第2章 強制所での屈辱

その1
 トランクの中で不自由な姿勢を強いられていた私は体の痛みを我慢しながらゆっくりと外へ出た。
そしてその場で膝を付き、声をかけられた女性を見上げた。
瞬間、私の腹に彼女のブーツの爪先がめり込んだ。
「ううっ・・」
 たまらず、前のめりに倒れこんだ。しかも息もできない苦しさだった。
さらにこの女性は私の頭を上から思い切り踏み付けた。
「あうっ・・・」
「この牡奴隷が!許しもなしに、よくも私の顔を見たね。お前、懲罰もんだよ。私を誰だと思ってる?調教女師(せんせい)よ、ここではお前達牡奴隷の絶対的支配者よ。分かってるの?」
「す・・すいません・・」
「すいません?このバカが!」
下ろした右足のブーツが私の横顔を変形させた・・
「あーっ」
「申し訳ございませんだろ、言い直せ!」
「も、も、申し訳ございません・・・調教女師様・・」
 私は口の中に何本か折れた歯と血の味を感じながら彼女に詫びた。
彼女は見たところ20代前半の若い女性だった。分かっていた事とはいえ、こんな若い女性にこのような扱いを受けた事に悔しさよりも惨めさが身に堪えた。
「ふふ、これからは気を付ける事ね、207号」
鎖をにぎって歩き出す彼女に私は四つん這いでついて行く。

駐車場からしばらく行くと大きな建物の裏手に出た、そこは牡奴隷搬入口と記されていた。まるで荷物のようだった。
そこを入ったすぐ右手には受け入れ室というものがあり、そこへ連れていかれた。調教女師様は私を運んできたゆり様から受け取った書類を提出して入り口のソファーに座った。
私はそのまま四つん這いの姿勢でうなだれて前にいる事務員らしき女性の入力作業が終るのを待っていた。しばらくするとその女性が呼んだ。
「WH207号、ここへ来なさい」
「はい・・」
「平伏なさい!」
「は、はい・・」
「終身牡奴隷WH207号、お前は本日より当調教所のC錬12房畜舎で牡奴隷強制調教を受けるのよ、詳しくは担当の調教女師から聞く事ね。もっとも言葉では教えてくれないと思うけど・・ふふ」
声の感じからすると30代であろうか、意地悪く私を貶めるような感じで伝えられたのだった。
「はい・・・分かりました・・いえ、か、かしこまりました」
「ふふふ、言い直しがきくのはここまでよ・・」
そう言ってパンプスで私の頭を小突いたのだった。
「さあ、所長にご挨拶に行くよ。お前のような下賎な奴には二度とお目にかかれないかもしれないお方だよ」
そう言って私の鎖を引き始めた。長い廊下を四つん這いで歩きながら、辺りの様子を伺っていたがここはどうやら事務センターのような所で牡奴隷達の収容されている建物ではないようだ。たた、たまに女性達の罵声を浴びせる声や牡奴隷らしき者の泣き叫ぶ声などが聞こえていた。たぶん、女性職員がストレス解消や娯楽のために牡奴隷を使っていたのだろう。
突き当りまで行くと最上階の10階まで直通の所長室専用エレベーターというものがあり、それに乗らされた。
その中で調教女師が口にしたのは所長の事だった。
「お前、倉橋まりこさんって知ってるでしょう。昔、アイドル歌手だった」
「は、はい・・・存じております」
実は私は彼女のCDも持っていた程、良く知っていた。脚線美の美しい女性だった。しかし、トラブルに巻き込まれて引退しその後の消息は誰も知らなかった。
「良かったわね。会えるわよ」
「え、は・・・」
「ふふ、分からないの?所長よ、この強制所の最高権力者、倉橋まり子所長よ。あはは・・」
「えっ・・」
私はあまりの事に気が動転した。TVで見ていたあの美しいアイドル歌手だった人がこの強制所の所長だと言われたからだ・・・信じられなかった。
しかし、数分後にはその現実が私に突きつけられたのであった。
10階に着くとそこのフロアーだけは赤い絨毯が引きつめられ、明らかに他の場所と違った雰囲気をかもし出していた。
そしてフロアの中央に豪華な扉があり、そこに所長室と記されていた。
中に入ると大きな空間があり、さらにその中にいくつかの部屋があった。その中の謁見室という部屋に私は入れられた。
そこには、豪華な椅子があり、その下に何重ものカーペットやら毛皮やらが敷き詰められていた。それとは正反対にその椅子の目の前は1.5m四方のコンクリートの肌が見えるみすぼらしい空間があった。
私は調教女師にそこに跪き平伏するように命じられた。
「いいかい、207号。お前なんかこうして姿を晒すだけでもありがたく思いなさい。身分の差は天と地より離れてるんだからね。くれぐれも失礼のないようにしなさいよ。牡奴隷によってはこの場で即処分を言い渡された奴も少なくないからね。できる限り頭を床に擦り付けて平伏してる事だね」
「はい・・・ありはとうございます。調教女師様・・」
処分という言葉を聞き・・私はブルブルと震えだした。自殺防止剤のおかげで死への恐怖が増幅されていたからだった。
まもなく、扉が開き、コツコツとハイヒールの音がして前の椅子に座る気配を感じた。私は必死に額を床に押し付けて土下座の姿勢を保っっていた。
「所長、本日入所のWH207号です」
調教女師が書類を渡したようだった。その書類を見る音がした。
「ふーん、殺人に傷害も、これはひどいわね。終身牡奴隷刑は当たり前ね。うんと、苦しめてやらないとね・・・適応剤も、防止剤も注射済みね。後は鼻輪ね・・通せるように大きな穴を開けて頂戴、それと手足に枷、これは埋め込み式にしてくれる。どうせ一生、牡奴隷として生きるんだから埋め込みでいいわ」

「はい、所長。わかりました」
そして書類を返す音・・・
「おい207号!」
「は・・・はい・・所長様・・」
「お前は今日からここで牡奴隷として躾を受けるんだよ。そして、女性から一生罰を受けるのよ。その罰を感謝するようになるまでここで調教を受けさせるからね。調教女師に少しでも反抗的な態度をとったら、直ぐに処分するからね。よーく覚えておくのね!」
「は、はい・・・所長様」
私は震えながら答えた。
所長は椅子を降り私の前に来て頭の前に揃えていた私の手をヒールで踏みつけた。
「ひぃ〜・・・・い、いた・・・・・」
彼女は体重を更にヒールに載せて踏み付ける。
「あああ。ぎゃぁ〜・・・・」
「ほら、ほら、なんて言うの?」
「あああ・・い・・ありがとう・・ござい・・ます〜」
「はら、サービスよ私の顔を見せてあげる」
片方で私の手を踏み、もう片方の靴で私のあごを持ち上げるようにした。
下から見上げるその先は変わらぬ美しいおみ足が・・そしてさらに顔を上げようとしたその顔に彼女の靴底が・・・私の顔を思い切り蹴り倒したのだった。
「ううう・・・」
唸って倒れこむ私に
「バカが、お前のような虫けら以下に私の顔が拝めるとでも思ったの?さっさと蹴られた御礼をお言い!」
這いつくばって彼女の前に戻りまた、平伏した。また、歯が折れたようだった。
「あ、ありがとう・・ござい・・ます・・」
「ふふ、この部屋はね、お前達牡奴隷全ての畜舎を見下ろす事ができる位置に作ってあるのよ。なぜだかわかる?お前達に毎日私を拝ませるためよ。私の部屋を見上げて平伏させて私に対して感謝の言葉を言わせてやるのよ」