冤  罪

作者 namelessさん


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 週末に近所の大型スーパーの野菜コーナーで、村中健吾は買い物メモを見ながら、小さくため息をついた。

(休日くらい、家でゴロゴロしてのんびりしたかったが…まあ、たまには家庭サービスも仕方ないか…)

 今年28歳になる健吾は妻の優衣に言われて、買い物に来ていた。彼は2歳年下の優衣と五ヶ月前に結婚したばかりの新婚だ。有名大学の経済学部を優秀な成績で卒業し、この不況下で就職難にも関わらず財閥系の大手銀行に採用された彼は、資産運用の金融商品を扱う部署で若い才能を開花させ、銀行に多大な貢献を果たした。その健吾の優秀さと将来性を見込んだ本部役員の一人が、自分の娘と見合い結婚させたのだった。妻の優衣はどうも甘やかされて育ったみたいで、自分の思い通りにならないと気が済まない我が儘な一面があり、まだ新婚期間中なのにプライドの高い健吾との小さな諍いが耐えなかった。昨日の夜も些細な事で言い争いとなってしまい、今日は優衣の御機嫌取りのため、彼女に言われた通りお使いに出たのだ。

(ええと、タマネギとニンジンとジャガイモと…)

 健吾は買い物メモ通りに商品を買い物籠に入れながら、優衣との夫婦関係をぼんやりと考えた。綺麗な顔立ちでスタイルも良い優衣と見合いの席で初めて会った時、健吾は優衣に一目惚れし、優衣も端正な顔立ちの健吾を気に入ったようだった。それからトントン拍子で結婚が決まったのだが、いざ一緒に暮らしてみると、お互いに自分の思い通りに仕切りたがる性格だったため、口喧嘩が絶えなかった。思い切って離婚も考えない事は無かったが、一大派閥を形成している本部役員の娘である優衣と別れるのは、自分の銀行マンとしての将来を棒に振る事を意味しており、何よりも健吾は優衣に惚れ込んで、愛していた。彼はどうやったら優衣と喧嘩せずに仲良く夫婦生活を送れるか、常々悩んでいた。

 買い物を済ませた健吾が大型スーパーから出ると、二十代半ばで上背があり、目鼻立ちがきりっとした女性から不意に声を掛けられた。

「お客様、商品のお支払いはお済みですか?」

 面食らった健吾は、

「勿論済ませているけど、あなたは…?」

 女性は何かの身分証を健吾に見せ、

「私はこの店の保安員です。少しお話しをお伺いしたいので、一緒に来て下さい」

と丁寧ではあるが、有無を言わせぬ口調で健吾に告げた。健吾は訳が分からないまま、保安員の女性に連れられて店の事務室に入らされた。椅子に座らされた健吾は、

「持っている商品を、全て机の上に出して下さい」

と女性保安員に言われ、初めて自分が万引き犯扱いされている事が分かった。

「君は僕が万引きしたとでも言うのか、失礼な!レシートがあるから、確認してくれ!」

 健吾は財布からレシートを取りだして女性に渡し、買い物袋の中から商品を全て取り出して、机の上に並べた。女性保安員はレシートと商品を見比べていたが、机の上に置いている空の筈の買い物袋に、急に手を突っ込んだ。女性保安員が買い物袋から手を抜き、手首を返すと、手の平には胡椒の瓶が乗っていた。

「これは何ですか?」

 健吾は驚きで目を丸くした。

「えっ、いや…分からない…」

 女性保安員は机を回って健吾の横に来ると、

「失礼します」

と言って、不意に彼の上着のポケットに手を突っ込んだ。女性保安員は素早く手を引き抜き、手首を返すと、手の平にはガムが乗っていた。

「これは何なんですか!」

 女性保安員から強い口調で言われた健吾は、訳が分からず、しどろもどろに答えた。

「わ、分からない…僕は万引きなんかしてない。何かの間違いだ…」

 女性保安員は手の平で机をバンッと叩き、大声を出した。

「何の間違いで、買い物袋とポケットに胡椒の瓶とガムが入っているんですか!ここにレジを通してない商品があるのに、見苦しいですよ!それとも、誰かがこの商品をあなたの買い物袋とポケットに入れたとでも言うのですか?」

 健吾は焦って記憶を辿ったが、買い物中もレジを通過した後も、自分に近寄って来た者は誰もいなかった。勿論自分が万引きをする筈もないが、支払いを済ませてない胡椒とガムがここにある理由を説明出来なかった。健吾が黙っていると、女性保安員はきつい口調で彼に告げた。

「あなたは万引き、つまり窃盗の現行犯なんですよ!現行犯は私人でも逮捕出来ます…まずは警察に通報しなくてはなりません」

 健吾は顔を上げ、焦って女性保安員に訴えた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。私は万引きなんか、絶対にしていない。大体こんな安い物を万引きして、自分の人生を台無しにする筈が無い。これは何かの間違いなんだ、信じてくれ…」

 健吾は必死に訴えながら、今後の事を考えた。いくら覚えが無いと言っても、保安員から通報されて、これだけの証拠がある限り、警察が来たら確実に万引き犯として処理されるだろう。刑罰的には大した事は無いだろうが、信用を重んじる銀行は自分を懲戒免職にするだろう。不祥事で銀行をクビにされたら、再就職もままならずに路頭に迷う事になる。優衣にも愛想を尽かされ、離婚されるのは間違いない。どうやって、この危機を乗り越えればいいのか…女性保安員は、きつい口調で健吾に言った。

