は隣の部屋に入ると、ついて来た裕之に、

「裕之さん、床に正座して」

と言った。裕之は麗羅に虐待された日々を思い、顔が青くなったが、なぜだかブーツを履いた香織に逆らえず、ふらふらと部屋の中央に行って、正座した。

 香織は手際よく、裕之の首に犬の首輪を装着した。それから壁に掛けてある、黒光りする一本鞭を輪にして右手に持つと、正座している裕之の前に、仁王立ちになった。香織と麗羅は元々同じ肉体なので、無理は無いのだが、裕之は香織の姿をみて、麗羅が再び戻って来て、今から自分を虐待するかのように錯覚した。

 香織は、全裸に首輪を着けて、床に正座している裕之を見下し、厳かな声で問い掛けた。

「裕之さん、今、どんな気分かしら?まさか、興奮なんかしてないわよね?床に正座させられて、犬の首輪を着けられて、鞭を持っている女に見下される状態で、普通の男性なら、興奮出来る筈無いものね…麗羅は心の中で私に、『香織の彼氏を、最低の変態マゾ男にしてやったわ』と言ってたけど、それは嘘なんでしょう?」

 裕之は、恥ずかしさで顔を紅潮させ、うなだれた。嘘だと言いたかったが、股間の猛りは隠しようが無かった。香織の目が、妖しく光った。

「答えられないのね…私、裕之さんと結婚は、して上げるわ。でも、裕之さんは変態のマゾ男になってしまって、普通の男性じゃなくなったから、普通の夫になるのは無理ね…だから、私の奴隷夫、いえ男奴隷にして、毎日この部屋で可愛がって、喜ばせてあげるわ…嬉しいでしょう?」

 裕之は驚いて顔を上げ、香織を見上げた。

「そ、そんな、香織さん、いくら何でも、それはあんまり…」

 裕之が抗議しようとすると、香織はすかさず、正座している彼の傍の床を一本鞭で叩き、大きな鞭音を響かせた。

「ヒイッ」

 その鞭音が裕之を怯えさせ、彼の僅かな反抗心を吹き飛ばした。香織は床をドンッと踏みつけ、彼を怒鳴りつけた。

「私に口答えするつもり?何よ!麗羅の男奴隷になって、散々醜態を晒したくせに!麗羅の男奴隷だったのなら、私の男奴隷にもなってもらうわ。嫌だと言ったら、鞭で打つからね!」

「ヒイィッ、鞭だけは許して、鞭だけは勘弁して下さい」

 裕之は香織の足元で土下座して、卑屈に懇願した。今や、内気で控え目で恥ずかしがり屋の香織は存在せず、勝ち気で攻撃的で、男に対する自信に満ち溢れた香織に変貌してしまった。もう、以前の香織には会えないと分かり、土下座している裕之の目に、涙がこみ上げてきた。

「男奴隷、顔をお上げ!」

 香織は凛とした声で、裕之に命じた。既に愛しそうな声で“裕之さん”と呼ぶ、恋人の香織はいなくなり、“男奴隷”と傲慢に言い放つ、女主人の香織だけが残ってしまった。

 裕之が恐る恐る上体を起こして、顔を上げると、香織は酷い命令を下した。

「男奴隷、膝立ちになり、腰を突き出して、オナニーしてみせなさい!」

「そ、それは…」

 裕之が顔色を変えて口ごもると、香織は彼に、目が眩む程の力強い平手打ちをした。

「ヒイィッ」

 情けない悲鳴を上げた裕之を、香織は怒鳴りつけた。

「何よ!麗羅が命令すれば、どんな恥ずかしい事でもするのに、私の言う事は聞けないの?そんなに、鞭が欲しいの?」

「ヒィッ、します、直ぐにオナニーします…ですから、鞭だけはお許しを…」

 鞭という単語に怯えた裕之は、情けない哀願をして、香織の命じた通りに惨めな姿で、自分の硬く屹立したものを握り、ゆっくりしごき始めた。

「フフン、麗羅は、『男奴隷は、鞭をちらつかせたら、何でもするわ』と言ってたけど、本当なのね…それにしても、男のオナニーって、滑稽で醜いものだわ。まあ、最低の変態マゾ男には、相応しいけど…」

