昭和40年代半ばに入るとぞくぞくとSM雑誌が創刊された。まさにSM誌黄金時代といったところだろう。
登場した雑誌の中にはSMマガジン・サスペンスマガジン・サスペンス&ミステリーマガジンなど完全にS小説主体でマゾヒストにとってはあまり興味を惹かないものも少なくなかった。
ただサスペンスマガジンの表紙にはいつも魅力的な女性が載っていてそれを眺めながら・・この女性に虐められたい・・などと妄想していた記憶があります。(笑)

変わったところではポケットサイズのSM誌・ポケットSM というものもありました。
 団鬼六先生が編集なされたという雑誌SMキングはおよそ3年ほどで廃刊になってしまったが、発禁本になった号もあるようだった。この雑誌も妖美な表紙が印象的で芳野眉美氏の甘美小説が掲載されていたのでよく読みました。さらに光谷東穂氏の「恥辱の戯れ」など所々に登場するM系小説がマゾヒストにとってはインパクトのあるものだった。
そして同時期にコバルト社から登場した問題SM小説は創刊当初はそうでもなかったのですが徐々にマゾ物に力をいれてきて数作品のマゾ小説を掲載するようになり、ついには日本で初めてのマゾ専門誌という名が刻まれた号を出したのである。当然表紙もそれらしいマゾ向けのものになっているのはご覧戴けばおわかりになると思います。。


 問題SM小説の作品をご紹介すると・・
美沙子夫人の二匹の奴隷」「毛皮コートの女」「二人の女サディスチン」「女装男のマゾ秘悦「妖子の童貞狩り」  沖春二氏
「酔いどれドミナ」「わが幻想のサジスチン」「窓辺のサジスチン」「ミッチとマコの狩猟日記」「女王様貸します」     紀文彦氏
「虐められたい俺の鍵」「悦虐の女装家政婦」「秘めやかな舌の悦び」「秘悦にむせぶ蜜男」「わが悦びの女服」   室戸幸二氏 
「優子様のために死す」「女王様はどんな香り?」「検便器を運ぶ男」「メンスが欲しい」「海の底で踊る女王様」    呉竹雄氏
「男装の女神さま」「美濃の王女エマさま」「仕掛けトイレ」「輝ける頭上の便器」「ギャンブルの女王様」        神崎克行氏
「女王様は蜜の味」「しょぼくれマゾの涙」「まぞパンダの珍芸」「女王さま去りし後」「地下檻の最後の晩餐」      虹京児氏
など・・マゾに留まらずフェチやスカトロ系なども取り入れられていた。
 そしてたて続けにSMセレクト・アブハンター・SMファンタジア・SMコレクターなどが創刊されました。
 中でもサン出版より創刊されたアブハンターは異色だったがその増刊号がホモ雑誌の「さぶ」であった事などからもうなづける。マゾ物は「女神さまと犬男」魔像保氏 「神酒拝受」芳野眉美氏・「体験 恋とマゾの出発」夏木青嵐氏など
 SMセレクトからは
「女王様のよだれ」魔像保氏・「甘い聖液」南村蘭氏・「女王様もっと鞭を」告白物・そして奇譚クラブでマゾ小説「黄色オラミ」を描いた真木不二夫氏が「友子女王様と二匹の奴隷」を書いている。驚くべき事にこのSMセレクトは1990年までおよそ20年程続いたのである。
 そしてM系を複数作掲載していたSMファンタジアは3年ほどで廃刊したが

「黄金の初体験」 虹京児氏・「黒の妖女」ザビエルホルツマン・「女権国家の軍隊」「黄色奴隷」「大女権帝国を想う」「白人ドミナへの憧憬」いずれも夏木青嵐氏などの掲載がある。
 SMコレクターこちらもサン出版から
「マゾ修業」シリーズ・「僻地の女妖」シリーズ・「金髪のサジスチン」「ジャップ奴隷」「結婚奴隷」シリーズ・「妖艶な女神」シリーズ・「マゾ家族」いずれも鬼山絢策氏そして春川ナミオ先生の絵やたつみ良行氏の劇画も・「優子女王様の肉便器」「奴隷誓約書」
 さらにSM奇譚・SMファン・SMフロンティア・スペシャリーS&M・快美小説SM CLUB・SMコマンドSMクラブ・SMミラージュ・SMフェニックス・SMスパイダーなど創刊され、やがては消えていった。
 SM奇譚では春川ナミオ先生の絵物語「毛皮を脱いだヴィーナス」「求む!マゾ下宿人」「奴隷結婚」「黄色奴隷日記」「ダメ男M日記」「男奴隷テスト」「S女王・玲子」などマゾヒストにとってたまらない作品が連載されていた。
「飼育された男」「肛門接吻」「甘美なる屈服」「尿飲マニア」「新宿マゾ地獄」「尻舐め奴隷」「便器の恋」など北林一登氏の作品もこちらの雑誌に掲載されていた。
また鬼山絢策氏の「体当たり一座」シリーズや「男の止まり木」シリーズもこちらに収められている。

 SMクラブからは「鞭を待つ薔薇」「黄金を喰う淫虫」美川麗氏やたつみ良行氏のマゾ劇画「隷虫志願」「真夜中の女王」「1000年女王」など
たつみ良行氏はSMフェニックスにも「女王様の館」「甘美な菊花」、SMファンにも「疼きの牡臭」「虫けらは踏み潰してやる」などの作品を載せている。
 SMファンの中には少ないながら告白物が掲載されていた。「あるマゾ男の秘密」「マゾ紳士をいたぶり思わず濡れた若妻」「ああ 五本の指でマゾ男をしごいてやりたい」「売られたマゾ男2」「ロリータ女王様告白」など
 快美小説SM CLUB には「女王様の聖水記」「手記 朝の飲物と黄金食」「窓辺のサジスチン」「身代わり奴隷志願」など興味深い作品が多い。
 この頃の雑誌も古本屋さんやオークションなどで手に入れる事はできますが、続けて読んで見たいなどと思ったらぜひ風俗資料館を利用して戴くと良いでしょう。有料ですがコピーサービスなどもあります。

まさに百花繚乱といったSM雑誌時代でしたが素晴らしいマゾ作品が多数生まれました。この中からいくつかのマゾ作品を一文だけご紹介していきたいと思います。


題名 著者 記載雑誌
嗜虐の報酬 虹小路花麿 氏 Sadism・M
劇画 買占め屋を叩け 井上哲也 氏 問題SM小説
恥辱の戯れ 光谷東穂 氏 SMキング
二人の奴隷を持つ女 水原秀美 氏 SM奇譚
玉と拾わん 杉村麻生 氏 SMファンタジア