「あなたには安い物でも、店にとっては大きな損失です。それに、お金があっても盗癖が治らない人は、世の中に沢山います…とりあえず、あなたの身分が証明出来るものを見せて下さい」

 健吾は仕方なく、免許証を女性保安員に差し出した。

「ええと、村中健吾さんですね…村中健吾?ひょっとして、優衣のご主人ですか?」

 健吾の免許証を確認した女性保安員は、意外そうな声を出した。

「えっ、妻を御存知なんですか?」

 健吾も意外そうな声で訊ねると、女性保安員は説明し始めた。

「私は優衣の学生時代からの友人で、守永美津子といいます。結婚式にも招待されて、出席したんですよ…私を覚えていませんか?」

 新婦の優衣側の出席者は多くて、健吾には女性保安員の顔が分からなかった。

「…すみません。結婚式の出席者が多くて、分かりませんでした」

 女性保安員はため息をつき、

「まあ、それはいいんですが…優衣のご主人となると、ちょっと…」

と言葉を濁し、机から離れて部屋の隅に移動し、携帯電話を取り出して電話し始めた。

「あっ、もしもし、優衣?久し振りね…ちょっと大変な事が起きて…そうなの、直ぐ来てくれる?」

とこそこそ通話をして、電話を切り机に戻った。

「今から優衣が…いえ、奥様が来て下さるそうです。しばらくお待ち下さい」

 女性保安員にそう言われた健吾は、頭を抱えた。優衣にこの状況をどう説明したらいいのか…10分も経たない内に、薄手の白色ブラウスに紺色スカート姿の優衣が、店の事務所に飛び込んで来た。彼女は怒りで目を吊り上げ、健吾に大声を出した。

「あなた、どういうつもりなの!万引きするなんて、恥ずかしくないの!?美津子から電話を貰って、心臓が止まるかと思ったわよ!」

 健吾は困惑しながらも、必死に弁明した。

「ち、違うんだ…これは何かの間違いなんだよ。冤罪なんだ…僕が万引きなんか、する筈ないじゃないか…」

 すると、優衣は健吾を思いきり平手打ちした。

「ヒィッ」

 思わず短い悲鳴を漏らし、打たれた頬を手で押さえた健吾を、優衣は怒鳴りつけた。

「ふざけるんじゃないわよ!親友の美津子が、あなたに万引きの濡れ衣を着せたとでも言うつもりなの!?全然反省してないのね!」

 見かねた美津子が、激昂する優衣と情けなくうなだれている健吾の間に入った。

「まあまあ、落ち着いて、優衣…今回は大して高価な商品でもないし、この店でのご主人の万引きは初めてみたいだから、私の判断と責任で警察には通報しないわ。警察沙汰になったら、ご主人のエリート銀行マンとしての将来が台無しになって、優衣との結婚生活も今まで通りにはいかなくなるからね…ただ、私も職務上の立場があるから、ご主人には始末書を書いて頂くわ」

 美津子は白紙とボールペンを机に置き、健吾に指示した。
 ご主人、今から私の言う通りに書いて下さい」

 健吾は些か震える手でボールペンを取り、美津子の言う通りに白紙に文字を書き込んだ。まず日付・住所・職業・氏名・生年月日を記入し、内容としては、自分がこの店で胡椒とガムを万引きしたのは間違いなく、二度と万引きしないで、この店の出入り禁止も受け入れる、と言うものだった。

 美津子は健吾が書いた始末書を手にすると、

「優衣、この始末書はお店で保管して、後の事は私が処理しておくから、ご主人と一緒に帰っていいわよ…それと、優衣はご主人の身元引受人の立場になるから、今後はご主人の監督をよろしくね」

と言って、健吾と優衣の二人を店の外まで送った。
 



 大型スーパーから自宅まで、歩いて7,8分くらいしか掛からなかったが、その間優衣は健吾に話し掛けようとはしなかった。二人が自宅に戻り、リビングに入ると、優衣はまたも健吾を力強く平手打ちした。

「ヒィッ…何するんだ!」

 短い悲鳴を上げ、打たれた頬を手で押さえながら、健吾は優衣に問い掛けた。優衣は怒りで顔を上気させ、健吾を怒鳴りつけた。

「何するじゃないわよ!あなたは親友の美津子の前で、私に大恥をかかせてたのよ!いい年をして万引きするなんて、自分が恥ずかしくないの!?」

「僕は万引きなんか、絶対にしていない!本当に冤罪なんだ…どうか、信じてくれ」

 健吾は困惑しながらも、必死に訴えたが、優衣には通じなかった。

「まだ、とぼけるつもりなの?万引きした証拠の商品があって、保安員の美津子も証人で、自分も万引きを認めて始末書まで書いているのに、どう言い訳するつもりなのよ!この事は、お父様に相談するわ!」

「ま、待ってくれ…」

 健吾は慌てた。優衣の父親は銀行本部で辣腕を振るう、一大派閥の領袖だ。彼は以前健吾に、

「健吾君、我々の派閥に弱味など一切無いよ…弱味は直ぐに切り捨てるからね」

と冷静な声で語った事があった。冷徹な義父は、自分の娘婿であろうと、不祥事を起こした健吾をあっさりと切り捨てるだろう。健吾は派閥から切り捨てられるどころか、銀行から追い出され、優衣とも離婚させられるだろう。もし、そうなったら…健吾には、巨額な離婚の慰謝料を請求され、再就職もままならず、貯金を食い潰し、ホームレスにまで落ちぶれる自分の姿が目に浮かんだ。そして何より、口喧嘩は絶えないが、大好きで愛している優衣と別れたくなかった。健吾は思わず優衣の足元に土下座し、必死に懇願した。