 香織の嘲りが、裕之の胸を深く抉り、彼の顔は紅潮して、屈辱で体が震えた。しかし、麗羅の調教でマゾヒストに仕込まれてしまった裕之には、その屈辱感で、股間のものを益々硬くさせてしまった。そして、自分のものをしごく手が、自然に早くなっていた。

「男奴隷、ちょっとお待ち!」

 香織の鋭い声が、裕之のしごく手を止めさせた。香織は何の恥ずかしげも無く、裕之の目の前で白色パンティを脱ぐと、それを裏返して、彼の顔に突きつけた。パンティのクロッチ部分は、興奮した香織の分泌液で、べとべとに濡れていた。

「私の臭いを覚えさせるのを、忘れてたわ…男奴隷、私の汚れたパンティの臭いを嗅ぎながら、オナニーおし!」

 裕之は震える両手で、香織のパンティを受け取り、それを鼻に当てて、臭いを嗅いだ。ツーンとする強い女の臭いが、裕之の脳髄を痺れさせ、彼の屹立したものは、極限まで硬くなった。理性を失った裕之は、左手でパンティを自分の鼻に押し付け、右手で自分の屹立したものを、激しくしごき始めた。

「男奴隷、手をお止め!」

 凛とした声で、香織に命令された裕之は、しごいていた手を、ピタリと止めた。彼の硬く怒張したものの先端から、粘液が滴っていた。香織は、裕之の左手からパンティを取り上げ、自分の胸からブラジャーを外し、黒革ブーツだけの裸になった。

 彼女は膝立ちの裕之の前で、仁王立ちとなり、腰を彼の顔面に突き出した。

「自分だけが気持ちよくなるんじゃなくて、蜜で濡れた私のここを、お前の舌できれいにおし!」

 濃い陰毛に縁取られ、とろとろに濡れた陰部を、顔面に突き付けられた裕之は、一瞬逡巡したが、直ぐに舌を伸ばして、香織の陰部を舐め始めた。次々に湧いてくる香織の淫液は、いくら舐め取ってもきりがなく、一体いつまで舐めればいいのか、裕之には全く分からなかった。分かっているのは、香織が自分を虐めて、凄く感じているという事だけだった。

「ウフフ、さっきも言ったけど、お前の口は既に汚れているわ…だから、お前の上の口は、私の下の口にしか、キス出来ないのよ。これで男奴隷の身分が、よく分かったでしょう」

 香織は、自分の陰部を懸命に舐めている裕之を見下し、蔑んだ口調で言い放った。香織の侮蔑は裕之の胸を酷く傷つけて、二人はもう二度と元の対等な恋人関係には戻れずに、女主人と男奴隷の身分が確定された事を思い知らされた。

 不意に腰を引いた香織は、くるりと体の向きを変えて、後ろ向きになり、両手で自分の尻を拡げ、肛門を裕之の口元に突き出した。

「前の口はもういいから、後ろの口の汚れを舐め取りなさい!」

 香織の酷い命令に、裕之は顔を赤くして身震いしたが、既に反抗する気力を失っている彼は、再び舌を伸ばして、褐色の肛門を舐め始めた。何とも言えない味が舌に拡がり、初めて麗羅から肛門を舐めさせられた屈辱を思い起こした。

「ウフッ、ちょっとくすぐったいけど、結構気持ちいいわね…これから毎日、トイレを済ませた後に、お前の舌をトイレットペーパーの代わりに使って上げるわ。嬉しいでしょう?」

 これが、内気で控え目で恥ずかしがり屋だった、愛しい香織が自分に言う台詞か…香織の残酷な宣告に、懸命に彼女の肛門を舐めている裕之は、暗澹たる思いにかられた。

 不意に、香織の肛門から、強烈な臭いがするガスが噴出した。

「あら、ごめんなさい、おならが出ちゃったわ…でも、変態マゾの男奴隷には、香しい匂いじゃないの?オホホホ…」

 香織の嘲笑が、裕之の頭で虚ろに響き、彼の目から知らず涙がこぼれた。香織は急に体の向きを変えると、両手で裕之の髪を掴んで引き寄せ、彼の口元を再び自分の陰部に押し付けた。

「私の臭いと味は覚えたでしょうから、仕上げにおしっこを飲ませて上げるわ。これで、体の中から、自分は私の男奴隷なんだと、自覚出来るわよ…さあ、口をお開け!」

 裕之がおずおずと口を開いた瞬間、香織の陰唇から尿が噴き出した。裕之はこぼさないように、必死で口に注ぎ込まれる尿を飲み下した。喉を焼き、胃に重く溜まっていくアンモニア臭の強い尿は、香織の言う通りに、自分は彼女の男奴隷で、便器にまで落とされてしまったんだと、思い知らされた。

 香織が長い排尿を終えると、裕之は命じられなくても、彼女の尿で濡れた陰部を舐め回して、後始末した。それは、麗羅から奴隷調教された躾の成果であり、裕之の惨めで卑屈な習慣になっていた。

「ウフフ、まるで人間ビデだね。お前の口は、女のおしっこの臭いが、染みついているんじゃないの?」

 香織の蔑みが裕之の胸をズタズタに切り裂き、彼をどん底まで落ち込ませた。

「いつまで舐めているの、いやらしい男奴隷だね…さっさとお立ち!」

 香織はいきなり、裕之の顔面を自分の陰部から引き離すと、跪いている彼に立つよう命じた。

「足は肩幅に開いて、両手は頭にやるのよ!」

 裕之が、香織に命じられた通りの姿勢になると、彼女は股間を指差して、罵った。

「何よ、お前は!女の恥ずかしい所や、汚い所を舐めさせられて、おしっこまで飲まされたのに、まだ興奮しているのね。本当の変態だわ!」

 確かに、裕之の股間のものは、下腹を叩く程に、猛々しくいきり立っていた。香織に罵倒された裕之は、恥ずかしさで顔を真っ赤にして、うなだれた。この時、香織の責め方は、麗羅の記憶をなぞっているのに気づいた。

「男奴隷、身動きするんじゃないわよ…ちょっとでも動いたら、一本鞭で全身を打ちのめしてやるからね!」

 香織は、硬く屹立している裕之のものを、右手で握ると、ゆっくりしごき始めた。同時に、左手で陰嚢を優しく包み込み、揉みほぐすように愛撫した。怒張して敏感になっている裕之のものは、たちまち果てそうになった。

「ああっ…香織様、御手をお緩め下さい…いってしまいます、御手を汚してしまいます…」

 動くなと命令されている裕之は、苦しそうに顔を歪めて、香織に哀願した。しかし、香織はフンッと鼻で笑い、残酷に答えた。

「女主人の手で、気持ちよくさせてもらえるなんて、男奴隷には身に余る光栄でしょう…言っておくけど、射精は許さないわよ。もし勝手に射精して、私の手を汚しでもしたら、この恥知らずに硬くしているものを、一本鞭でちぎれるまで打ってやるからね!」