「優衣さん、頼むからお義父さんだけには言わないでくれ。それだけは勘弁してくれ…」

 普段は“優衣”と呼び捨てにしているのに、弱い立場に転落してしまった健吾は、優衣を自然に“さん”付けで呼んでしまい、我ながら自分の卑屈さに情けなくなった。優衣はスリッパを履いた足で、土下座している健吾の頭を踏みにじった。

「あなたは私に大恥をかかせたのよ!自分に都合のいい事ばかり言うんじゃないわよ!」

「お願いだから、許してくれ…許してくれたら、何でもする、何でも言う事を聞く、何でも言う通りにするから…この通りだ、優衣さん…」

 愛する妻の優衣に頭を踏みにじられ、床に額を強く押し付けられている健吾は、あまりの屈辱に悔し涙が目に浮かんできたが、それでも彼女に懇願を続けるしかなかった。不意に健吾の頭から優衣の足が外され、彼女の探るような声が上から降ってきた。

「そう、何でも言う事を聞くの…?」

 健吾は顔を上げて、優衣に必死に訴えた。

「ああ、何でも言う事を聞く…だから、お義父さんには言わないでくれ。頼むから…」

 優衣は口元を歪めて笑い、健吾に言い放った。

「あなたは私に大恥をかかせたわ。だから、あなたにも恥ずかしい思いをしてもらうからね…まず、服を全部脱いで、真っ裸になりなさいよ!」

「えっ…何で裸にならないといけないんだ?」

 健吾が疑問を口にすると、優衣はいきなり強烈な往復ビンタを彼に張った。

「ヒイィッ…何を…?」

 目が眩む程の力強い往復ビンタを両頬に受けた健吾は、悲鳴を漏らして優衣に問うた。

「何をじゃないわよ!何でも言う事を聞くって言ったくせに、全然聞かないじゃないの!やっぱり、お父様に言うわ!」

「ま、待ってくれ…直ぐ服を脱ぐから…」

 今の健吾に、ためらう暇や考える余裕は無く、大急ぎで服を脱ぎ、ボクサーパンツ一枚の姿になった。すると、優衣は再度力強い往復ビンタを健吾に浴びせた。

「ヒイィッ」

 悲鳴を上げた健吾を、優衣は怒鳴りつけた。

「私は真っ裸になれと言ったのよ!パンツが残っているじゃないの!」

「は、はい、ただいま…」

 健吾は、口惜しさと恥ずかしさが混じったような震え声で返事をし、ボクサーパンツを脱いで全裸になると、両手で股間を隠して、優衣の前に立った。するとまたも優衣は、健吾に往復ビンタを張った。

「ヒイィッ」

「何を偉そうに突っ立っているのよ!私の足元に跪きなさい!」

 健吾はのろのろと、優衣の足元に正座した。夫である健吾が妻の優衣に命令されて全裸となり、彼女の足元に跪くのは、プライドの高い彼にとって耐え難い屈辱であったが、他にどうしようも無かった。
   
 優衣は、正座している健吾の前に椅子を引き寄せて座り、スリッパを脱いだ。そして右足を伸ばし、パンティストッキングに包まれている足先を健吾の鼻に押し付けた。途端に汗臭い饐えたような臭いが鼻孔の奥まで届き、健吾の顔を歪めさせた。優衣は健吾に、



「私、元々脂足だから、ストッキングを穿くだけで蒸れるのよ。私の足の臭いをよく嗅いで御覧…返事は!?」

と言って、彼の顔を足裏で押し出すように蹴った。健吾はたまらず後ろに倒れたが、直ぐに正座の姿勢に戻り、

「は、はい、優衣さん…」

と口惜しさを押し殺したような声で返事をした。すると優衣はまた同じように健吾の顔を蹴り、

「口の利き方が悪いわね…私の事は“優衣さん”じゃなくて、“優衣様”とお呼び!」

と命じた。再度正座の姿勢を取った健吾は、

「…はい、分かりました、優衣様」

と抑えても抑えきれずに込み上げてくる屈辱感がこもった震え声で、何とか返事をした。優衣は、右足の爪先を健吾の鼻先に強く押し付け、

「よ〜く、私の脂足の臭いを嗅いで、自分の罪深さを思い知るのよ」

と嘲るように言った。優衣の汗臭い饐えたような爪先の臭いは、健吾のプライドをズタズタに引き裂き、彼の目に悔し涙を浮かばせた。正座している健吾に、右足爪先の臭いを散々嗅がせた優衣は、足を替えて左足の爪先を健吾の鼻先に押し付けた。

「右足と左足でどれだけ臭いが違うか、よく嗅いで御覧」

 優衣に嘲るような口調で言われた健吾は、屈辱で胸が張り裂けそうだったが、彼の鼻では右足と左足の臭いの区別はとても出来なかった。優衣は、しばらく左足の爪先を健吾に押し付けていたが、不意に足を下ろし、椅子から立ち上がって紺色スカートを捲り、パンティストッキングを脱いだ。それから、パンティストッキングの股間部分を健吾の鼻に宛い、彼の頭にぐるぐると巻き付けた。