 香織は裕之に釘を刺し、更に硬くなった彼のものを、ゆっくりとねちっこくしごき続けた。

「ああっ、そんな…御慈悲を…」

 裕之は身悶えして、香織に慈悲を請うたが、彼女は悪魔的な微笑を浮かべ、巧みな愛撫を延々と続けるだけだった。裕之は必死に耐えていたが、遂に限界が来た。

「アウゥッ、お許しを…」

 そう呻いて、裕之が射精しそうになると香織は、ぱっと手をはなした。後一歩で射精してしまうところだった裕之は、深いため息をついた。

 香織は黒光りする一本鞭を手にすると、裕之の横側に立った。

「よく恥知らずに興奮して、これ程硬く大きく出来たものね…こんな醜悪なもの、こうしてやる!」

 香織は一本鞭を振り上げると、空中で鋭く一振りした。彼女は一本鞭を、裕之の怒張したものには当てずに、空中でバチンッと鳴らせて、大きな鞭音を部屋中に響かせた。

「アアァーッ」

 その鞭音を聞かされた瞬間、裕之の何かが弾けて、硬く怒張したものから、多量の白濁液を噴出してしまった。彼は全身の力が抜け、体が床に崩れ落ち、がっくりと両手と両膝を床に着け、四つん這いになってしまった。

 四つん這いの姿になった裕之を、香織は怒鳴りつけた。

「動くな、射精するなと、言ったでしょう!私の命令を無視するなんて、この一本鞭を使って、もう一度奴隷調教しないと行けないわね…この罰は後でたっぷり与えてやるから、まずはお前が漏らして床を汚した精液を、全て舐め取りなさい!」

 香織はそう命じると、裕之の傍の床を、一本鞭で叩いた。

「は、はい、ただいま…」

 床を叩いた鞭音に怯えた裕之は、床に飛び散った自分の精液を、慌てて舐め取り始めた。精液の生臭い味と、床の埃のざらついた感触を舌に感じた裕之は、女の奴隷に落とされた自分の惨めさを、改めて思い知らされた。



 ドアが開き、聡子女医が部屋に入って来た。彼女は、裸で黒革ロングブーツだけを履き、一本鞭を手にしている香織と、全裸に首輪だけを着け、四つん這いで床を舐めている裕之の異様な姿を見て、驚いた表情をした。

「香織、裕之さん…一体、何をしているの?」

 聡子女医が問い掛けると、香織はにっこりと笑って、答えた。

「伯母さん、裕之さんは麗羅の手で、変態のマゾ男にされてしまったの…もう普通のセックスでは、満足出来なくなってしまったから、仕方なく私が虐めて上げているのよ」

 聡子女医に痴態を見られた裕之は、恥ずかしさで顔を真っ赤にして、何も言えなかった。

「そうだったの…」

 聡子女医は、呆れたように呟くと、部屋を出て、ドアを閉めた。香織は再度、一本鞭で床を叩き、裕之に命令した。

「まだ、お前の出した精液が、床に残っているわよ!さっさと舐め取りなさい!」

「ヒイィッ、は、はい、直ぐに…」

 鞭音の恐怖に、裕之は慌てて、床の精液を舐め取る作業を再開した。彼が自分の精液を全て舐め取った時、ドアが開いて、聡子女医が再び部屋に入って来た。

 裕之は、聡子女医の姿を見て、驚きで目を丸くした。彼女は紫色のセクシーなブラジャーとパンティだけの下着姿で、香織みたいに黒革のロングブーツを履いていた。熟女である聡子女医の体は豊満で、体の線がやや崩れており、少し垂れた重そうな胸と、少し突き出ている下腹が、何とも言えない色気を漂わせていた。

「香織、自分だけ楽しんでないで、私にも裕之さんを貸して頂戴」

 聡子女医の姿と発言に、香織も些か驚いたようだった。

「伯母さん、その格好は…それに、裕之さんを貸してって…」

 聡子女医は、ニヤリと笑い、説明した。

「麗羅に人格統合するよう説得するために、催眠療法で彼女を呼びだし、色々と話をしていてね…麗羅は裕之さんをどの様に虐めたのか、裕之さんがどの様に変わっていったのか、事細かに話してくれたの。それで、裕之さんがマゾヒストにされていったのが、分かったのよ…昔、私が弟をマゾヒストにしてしまったようにね…」

 裕之と香織は唖然として、聡子女医の説明を聞いていた。

「まあ、香織の治療のため、麗羅には好き勝手にさせておいたわ。麗羅は、裕之さんを完全なマゾヒストにしたら、気が済んだみたいで、『自分から虐めて欲しがる変態マゾ男は、興醒めだわ』と言って、香織に人格統合されるのを、ようやく了承してくれたの。それで、香織の解離性同一性障害は完治したという訳…」