「足の臭いだけじゃなくて、私の股間の臭いも嗅いで御覧」

 健吾は優衣の股間部分の臭いを嗅がされ、彼女に嘲るように言われて、あまりの屈辱に体を震わせ、目から恥辱の涙がこぼれた。

「あら、泣いてるの?あなたは自分の妻に辱められても、メソメソ泣く事しか出来ないのね。こんな情けない男は、もっともっと泣かせてやるわ…でも、この程度で泣いていたら、体中の水分がいくらあっても足りないわよ。お仕置きは、これからなんだからね!」

 椅子に座った優衣に蔑んだ口調で言われた健吾は、彼女からどんな目に遭わされるのか不安になり、嫌な予感で背筋に鳥肌が立った。

「口を大きくお開け!」

 不意に優衣から大声で命令され、健吾は何も考えられずに、口を大きく開けた。優衣は健吾の口に、右足の爪先を突っ込んだ。

「ムグウゥッ」

 空嘔吐した健吾に、優衣はからかうような口振りで命じた。

「ストッキング越しに臭いを嗅ぐだけじゃ物足りないでしょうから、直接素足を味わせてあげるわ…足指の間を丁寧に舐めなさい!」

 健吾はあまりの屈辱で泣きそうになりながらも、優衣の足指の間に舌を這わせた。汗と脂と垢らしきものが健吾の舌にねっとりと絡みつき、強烈な臭いが口中に充満して、彼を身震いさせた。ストッキングの股部分の臭いと足指の汚れの臭いが鼻孔の奥まで到達し、健吾の頭はまともにものが考えられなくなってしまった。

「うふふ、私の足を舐めている惨めな姿を、記念に撮ってあげるわ」

 優衣はそう言って、スマホで動画撮影を始めた。彼女は右足の爪先をしゃぶらせると、足を替えて左足の爪先も念入りにしゃぶらせた。ようやく優衣が左足の爪先を健吾の口から引き抜いた時、彼の精神はズタズタに傷つけられ、頬に涙が伝っていた。

 優衣は健吾の顔に巻き付けてあるストッキングを解いて外すと、紺色スカートを捲り上げてピンク色のパンティを脱ぎ、そのパンティを彼の顔に被せて、染みの付いたクロッチ部分がちょうど健吾の鼻に当たるように調整した。ストッキングとは比べ物にならない程、強烈な饐えたような女の臭いが健吾の鼻腔を襲い、彼は咽せそうになった。しかし女の強い臭いを嗅がされたせいか、まだ若い健吾の股間のものは不覚にも反応してしまい、頭をもたげて硬く屹立してしまった。それを見た優衣は、

「あら、興奮してるの?パンティを顔に被されて興奮するなんて、本当に変態だわ!」

と蔑みながら、右足で健吾の股間のものを弄んだ。あまりの恥辱に健吾は顔を真っ赤にしたが、優衣は更に酷い命令を下した。

「そんなに興奮してるのなら、今ここでオナニーしなさい!」

「そ、そんな…いくら何でも…」

 さすがに健吾が躊躇すると、

「何よ!私の言う事は何でも聞くって、さっき言ったでしょう!言う事を聞かなかったらどうなるか、自分でも分かってるんじゃないの?さっさとしなさいよ!」

と優衣に脅された。やむを得ず健吾は、硬く屹立してしまったものを右手で握り、ゆっくりとしごき始めた。優衣は興味津々で健吾のオナニーを見つめ、

「へえ〜、男のオナニーって初めて見るけど、皮が前後に動くのね…グロテスクだけど面白いわ。これも記念に撮っておこうっと」

と言って、またもスマホで動画撮影を始めた。あまりの恥辱に健吾は死にたくなったが、優衣のパンティの臭いが彼の脳髄を痺れさせたのと、彼女の視線を意識した事で、彼のものはますます硬度を増した。健吾の息が荒くなり、しごく手が自然に速くなっていく。そして、絶頂を迎える寸前に、

「手を止めなさい!」

と優衣から大声で命じられ、健吾は渋々自分のものから手を離した。後もう一歩で射精出来るところを止められた彼は、虚しいため息をついた。優衣は健吾の顔からパンティを剥ぎ取り、床に放っていたパンティストッキングを手にすると、彼の背後に回り、

「両手を背中に回しなさい!」

と命じた。健吾が言われた通りに両手を背中に回すと、優衣は彼の両手首をパンティストッキングでしっかり縛って、後ろ手に拘束した。そして健吾の前に回り、紺色スカートを脱ぎ捨て、下半身裸になった。優衣は椅子に浅く腰掛けると両脚を開き、両手で健吾の髪を掴んで引っ張り、彼の顔を自分の陰部に引き寄せた。

「自分だけがオナニーして気持ちよくなるんじゃなくて、私も気持ちよくさせなさい!」

 優衣に命じられた健吾は困惑したが、仕方なく舌を伸ばし、濃い陰毛が密集している彼女の陰部を舐め始めた。健吾を虐めて気が昂ぶったのか、優衣の陰唇は充血して、淫液で濡れそぼっていた。健吾は、むっと鼻を突く饐えたような強い臭いに咽せ返りそうになったが、優衣の機嫌を損ねるのを恐れ、必死に舌を動かして彼女の陰部を舐め回した。

「舌だけじゃなく、唇も使うのよ…」

 感じ始めた優衣は、喘ぐような声で健吾に指示した。健吾は唇を使って優衣のクリトリスを吸い、吸いながら舌先でつつき、彼女を喜ばせた。健吾は、優衣が感じて満足すれば、自分は許して貰えるだろうと思い、必死に舌奉仕に努めた。その甲斐あって、思ったより早く優衣は絶頂を迎え、健吾の顔を自分の陰部に強く押し付けて太腿で挟み込み、背を仰け反らせて、呻き声を上げた。優衣の陰部で口と鼻を塞がれ、たくましい太腿で顔を強く挟み込まれた健吾は、呼吸が出来ずに窒息しそうになった。優衣はしばらく余韻を味わっていたが、健吾の顔を挟んでいた太腿の力を緩め、彼の髪を掴んでいた両手を離し、彼を放免した。ようやくまともに呼吸が出来るようなった健吾は、ゼイゼイと荒い息をした。

 気だるそうに椅子から立ち上がった優衣に、健吾は声を掛けた。

「優衣さん、もう手を解いてくれないか…」

 優衣は舌奉仕で感じているし、自分はオナニーを途中で止められ、欲求不満で股間のものがいきり立っている。このまま抱き合って二人でベッドに行き、夫婦間のセックスに持ち込めば、その流れで許して貰えるだろうと、健吾は楽観的に考えていた。しかし、その考えは甘過ぎた。

 優衣は黙って健吾のスラックスから革ベルトを引き抜くと、正座している彼の顔を足裏で押し出すように蹴って、床へ仰向けに倒した。

「何言ってるの!私に大恥をかかせたお仕置きは、これからが本番なのよ!」

 優衣はそう怒鳴ると、仰向けに倒れている健吾の腹に革ベルトを振り下ろした。ビシッと弾けるような音がして、健吾の腹に見る見る赤い筋が浮かび上がった。

「ウアァーッ」

 焼け火箸を押し付けられたような強烈な痛みに、健吾は悲鳴を上げて横向きになり、体を丸くした。健吾が苦しんでいるのに構わず、優衣は立て続けに革ベルトを振るった。上衣は薄手の白色ブラウスに、下半身は裸で濃い陰毛が密集している陰部を露出させた優衣が、顔を上気させ目を吊り上げ、髪を振り乱して革ベルトを振り回す姿は、阿修羅のように壮絶であった。ストッキングで後ろ手に縛られている健吾は、床を転げ回って逃げようとしたが、逆に体中を万遍なく打たれる結果となった。そして優衣は、健吾の股間で硬く屹立しているものを、革ベルトで強かに打ち据えた。

「ギャアァーッ」

 股間のものがちぎり取られたような激痛に健吾は絶叫を上げ、体を芋虫みたいに曲げ伸ばしして苦しんだ。ようやく革ベルトを振るうのを止めた優衣は、素足で健吾の頭を踏みにじって、怒鳴りつけた。

「これで、親友の前で大恥をかかされた、私の心の痛みが分かった!?どうなの!」

「ううっ…分かりました…身に染みて分かりました…」

 優衣の足裏から、健吾のかすれたような哀れな声が聞こえてきた。優衣は健吾の頭から足を外すと、彼の傍の床を革ベルトで叩き、大きな声で命じた。

「寝転がってないで、きちんと正座しなさい!」

「ひっ、ひいぃっ、ただいま…」

 革ベルトの音に怯えた健吾は、後ろ手に縛られて、全身を赤い筋で覆われて引きつる体を無理に動かし、何とか床に正座した。今の彼にとって優衣は、愛する妻から冷酷な絶対女君主へと変貌を遂げていた。革ベルトを手にしている優衣は、正座している健吾の前の椅子に座ると、彼に問い掛けた。

「あなた、本当に反省してるの?」

「は、はい、心の底から反省しています…」

 健吾は優衣の顔が正視出来ずにうなだれて、か細い声で返事をすると、優衣は彼の股間を指差し、意地悪く訊ねた。

「ふ〜ん、本当に反省してる人が、いやらしく勃起したままなの?心の底から反省しているのなら、いやらしく興奮して勃起したりせずに、縮こまっているんじゃない?」

 優衣に指摘され、健吾は初めて股間のものがいきり立ったままなのに気づいた。あれ程革ベルトで打たれたのに、異常な興奮状態だったためか、股間のものが萎縮していなかったのだ。よく見ると、革ベルトで叩かれた陰茎の横側が腫れていた。打ち所が悪くて、勃起が治まらないのかもしれなかった。

 恥ずかしさで顔を赤らめた健吾が返事に窮していると、優衣は力強い往復ビンタを彼に浴びせた。

「ヒイィッ」

 目から火花が散る程の痛みと衝撃を受けた健吾は、短い悲鳴を上げた。

「私が訊いているのに、無視するつもり!?やっぱり口ばっかりで、全然反省してないのね!それなら、そのいやらしく硬くしているものがちぎれるまで、ベルトで打ってやるわよ!」

「ひいいっ、そ、それだけは許して下さい、お願いです、優衣様…」

 恐怖で震え上がった健吾は、恥も外聞も無く、上体を倒して額を床に着け、土下座の姿勢で妻である優衣に哀願した。優衣は素足で健吾の頭を蹴って、命令した。

「ふんっ、いつまでも座ってないで、さっさとお立ち!」

 健吾が後ろ手にストッキングで縛られた不自由な体をよじらせて、何とかよろよろと立ち上がると、優衣も椅子から立った。そして彼女は、健吾の硬くなっているものを握り、ゆっくりとしごき始めた。