 聡子女医の説明は、続いた。

「ただ、香織が完治したのはいいんだけど、一度マゾヒストになってしまった裕之さんは、もう二度と普通の男性には戻れないわ。私の弟が、そうだったみたいにね…だから、香織と私の二人で、裕之さんの面倒を見て、虐めて上げると言っているのよ。女に虐められて、ヒイヒイ喜ぶ変態マゾ男の裕之さんには、嬉しい話でしょう?」

 聡子女医の説明を聞いた裕之は、愕然とした。香織の治療のためとはいえ、麗羅に自分を好き勝手に虐待させて、自分をマゾヒストに陥れるなんて…四つん這いだった裕之は、思わず立ち上がり、聡子女医に抗議した。

「聡子先生、いくら何でも、あんまりじゃないですか!僕は、香織さんの治療のために、今まで麗羅さんからの虐待に耐えてきたのに、僕がマゾヒストにされるのが分かっていて、麗羅さんの好き勝手にさせるなんて…酷過ぎるでしょう!」

 聡子女医は、裕之の抗議には直ぐに答えず、ツカツカと香織に近づき、彼女の手から一本鞭を取り上げた。そして、裕之に向かうと、一本鞭を振り上げ、彼の裸体に思い切り叩きつけた。

「ウギャアァーッ」

 一本鞭の凄まじい激痛と衝撃に、裕之は絶叫を上げて、床にうずくまった。聡子女医は顔を上気させ、豊満な胸を揺らして、一本鞭を振るい、裕之を何度も鞭打った。裕之は哀れな悲鳴を上げ、頭を抱え、床を転げ回った。

 聡子女医が鞭を振るうのを止めた時、裕之の全身に、交差する赤い筋が刻み込まれていた。聡子女医は、うつ伏して喘いでいる裕之の顔付近の床を、ブーツでドンッと踏み鳴らし、怒鳴りつけた。

「最低の変態マゾ男のくせに、横着な口を利くんじゃないわよ!何なら、もう一度言って御覧!今度こそ、この一本鞭で打ち殺してやるから!」

 裕之は震え上がり、慌てて引きつる体を動かし、聡子女医の足元で土下座した。彼は聡子女医のブーツの爪先に、何度も服従のキスをしながら、

「聡子先生…いえ、聡子様、どうかお赦しを、どうか御慈悲を…」

と卑屈に慈悲を請うた。裕之を見下した聡子女医は、少女みたいに快活な笑い声を立てた。

「キャハハハ、麗羅の言った通りだわ。男奴隷は、ちょっと鞭で撫でて上げれば、直ぐに従順になるって…本当に面白いわ。弟を虐めた頃を、思い出すわよ」

 鞭の痛みと、度を超えた惨めさに、裕之の目から涙がこぼれた。聡子女医は、ブーツで裕之の頭を小突いて、命令した。

「男奴隷、立って、両手を後ろにお回し!」

 抗議する気力さえ喪失した裕之は、よろよろと立ち上がり、命じられた通りに、両手を背中に廻した。聡子女医は裕之の両手を、革手錠で後ろ手に手際よく拘束した。それから、アナルフックを手にして、先端にワセリンを塗りたくった。