「あれだけ痛い目に遭っても、まだ興奮して勃起しているなんて、どこまでいやらしいのよ!あなたには、恥とか人間としての矜持と言ったものが全然無いのね!」

 優衣は健吾の屹立しているものをしごきながら、彼を酷く罵った。健吾はあまりの恥辱に顔を紅潮させて身震いしたが、優衣の柔らかい手で刺激されているため、股間の硬くなっているものが萎える気配は無かった。それどころか、段々と硬度を増してしまい、遂に限界まで硬くなってしまった。

「あなたは、自分を痛めつけた妻の手で感じて興奮し、これをますます硬くしているのね…どこまでいやらしい男なの!こんな最低な男と結婚してしまった私が、あまりにも可哀想過ぎるわよ。今から私と結婚した罰を与えてやるから、覚悟しなさい!」

 優衣は健吾を酷く罵倒しながら、しごく手の動きを段々と早くした。健吾は優衣の罵声に傷つき、胸を深く抉られたが、股間のものは快感で猛り狂っていた。優衣から受ける屈辱と射精を耐える苦しさで、健吾は顔を歪めて悶え苦しんだ。不意に、健吾のものをしごく優衣の手が止まった。

「あなた、私に手を動かせて、感じているの?自分が気持ちよくなりたいんだったら、自分から動きなさいよ。握っていてあげるから、自分で腰を動かしなさい!」

 仕方なく健吾は、腰をおずおずと前後に動かし始めた。優衣は健吾の腰の動きに合わせて、彼のものを把持している手の握力に微妙な強弱をつけた。優衣の柔らかな手の感触で快感が高まってきた健吾は、無意識に腰の動きを段々と速くしていた。

「ふんっ、何て恥ずかしい姿なの!発情期のオス犬が人の足に抱きついて、腰を振るのと全く同じだわ。あなたには人間としての、最低限の尊厳すらも無いのね。夫なのに妻の前でこんな醜態を晒け出して、恥ずかしいとも何とも思わないなんて、本当に変態で最低の男だわ!」

 優衣の酷い罵倒が健吾の心を深く傷つけ、彼の目に屈辱の涙を浮かばせた。しかし、快感には抗えず、健吾は腰の動きを速めたままだった。そして、後一歩で射精するというところで、優衣は不意に手を離した。

「ああっ…」

 射精をじらされた健吾の口から、虚しい喘ぎ声が漏れた。優衣は一旦台所に行き、直ぐに戻って来た。彼女の手には、調理用の薄いビニール手袋とオリーブ油の瓶があった。優衣は両手にビニール手袋を嵌め、オリーブ油でビニール手袋をぬるぬるにすると、立っている健吾の後ろに回った。

「男のあなたに、犯される女の苦しみを教えてあげるわ!」

 優衣はそう言うと、しゃがんで両手で健吾の尻たぶを開き、右手の中指を彼の肛門へ一気に挿入した。

「アヒイィッ」

 異様な感覚に健吾が思わず悲鳴を上げると、彼の腰の高さにしゃがんでいる優衣は右手中指を直腸内でくねらせながら、左手で彼のそそり立っているものを握り、じわじわとしごき始めた。

「男のくせに、女にアナルを犯されながら、ここを弄ばれる気分はどう?セックスの時に、ペニスを挿入されている女がどう感じているか、少しは思い知った?」

「うはっ、はあぁんっ」

 肛門への異様な刺激と、猛り狂って敏感になっている股間のものへの刺激を同時に受けた健吾は、悶えてまともに返答出来ず、意味不明の声しか出せなかった。優衣は健吾の肛門を責めながら、彼の硬く屹立したものを、決して射精させないように注意深くゆっくりとしごき続けた。それが延々と続くと、健吾の忍耐は限度を超え、とても堪えきれず優衣に哀願した。

「ああっ、優衣様、お願いです…どうか逝かせて下さい。もう耐えられません…お願いですから、射精させて下さい…」

 優衣はニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、健吾の肛門と陰茎に微妙な刺激を続けながら、彼に問い掛けた。

「そう、そんなに射精したいの…だったら私の奴隷になって、私の言う事は何でも聞く?私の言いなりになる?それなら、射精させてあげてもいいけど…」

 大型スーパーから自宅に戻って、健吾は優衣に土下座し、何でも言う事を聞く、何でも言う通りにすると言ったのだが、奴隷になるとまでは言わなかった。しかし今の健吾に考える余裕は無く、身悶えしながら殆ど泣き声で、

「ああっ、なります、優衣様の奴隷になって、何でも言う事を聞きます…ですから、逝かせて下さい」

と答える事しか出来なかった。

「うふふ、そこまで言うのなら、逝かせてあげるわよ…ほらほら!」

 しゃがんでいる優衣は右手中指の腹で健吾の前立腺を刺激しつつ、彼の極限まで硬くなってそそり立っているものを左手で強めに握り、激しくしごいた。

「ぐわあぁーっ」

 数秒も経たない内に健吾は絶叫を上げ、限界まで硬く屹立したものから夥しい白濁液を放出させた。健吾は射精した瞬間、自分の下半身が溶けて流れてしまったように錯覚し、全身の力が抜けた。優衣が健吾の肛門から指を抜き、屹立したものから手を離すと、彼はその場に崩れ落ちてしまった。優衣は立ち上がると、ビニール手袋を外してゴミ箱に捨て、台所に行ってオリーブ油を元の場所に戻した。

 台所から戻って来た優衣は、床にうずくまって、度を超えた屈辱と恥辱ですすり泣いている健吾の頭を素足で蹴りつけ、怒鳴りつけた。

「男のくせに、何をメソメソ泣いてるのよ!泣く暇があるなら、自分の精液で汚した床と椅子を、舐めて綺麗にしなさい!」

「は、はい、優衣様…」

 反抗する気力さえ奪われてしまった健吾は、後ろ手にストッキングで縛られた不自由な体をよろよろと動かし、上体を倒して、床の精液を舐め取り始めた。自分のと言えども、精液の生臭さとねっとりとした気持ち悪い舌触りが、健吾を酷く落ち込ませた。時間を掛けて床と椅子に飛び散った精液を舐め取った健吾は、又も優衣の足元に正座させられた。上半身は薄手の白色ブラウスを着ているが、下半身裸で濃い陰毛に縁取られた陰部を恥ずかしげも無く露出させ、両手を腰にやり仁王立ちになっている優衣は、健吾が下から見上げると、何とも表現出来ない威厳と魅力があった。

 優衣はきつい眼差しで正座している健吾を見下し、厳しい宣告をした。

「あなたはさっき、“優衣様の奴隷になって、何でも言う事を聞きます”って誓ったわよね…いいわよ、私の奴隷にしてあげる。あなたは私の夫の立場から転落して、私の奴隷になったのよ。これからはあなたを“男奴隷”と呼ぶわ。私の事は“優衣様”か“女御主人様”と呼びなさい。もし今までみたいに私を“優衣”と呼び捨てにしたら、ベルトで打ちのめしてやるからね!分かった?」

「は、はい…分かりました、優衣…様」

 がっくりとうなだれた健吾は、無念さを堪え、言葉を絞り出すように返事をした。しかし、優衣の厳しい宣告は続いた。

「それとお前はまだ、心の底で自分は私の夫だと言う甘えがあるようね…その甘えを払拭する必要があるわ…」

 優衣は今まで健吾を“あなた”と呼んでいたが、既に“お前”と呼ぶようになっていた。

「その甘ったれた性根を叩き直すには、いい方法があるわ…それはお前を人間便器にして、私のおしっこを飲ませる事よ!」

 真っ青になった健吾は顔を上げ、必死に優衣へ訴えた。

「そ、そんな…おしっこなんて、とても飲めません…優衣様、どうかお許し下さい」

 しかし優衣からの返答は、目から火花が散る程の強烈な往復ビンタだった。

「ヒイィッ」

 思わず悲鳴を漏らした健吾に、優衣は怒鳴りつけた。
 
「男奴隷の分際で、横着言うんじゃないわよ!さっき、私の言う事は何でも聞きますって言ったばかりでしょう。私の言う事が聞けないのなら、ベルトで全身を打ちのめしてから、お父様にお前の万引きの事を話し、お前が裸で私の足をペロペロ舐めたり、私のパンティを顔に被ってオナニーしている動画を、銀行の人達に一斉送信してやるからね!」

 健吾は再度、がっくりとうなだれた。健吾は優衣に言われて、自分の弱味がどんどん増えている事に、初めて気づかされた。優衣は健吾を問い詰めた。

「男奴隷、私のおしっこを飲むの、飲まないの?どっちにするの!?」

 健吾に選択肢は無かった。

「…飲みます。優衣様のおしっこを飲みます」

 優衣は再び、健吾に力強い往復ビンタを張った。

「ヒイッ」

「男奴隷のくせに、言葉遣いが悪いわね!“飲みます”じゃなくて、“飲ませて下さい”でしょう!男奴隷のくせに、女御主人様である私にふざけた口の利き方をしたら、承知しないわよ!」

「申し訳ございません。優衣様のおしっこを飲ませて下さい…」

 両頬の腫れ上がるような痛みと、限度を超えた屈辱に、健吾は涙声で優衣に謝罪して、自ら彼女の尿をねだる羽目になった。仁王立ちの優衣は、正座している健吾の髪を両手で掴み、彼の顔を自分の陰部に引き寄せた。

「男奴隷、口を大きく開けなさい!」

 優衣は健吾の開いた口に、自分の陰唇を密着させた。


  「さっきから催していたのを、わざわざお前のために我慢してたの…出るわよ!」

 優衣が言い終わらない内に、彼女の陰唇から黄色い奔流が噴出した。健吾は目を白黒させながらも必死に飲み下したが、アンモニア臭が強く刺激的な味の尿は喉につっかえ、その上勢いが激しくて、かなり口からこぼしてしまった。優衣も人に尿を飲ませるのは初めてで、排尿の量を調節出来なかった。それでも健吾は出来る限り、優衣の排尿を飲み続けた。アンモニア臭の強い尿が喉を焼き、鉛のように胃に重く溜まっていって、自分は優衣の人間便器にされてしまったんだという思いが、健吾を酷く苛んだ。ようやく優衣の長い排尿が終わると、彼女は健吾に命令した。

「男奴隷、おしっこが終わったら、トイレットペーパーになって、私のあそこを舌で綺麗にしなさい!」

 健吾は泣きたくなる思いで舌を伸ばし、尿で濡れそぼった優衣の陰部を舐め始めた。舌に改めて尿の刺激的な味が拡がり、健吾を酷く落ち込ませた。一通り舐めさせた優衣は、健吾の顔を自分の陰部から引き離し、又も彼に強烈な往復ビンタを浴びせた。 