「男奴隷、足を肩幅に開いて、力をお抜き!」

 聡子女医は、言いなりになった裕之の尻を手で拡げて、肛門にアナルフックを挿入した。

「アウゥッ」

 麗羅に、何度も肛門に異物を挿入されてきた裕之であったが、その感覚に慣れる事は出来ずに、思わず呻き声を出した。

「さあ、そこの滑車台まで、お歩き!」

 裕之が顔を歪め、よたよたと歩いて滑車台まで行くと、聡子女医はアナルフックの孔が空いている

端にロープを結び付け、滑車を使って上に引っ張り、裕之を足裏全体がぎりぎり床に着いて、直立する体勢に固定して、身動き出来なくさせた。

「香織、ちょっと道具を取って来るから、男奴隷のここを硬くさせておいて」

 聡子女医は香織に一声掛けて、部屋を出て行った。香織は言われた通りに、裕之の股間に手を伸ばし、優しく愛撫し始めた。

先程射精したにも関わらず、香織の巧みな愛撫と、アナルフックによる前立腺への刺激で、裕之のものは直ぐに硬直し、下腹を叩く程に猛々しくいきり立った。それから、香織はしゃがんで、裕之の怒張したものを、柔らかい唇で包み込み、頭を前後に動かしながら、舌を絡み付けるように、ねっとりと舐め上げた。その間も両手は、裕之の陰嚢を優しく揉みほぐしている。

「ああっ、香織様、お許しを…御口を汚してしまいます…」

 果てそうになった裕之は、喘ぐような声で、香織に懇願した。香織は、一旦裕之のものから口を離すと、彼を上目遣いでキッと睨み、

「もし、私の口を汚したら、これを噛み切って、睾丸を握り潰してやるからね!」

と厳しく脅して、再び彼のものを唇で包み込み、舌を使った。

 裕之は苦しそうに顔を歪め、身悶えして、果てそうになるのを必死に堪えていると、不意にドアが開き、聡子女医が戻って来た。彼女は、何か針金のようなものを手にしていた。

「香織、もういいから、私と替わって」

 聡子女医は、香織を裕之から離させると、

「男奴隷、これが何か分かる?」

と言って、針金のような物を、彼に見せつけた。それは、長さ20p、直径1o位のステンレスの棒で、先端はごくごく小さなビーズの玉みたいに、球状になっていた。全体に、何か透明なクリームみたいなものが塗られている。

「…いえ、よく分かりません」

と裕之が、首を横に振って答えると、聡子女医はニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、説明した。

「これはね、お前の尿道を可愛がる道具よ。ちゃんと殺菌ジェルを塗っているから、化膿する心配は無いわ。お前は、尿道責めは初めてだろうから、一番細いのを選んで上げたの…段々と太くして、最終的には、小指が入る位に拡張して上げるわ…どう、嬉しいでしょう?」

 裕之の顔から、血の気が引いた。聡子女医は、左手で裕之の猛々しく屹立しているものを掴み、右手でステンレスの棒を持って、先端を尿道口に当てがった。

「ヒイッ、お、お許しを…」

 裕之は怯えた声で哀願したが、聡子女医は全く取り合わず、ステンレスの棒を彼の尿道に挿入し始めた。激痛を覚悟した裕之だったが、ステンレスの棒が極細で、ジェルを塗ってあり、さすがは医師である聡子女医の手際が良い事もあって、さほど痛みは感じなかった。

 聡子女医は、右手でステンレスの棒をゆっくりピストン運動しながら、左手で裕之の硬く怒張しているものを、ねっとりとしごいた。

 呻き声を漏らして身をよじる裕之を、聡子女医は妖しい光を湛えた眼で見つめて、話し掛けた。

「男奴隷、初めての尿道責めの感覚は、如何かしら?慣れたら気持ちよくなって、自分から尿道オナニーをねだるようになるわよ…そうそう、医療機器会社の人と話したんだけど、お前は近々リストラされるみたいね…それなら、明日にでも辞表を出して、会社を辞めなさい。私の経営するデイケア施設の職員に雇って上げるから…お前は介護ヘルパーの仕事をしながら、勉強して介護士の資格を取りなさい。香織と結婚して、介護のキャリアを積めば、いずれはデイケア施設の所長にして上げるわ…どう、悪い話じゃないでしょう?」

「は、はい…」

 確かに、現状の裕之にとっては、願ってもない有難い話だった。しかし、今は下半身の異様な感覚に気を取られて、まともにものが考えられなかった。

 聡子女医は、右手でステンレスの棒をゆっくり引き抜きながら、左手で裕之の怒張したものを、速く強くしごいた。ステンレスの棒を尿道口から引き抜かれた瞬間、裕之は呻き声を上げて、二回目の射精をしてしまった。