「ヒイッ、ヒイィッ」

「私のおしっこをこぼして、こんなに床を濡らして…男奴隷、責任を取って、床のおしっこを全部舐め取りなさい!」

 優衣にきつい声で命じられ、ストッキングで後ろ手に縛られている健吾は上体を倒し、床の尿を舐め始めた。舌を刺すような尿の刺激的な味と床の埃のざらついた感触が、健吾の屈辱感を倍増させた。優衣は床を舐めている健吾を見下し、

「ふんっ、犬でもおしっこなんか舐めないのに、お前は犬畜生にも劣る最低のうじ虫だわ!」

と自分が命じていながら、酷く侮蔑した。優衣の侮蔑は健吾の胸を深く抉り、彼の目から屈辱の涙を流させた。それでも健吾は一生懸命床の尿を舐め取り続けたが、先程の精液と違い量が多すぎて、全部舐め取るにはかなり時間が掛かりそうだった。もどかしくなった優衣は、健吾が脱いだ肌着のシャツを手にすると、床に残った尿を全て拭き取った。それから、健吾を改めて自分の足元に正座させた。

「顔を上向きにして、口を大きく開きなさい!」

 優衣は健吾が開いた口の上で、尿がたっぷりと染み込んだシャツを雑巾絞りし、拭き取った尿の滴りを彼の口に流し込んだ。度を超えた屈辱を受けた健吾は、顔を紅潮させて身震いしたが、優衣を恐れて吐き出す事は出来ずに、吐き気を堪えて飲み込むしかなかった。

 優衣はシャツをゴミ箱に捨て、洗面所に行き手を洗った。後ろ手に縛られたまま正座してうなだれている健吾の所に戻った優衣は、彼の前で両手を腰に当てて仁王立ちになり、傲慢な口調で訊ねた。

「男奴隷、私のおしっこを飲んで、自分は私の奴隷で、私がお前の女御主人様だとはっきり分かった?どうなの?」

「は、はい、分かりました…身に染みて分かりました…」

 うなだれた健吾は、震え声で何とか答えた。実際、優衣に尿を飲まされた事で、健吾は体の中から彼女に肉体も精神も組み伏せられて完全に制圧されたように感じ、抵抗したり反抗したりする気力はすっかり消え失せて、心の底から優衣に屈伏してしまった。健吾の心内を見取った優衣は、満足そうに微笑んだ。

「ようやく奴隷らしくなったようね…今からお前は、私に絶対服従するのよ。少しでも口答えしたり、逆らったりしたら、ベルトで体中を打って、おしっこだけじゃなく大便も口に無理やり流し込んでやるからね!家事や雑用なんかは、私がいちいち言わなくても、自分から進んでしなさい。これからの生活が楽しくなりそうだわ。オホホホ…」

 優衣の嘲るような笑い声が健吾の頭で虚ろに響き、彼は絶望で視界が暗くなったように感じた。



 一週間後、優衣と女性保安員の美津子は、お洒落なカフェでお茶とスイーツを楽しんでいた。

「あれから健吾はすっかり大人しく従順になり、私の言う事は何でも聞いて、夫婦生活は順調よ。全て美津子のおかげだわ。ありがとう」

 優衣に礼を言われた美津子は、照れくさそうに笑った。

「私はただ、優衣からいつも喧嘩ばかりしているご主人の相談をされて、ちょっと計画を練っただけよ。大した事じゃないわ」

「いえいえ、美津子がいなかったら、どうなっていたか…私も健吾も我が強いから、結婚してから衝突ばかりで、いっその事、離婚しようかと思い詰めた事もあるの。でも私は健吾が大好きで、本当に愛しているから別れたくなかったし…美津子に相談して大正解だったわ。それとこれは、前に一緒に行ったブティックで、美津子がいいなって言っていたブローチよ。お礼に是非受け取って頂戴」

 美津子は苦笑して、優衣が差し出したリボン付きの小箱を受け取った。美津子は小箱を開け、中の綺麗で高価そうなブローチを手の平に乗せ、うっとりと見つめた。

「結局は優衣にノロケを聞かされるのよね…でも、このブローチは嬉しいわ。前から欲しかったのよ。ありがとう」

 優衣は、いたずらっぽく目を輝かせて、美津子に頼んだ。

「ねえ、美津子…久し振りにあのマジックを見せてよ」

 美津子は再び苦笑した。

「仕方ないわね…いくわよ」

 美津子は手の平のブローチを握ると、手首を返して手の甲を上にした。また手首を返して手を開くと、ブローチが消えていた。今度は空の手を握り、再度手首を返して手の甲を上にし、また手首を返して手を開くと、今度はブローチが手の平に現れた。優衣は小さな嬌声を上げた。

「わあっ、さすがは学生時代、マジック愛好会ナンバーワンの美津子だけあって、素晴らしいマジックだわ」

 美津子は照れくさそうに笑った。

「そんなに大したマジックじゃないわよ…でもこのマジックで優衣のご主人を万引き犯扱いして、始末書まで書かせたのは、ちょっと良心が痛むけどね。お二人が店を出た後、始末書は直ぐシュレッダーに掛けたけど…」

「ううん、美津子のマジックと計画のおかげで、健吾は完全に私の可愛いペットになって、今は本当に幸せよ。美津子には感謝しても、し切れないわ。本当にありがとう」



 優衣と美津子がカフェで談笑している間、全裸に犬の首輪だけを着けた健吾は、帰って来た優衣に叱責されてお仕置きを受けないよう、汗を流して掃除と洗濯に勤しんでいた。



終わり