 がっくりとうなだれた裕之は、全身の力が抜けて、床に崩れ落ちたかったが、肛門に差し込まれて、滑車台に吊られているアナルフックが、それを許さなかった。裕之には、涙をぼろぼろ流し、すすり泣く事しか出来なかった。

 聡子女医は、裕之に力強い往復ビンタを張って、叱りつけた。

「許しも無く、勝手に射精しておいて、何を好き勝手に泣いているの!やっぱり、この男奴隷には、まだ鞭が必要なようね!」

 聡子女医は、さすがに今の裕之には、一本鞭では体力が保たないと判断し、九尾鞭を手にした。

「さっきから、伯母さんだけズルいわ…私にも、鞭を使わせてよ」

 香織は乗馬鞭を手にして、裕之の背後に廻った。裕之の前には、九尾鞭を持った聡子女医が、背後には乗馬鞭を持った香織が立った。

 聡子女医は裕之を威嚇するように、九尾鞭を素振りして、彼に話し掛けた。

「この部屋の責め道具は、全て弟が揃えたものなのよ…弟が亡くなって9年間、手入れしてきた甲斐があって、今でもちゃんと使えるわ。何しろ、革製品は油断すると、直ぐカビが生えて、駄目になるからね…」

“9年間、手入れしてきた…”

 聡子女医が語ったキーワードが、今まで裕之のまとまらなかった思考と記憶を、爆発的に結び付けて、彼は全てが理解出来た。

 何のために聡子女医は、弟の残した責め道具を9年間も手入れしてきたのか?それは、彼女自身が使うためだ…誰に使う?…勿論、彼女が捕獲したマゾ男にだ…実の弟をマゾヒストに仕込む位だから、聡子女医は真性のサディスティンだ。その気質は、姪の香織にも受け継がれて、それが人格解離した麗羅だったのだ…麗羅に自分を虐めさせたのは勿論、香織が患っている解離性同一性障害の治療のためでもあったが、自分をマゾヒストに仕込むためだったのだ。香織との結婚を許したのも、リストラされる予定の自分を、デイケア施設の職員として拾うのも、マゾヒストにされた自分を捕獲して、囲い込むためだ…ひょっとしたら聡子女医は、仕事に支障を来して、リストラされるまで、自分を徹底的に虐め抜くようにと、麗羅に示唆したのかもしれない…今や仕事も結婚も、自分の生活は全て聡子女医に掌握された裕之は、もうこの家から逃げる事は出来ない。聡子女医と香織から、どんなに酷く虐められる日々であっても…香織に連れられて、聡子女医に会った日から、自分は彼女の手の平で、計画通りに操られ、マゾ男に仕込まれて、捕獲されてしまったのだ。聡子女医は、弟の残した責め道具を手入れしながら、弟や自分みたいにマゾヒストにされた男を、9年間も待ち続けていたのだ。これから一体、虐める事が出来るマゾ男を、長い間待ち侘びていた聡子女医から、どんな酷い目に遭わされるのか…。

 裕之の取り留めのない思考を、聡子女医の一喝が吹き消した。

「男奴隷、お仕置きだよ!覚悟おし!」

 聡子女医と香織は、同時に鞭を振るい、裕之に哀れな悲鳴を上げさせた。しかし、マゾ男にされてしまった裕之は、彼女達の振るう鞭の嵐の中で、自分が女神に捧げられた殉教者のように錯覚し、聡子女医と香織になら、どんな酷い目に遭わされてもいい、命を捧げてもいいとすら、思わされていた。

 麗羅の手で、完全なマゾヒストに仕込まれてしまった裕之は、残酷な聡子女医と香織の二人から、鞭の苦痛を受けて苦しんでいるのに、男の自分が女に虐められている屈辱に興奮してしまい、先程二回も射精したにも関わらず、股間のものを又も猛々しく怒張させていたのであった。



終わり